ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

1-29 紅き閃光

   
 
    1-29    紅き閃光


    ウェルトが食人鬼から街の人達を守るために追いかける一方、私は貪食の食人鬼と対峙していた。
 
 貪食の食人鬼はゴンザレスの取り巻きであった、二人のチンピラの肉を血の海の中から軽々と掴み、口に放り入れる。
 
 そして、咀嚼する。
 
 がりがりと骨まで砕き、血を口から滴らせながら、よく噛んだあと胃袋へと収める。
 
 ごくんと、喉元を隆起させた後、満足気にお腹をさすった。
 
「ゲェェ.......」 
 
 貪食の食人鬼は笑う。嗤う。
 
 見るもおぞましい血塗られた牙を覗かせながら、口が歪な三日月型となっていく。
 
 そして、ある場所を瞬きもせずにずっと見つめていた。
 
 次の獲物は、


 この私だ。

 
 貪食の食人鬼は、重砲を両手で強く握りしめる私を見つめていた。
 
 虚ろで濁った黒い目からは光が一切感じられない。
 
 ただただ途方も無い闇だけが延々と広がり、その深淵の中に死という差し迫った現実に怯えた私の姿が映っている。
 
 私は息を飲んだ。風が凪いで静寂が一瞬だけこの空間を支配した。
 
「もう、」
 
 声が掠れ、乾いていく。
 
 それでも私は言葉を紡げる。
 
「私の大好きなこの街を、お前の好きにはさせない」
 
 私はその静寂を破り、濁った目に映る私の姿を見て決意する。
  
 息を大きく口から吐いた。
 
 白い煙を吐き出している銃口をゆっくりと貪食の食人鬼へと向けた。
 
 私の眼光は貪食の食人鬼へと差し向けられていた。

    改めて私は思った。
 
 私は、この街が好きだ。
 
 家から追い出されて妹の家に居候をしている身なのに、何故かこの街は無性に居心地が良かった。
 
 色んな人と出会った。
 色んな人と関わった。
 色んな人と繋がった。
 
 最近は、ウェルトとかいうロリコンでどうしようもなく、しょうもないやつだけど、私の背中を任せれられる頼れる仲間が見つかった。
 
 あいつは、見知らずの私を助けてくれたいいやつだ。

 何かと要らないお節介焼いたり心配したりしてくれる。

 そんな優しいあいつが、生命を賭してこの街を守っている。
 
 たった数日しか過ごしていないこの街の為に、身体を張って戦いにその身を投じている。
 ロリコンとか変態とか言われながらこの街の人々に蔑すまれているのにも関わらず、だ。
 
 あいつのことを考えると、不思議と私の口から笑みが零れてくる。
 
 そうか、そうだよな。
 
 お前もこの街が好きだって妹に面と向かって言っていたな。
 
 だから、私も、
 
「フレイムカノン」
 
 力の限り、生命を賭して戦おう。
 
 銃口が高熱を帯びて爆炎が吹き荒れる。
 
 炎の渦が空気を溶かして廻って、灼炎が貪食の食人鬼へ放たれた。
 
「スゥゥ.......ゲェッ!」
 
 対する貪食の食人鬼は、おもむろに息を大きく吸い込み、口から勢いよく空気の塊を吐きしだした。
 
 空気砲のつもりなのだろうが、あまりにもお粗末。
 
 しかし、私の爆炎とそれは相殺し、爆風を散らしながら打ち消された。
 
 一陣の熱い風が私の頬を掠めていく。
 
 脅威度A。
 
 災害級に指定された魔物はこれほどまでに規格外の存在。
 
 けど、もう私は驚かない。こいつはそんな生き物なのだから。
 
「フルオートカノン」
 
 白い砲撃が私の重砲から撃ち出される。
 
 それも黒い腕を伸縮させて打ち消される。

「ラピッドショット」
 
 高速の弾丸を撃つ。
 
 今度は防ぐ素振りも見せない。
 
 貪食の食人鬼はそのままラピッドショットをその身に受けて私に突っ込んでくる。
 
 弾丸は弾かれ、宙へと舞った。
 
 小さな傷跡を付けたが、すぐに再生される。
 
「バラージウォール」
 
 弾丸の雨が展開される。
 
 地面に小さな穴を開けながら弾丸が降り注いだ。
 
 それも、すぐに再生。
 
「フレイムカノン」
 
 再び爆炎が吹き荒れる。
 
 火柱が立ち、目の前が炎で包まれる。
 
「ゲァ!」
 
 声がした。
 
 炎のカーテンを突き破り、黒い体が中からも現れた。
 
 その姿を見た時、私の右腕に衝撃が襲った。
 
 肉が裂かれ、骨が砕かれる鈍痛が走り私は悲痛の表情を露にする。
 
 噛まれた。
 
 それはあまりにも素早さすぎて避けられない動作。
 
「がっ.......ッ!?」
 
 右腕が重砲をごと口の中に飲み込まれた。
 
 鋭く獰猛な牙が私の腕に突き立てられる。牙に力が込められる度、腕から鮮血が流れ出した。
 
「ビートスパイク!」
 
 私は残された左腕で腰の裏に装備していたサーベルを取り出した。
 
 そのまま風を切りながらサーベルを牙の間に差し込んだ。
 
 隙間に剣の切っ先が入り込むが、強度が強すぎてサーベルの刃がへし折れる。
 
「ゲッ.......」
 
 貪食の食人鬼は口の端を歪めて確かに嗤って、跳んだ。   
 
 両足がバネのようにぐにゃりと凹み、反動を爆発させる。
 
 私を咥えたまま、空へと飛び上がる。
 
「こいつ……ッ!」
 
 何故私ごと移動するのかは分からないが何か目的があるはずだ。
 
 赤く染まりゆく右腕に垂れ下がりながら、私も上へと飛んでいく。
 
 風が横切り、耳にバサバサと空気が駆けていく音が聞こえる。
 
 ふと、乾いていく瞳を見開き、上を見上げる。
 
 私の上には、憎たらしい程清々しい程綺麗な夕焼けが広がっていた。
 
 下には小さくなっていくこの街の景観が広がっていく。雲を貫き、私の顔が黄金色の光で照らされた。
 
 そして、自由落下が始まる。
 
 質量がこの世界の法則に従い落ちていく。空気が靡き、顔に風が強く当たる。
 
「私の右腕ぐらいくれてやる」
 
 貪食の食人鬼に腕を噛まれたまま私は不敵に笑う。
 
 右腕を握る度、私の腕から血が吹き出して骨が潰れていく鈍い音が聞こえる。
 
 激しい痛みが腕に浸るが、私はそれを無視して指に力を込める。
 
「だから、散れ」
 
 落下する遥か上空で私は口内で重砲の引き金を引いた。
 
 牙の隙間から仄かに輝く赤い焔が溢れんばかりに漏れだしていく。
 
 ふと、肉の焼けるあの独特の匂いが私の鼻を掠めた。
 
 その焦げた匂いを嗅ぎながら、紅色の魔力を重砲へ込めていく。
 
 重砲が高温で満たされ、私の腕がチリチリと灼けていた。
 
 それでも構わない。
 
 どうせ腕は失くなってしまうのだから。
 
 派手にいこう。
 
「ヒートチャリオット」
 
 焔が収束した。
 
 空気が轟々と渦巻き、水蒸気が霧散し、灼熱が生み出される。
 
 赤き閃光が夕焼けの中で煌めき、大爆発を起こした。



 

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