ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-15 白金と閃光と

 


 2-15 白金と閃光と


 白金の鎧が俺の視界を占領し、石粉が舞う煙の中から、赤髪の男が静かに盾を傾けた。

 助かった、のか.......? 

 胸に手を当てると心臓が確かに動いている。

 そうだ、俺はまだ生きている。ゆっくりと視線を上に逸らすと、赤髪のダンディなイケメンフェイスが俺に笑いかけた。

 どうやら目の前の赤髪は、パツキンの一撃から俺を守ってくれたようだ。

 なんだ、蓋を開けてみれば負けイベントではなく、制限時間を耐えれば終わるイベントだった。

 それにしても危なかった。もしも、赤髪が俺を助けるのが後数秒遅れていたら俺は今頃ミンチ肉だ。全く、本当にヒヤヒヤさせやがって。

 俺は安堵しながら薄く微笑えんで立ち上がった。

「貴様は.......!」

 くっくっくっ。パツキンが驚いた表情で俺達を見ている。そうだろうそうだろう? 予期せぬ助っ人登場だ。そりゃた驚くわな。無理もねぇ。それにしてもいいねぇ、主人公が絶体絶命のピンチに味方が駆け付けるなんて、男の子が燃える展開だ。

 俺はこそこそと赤髪の後ろに隠れながらパツキンを睨み付けた。

 さっきはよくもやってくれたな? ああん?

 俺は唇を尖らせながらパツキンにガンを飛ばす。おいパツキン、第二ラウンドといこうじゃないか。お前のいけ好かない顔をボコボコにしてやるぜ。もう一生女の子にモテないぐらいに、な。

「やれやれ。いつも通り下らない王の用事かと思い来てみれば、まさか戦闘狂が王宮で暴れているとは予想しなかったよ。なあ、クラウディオ?」

 赤髪が肩を竦めながらパツキンに話しかけた。話しかけられたパツキンは心底嫌そうな顔をして、赤髪を矢で射抜くような剣幕を漂わせながら吐き捨てた。

「ジョサイア、か。貴様は本当に邪魔な男だ。そこをどけ、後ろにいるゴミを殺せないではないか」

 パツキンが大剣を一振して肩に担ぎ、赤髪の顔を見て忌々しい表情で言った。

 誰がゴミだ。俺はパツキンに中指を立てた。しかし、この世界は俺が住んでいた世界と文化が違うので、パツキンには俺のジャスチャーが理解出来なかった。

「クラウディオ、まだ傭兵時代の考え方が抜けていないようだな。たかがゴミを殺す為だけに神聖なる王宮を破壊されては元も子もないと思うが?」

 赤髪は腰から滑らかに剣を抜くと、煌めく刃をパツキンに向けて不敵に笑った。

 あらやだ、赤髪の様は映画のワンシーンみたいで凄くかっこいい。もしも俺のクラスの(腐)女子達が見れば、キャーキャーと黄色い声援を赤髪に送るだろう。そして脳内を腐りきった妄想で発酵させる筈だろう。

「黙れジョサイア。常々考えていたが……君は私にとって、とても目障りな男だ。今ここで、ゴミと一緒に殺してやろう」

 舐めやがって。俺は赤髪を盾にしながら、パツキンに向かってグーサインを反転させて親指を下に向けた。

 おい、パツキン。ゴミかどうかは俺達と戦ってからその目で確かめてみな。俺は赤髪を鑑定。Lvは39。職業はパツキンと同じ聖騎士。Lv差があってちときついな。二人でいけるか?

「これはこれは。とても誉れあるエルクセム騎士団、その中でも一番お偉い第一騎士団団長様の言葉ではないな」
「その肩書きは私には元々似合わないな。消え失せろ、フォトンエッジ」

 パツキンが何かしらのスキルを発動させた。大剣を振り抜いたと同時に大剣が黄金色に包まれて、オーク城全体に眩い光が迸る。

 なんだかやばそうな雰囲気だ。さっきの一撃もミンチ肉寸前だったが、今度のパツキンの一撃は塵すら残らないような気がする。

 俺は赤髪を不安気な目でチラチラと見た。
 あれ大丈夫か? 俺達耐えられんの?

「おいおい、王宮を瓦礫の山にするつもりか? これだから第一騎士団団長、いや、戦闘狂の扱いは本当に困るんだ」

 赤髪は不敵な笑みを崩さない。どうやら大丈夫みたいだ。俺は心の中で勝手に納得し、赤髪と同じように顔に不敵な笑みをとりあえず浮かべた。

「二人纏めて、土に還れ」
「二人? 三人・・の間違いじゃないのか?」

 赤髪が口元を上に釣り上げた瞬間、パツキンの握る手に閃光が瞬いた。いや、この閃光はパツキンから発させられたものでは無い。
 俺達と、パツキン以外の、第三者からの発せられたものだった。

 大剣の柄に火花が散り、パツキンの握る大剣が宙へ飛ばされかと思うと、落雷が落ちたかのような電撃音が鼓膜を震わせ、パツキンはその場から後方へ弾き飛ばされた。

「団長~。なにカッコつけてんですか~? それに、私の扱いがいつにも増して雑ですよ~。もっと労わってもいいと思いますよ~」

 白磁の大理石の床を焦がし、パツキンを光速の速度で弾き飛ばしたのは、たわわなメロンをたゆんたゆんと揺らす金髪の美人なお姉さんだった。

 やべぇ、俺のタイプだ。しかもドストライク。めちゃくちゃ可愛い。アイドルや女優とかの顔面偏差値ではなく、まるで二次元の世界から飛び出してき来たかのような別嬪さんだ。それにしても大きい。カップはFか? いや、もしかしたらGかもしれない。

 俺の脳裏に邪な考えが掠め、男子の理想にときめいた息子がビクビクと反応した。

 俺は荒立つ息子を股で挟んで押さえながら、本能を理性で叩き伏せて金髪美女に心中で謝った。 

 どうか許してくれ。たわわなG級メロンは、思春期の男子には辛くも美しい輝きなんだ。

「ファリス.......ッ!」

 パツキンが片手を抑え、苛立ちながら金髪美女を見据える。なるほど、名前はファリスさんか。一生覚えておこう。俺はファリスさんを鑑定。Lvは42。職業も同じく聖騎士。

 残念だったなパツキン。ファリスさんが加勢してこれで三対一。つまり、形勢逆転だ。

「流石だな、ファリス。優秀な部下を持つと上に立つものが楽になる。それで、この騒ぎの状況は掴めたか?」

 赤髪がしてやったりという顔で、ファリスさんに笑いかける。

「バッチリですよ団長~。なんでもエルセクセム王が勇者召喚が成功しちゃったようですね~」
「勇者召喚か。全く、穏やかじゃないな」

 赤髪は勇者召喚という言葉を聞いて呟くと、剣を腰に納め、俺に振り向いて言った。

「君が、勇者なのか?」

 

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