ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-20 さっきの敵は今の味方



 2-20 さっきの敵は今の味方


 地盤が真下から穿たれ、牢は骨の塊によって全壊した。

「のわあああああああああ!?」

 僕の身体が瓦礫と一緒に空中へと投げ出される。 

 引力を無視して反対に上昇する僕のすぐ横には、僕を投げ飛ばした骨の塊が、轟音を立てて地下から伸びていてく。

 あのサイコキラー、とんでもない化け物を召喚やがった。

 脅威度C。変形巨大骸骨ギミックジャイアントスケルトン

 巨大骸骨の進化個体であり、凶暴性が更に増した危険な魔物だ。

 変形巨大骸骨の主な特徴としては、数多の魔物の骨を使うことで、骨で作られた翼や角、手足を生やすことが出来る。

 四本足の巨大骸骨なんて存在しない。僕の横に存在する魔物は、変形巨大骸骨としか言いようがなかった。

 boooooooooooo!!!

 変形巨大骸骨が哭いた。口内機関が欠如している為だろうか。その鳴き声は、法螺貝を吹いたような空洞を利用したものだった。

 まずい、見誤った。サイコキラーが召喚した魔物が、まさか四本足だと誰が予想出来ただろうか。

 僕は上半身しか見ていなかった為、こいつをただの巨大骸骨と判断してしまった。

 だが違う。この魔物は恐らく、ケンタウロスと呼ばれる魔物をベースに作られている。

 ケンタウロスは上半身は人間、下半身は馬の魔物だ。

 が、サイコキラーが召喚した変形巨大骸骨に使われているのはただのケンタウロスではない。

 確実にベースにしたのは上位種のケンタウロスだろう。生前の実力なら脅威度B相当の化け物だったに違いない。

「小僧ー! 助けてくれー!」

 サイコキラーの服が骨の突起に引っかかって、宙ぶらりんになっている。

 助けてくれなんて、本来なら、現在進行中で上空へと吹き飛ばされている人間に言っても無駄だろう。溺れる人間藁をも掴むと言うやつか。

「あーもう、めちゃくちゃだよ!」

 僕は頭を掻き毟り、空中に飛散していた瓦礫を蹴り飛ばしてサイコキラーの元へと向かう。

 人外地味た動きで縦横無尽に空中を飛び回り、骨の塊に掴まって僕はサイコキラーのすぐ側に降り立った。

「このデカブツ召喚したのお前だろ! これって止められないのか!?」
「ふっ、当たり前だ。これは我の下僕。我の意のままに動いてくれるのだ!」

 両腕を腰に当てて、えっへんと、サイコキラーは自信満々な表示を顔に浮かべた。

 .......なんだかとても不安だ。嫌な胸騒ぎがする。これからとても悪いことが起こりそうな予感しかしない。

「契約に従い命令を遂行せよ! 止まれ!」  

 サイコキラーが吠えた。カッコつけて言ってるが、本人はてるてる坊主にように吊るされているので、微塵もかっこよくなかった。

 boooooooooooo!!!

 変形巨大骸骨が再び哭いた。

 サイコキラーの命令とは反対に、変形巨大骸骨が取った行動は止めることじゃなかった。

 いきなりその巨大な腕を振り上げたと思ったら、辺り一帯を薙ぎ払った。

 大規模な砂塵と轟音が発生した。

 民家という民家が無残に破壊され、瞬く間にエルクセム王都の一角に瓦礫の山が完成した。

「.......おい」
「あれぇ? おかしいなぁ?」

 ズシン、ズシンと変形巨大骸骨は移動を開始し始めた。障害物となりゆる物を次々と叩き潰し、破壊の波を巻き起こしていく。

「まあ、待て。誰にでも失敗はあるからな。もう一度やってみよう。コホン、契約に従い命令を遂行せよ! 止まれ!」

 結果から言うと、二つ目の瓦礫の山が出来上がった。

「命令の意味がまるで無いじゃん! どうすんだよこいつ!?」
「くっ、まさか長年魔力を封印されていた弊害がこのような影響を及ぼしていたとは.......」
 
 無責任すぎる。こいつ、脅威度Cの魔物を野放しにしがった。脅威度Cと言ったら食人鬼と同等だ。

 そんな魔物が街で大暴れしていたら、当然誰かが駆けつける訳で.......。

「ぜぇ、ぜぇ.......なんだこの魔物は。いきなりおじさん酷い目にあったよ。全く、おじさん好みの女の子の観察を邪魔するとは許さん、許さんぞぉ!」

 変形巨大骸骨の身体を、ロッククライミングのように登ってきたのは一人の男だった。

 ただの男ではないだろう。その男が見に纏っている鎧は、ジョサイアが付けていた鎧と酷似している。つまり、この男はエルクセム騎士団に違いなかった。

「ん? なんだお前達は。まさかおじさん以外にもこの断崖絶壁を登れる者がおるとはな。いやぁ、これは予想外だ。こんなところにいるのは、数多くの死線を潜り抜けた実力者であるおじさんと、この魔物を召喚した者だと思うからな」

 僕達は互いに顔を見合わせた。

 .......これって結構不味い展開かもしれない。

 だって街をぶっ壊した張本人サイコキラー、その張本人と組んでいると勘違いされそうな巻き込まれた一般人と、犯罪者を取り締まるエルクセム騎士団が鉢合わせたのだ。

「もしかしてこの魔物を召喚したのはお前か?」

 僕はサイコキラーを速攻で売り払った。

「こいつです」
「こら小僧! なにをするか!」

 僕は吊るされていたサイコキラーを降ろし、騎士団の男にその身を引き渡そうとした。たが、サイコキラーは必死に抵抗し、僕と取っ組み合いになった。

「あ、こら抵抗するな! さっさとお縄に付け! この犯罪者め!」
「小僧も犯罪者の癖に何を言う! その証拠に牢屋にぶち込まれていただろう!」

 骨の盤上で至極低レベルの争いが始まった。髪を、服を、お互いに引っ張り合い、子どものような悪口を言いながら罵り合う。

「このポンコツ屍霊魔術師め! まともに魔物操れないからこうなったんだぞ!ばーかばーか!」「生意気な小僧め! ばかって言った方がばかだと知らなかったのか!」「ばか!」「ばかばか!」「ばかばかばか!」「ばかばかばかばか!」

「許さーん!」

 堪えきなくなった男が吠えた。男は青筋を浮かべ、鬼の形相で僕達に向かってゆっくりと歩みを進めていった。
 
「そうか.......そういうかとか.......。おじさんの、おじさんの楽しみのひとつである見回りを邪魔したのはお前らかああぁぁぁぁぁ!」

「え?」
「へ?」

 男の凄まじい気迫により、低レベルの争いは一瞬で収まった。騎士団の男が怒気を露わにすると、腰から剣を抜き、僕達へとその切っ先を向けた。

「覚悟しろ! おじさんはエルクセム第三騎士団団長、石厳の騎士、ロイド=ツェペリ! おじさんの見回りを邪魔された怒りを! 今この場を持って、お前らを粛清する!」

 まじかよ。この男、よりにもよってエルクセム騎士団長だ。

 男、いや、ロイドが叫ぶと同時に、足下からいきなり先が鋭く尖った岩石が飛び出してきた。

 岩石は骨を易易と砕き、僕達が今いる空間の骨一面の世界に岩石という異質な物体が入り込み、白と灰色が入り乱れた混沌とした場所と化していた。

 騎士団団長という肩書きは伊達じゃない。ロイドという男は、骨で構築されている足場の癖に、岩石を放ってきやがった。

「すまん、僕も悪かった。提案なんだが、一度これまでの事は水に流して一時休戦にしようと思うんだが、どうだ?」

 僕達はお互いに手を離し、頷きあった。
 悲しいことに、僕達は同族みたいなものだろう。その証拠に、サイコキラーと背中を合わせたことで、謎な安心感が伝わってくる。

「そうだな。我もそう思う」

 ロイドに僕はランセット、サイコキラーは手の平を向けた。

「そう言えば名前を名乗っていなかった。一時的とは言え、背中を預ける仲間には名前を教えないとな。僕はウェルト、そっちは?」
「ふっ、遅れた自己紹介だな。我はエキューデ・オルガスタ。小僧、よーく覚えておけ。世紀に名を轟かす、偉大なる屍霊魔術師だ!」

 この惨状を引き起こした『偉大なる』屍霊魔術師が、僕の顔を見て笑いかけた。



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