ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-5 それはよくあるテンプレで


 
 2-5    それはよくあるテンプレで
 
 
 
「いい質感の床だ」
 
 俺が目が覚めすと、白を基調とした綺麗な部屋の床の上に倒れていてた。

 そして目の前には禿げた豚が豪華な椅子にふんぞり返って座っていた。

 いや、正確に言うと黄金の装飾をふんだんに飾り付けた衣を羽織ったいかにも偉そうな禿げた豚が座っていた。
 
 ここはどこだろうか。
 
 俺は起き上がって部屋を見回した。
 天井には金色の線で作られた魔法陣の様な紋様の真ん中に、とても大きいシャンデリアが設置されている。
 
 部屋の壁には美しい自然を描いた背景画と、目の前にいる禿げた豚を一万倍ぐらい美化した肖像画が飾られていて、赤い絨毯が八角形に敷かれている。
 
 部屋に居るのは俺を含めて七人だった。

 俺と、俺と同じように床に倒れ伏している同い年のぐらいの男一人と女二人に禿げた豚と禿げた豚の子供と脂ぎったバーコードの中肉中背の豚だ。
 
「余はエルクセム=ベクマール」
 
 唐突に禿げた豚が口を開いた。
 どうやら目の前にいるこの豚は、知能が大層高いようで人間様の言葉が喋れるらしい。
 
 まぁ、冗談はこのぐらいにしておこう。
 禿げた豚は俺達と同じ人間だ。

 贅肉が付きすぎて豚と見分けがつかないが、ちゃんとした人間だ。

 いや、もしかしたら違うかもしれない。

 だってこいつに指をさされて『こいつはオークだ』と言われたら俺は信じてしまうかもしれない。とりあえず目の前いる人間は一言で表すなら禿げた豚だった。
 
「お、おい、どこだよここ」
「うぅ.......頭痛い.......」
「どこよここ.......?」
 
 俺の後ろで声がした。
 振り向くと、俺と同い年ぐらいの三人が目を覚ましたようだった。

 俺を含めてこの四人は全員高校生ぐらいなのだろうか。

 男女比率二対二。バランスがいい。
 とりあえず、男は制服を着ているので俺と同じ高校生と見て間違いないだろう。
 
「控えよ!」
 
 困惑して状況が分からない俺達四人に、威厳のある、だがねっとりとした声が響き渡った。
 
「この御方はエルクセム王都を治めるエルクセム=ベクマール様である!    頭が高ーい!」
 
 どうやらこの声の主は、脂ぎったバーコード豚からだ。

 今更だけど禿げた豚やら脂ぎったバーコード豚とか呼びにくいな。

 よし、今からこの三人には、それぞれ順にオークキング、オークJr、オークリーダーと命名しよう。次からはこの名前で呼ぶとする。
 
 俺達に偉そうな態度をとったオークリーダーに向けて、オークキング再び口を開いた。
 
「よい、彼らは光の勇者達である。王の御前であるが楽にしてよい」
 
 光の勇者。
 
 俺はその単語を聞いて今の状況を完全に理解した。
 
 どうやら俺は面倒事に巻き込まれてしまったらしい。
 
 これはよくある転移系の異世界モノだ。

 部屋の内装を見ただけでの直感だが、恐らく科学が未発達な中世風の世界だろう。
 
 読んだ人なら分かる。
 小説家になろうとかカクヨムとかアルファポリスとか(ついでにノベルバ)に投稿されている中で題材が多いもの。
 
 それが俗に言う異世界転移モノだ。
 
 あれだ、リ〇ロとかこの〇ば!    とかの有名な作品を視聴してくれたら分かりやすい。
 
 とにかく、俺は異世界に召喚されたらしい。
 
 まったく、何で俺が異世界転移なんてしてしまったんだよ。
 
 俺は頭を抱えて、異世界に召喚される前の最後の記憶を掘り起こしていった。

 
 
 ◆◇◆
 
 
 
 俺が異世界に転移される前の最後の記憶は、サンマを自宅の庭で焼いていた記憶だった。

 サンマだ。漢字表記で秋刀魚。あの秋が旬の美味しい庶民の味方である魚。
 
 俺はもしも魚の中で何が一番好きな魚は何か聞かれたら、即答でサンマと答えるだろう。

 どれ程好きなのかと問われれば、九月の初め頃に脂の乗った旬のサンマを食さなければ、秋というものが始まっていないと断言してしまうほどだ。
 
 そんなサンマ好きの俺は魚市場で買ったとれたて新鮮なサンマを庭で炭火焼きしていた。

 サンマ好きの俺は決して妥協しない。

 サンマは必ずスーパーではなく近場の魚市場で朝イチに買うし、焼く時も金網と炭を用いて炭火焼きにして焼いて食べる。

 適当なコンロで焼いてもサンマはそれはそれで美味しいが、やはりサンマは炭火焼きに限るだろう。
 
 そして、事件はその時に起こった。
 
 俺はうちわでサンマをパタパタと焼いてる途中、サンマ独特の食欲を唆る香りが鼻を掠め、もう食べ頃だろうと思い立ち、家の冷蔵庫からポン酢と大根おろしを取りに行った。
 
 俺が両手にポン酢と大根おろしを持って庭に戻った時、金網の上で焼いていたサンマが無くなっていた。 
 
 その代わりに、庭のレンガ塀に一匹の野良猫がいた。

 ぶち模様のどら猫が、俺のサンマを口に咥えていたのだ。
 
「おんどれえああああああああ!!!    なに人のもん勝手に盗ってんじゃあああボケェェェ!!!」
 
 俺は怒声を散らしながらポン酢と大根おろしを投げ捨てて、泥棒猫を追いかけた。
 
 今にして思うと、猫如きに怒鳴り声をあげて鬼の形相で追いかける俺はとても滑稽だと思う。

 けれど、俺のサンマを盗んだ泥棒猫は許せなかった。サンマは俺の大好物であり、俺のサンマを奪う者は誰であろうと許さない。
 
 慈悲はない。殺すべし。
 
 俺はレンガ塀を乗り越えて全速力で駆け走った。
 
 俺が走る速さはとても早かった。

 もしかしたら、県大会に出場できる短距離専門の陸上選手並みの速さで走っていたと思う。 

 しかし、猫が走る速さも早かった。

 俺の怒鳴り声に驚き、泥棒猫は疾風が駆け抜ける如く、四肢を巧みに使って逃げていった。
 
 正直、今思い出してもあの時の俺はとてつもなく馬鹿だったと思う。

 どれぐらい馬鹿だったのかと言うと、俺のクラスの友達が『饅頭まんじゅう』という漢字を『うなぎあたま』と読んでいたぐらいだ。
 
 そんな話は置いておいて、馬鹿な俺は目の前の事柄に夢中になりすぎてしまっていたのだ。
 
 俺は家の敷地内から道路に躍り出して、泥棒猫を血眼になって追いかけた。

 そのまま信号がピコピコ喧しく鳴っていた横断歩道に俺が飛び出した時、高速で走るトラックが目の前に姿を現した。
 
 目の前に迫ってきた巨大な金属物体。
 
 だが、結果的に言うと俺はトラックに轢かれなかった。
 
 俺は中学から高校生に至るまでバスケットボール部に入っていた。

 バスケ部に入った動機はスラム〇ンクと黒子のバ〇ケを読んで女子にモテないという不純極まりないものだっが。

 結局はバスケ部に入っても全く女子にモテなかったが、この時だけは五年間鍛えていた技術が輝き、持ち前のドリブル歩行で踵に全身の力を込めて踏み抜き、トラックの衝突を見事回避してみせた。 
 
 一難去ってまた一難という諺がある。 
 
 俺が回避したトラックはただのトラックではなかった。 

 魚市場に集まった魚を積んでいたトラックだったのだ。
 
 トラックは急ブレーキをかけた事により物理法則による反動で荷台に積まれていた魚が宙に放り投げられた。
 
 俺は転がって空を見上げた時、太陽に照らされた黒い影を視界に捉えた。
 
 流線型の美しいフォルム。
 荒波で鍛えられた引き締まった身。
 そして堂々とその魚を象徴とする一本の槍のように鋭い角。
 
 マカジキだ。
 
 冷凍されたマカジキが、自由落下に従って俺の元に落ちてきた。

 俺は一瞬だけ、マカジキに見蕩れてしまい、
 
 俺はマカジキによって心臓を貫かれて死んだ。
 

 
 ◆◇◆
 

 
 回想終わり。
 
 情けねぇ。ほんっとに情けねぇ。
 思い出すだけで恥ずかしい。
 
 俺の人生の終わりは呆気なかった。
 女子高生を助けるためにトラクターで耕されそうなったショックで失神死をした、某異世界小説の主人公とタメを張れる素晴らしい死に方だ。
 
 悔いはある。無念なり。
 
「君達を召喚したのは君達にこの世界を救ってもらう為だ」
 
 オークキングが俺の恥ずかしい回想が終わったと同時に言った。
 
 テンプレの台詞だ。もうテンプレど真ん中だ。

 こうなってしまえば次からの展開は想像しやすい。

 俺達が光の勇者として召喚されたなら、チートスキルを貰ってどうせ魔王とか邪神とかと戦えなんて言われるのだろう。
 
「君達には世界を脅かす魔王を倒してもらう」
 
 予想が当たり、俺達はオークキングからありがたいお約束の言葉を頂いた。
 
 ほらな。

 魔王だってさ。俺達はこれから魔王を倒してほしいんだと。

 テンプレだよ。テンプレだよこれ。
 
「なんだよそれ!    意味が分からねぇよ!    俺を元の世界に返せ」
 
 俺の後ろで男が叫ぶ。
 
 どうやらこの男はテンプレの展開に納得がいかないらしい。
 
 いや、違うか。ただ単に知識が足りないだけかもしれない。
 
 よくいるよね、召喚されたらすぐに『元の世界に返せー』とか言い出す奴。めんどくさいよ。黙っとけ。
 
 とはいえ、これもある意味テンプレだ。
 
 と、まあ、このまま話してもいいが、どうせみんな知っての通りの事しか話が進まないので割愛とする。
 
 纏めると俺達は世界を救うべく光の勇者としてこの世界に召喚された。

 目的は魔王を倒すこと。

 チートスキルは異世界転移者特典で召喚された時点で貰っている。さらに異世界言語も召喚された際に魔法の不思議パワーで習得し、問題ないらしい。

 最後に俺達のクーリーングオフは不可能なんだと。

 つまり、元の世界には戻れない。

 が、魔王を倒せば神様が現れてなんでもどんな願いでも一つだけ叶えてくれるらしい。 
 
 神様が願いを叶えてくれるとか胡散臭いが、大体テンプレってこんなもんだろ。
 
「それでは君達のステータスを確認させて貰うよ」
 
 オークJrがオークキングの長い説明が終わった頃合を見計らって、水晶玉のようなものを持ってきた。

 水晶玉の大きさは丁度バスケットボールぐらいだ。バスケ部の俺の直感がそう訴えている。
 
「さあ、このステータス表示機に手を翳すんだ。まずはそこの男からだ」
 
 オークJrが指をさしたのは俺.......ではなくもう一人の男だ。
 
 男は『まじかー』と言いながら嫌そうな表情に露わにして水晶玉に手を翳した。
 
 -ステータスを表示します-
 
 名前    カワナベ川辺    キョウタ響太
 種族    普人族
 職業    勇者
 Lv1
 HP265/265
 MP169/169
 筋力112
 耐久106
 魔力107
 精神110
 俊敏98
 
 所持スキル
 
 勇者の矜恃Lv3
 『獲得経験値上昇』
 『ブレイブソウル』
 『ライフバースト』
 
 剣術Lv5
 『十字斬り』『双刃波』『強撃斬』
 『スイッチハック』
 『リバーススラッシュ』
 
 全属性魔法Lv7
 『ファイアーボール』
 『アクアバレット』
 『サンダーフォール』
 『エアカッター』
 『ロックショット』
 『ライトニング』
 『アイスジャベリン』
 
 
 このステータスは強いのか?    俺にはよくわからん。

 しかし、オークキング共がブヒブヒと鼻を鳴らして喜んでいるから優秀なステータスなのだろう。
 
 そして、残りの女子二人ももうキョウタと同じように水晶玉に手を翳していく。
 
 -ステータスを表示します-
 
 名前    ウエダ上田    サヤカ彩香
 種族    普人族
 職業    聖女
 Lv1
 HP312/312
 MP336/336
 筋力61
 耐久128
 魔力165
 精神131
 俊敏74
 
 所持スキル
 
 聖者の心得Lv5
 『ハイヒール』『レイズ』
 『ホーリーレイ』『アンチポイズン』
 『回復魔法治癒力上昇』
 
 頑強Lv5
 『物理耐性』『火耐性』『水耐性』
 『氷体制』『雷耐性』
 
 詠唱補助Lv2
 『高速詠唱』『二重詠唱』
 
 
 
 -ステータスを表示します-
 
 名前    ヒイラギ    リオ莉緒
 種族    普人族
 職業    賢者
 Lv1
 HP198/198
 MP412/412
 筋力73
 耐久108
 魔力269
 精神242
 俊敏113
 
 所持スキル
 
 賢者の真髄Lv3
 『消費MP半減』『魔法攻撃威力上昇』
 『MP上昇』
 
 全属性魔法Lv9
 『ファイアーボール』
 『アクアバレット』
 『フレイムサイクロン』
 『エアカッター』
 『ロックランス』
 『ダークミスト』
 『アイスジャベリン』
 『シャインアロー』
 
 
 詠唱補助Lv4
 『高速詠唱』『二重詠唱』
 『詠唱強化』『詠唱簡易化』
 
 
 オークキング共が表示されたステータスを見て手を叩いて喜んでいる。
 三人のステータス表示が終わり、最後にオークJrが俺に水晶玉を差し向けてきた。
 
 なるほど、勇者、聖女、賢者の三人か。このままだと、俺は剣士とかになるのだろうか。

    俺が思考に耽っている時、オークJrが早くしろと俺へと水晶玉を押し付けてくる。

    はいはい、今やりますよ。

    やりますから。
 
 俺はブルンブルンと震える贅肉に触らぬように慎重に気を付けながら水晶玉に手を翳した。
 
 -ステータスを表示します-
 
 名前    サカイ    ミナト
 種族    普人族
 職業    生魚戦士
 Lv1
 HP13/13
 MP7/7
 筋力19
 耐久17
 魔力11
 精神10
 俊敏12
 
 所持スキル
 
 生魚術
    『サンマソード』
 『ヒラメプレート』
 『カジキランス』

 水魔法Lv2
 『アクアバレット』
 『ウォーターカッター』

 氷魔法Lv1
 『アイスダーツ』

    鑑定Lv-
 
 
 
 
 
「「「「「「.......」」」」」」
 
 俺のステータスが表示され、喜んでいたオークキング共と勇者達が静かになった。
    オークJrが口をあんぐり開けてポカンとしている。
 
 俺は周りの人達を見回して一言呟いた。
 
「なにこれ」

 
 

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