ろりこんくえすと!
1-37 七大罪スキル【暴食】
   
   1-37    七大罪スキル【暴食】
   それは見るもおぞましい姿だった。
深紅の魔力と禍々しい黒い魔力が混ざり合い、貪食の食人鬼の体から赤黒い魔力が激しく渦巻いていく。
そして、貪食の食人鬼は背中を反って屈み、背中から棘の付いた黒い蛸の触手が次々と展開される。
コポコポと触手は音を立てて一気に背中を突き破って広がり、四本の触手が出現した。
触手は一本一本、まるで意志を持っているかのようにそれぞれ違う動作を行う。
あるものは静止し、
あるものはうねらせて、
あるものは震わせて、
あるものは垂れて地面を侵食し、
触手はそれぞれ思い思いのままに動き始める。
「なんだよ、これ.......」
触手は展開され続ける。
広がり、太くなり、触れたもの全てを跡形もなく消し飛ばしていく。
いや、違う。
                                                
この触手は、触れたものを食べている。
その証拠に、触手に触れた石片が消し飛んだ直後、グチュグチュ咀嚼音らしきものを漏らしながら触手はますます太くなっていく。
触手は食べる度に成長をしている。貪食の食人鬼は、一体何のスキルを発動させたんだ。
「ゲグガァェェェッ!!!」
身が竦む程の咆哮。
その咆哮には、より一層の憎しみと怒りが込められていた。
触手をしならせながら、貪食の食人鬼は正真正銘の化け物へと変わり果てた。
それは、まるで生きる災厄。
負の感情と言うべきものが、触手を介して物理的に具現化された姿。
貪食の食人鬼は、崩れゆく街中で雄叫びをあげる。
咆哮と同時に、後ろに向かって四本ある内の静止していた一本の触手が突然薙ぎ払われた。
激震。
「ぐぅッ.......!?」
遥か後方で土砂崩れを起こしたかのように触手に破壊され、地面が隆起して割れたことにより大規模な地震が発生する。
地盤が沈下し、大地が崩落した。
触手が薙ぎ払われた結果、ネメッサの街の三分の一程が消し飛ばされた。
「嘘、だろ.......?」
目の前の光景は圧巻だった。
いや、消し飛ばされたネメッサの街にではない。
その薙ぎ払われた触手に、だ。
触手はネメッサの街を食らった事で想像を絶する大きさに成長した。
触手はなんでも貪り喰った。
木材。石片。地面。人間。
ゴキゴキと不規則に凹凸が波立って、触手は大きく成長し一本の黒い柱となり雲を突き抜けて空に立ち昇った。
    大きい。
     
    ただ単に大きい。
「何が脅威度Aだ。こんなの御伽噺の光景だ」
それは子供の頃に聞かされる御伽噺の光景。
僕が幼い頃に聞かされた、かつて光の勇者が倒しと聞かされる脅威度Sの存在。
 
脅威度Sという、到底人類如きには抗えない存在に、貪食の食人鬼は脅威度Aからその領域に足を踏み入れた。
 
大陸ひとつを軽々と滅亡させる最凶の魔物。
巨大な黒い柱を顕現させて、今、ネメッサの街に生きる災厄が降臨した。
「グゲグガァエェェエッ!!!」
再びの咆哮。
ビリビリと空気の振動なようなものが空間に響き渡り、大地を唸らせる。
咆哮と同時に触手は更に展開され続けた。
触手が背中を突き破ったて二本増えて、四本の触手が計六本の触手になった。
触手が増えたと同時に、貪食の食人鬼が纏う魔力はより強く渦巻いた。
触手は地面を削り、抉り喰らい、断層を生み出しながら成長していく。
 
目の前の光景は、さながら光の勇者が脅威度Sの魔物と対峙した瞬間と酷似している。
「ゲェェ.......!」
最早、貪食の食人鬼は理性がぶっ飛んでいる。
口から荒い吐息と唾液を垂らしながら貪食の食人鬼は僕を睨みつけた。
その目は、とても虚ろなのに何故か凄みが感じられる。
    その澱んだ瞳はとても不気味に感じられた。
そして、
貪食の食人鬼は僕を標的とし、黒い柱を振り下ろした。
「こいつ.......ッ!?」
視界に映った巨大な黒い柱は、僕に迫ったことにより柱から壁となる。
空気の圧迫し、風圧を打ち付けながらとてつもない重量質が上から落ちてくる。
「インフィニティスラスト!」
空気が押し潰しながら振り降ろされる黒き壁に向かって、僕はダガーを渾身の力を込めて振り抜いた。
斬撃の流星群が下から降り注ぎ、黒き壁に直撃する。
だが、
「なっ、この触手は斬撃すら食らう、いや吸収するのか!?     もしかしたら実体が存在しない.......!?」
    無意味。
触手は僕の斬撃を受けて上へと押し戻されたが、斬撃を吸収して更に大きく膨らんだ。
それはもう、ネメッサの街を覆い尽くす程の大きさと化している。
夕焼けが黒き壁によって隠れ、影が広がりこの世界が暗闇に包まれた。
完全に黒い柱から黒き壁へと形を変えた触手は、重力に従って落ちていく。
ゴゴゴゴゴ、と上から大気を震わせながら地鳴りの音のようなものが聞こえてくる。
もし、この触手がネメッサの街に落ちたらこの世に存在した証拠すら残らずに跡形も無く消え去るだろう。
いや、そんなことはさせない。
僕はあいつをぶっ飛ばすとリフィアに約束したのだから。
僕は空から振り下ろされる黒き壁を見据えて叫びをあげた。
「虚偽の理、発動!    僕が盗む世界の真理は、万有引力の法則!」
僕は腕を天に掲げて盗賊術の技能を発動させる。
発動と同時に僕の腕に閃光が煌めき、頭が狂ってしまうほどの激痛が迸って僕が知らない知識が頭の中に勝手流れ込んで最善の一手を選択させた。
僕が盗んだのは、引力。対象は、貪食の食人鬼とその触手全て。効果は、上に浮かばせる。
結果は、貪食の食人鬼を含む崩壊したネメッサの街が空に浮上した。
耳を劈くような音を立てて、地面ごと貪食の食人鬼を浮き上がらせる。
瓦礫も石片も土砂も、一緒に空に浮き上がった。
「グゲグガァエェェエッ!!!」
黒き壁が街から遠ざかり、貪食の食人鬼は空中にその身を固定される。
藻掻こうとも、身動きの取れない空中では何もできない筈。
そう考えていた僕が甘かった。
突如、空からまだ成長途中の無数の触手が降ってきた。
地面に深い穴がいくつも開けられ、ネメッサの街が更に壊滅していく。
「あの野郎、やることが滅茶苦茶だ」
槍の雨が降る、なんて例え話でたまに聞かされるが、それが現実となってしまった。
    このままでは、黒き壁に押し潰される前に無数の触手によって街が滅びてしまう。
    そんなことは、僕がさせない。
「心形刃紋!」
発動させたのは暗殺術の奥義。
どんな相手であろうと殺す為に生み出された天命すら切り刻む必殺の技能。
僕を中心に、池の中に落ちる一滴の水滴が落ちたる事で水の波紋が広がるように不可視の斬撃が発生する。
触手は爆ぜる。
   いかに斬撃すら吸収される触手でも、天命の摂理からは逃れられない。
天命すらも斬り裂く斬撃により、爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆裂と斬撃が連鎖し、天に昇っていく。
やがて貪食の食人鬼と黒き壁まで行き着くが、斬撃は黒き壁に飲み込まれて消えてしまった。
「くそっ、これですらジリ貧かよ」
僕は心形刃紋を放った反動で砕け散ったダガーを投げ捨てながら、貪食の食人鬼を凝視して暗視を発動させた。
貪食の食人鬼の背中から、さっきとは比べ物にならない程の触手が生えていく。
その数、約数百本。
闇に包まれた世界に、天空に赤き凶星が顕現した現実は世界の終末を意味していた。
   1-37    七大罪スキル【暴食】
   それは見るもおぞましい姿だった。
深紅の魔力と禍々しい黒い魔力が混ざり合い、貪食の食人鬼の体から赤黒い魔力が激しく渦巻いていく。
そして、貪食の食人鬼は背中を反って屈み、背中から棘の付いた黒い蛸の触手が次々と展開される。
コポコポと触手は音を立てて一気に背中を突き破って広がり、四本の触手が出現した。
触手は一本一本、まるで意志を持っているかのようにそれぞれ違う動作を行う。
あるものは静止し、
あるものはうねらせて、
あるものは震わせて、
あるものは垂れて地面を侵食し、
触手はそれぞれ思い思いのままに動き始める。
「なんだよ、これ.......」
触手は展開され続ける。
広がり、太くなり、触れたもの全てを跡形もなく消し飛ばしていく。
いや、違う。
                                                
この触手は、触れたものを食べている。
その証拠に、触手に触れた石片が消し飛んだ直後、グチュグチュ咀嚼音らしきものを漏らしながら触手はますます太くなっていく。
触手は食べる度に成長をしている。貪食の食人鬼は、一体何のスキルを発動させたんだ。
「ゲグガァェェェッ!!!」
身が竦む程の咆哮。
その咆哮には、より一層の憎しみと怒りが込められていた。
触手をしならせながら、貪食の食人鬼は正真正銘の化け物へと変わり果てた。
それは、まるで生きる災厄。
負の感情と言うべきものが、触手を介して物理的に具現化された姿。
貪食の食人鬼は、崩れゆく街中で雄叫びをあげる。
咆哮と同時に、後ろに向かって四本ある内の静止していた一本の触手が突然薙ぎ払われた。
激震。
「ぐぅッ.......!?」
遥か後方で土砂崩れを起こしたかのように触手に破壊され、地面が隆起して割れたことにより大規模な地震が発生する。
地盤が沈下し、大地が崩落した。
触手が薙ぎ払われた結果、ネメッサの街の三分の一程が消し飛ばされた。
「嘘、だろ.......?」
目の前の光景は圧巻だった。
いや、消し飛ばされたネメッサの街にではない。
その薙ぎ払われた触手に、だ。
触手はネメッサの街を食らった事で想像を絶する大きさに成長した。
触手はなんでも貪り喰った。
木材。石片。地面。人間。
ゴキゴキと不規則に凹凸が波立って、触手は大きく成長し一本の黒い柱となり雲を突き抜けて空に立ち昇った。
    大きい。
     
    ただ単に大きい。
「何が脅威度Aだ。こんなの御伽噺の光景だ」
それは子供の頃に聞かされる御伽噺の光景。
僕が幼い頃に聞かされた、かつて光の勇者が倒しと聞かされる脅威度Sの存在。
 
脅威度Sという、到底人類如きには抗えない存在に、貪食の食人鬼は脅威度Aからその領域に足を踏み入れた。
 
大陸ひとつを軽々と滅亡させる最凶の魔物。
巨大な黒い柱を顕現させて、今、ネメッサの街に生きる災厄が降臨した。
「グゲグガァエェェエッ!!!」
再びの咆哮。
ビリビリと空気の振動なようなものが空間に響き渡り、大地を唸らせる。
咆哮と同時に触手は更に展開され続けた。
触手が背中を突き破ったて二本増えて、四本の触手が計六本の触手になった。
触手が増えたと同時に、貪食の食人鬼が纏う魔力はより強く渦巻いた。
触手は地面を削り、抉り喰らい、断層を生み出しながら成長していく。
 
目の前の光景は、さながら光の勇者が脅威度Sの魔物と対峙した瞬間と酷似している。
「ゲェェ.......!」
最早、貪食の食人鬼は理性がぶっ飛んでいる。
口から荒い吐息と唾液を垂らしながら貪食の食人鬼は僕を睨みつけた。
その目は、とても虚ろなのに何故か凄みが感じられる。
    その澱んだ瞳はとても不気味に感じられた。
そして、
貪食の食人鬼は僕を標的とし、黒い柱を振り下ろした。
「こいつ.......ッ!?」
視界に映った巨大な黒い柱は、僕に迫ったことにより柱から壁となる。
空気の圧迫し、風圧を打ち付けながらとてつもない重量質が上から落ちてくる。
「インフィニティスラスト!」
空気が押し潰しながら振り降ろされる黒き壁に向かって、僕はダガーを渾身の力を込めて振り抜いた。
斬撃の流星群が下から降り注ぎ、黒き壁に直撃する。
だが、
「なっ、この触手は斬撃すら食らう、いや吸収するのか!?     もしかしたら実体が存在しない.......!?」
    無意味。
触手は僕の斬撃を受けて上へと押し戻されたが、斬撃を吸収して更に大きく膨らんだ。
それはもう、ネメッサの街を覆い尽くす程の大きさと化している。
夕焼けが黒き壁によって隠れ、影が広がりこの世界が暗闇に包まれた。
完全に黒い柱から黒き壁へと形を変えた触手は、重力に従って落ちていく。
ゴゴゴゴゴ、と上から大気を震わせながら地鳴りの音のようなものが聞こえてくる。
もし、この触手がネメッサの街に落ちたらこの世に存在した証拠すら残らずに跡形も無く消え去るだろう。
いや、そんなことはさせない。
僕はあいつをぶっ飛ばすとリフィアに約束したのだから。
僕は空から振り下ろされる黒き壁を見据えて叫びをあげた。
「虚偽の理、発動!    僕が盗む世界の真理は、万有引力の法則!」
僕は腕を天に掲げて盗賊術の技能を発動させる。
発動と同時に僕の腕に閃光が煌めき、頭が狂ってしまうほどの激痛が迸って僕が知らない知識が頭の中に勝手流れ込んで最善の一手を選択させた。
僕が盗んだのは、引力。対象は、貪食の食人鬼とその触手全て。効果は、上に浮かばせる。
結果は、貪食の食人鬼を含む崩壊したネメッサの街が空に浮上した。
耳を劈くような音を立てて、地面ごと貪食の食人鬼を浮き上がらせる。
瓦礫も石片も土砂も、一緒に空に浮き上がった。
「グゲグガァエェェエッ!!!」
黒き壁が街から遠ざかり、貪食の食人鬼は空中にその身を固定される。
藻掻こうとも、身動きの取れない空中では何もできない筈。
そう考えていた僕が甘かった。
突如、空からまだ成長途中の無数の触手が降ってきた。
地面に深い穴がいくつも開けられ、ネメッサの街が更に壊滅していく。
「あの野郎、やることが滅茶苦茶だ」
槍の雨が降る、なんて例え話でたまに聞かされるが、それが現実となってしまった。
    このままでは、黒き壁に押し潰される前に無数の触手によって街が滅びてしまう。
    そんなことは、僕がさせない。
「心形刃紋!」
発動させたのは暗殺術の奥義。
どんな相手であろうと殺す為に生み出された天命すら切り刻む必殺の技能。
僕を中心に、池の中に落ちる一滴の水滴が落ちたる事で水の波紋が広がるように不可視の斬撃が発生する。
触手は爆ぜる。
   いかに斬撃すら吸収される触手でも、天命の摂理からは逃れられない。
天命すらも斬り裂く斬撃により、爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆ぜる。
爆裂と斬撃が連鎖し、天に昇っていく。
やがて貪食の食人鬼と黒き壁まで行き着くが、斬撃は黒き壁に飲み込まれて消えてしまった。
「くそっ、これですらジリ貧かよ」
僕は心形刃紋を放った反動で砕け散ったダガーを投げ捨てながら、貪食の食人鬼を凝視して暗視を発動させた。
貪食の食人鬼の背中から、さっきとは比べ物にならない程の触手が生えていく。
その数、約数百本。
闇に包まれた世界に、天空に赤き凶星が顕現した現実は世界の終末を意味していた。
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