ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-9 危険人物




    2-9    危険人物


「ギルマスぅぅぅ!!!    なぁ、嘘だろ?    まさか街を救った英雄の僕を牢屋に閉じ込めるなんて嘘だよな、嘘だよね?    こんなのありえないよ!」

 僕はギルドカードの不正疑惑と、貪食の食人鬼を倒したかどうか、信憑性がないとの事で牢にぶち込まれる事になった。

 酷い、酷すぎる。なんて理不尽な世の中でなんだ。

「ごめんねウェルト君。静かにしてね~」
「絶許!」

 僕は手錠を掛けられたままファリスに牢へと連れられていた。

 牢は薄汚く埃を被った部屋だった。牢は殺風景なジョサイアの部屋と、いい勝負をしている、石畳しかない寂しい部屋だ。

「ここがウェルト君の部屋だよ~」
「マジで?    ベッドとか机もないの?   流石に酷くない?」
「つべこべ言わずにさっさっと入ってね~」

 僕はファリスに尻を叩かれ、壁に頭をぶつけて牢の中にぶち込まれた。

「明日の朝には朝飯を持ってきてあげるから、静かにしておくんだよ~」
「えええっ!?    ちょっとぉ!?」
 
 ファリスは僕に向けてニッコリと笑い、グーサインを出すと、牢の扉を鍵で閉めて立ち去っていった。

「ウソデショォォォ!!!」

    僕は石畳の上で陸に上げられた魚のようにピチピチともがきながら、慟哭を牢の中に反響させた。

「おい、そこの新入りの小僧」

    僕が悲嘆にくれる中、唐突に隣の壁から声が聞こえてきた。

    僕以外の囚人なんていたのかよ。.......あまり関わりたくないなぁ。
 
「なんだよ?」

    僕は壁に耳を当てて返事を返した。
 
「その格好、もしや盗賊ではないか。できれば『解錠』の技能を使って我をここから出してくれんか?」
「僕に犯罪者の脱出を助けろってか?    嫌だし、手錠が掛けられていて『解錠』は使えないし、壁抜けなんてできな.......あっ」

    僕は言いながら自身が獲得していたスキルを思い出し、隣の壁に手を当ててとあるスキルを発動した。

「穴掘り」

    盗賊術の技能のひとつである穴掘り。説明なんていらないだろう。その名前の通り、穴を掘る事ができる技能だ。

    穴掘りの効果によって、ズボズボと僕の指が壁を貫通し、瞬く間に隣の牢と僕の牢を繋げた。

「小僧、なかなかやるではないか」

   僕は開けた穴を潜り中を見ると、隣の牢にいたのは青白い髪と茶色い肌をした男だった。男は深い緑色のローブに身を包みながら、僕の姿を見て口を歪めた。
  
「ふっ、小僧。手錠で『解錠』が使えないのだな?    それならこの我が手錠を壊してやろう」
「..............」

    男は僕に近づき、手錠を両手で掴んで思いっきり引っ張った。
 
「ふん!    ふん!    ふんぬぬぬぬー!」
「力弱っ!    何が手錠如き壊してやろうだよ!    使えねーじゃねえか!」
「我を愚弄するとは!   許せぬぞ小僧!」
「ええい!    めんどくさいな!    とりあえずお前に構ってる暇はない!   もう僕は自力で脱出するから静かにしてろ!」
「なんだと、そんなことができるはずなかろう」

    勝手に言ってろ。僕には作戦があるんだ。
 
「これじゃない、これでもない.......、てかジョサイアに手紙渡すの忘れた。まあいいや、アシュレイの話通り性格悪かったし。よし、これだ」

    僕は手錠で両手を繋がれたまま、後ろのズボンポケットを漁っては床に散らかしていく。中からは薄い財布、ケバブを食べた時の包み紙、エマからの手紙、そしてリフィアのランセットが出てきた。

    僕はランセットを両手で掴んで拾い上げると空中に放り投げ、手錠の中に差し込んだ。
 
「ふんぬッ!」

 気合の掛け声と共に、身体を捻ってランセットを手錠に差し込んだまま床に叩き付けた。

    金属が折れる音と共に手錠が砕け散り、僕は歯をギラつかせた。
    ちなみにランセットには傷一つ付いていない。流石ミスリル銀だ。
 
「どうだ?」
「頭にたんこぶできてるぞ」
「だまらっしゃい!    とにかく、これで僕は自由の身だ。よし、僕は今から脱出する。お前は何をしたか知らないがここで罪を償え」
  
「ええっ!?    我は助けてくれないの!?」
「助けるか!    いかにも犯罪者みたいな顔してるじゃねーか!」 
「我は犯罪者ではない!    真っ当な人間だ!」
「じゃあ何でここに捕まってるんだよ?」
「いやな、道中で若くて綺麗な女性を見かけたんだ」
「それでナンパが失敗して騎士兵に通報されたのか」
「いや、綺麗な身体の中身が気になって、臓器をバラしてコレクションにしようとしたら捕まった」
「サイコキラーじゃねぇか!」

    男は犯罪者の範疇超えたサイコキラーだった。

    あれだ、明らかに関わってはいけないタイプの人間だ。
 
「何を!    新鮮な人間の臓器をコレクションすることの何が悪い!?」
「開き直んな!   お前みたいな危険人物外に出せんわ!」
「くっ、ならば」

    男は歯を噛み締め、僕にある提案を持ちかけた。
 
「我をここから出してくれれば、ひとつだけお前の願いを叶えてやろう」 
「へ、へぇ.......」

 何をいきなり言い出しているんだ、こいつは。

 僕は訝しげな顔で男を見つめた。
 
「我は屍術師。どどのつまり、ネクロマンサーだ。ネクロマンサーは凄いぞぉ?    色んな事ができるのだ」 
「例えば?」  
「そうだな。小僧にも好きな女の子のひとりやふたりぐらいいるだろう?」
「うんうん」
「そいつを殺してゾンビにし、小僧専用の性奴隷にしてやろう」
「おらぁ!」

    僕は腐った脳みそが入ったサイコキラーの頭をガシッと掴むと、地面に勢いよく叩きつけた!
 
「痛い!    何をする!」
「やっぱとんでもないやつだな!    お前は一生ここで過ごしてろ!」  

    僕は上着から紐を取り出して、目の前にいるサイコキラーをグルグルと縛り付けて簀巻きにした。

    今回は簡単に解けないようにちょうちょ結びではなく固結びだ。

     これで身動き出来まい
 
「何をする小僧!    この縄を解け!   よくも我を裏切ってくれたな!」
「裏切るも何も、僕は最初からお前の敵だよ!」
「お、おのれぇ!    一体、我の申し出の何が不服だったのだ!    確かにゾンビにしたら『あ゛ー』とか『う゛ー』だけしか言わなくなるが!」
「単に知性が無くなってるだけだろ!」

 男は苦肉の策なのか、次なる提案を僕に告げた。
 
「くっ、ならば小僧。貴様を我と同じ不死の肉体にしてやろう」
「嫌な予感しねぇ.......」
「つまりゾンビにしてやろう」 
「おらぁ!」
「痛い!」

 何がネクロマンサーだ。ゾンビ化しかできない狂人じゃないか。
 
「お前は埋めていく。このジメジメとした地中の中に葬ってやる」
「くっ、くっころぉ!」

     こんな人間、放っておけない。
    
     僕は穴掘りを発動しながら石畳の床をガリガリと掘り進み、即席で作った穴にサイコキラーを蹴飛ばして中に落とした。

「ま、待てっ、一旦落ち着け小僧!     我も少し調子に乗っていた!    ちょ、やめい!    我を埋めようとするな!    待って!    待ってってば!」
「悪いな、お前を埋めることはもう決定事項だ。セミの幼虫のように土の中で一生を過ごせ」
「酷い!    いくらなんでも酷くないか!?    それより、我の上に土を被せるのをやめろぉ!    我の話を聞くのだ小僧!」
 「遺言か?   それならいいぞ」
 「人は常に金銭を求める。小僧、小僧は金銭に困っているのだろう?    どうだ、我は実は金目の物を持っている。それで取引しよう」
「そのブツはなんだよ」

    僕は試しに聞いてみて、

「妙齢の女性の臓器」

    土を被せる事を続行した。

「何が駄目なのだ!?   我の自慢のコレクションだぞ!?」
「んなもん欲しがる訳ないだろ!    冷たい土の中で頭を冷やせ、このサイコキラー野郎!」
「女性の臓器に興味がないだと!?    この小僧、もしやアブノーマルなのか!」
「お前がアブノーマルだ!」
「女性の臓器が駄目なら、それではこの鎖しかないではないか!」
「逆ギレかよ!    ってなんだそれ?」

    手を止めると、サイコキラーがもぞもぞと身体を動かして胸を露出した。サイコキラーの胸には、鈍く輝く銀色の鎖がぐるぐると巻かれていた。

「これか?    この鎖は我の魔力すら封印する優れものだぞ。なんでもこの鎖に縛られているだけで魔法が使えなくなる魔道具の類だ」
「魔法封じの効果か。でも、なんでお前はそれを胴体に巻いているんだよ。魔法が使えなくなるデメリットしかないじゃないか」
「巻きたくて巻いた訳では無い!    何年か前に頭のおかしい奴に『お前は危険すぎる』とか言われて巻かれたのだ!」
「その頭おかしい奴は多分正常だよ」

 巻かれて当然だ。

「何を言う!    我に失礼だぞ小僧!    とにかく、この鎖で手を打たないか小僧?」
「そうか、解錠」

     僕は鎖を解錠で回収し、ポケットの中に納めると、再び土をかけ始めた。

「あれっ?    なんでまた土を被せているの?    ねぇなんで?    なんでー?」
「だって死者はお金を使えないだろ。エコだよエコ。この鎖は責任を持って僕のダガー代に当てるから安心してくれ。じゃあな」 「くっころぉ!」
 
 サイコキラーの断末魔を聞きながら、僕は少し隆起した石畳をポンポンと叩いて地を固めると、立ち上がって息を吐いた。

「ふー、いい事した後は気持ちがいいな。さて、手錠も外したし脱出するか」

    僕は散らばった手紙と薄いサイフを拾うと『解錠』を使って牢の扉を開け、脱走を始めようとした。

「.......ん?」

    その時、何か足に違和感を感じた。

    僕が足でもう二度と出られないように、しっかりと地を固めていた石畳がぐらついて土が巻き上がった。

「生意気な小僧め、よくも我を図ってくれたな!    その罪は重い!    死をもって償えぇっ!」

    そこには埋めたはずのサイコキラーと、

    巨大な白い腕が一緒に這い出してきた。





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