ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

2-2 出発準備


 
 2-2    出発準備
 
 
 エルクセム王都への出発日が決まった翌日。僕が決めた通り、今日は準備日となっている。

 僕は寝ぼけ眼を擦りながら欠伸をして、ベッドから起き上がった。
 
「ふぁぁぁ.......」
 
 欠伸を噛みしめながら今日の予定を頭の中で整理する。
 
 とはいえ、やることはそんなに多くはない。

 旅の必需品である食料を、冒険者ギルドにでいくらか購入し、アリアの宿から僕の荷物を回収するだけだ。

 あとはアシュレイにエマに一度会っておけと言われたのもあるな。

 この三つが僕が今日やることか。
 
「ふぁぁ.......よしっ。明日はエルクセム王都に出発なんだ。鈍った身体からいつも通りの機敏な身体にしておかないとな」
 
 僕はベッドから完全に起き上がると、身体の関節をポキポキと鳴らし始めた。

 全身の調子を確認しているがやはり筋肉が衰えている感じがする。ここ一週間程リフィアに甘やかされっぱなしだったのが原因だろう。

 僕はくぐっと背伸びをすると、ドア開けて外に出た。
 
「さて、まずはアリアの宿から行くか」
 
  

 ◆◇◆
 

 
 アリアの宿。
 
 僕が休養していた部屋は冒険者ギルドの寄宿舎みたいなところだ。そこからアリアの宿までは徒歩十分程度だ。

 冒険者ギルドやリフィア薬草店みたいな重要な施設は既に街の復興に向けて修繕がされているが、民家や重要度が低い施設等はまだ破壊されたままだ。  
 
 道行く道は瓦礫に覆われ、足の踏み場がまるでなかった。 

 その例に漏れず、アリアの宿も跡形も無くなくなっていた。

 あるのは木材の残骸だけ。廃墟みたくボロボロなってるのかなと、僕は薄らと予想していたがその予想斜め上を行く結果だった。
 
「まじかよ」
 
 なにこれ?    もう跡地だよ。

 アリアの宿跡地だよ。

 僕が泊まっていた時もさ、あえて言わなかったけど結構ボロかったよ。

 けどね、今の現状はもう店を畳んでしまうぐらいに追い込まれているじゃん。
 
「あっ、お客さん!    こんなところで何をしているんですかー?」
 
 僕が辺りを見回していると、アリアの声がどこからか聞こえてきた。

 僕はキョロキョロと更に辺りを見回したが、アリアの姿は何処を探しても見つからない。 
 
 どこにいる?

 僕が辺りをキョロキョロと見回していたその時、
 
 ズボッと音がして木材の残骸の中からアリアの頭が出てきた。
 
 アリアはブンブンと木片を頭から振り払うと残骸の中から抜け出して僕に駆け寄ってきた。
 
 こんなところで何をしているんですかって、こっちの台詞だよ。
  
「お客さーん!    何か私に用事でもあるんですかー?」
 
 アリアが僕の目の前に立ち、背中に木材の残骸の中から拾って集めたと思われる日用品をゴソゴソと肩に背負った袋に入れながら僕に聞いてきた。

 どうやらアリアは店の持ち物を回収していたらしい。
 
「いやね、アリアが預かっている僕の荷物を回収しようと思っていたんだけど」
 
「あらら。お客さんの荷物はお見舞いした時に、ついでに冒険者ギルドに預けて置きましたよ。あ!    それと、優しい優しいこの私がお客さんの服も洗濯しておきましたよ!」
「えぇ.......」
 
 洗濯してくれたのは嬉しい。
 それはいいのだが、これではとんだ空回りだ。
 
「あっ!    なんですかその顔は!    『行って損した』みたいな顔をしないでくださいよ!    私の顔を見れたと思えば儲けものじゃないんですか?」
「まあ、そうかな」 

 僕は頭をかきながら言った。
 
「ふふん、そうです。そうですよ。私の顔を.......えっ?」
「自分で言った癖に自分で驚くの?    アリアにも用があったしね」
 
 僕は笑ってアリアに答えた。
 
「あの、お客さんの気持ちは嬉しいですが、ちょっとロリコンさんはご勘弁をお願いしま」
「何おかしな勘違いしてんだよ!    明日からエルクセム王都に行くから挨拶するだけだよ!」
 
 この勘違い女め。これは一度締めといた方が良さそうだ。
 
「ほへー。明日からエルクセム王都ですか。それはいいですね。今のネメッサの街は機能停止してるみたいなもんですし、エルクセム王都にも冒険者ギルドがありますからそこでも食い扶持が稼げますもんね」
 
 アリアに言われてみれば確かに、今のネメッサの街は復興中だ。 

 エルクセム王都の冒険者ギルドでクエストを受けてみるのもいいだろう。
 
「ま、僕が伝えたいのはそれだけだったから。それじゃあもう行くよ」 
 
 僕はアリアに背を向けて、荷物を回収するために冒険者ギルドに向かおうとした。 
 
「あ、最後にお客さん!」 
 
 去ろうとした僕にアリアに肩をガッといきなり掴まれた。
 
「なんだよ?」
「エルクセム王都のお土産よろしくお願いしますね!」
 
 アリアはやっぱりアリアだった。
 

 
 ◆◇◆ 
 
 
 
 アリアの宿跡地から少し歩いていき、僕は冒険者ギルドに着いていた。

 冒険者ギルドは建て直されているとはいえ、まだ途中段階。一言で冒険者ギルドの現状を説明するならば、屋根がひしゃげて壁がボロボロになって半壊している。
 
 冒険者ギルドは冒険者ギルドの施設を直すためのクエストを発行しているようで、外ではまだネメッサの街に残っている冒険者達がカンカンと工具を鳴らして修復作業に励んでいる。
 
「よいしょっと」
 
 僕は冒険者ギルドのドアを開けて中に入った。

 木製の床にはいくつもの亀裂が走っていて、歩く度にギシギシとぎこちない音が鳴り響く。

 僕はそのまま中を歩いていき、受付カウンターを陣取る受付嬢の前に来た。
 
「よっ」
 
「ロリコ.......あらウェルトさん。リフィアちゃんに甘やかされてもう身体の調子はいいみたいですね。本日はどのようなご要件ですか?」
 
 僕は受付嬢の肩を叩いて話しかけた。受付嬢は僕に振り向いて笑顔を咲かせ、受け答えをしてくれた。
 
「アリアから届けられた僕の荷物を回収しに来たんだ。明日エルクセム王都に出発するからね」
「分かりました。今からウェルトさんの荷物をお出しますね」
 
 受付嬢はカウンターの下を漁り、どさっと僕の荷物を取り出してカウンターの上に置いた。
 
「よいしょっと。ではウェルトさん。ウェルトさんは九日間荷物を預けていたので合計で45ゴールドとなりますよ」
「ふぇ?」 
 
  何言ったんだこいつ?
 
「あれ?   もしかしてウェルトさんは知らなかったんですか?    冒険者ギルドには荷物をお預かりするサービスがあって、一日5ゴールドを支払うことにより冒険者ギルドで荷物をお預かりすることができるんです。つまり、ウェルトさんはこのサービスを九日間利用したので45ゴールドのお支払いとなりますよ」
 
 ウッソだろお前。
 
 僕はポケットから薄い財布を取り出して中身を確認した。

 財布の中には13ゴールドが寂しく残っている。そうだった、入院費でこれまでに稼いだお金が尽きかけていたんだった。
 
 おのれアリアめ。次会った時は締めてやる。王都からのお土産はきつく縛れる縄にしてくれるわ。
 
 いや、今はアリアの事なんてどうでもいい。それよりも僕の荷物だ。

 どうすんだこれ.......。
 
「ちなみに、そのお金を支払えなかったらどうなるの?」
「没収ですね。冒険者ギルドの規定で百日間以上、ご利用者が荷物を取りに来なかった場合は冒険者ギルドにそのお預かりした荷物の所有権が移ります」
「くそったれ!」
 
 僕は薄い財布を床に叩き付けて叫びをあげた。
 
 腐ってる。本当にこの世の中は腐ってる。

 金だ。結局は金が全てなんだ。
 
「まあまて」
 
 僕が世の中に対して嘆いている時、渋い声が聞こえてカウンターの奥から、でっぷりとお腹が膨れた小太りの中年の男性がのそのそと姿を現した。
 
「ギ、ギルマス!」
 
 ギルマス?

 あ、ギルドマスターの略称か!
 
 ギルマスは僕を見つめてニヤリと笑い、こちらに近づいてきた。
 
「ウェルト君はこの街の功労者だ。お預かりした荷物の代金ぐらいはチャラにしてやってくれ」
 
 ギルマスは口に咥えた煙草を吹かしながら笑って言った。
 
 なんだ、案外良い奴じゃないか。
 ヒュージスライムキングの報酬金を踏み倒した癖して中々粋な計らいだ。
 
「さて、ウェルト君。さっきのチャラにした分が貪食の食人鬼の討伐報酬だ。これからもこの街と冒険者ギルドをよろくし頼むよ」
 
 ギルマスは黒い笑顔を浮かべて僕に握手を求めてきた。
 
 前言撤回。
 
 死ね、このクズめ。
 
 僕はギルマスの首を片手で握りしめ、勢いよく壁に叩きつけた。
 
「なあ、ギルマスさんよ。冗談はよしてくれないかな」
「お、おい、乱暴はやめてくれよウェルト君。へっ、へへ.......君と私の仲だろう?    少し待ってくれよ」
 
 ギルマスは呻き声をあげながらじたばたと手足を動かして藻掻く。

 だが無意味だ。貪食の食人鬼を倒してLvがあがった僕には適わない。
 
「いいや待たない。お前は貪食の食人鬼の餌にしておくべきだった。さて、冒険者ギルドの修繕のついでにゴミ掃除といかないとな。お前をネメッサの街の闇に葬ってやる」
 
 僕はギルマスの首を握る腕かなりに力を込める。首の骨が軋む音がして、ギルマスは更に苦しそうに呻いた。
 
「グッ、ゲェェッ!?     ま、待ってくれ! ウェルト君にはいいお知らせがあるんだよ!」
 
 ギルマスは下卑た笑いを浮かべながら、茹で上がった直後のザリガニような顔をして懐から一枚のカードを取り出した。
 
 おい、それは僕の冒険者ギルドカードじゃないか。

 何故お前が持っている?
 
「ウェルト君はこの街の功労者だからね.......へへっ、冒険者ランクをFからDにあげといたんだ。勿論、ランクアップの受験料に試験もなしでね!    更にこの私、ネメッサの街のギルドマスターお墨付きも付いているよ!」
「ふーん」
 
 僕は冒険者ギルドカードを受け取ってポケットに仕舞うと、更にギルマスを握る力を強めた。
 
 足りない。足りないぞギルマス。
 貪食の食人鬼だぞ。街の危機だったんだぞ。 

 脅威度A、ましてや脅威度Sに匹敵する魔物を僕は倒したんだ。
 ギルマス、まるで足りない。
 お前には僕に対する誠意がまるで足りないんだ。

「あがががが.......。そ、そうだ!    さっき聞いたぞ。なんでもウェルト君は近々エルクセム王都に行くんだってね。私はな、エルクセム王都の冒険者ギルドのギルドマスターと仲がいいんだよ。だからウェルト君がエルクセム王都で活動しやすいように推薦書も書いておこう。どうだ?    いい話だろう?」
 
 ギルマスは媚びをへつらう顔をしながら唾を撒き散らした。
 
 汚い。
 
 ま、ともあれギルマスに関してはこの辺で勘弁しておく。

 これ以上揺すっても何も出てこないと思うし。いまのギルマスでは金銭面での揺すりは無理だ。

 何故ならネメッサの街の復興でもう大金を使ったはず。大された金は出せないだろう。
 
「今回は見逃してやる。ギルマス、これに懲りたらもう僕以外の冒険者から、報酬金を掠め取ったり踏み倒しすことはもうやめるんだな。次は容赦しない」
「へっ、へへ.......。流石ウェルト君。話がよく分かるから助かるよ」
 
 僕は首を握る手を解き、ギルマスを解放した。ギルマスは卑下た笑いを維持しながらむせ込んだ。
 
「ぐええ.......げほっ、げほっ。酷い目にあった.......」
 
 そんなむせるギルマスを受付嬢は冷めた目で見つめて言った。
 
「いつかこうなるんじゃないかと私も思っていましたよ、ギルマス。過ぎるドケチは身を滅ぼしますよ」
「口を慎め。お前の給料を30%カットしてやる」
「既に安月給なんですけど。カットされすぎてもうカットできる給料が無いんですけど。むしろ残業代が嵩んでるので30%アップしてください」
 
 ギルマスはクズすぎた。もう一度懲らしめておいた方がよさそうだった。
 
 
 

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