ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-16 しばしの別れ



   2-16 しばしの別れ


「君が、勇者なのか?」

 パツキンが片手を庇いながら立ち上がり、ファリスさんに見守られる中、赤髪が振り返って俺を見据える。

 勇者、か。

 俺はどう答えるべきなのだろうか。俺は正確には勇者というよりか、勇者の仲間の一人だとは思うんだが.......。

 俺は自分を鑑定してステータスをチラ見した。ステータスはゴミ。スキルもゴミ。Lvはちょびっと上がって2。今更だけど、職業が生魚戦士とか遊び人と対して変わらない気がする。

「いや、俺は勇者と一緒に召喚されたから、勇者の仲間だ」

 とりあえずこう答えておいた。

 まあ、当の勇者本人達が俺を仲間と見てくれるかは分からんが。

 俺がそう答えたその時、パツキンの後ろから階段を降りてくるバタバタとした足音が聞こえてきた。

 あの付きすぎた贅肉の塊と、ぶくぶくと突き出した太鼓腹。

 奴らしかいない。見間違うことはない。オークキング達だ。

 オークキングは身体中汗だくになりながらも、フルアーマーに肩を担がれてなんとか歩いている。

 オークJrも目は既に回復したようで、顔を真っ赤にしながら贅肉を震わせて走ってきた。

 オークリーダーは息切れを起こして今にも死にそうな顔をしていてもう倒れる寸前だ。

 お前ら太りすぎだ。ダイエットしろよ。

「見つけたぞ! そこにいる暗殺者を殺せぇぇぇ!!!」

 オークキングが息切れを整えた後、俺に指をさして大声で怒鳴った。オークキングが怒鳴ったと同時に、取り巻きのフルアーマー達が剣を抜いて殺気を纏う。

 うおっと、一難去ってまた一難。もう俺のお腹はイベント尽くしでお腹がいっぱいだ。勘弁してくれ。

「陛下、彼が暗殺者とはどのような要件で?」

 赤髪がすかさず俺を庇うかのように前に出ると、オークキングに問いかける。

「そのままの意味だ! こいつは、余の息子を殺そうとしたのだぞ!」

 このオークキングは何を言ってるんだろう。

 あのさぁ.......。焼かれたサンマを顔面にぶつけられただけで人が死ぬ訳ないだろ

 オークキングが三重顎を震わせて俺を弾糾する。何が余の息子を殺そうとしただ。サンマで人を殺すなんて無理があるよ。

「黙れぇ! 不穏分子は殺しておくに限る。敵国の暗殺者と疑わしい者はそれ以上に、な! 皆の者、そいつを殺せぇぇぇ!」

 オークキングの怒鳴り声と同時に、数十人規模のフルアーマー達が一斉に襲いかかってきた。剣を、槍を、斧をそれぞれ抜いて嬌声を上げて俺に特攻してくる。

 これは不味い展開だ。いよいよ万事休すか? 俺はもう終わりかもしれない。

「護印式結界術」

 フルアーマー達が突進する中、赤髪が盾をなぞるように手を滑らせると、足元に魔法陣が展開された。薄い青色のバリアが俺の周りに形成され、フルアーマー達の攻撃は結界に拒まれる。剣を弾かれ、槍は突き返され、斧は反発で吹き飛ばされた。

 赤髪強ぇぇ! たった魔法陣ひとつ展開しただけでフルアーマーは手出しが出来なくなった。やべぇ、なんだこの溢れ出る強キャラ感は。

「ジョサイアッ何をしている!? 余に反逆をするつもりか!」

 オークキングが赤髪の行動を目の当たりにして地団駄を踏んだ。地団駄すると贅肉が揺れる揺れる。顔が再び真っ赤になり、おもちゃを取られた子どものように喚き散らした。

「.......。陛下、この者が敵国の暗殺者なら、私第五騎士団団長であるこのジョサイアにお任せください」

 オークキングの言葉を遮り、赤髪が言葉を紡いだ。

「もしも、この者が敵国の暗殺者ならば何かしらの情報を得ているはず。して、第五騎士団はエルクセム騎士団の中でも特に拷問が得意と自負しています」
「だが.......」

 オークキングを言葉を濁す。その口を噤んだオークキングへ好機とばかりに赤髪が畳み掛けた。

「第五騎士団はこれまでに多くの犯罪者を収容し、数々の情報をその口から割ってきました。陛下、エルクセム騎士団の中でもこの任は我々が一番の適正のはず。お任せ下さい」

 こうして俺は、苦虫を潰した顔のパツキンとオークキングにジャスチャーで煽りを入れながら赤髪に連れていかれた。



 ◆◇◆



 俺が連れていかれたのは拷問部屋でもない。ましてや牢屋でもない。オーク城から少し離れた所にある湖だった。

 湖の水はとても澄んでいて、周りには美しい緑が茂り、白い鳥が何羽も飛んでいる。とても幻想的な光景だ。

 少しばかり歩くと、赤髪が急に立ち止まって振り返り、俺に話しかけてきた。

「君はまだこの国の一部しか見てない。だが、それでも分かるだろう。この国は腐っている」

 この国は腐ってる。そんなこといきなり言わても、俺はまだこの世界に召喚されて半日すら経っていないからよく分からない。

 しかし、なろう民たる俺はもう察しが着いていた。

「君は何か気付いたか?」

 正直な話、とっくのとうに気付いていた。俺の予想が正しければ、この国は腐りきっている。オークキングの様子からしても腐敗臭がプンプン漂っていたからな。
 
「俺が召喚された時、オークキングから召喚された理由は魔王を倒す為だとか言っていた。だけど、オークキングは俺の事を『敵国の暗殺者』と喚いた。今更だけど、この国が魔王と敵対しているなら、『魔王軍の手先』と俺を見なすはずだ。それなにのに、『敵国の暗殺者』と断定されるのはおかしかった」

 なろう民の俺は簡単に答えを導き出す。なに、オークキングの言葉を聞いていれば小学生でも分かる答えだ。

「魔王なんて本当はいやしないんだろ? 本当の目的は.......他の人間国との戦争か?」
「御明答。そうだ、エルクセム王は海を越えた森人族の大陸に戦争を仕掛けようとしている。このことはまだ公表されていながな」

 腐ってんなあ。悪い方向のテンプレじゃないか。

「悪いことは言わない。この国からすぐ逃げるんだ。丁度、この湖を真っ直ぐ進んだ先にティエルドの村、そしてネメッサの街がある」
「待ってくれ、そしたら俺と一緒に召喚された三人は果てして大丈夫なのか? いいようにされて心のない戦闘マシーンにされそうな気がしてならないんだけど。あと、オークキングに情報を吐き出させるって」
「残りの三人は私がなんとかしよう。それに、拷問が得意だなんて真っ赤な嘘だしな。第五騎士団にしか拷問部屋と牢屋がないから拷問する数多いだけ。拷問なんてでっちあげの情報でも提出させればいい。それより自分の身を心配した方が身のためだ」
「三日あればいいですし~」

 赤髪がそう言いながら俺に小袋を手渡した。この小袋.......中に金が入っているのか。ずっしりとした重みがある。

「話を続けよう。ティエルドの村は歩いて半日。そこで食料や衣類の支度をするんだ。ネメッサの街はそこから徒歩で四日か五日はかかると思うが、道中は分かりやす道があり、人の通りが多いからよっぽどの事が起きない限り魔物には出くわさない筈だ」

 ティエルドの村とネメッサの街。俺は心の中にメモを取ると赤髪の言葉に耳を傾けた。

「ネメッサの街は今、魔物に襲われた後で復興中なのだが、これが帰って好都合だ。今のネメッサの街には人手が足りない。すぐに仕事にありつけるはずだ。なんなら冒険者登録もしてもいい。そして、最後に餞別だ」
「冷たっ!?」

 説明を終えた赤髪が、いきなり俺の顔に小瓶に入った冷水をぶっかけた。

 何するんだ。俺はぶんぶんと冷水を振り払うと、何かがおかしい事に気付いた。

「似合ってるよ~」

 ファリスさんがコンパクトサイズに鏡を取り出して俺に見せる。俺の髪と目の色が黒から藤色に変わっていた。

 なんだこれ!? 髪色はまだ分かる。だけど、目の色まで変えるなんて何の薬なんだ。

「魔共鳴の霊薬と言ってな、効果はご覧の通り、魔力の属性に応じて体色を変化させる。黒髪黒目の人間はこの世界では居るにいるが、とても珍しい。なに、面倒事に巻き込まれた時の保険みたいなものだ」
「あの.......さ。何で初対面の俺にこんなに優しくしてくれるんだよ。俺は助かるが、メリットが何も無いだろ」

 赤髪は口元を少し苦しげに歪めると、俺に頭を下げてきた。

「.......すまなかった」
「何で謝る必要があるんだよ。こっちは感謝の気持ちしかないんだぜ」
「違うのだ。私は、第五騎士団団長である前に、この国の未来を担う人間だ。その私が、王の暴走を止めらなかった」

 こいつ.......。

 オークキングが俺を召喚したのは赤髪の責任でもないし、俺が殺されそうになったものオークキングのせいだ。それなにのこいつは.......。

  
「また不必要な犠牲を出してしまった.......」

 赤髪はポツリと呟いた。顔に深い後悔の念が浮かんでいる。何故か俺は赤髪の顔を見ていると、自分の事でもないのに胸が苦しくなった。

「.......俺はもう行く。その、ありがとな」

 今の俺に出来ることは何も無い。居ても邪魔なだけだろう。

 俺は、自分の無力さを呪った。もしも、神様が他の三人みたいに俺にチートスキルのひとつかふたつか与えてくれたなら.......。

 いや、これが俺の悪い癖だ。結局は神頼みなんて笑えてくる。努力しないで得られる強さなんて偽りの強さなのだろう。

 俺は静かに赤髪とファリスさんに見送られながら歩き出した。


「ろりこんくえすと!」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く