ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-3 七大罪と失大罪


 
 2-3    七大罪と失大罪
 
 
「変態、よく来たわね。こっちにいらっしゃい」
 
 冒険者ギルドで旅の食料を購入した後、僕はエマの家にお邪魔していた。

 ちなみに、三日分の食料は50ゴールドで売られていた。

 お金が無い可哀想な僕はギルマスをもう一度揺すって80%引きにして食料を購入した。
つまり10ゴールドという破格の値段で。
 
「お邪魔するぞ」
「ええどうぞ。本当は嫌だけど」
 
 僕はパタパタと足音を立てながら家の居間に転がり込んだ。
 
 僕の目の前では、エマがポンポンと膝を叩いて僕を催促している。
 
 まさかこれは.......。
 
「膝を叩いてどうしだんだ?    僕を膝枕してくれるのか?」
 
 エマはツンデレと最近発覚した。

 アシュレイが居ない内に僕を甘やかそうという魂胆なのだろう。

 なんて策士だ。エマ、恐るべし。
 
「馬鹿なの?    もしかして変態は馬鹿だったの?    変態から変態馬鹿に格上げして欲しいの?    馬鹿な事言ってないでいいから私の目の前に正座しなさい」
 
 ツンデレじゃなかった。こいつはただのツンツンだった。

 いや、でもこのちびっ子に必ずデレがきっとあるはず。ツンデレめ、全く素直じゃないな。だが僕は嫌いじゃない。 
 
 エマがツンデレだと判明してからというものの、このちびっ子の態度を見ていると僕の胸から何か微笑ましい物が込み上げてくる。

 僕は心の中でにやけながらエマの目の前に正座をした。
 
「アシュレイから聞いたぞ。僕に用があるんだってな。それで、何の用があるんだ?」 

 僕はもぞもぞと両足を動かしながらエマに尋ねてみる。
 
 正座って足が痺れるからそんなに好きじゃないんだよね。胡座座りの方が僕に合っていると思う。
 
「早速本題から入る姿勢は嫌いじゃないわよ。そうね、変態には三つの用事があるわ」
 
 エマは三本指を僕に向けて指し示し、こくんと首を振って頷いた。
 
「まずはこれ、ヒュージスライムキングのブツについてよ」
 
 すげぇ今更感があるんですが。
 
「貪食の食人鬼に襲撃される前にはもう目処がついていたわ。ヒュージスライムキングの核には錬金術師の紋様がある。そこで、私がその紋様から魔力を辿る指輪を作ったの」
「ほう」
 
 エマは懐から青紫色に輝く宝石が付いた指輪を取り出して僕に見せる。
 
「ほら、変態。この指輪を作るのには少々苦労したのよ。ありがたく受け取りなさい」
 
 エマは僕に指輪を差し出した。
 僕は口元を緩めてエマにスっと薬指を差し出す。
 
「.......」
「.......」
 
 しばしの静寂がおとずれた。
 
 エマは僕の薬指と自分が握っている指輪は交互に見て、ひとしきり嫌そうな顔をした後、腕を大きく振りかぶって指輪を僕の顔に向かって投げつけた。
 
 くっ、まだか。エマはまだツンツン状態だ。

 何が条件だ?    どうすればこのちびっ子のデレ状態が見れるんだ?
 
 僕の顔にぶつかって空中でリバウンドした指輪を僕は素早く掴み取り、右手の薬指に嵌める。
 
 いいぜ、エマはまだちびっ子だからプロポーズに掛けれる言葉が見つからなかったんだよな。なに、そんな悲しそうな顔をしないでくれ。仕方の無いことだ。僕は分かっているんだから。
 
「.......きもっ」
 
 空耳だ。これは空耳だ。恐らく聞き間違いだろう。
 
「さて変態、この指輪を嵌めていれば魔力の持ち主が近くにいた時に反応するわ。その上、持ち主のステータスも開示される筈よ」
 
 エマは気を取り直して話を続けた。
 
「そして、変態に教えておかなければならないことがあるわ」 
 
 エマがいつになく真剣な表情で僕を見つめる。
 
「え?     急に何だよ?」
「いい?   よく聞くのよ変態、ユリウス=ナサニエルは生きている」
 
 エマの口から衝撃の事実が明らかにされた。
 
「おいおい嘘だろ?    三百年前の人物が本当に生きてるのか?」
「ええ、嘘じゃないわ。変態、この指輪はね実はある種の術式みたいなものなの。頭の悪い変態は聞いた事がないかもしれないけど『道標みちしるべの呪具』と、この指輪は呼ばれていて、理解はしてると思うけど特定の魔力を辿ることができる道具よ。そして、この道標の呪具にはある特徴があって、」
 
 エマは口を閉じて、息を整えてから言った。
 
「これはまだ生きている生物にしか使用できない術式だわ」
 
 その言葉が本当とするならば、ユリウス=ナサニエルは未だに僕達が生きているこの時代に存在してることになる。
 
 やだなぁ。関わりたくないなぁ。

 もし関わったら絶対めんどくさいことが起きそうだなぁ。
 
 僕は薬指に嵌めた指輪を見ながら上を仰ぐ。

 あ、エマの家の屋根も壊れているから青空が見える。今日もいい天気だ。
 
「と、この話はこれで終わり。私は最善を尽くしたけど、もう変態が嵌めている指輪ぐらいしか手掛かりがないわ。あとは変態の勝手しなさい」
「そっか。ありがとうエマ。それで、残りの要件はなんだ?」
「七大罪スキルと変態のスキルについてよ」
 
 エマの口から何やら物騒で、聞きならない言葉が出てきた。
 
「七大罪.......?」
「.......そうだったわ。変態が頭が悪いものね。とりあえず七大罪スキルの要件から話を始めるわ」
 
 僕の頭を悪い悪い言うなよこのちびっ子め。

 田舎者だからか?    僕が田舎者だから頭が悪いと決めつけるのか? 本当に失礼な奴だ。だがツンツンしてるエマも僕は嫌いじゃない。
 
「そうね、変態には七大罪スキルなんて言わず、大罪系スキルと言うべきなのかしら」
  
 エマは両手を僕に突き出し、七本の指を立てて得意気な顔をする。
 
「大罪系スキルは主に二つ分類されているわ。それが失大罪と七大罪」
 
 また新しい単語が出てきた。

 七大罪の他に失大罪だって?
 
 「これまでに確認された大罪系スキルは七大罪と失大罪の二つ分類されているわ。現在、確認が取れて判明されている失大罪は、『憎悪ぞうお』、『憐憫れんびん』、『自棄じき』、『虚飾きょしょく』、『憂鬱ゆううつ』、『孤独こどく』、『執着しゅうちゃく』、『軽蔑けいべつ』、『怨嗟えんさ』の九つ。もしかしたらまだまだ失大罪は他にもあるのかもしれないわね」
「え、失大罪って何だよ。しかもそんなにあるのか」
 
 多い。無駄に多い。
 
「そして、七大罪とは大罪系スキルの中でも特に強力なスキルの事を指すスキルだわ。つまり、七大罪スキル以外の大罪系スキルの事を全て失大罪と呼称されるわ」
「なるほど」
 
 エマの説明は分かりやすい。

 頭が悪いと称される僕にもなんとなく理解できた。
 
 つまり、大罪系スキルというスキル群があり七大罪と失大罪の二つに分類されている。

 七大罪に分類されていない大罪系スキルの事を失大罪と呼ぶと言うことだな。
 
「で、本題の七大罪スキルって何だよ?     教えてくれ」
「七大罪スキルとは、それだけで使い方を誤れば一つの大陸をいとも容易く滅ぼすに値する強力なスキルだわ。そして、七大罪スキルで判明しているのは、『傲慢ごうまん』、『強欲ごうよく』、『怠惰たいだ』、『憤怒ふんぬ』、『色欲しきよく』、『嫉妬しっと』、最後に貪食の食人鬼が所有していたとされる『暴食ぼうしょく』の七つ」
 
 おい待て。今聞き捨てならない事を言われたんだけど。
 
「貪食の食人鬼が七大罪のスキルを所有していた.......?    ってそうか!    あの刺々した蛸の触手が七大罪スキルの『暴食』の正体なのか!」
 
 どおりで貪食の食人鬼が強い訳だよ。
 
 エマが大陸を容易く滅ぼすスキルと言ったな。

 全くその通りだよあの触手。

 くそっ、ふざけんなギルマス。もっとあのクズを揺さぶるべきだった。
 
「そう、貪食の食人鬼のあの触手。いえ、触手なんて生易しいものではなかったけど.......。とにかく変態、貪食の食人鬼と交戦した変態ならあの触手について詳しく教えてくれるかしら?」
「いいぞ。貪食の食人鬼のあの触手が、七大罪スキルの『暴食』なら触手の能力について説明がつくしな」
 
 僕は腕を組みながら『暴食』のスキルについて掻い摘んでエマに説明した。
 
 僕が思うに、恐らく暴食のスキルの能力は主に三つだと思う。 
 
 一つ目があるゆる物を食べてしまう能力だ。物理攻撃しかり、魔法攻撃しかり、挙句の果てに石片も食べることができる。つまり、攻撃の無力化、いや吸収といっても過言ではない。
 
 二つ目が成長する事。触手が何かを食べる度、触手は食べた分だけ大きくなっていく。これは予想だけど成長の上限が存在しないと思う。触手一本がネメッサの街を覆うほどの大きさになったぐらいだ。いくらでも触手は大きくなれるだろう。それもネメッサの街なんて言わず、世界を覆ってしまうぐらいに。
 
 最後の三つ目は自己強化だ。貪食の食人鬼は触手の本数が増える度に身に纏う魔力が濃くなっていた。簡単に言うと触手が増えれば増える程、暴食のスキル所有者が強化される。
 
 .......改めて考えてみるとまじで化け物だな。よく僕は貪食の食人鬼に勝てたな。
 
「やっぱり思った通りね。古代の文献に記されている通り、『暴食』のスキルに間違いないわ」
 
 エマは深く息を吐いてゆっくりと頷き、目を閉じた。
 
「この話はこれで終わり。確認が済んだから次は変態のスキルの件についてだわ」
 
 エマは目を見開いて人差し指をピンと立てて尋ねてきた。
 
「こっからが本当の要件よ。ねえ変態、お前如きが貪食の食人鬼に勝てる訳がないわ。しかも七大罪スキル持ちに、ね。変態は一体何のスキルを使ったの?」

 失礼な。でも気持ちは分かる。
 
 『覚醒』スキルについてだな。

 僕は七大罪スキル持ちの魔物を倒したんだ、それも単独で。

 エマが気になるのも不自然じゃない。
 
「何って『覚醒』のスキ」
「ッ!?」
 
 僕が答えようとした時、エマはいきなり僕の口を片手で塞いで押さえつけた。
 
 おい、いきなり何をする?
 
「いい、変態。今から私の言うことをよく聞くのよ」
 
 エマが僕を押さえつけながら、そっと、小さな声で耳元で囁いた。
 
「『覚醒』のスキルは他言無用にしなさい。そして、もう二度と『覚醒』のスキルは使うな」
 
 エマの声は思わず全身に鳥肌が立つくらいにとても冷たかった。
 
 覚醒のスキルは誰にも言うな。覚醒のスキルはもう使うな、だと?
 
「変態、分かったわね?」
 
 エマは口調も戻して、僕の口から手を離したが、凄まじい剣幕で僕を睨んでいる。
 
「おい、『覚醒』のスキルを使うなって意味が分からない。せめて説明をしてくれよ」
「そんな説明は、今はこれで充分だわ」
 
 それは今日、エマがこれまで語った事柄の中で一番衝撃が大きかった。
 
「次に変態が『覚醒』のスキルを使った時、」
 
 エマは僕と目と目を合わせて口を開き、静かに告げた。
 
「変態は死ぬことになるわ」
 
 それは覚醒の圧倒的な力の代償。すなわち、エマは僕に死の宣告をした。



   


    世界観解説     大罪系スキル

    大罪系スキルとは負の感情を世界そのものに干渉することができるスキルと言われている。

    大罪系スキルの起源は特に古く、何千年前の古代文献からも大罪系スキルの事柄が書いてあるほど。

    とはいえ、現代でも大罪系スキルについては分からないことだらけであり、多くのスキルを研究する人間や数多の知識を蓄えた学者が大罪系スキルについての解明に勤しんでいる。

    大罪系スキルは二つに分類され、特に強力なスキルは『七大罪』、そして七大罪以外の大罪系スキルは『失大罪』に分類されている。
    

 

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