ろりこんくえすと!

ノω・、) ウゥ・・・

1-12 魔力の行方


 1-12    魔力の行方


 ワイルドボアを倒した翌日。

 僕とアシュレイは、ワイアットさんからの報酬である大根を大量に抱えてエマの家の中でこれから行う実験の話を聞いていた。  

「それでは早速実験を始めるわ。変態、大根の用意はいいかしら?」
「変態じゃねぇよ。準備はOKだ」

 僕の手の中には大根が握られていて、床には複雑な魔法陣が描かれた羊半紙の上に、アシュレイの重砲で焼かれたヒュージスライムキングの核が乗っかっている。

「今から行う実験は魔力を特定する実験よ。この錬金術師ギルドから奪っ.......借りてきた錬金術師ギルド名簿を使ってね」

 エマの手には分厚く、豪華な装飾が施された白塗りの本が握られている。

 結構重たいようで、エマの手は名簿を持ったいるだけでプルプルと震えている。

「いいかしら変態?    錬金術師は数がとても少ないの。だから、世界全体で見てもたったの数百人しかいないわけ。それに加えて人には魔力の『色』と『強さ』もあるわ。特定するなんてお茶の子さいさいよ」
「エマ、魔力の『色』と『強さ』とはどうゆうことなのだ?」

 僕の隣にいたアシュレイがエマに向かって話しかけた。確かに、僕もアシュレイと同じでそのことに気になる。魔力の『色』と『強さ』とはなんのことだろうか。

「お姉ちゃん、魔力には属性によって色が変わるのよ.......これは一応一般常識だからね、覚えておいてね。簡単に説明するとお姉ちゃんは火の属性を持っているから赤色の魔力になるってわけだわ」

 なるほど、僕は風の魔力だから緑色だったのか。ちびっ子の説明にしては分かりやすい。

「そして強さはそのままの意味。魔力が高ければ高い程、その色の輝きは増していくわ」

 僕が力を込めて風遁術の歪風いびつかぜを放つと、確かに魔力の色が濃くなる時がある。それが強さなのだろうか。 

「どう、理解できたかしら? とても頭の悪い変態でも理解しよすいように説明してあげたわよ」

 エマは説明を終えてえっへん、と偉そうにない胸を張った。

 AAAカップだ。ちっちぇ。

    -スキル『ロリコン』が発動しました-

    なっ、僕の息子がエマのちっぱいを見ただけで反応するのか!?

 いい加減にしろこの発情スキル!    

 リフィアの時といい、エマのちっぱい見ただけで僕の息子を興奮させるなよ!

「ねぇ、変態。いきなり股を押さえ付けてどうしたの?」
「いや、なんでもない。なんでもないから」

 僕は首をブンブンと振ってエマに答えた。

 エマにビンビンと勃った僕の息子なんて見られたら性犯罪者の謗りは免れないぞ。

 落ち着け.......僕の息子よ.......落ち着け.......。

「話を戻すわ。この大根を使って魔力を特定して色と強さを調べれば、ある程度の数の錬金術師の数が絞れるわ。それに、さっきも言った通り錬金術師が数が少ないの。上手くいけば一発でこの核を作り出した錬金術師に辿り着けるかもしれないわ」

 つまり、魔力を調べて属性と強さを特定し、錬金術師の名簿からヒュージスライムキングの核を生み出したやつを調べるって訳だな。

「よし、早速実験を開始しよう。僕は何をすればいい?」

 僕は息子を股の間に挟んで無理矢理押さえつけてエマに話しかけた。

「変態は魔法陣の上に大根をまっすぐに浮かせていなさい。それが変態にできる唯一無二の仕事よ」

 僕は苦虫を潰した顔をしながら、言われた通りに魔法陣の上に大根を持っていく。

「しっかり大根を抑えてるのよ変態。今から詠唱を開始するわ」

 エマの口から詠唱が紡がれる。

  「我が魔力に鼓動せよ、かの者を示せ、理に赴くままに」

 エマが魔法の詠唱を始めた。言葉が紡がれる度に、僕の手に握られた大根が光が輝いていく。輝きが増していき、僕が握る大根はどんどん熱を帯びる。

  「我は命ずる、辿れ、綴れ、表せ」

    詠唱が部屋の中に反響する。 

 空気がビリビリと振動の様なもので震えていく。振動はどんどん大きくなり、部屋の窓ガラスを揺らし、机の上の物がカタカタと動き出す。

「導かん!」

 そして詠唱が完了し、大根は爆発を起こした。

「うわっ!?」

 僕の顔面に砕け散った大根の破片が炸裂する。

 かなり痛いぞこれ! 

 だが、大根の中から光り輝く魔力の塊が現れた。黄色い光を放つそれは、ゆっくりとヒュージスライムキングの核の中へと収まっていく。 

 これが人の魔力を特定する物質なのだろうか。    まるで太陽の光みたいで暖かく、とても綺麗で神秘的だ。

「変態、離れていなさい!」
「だから変態じゃねえよ!」

 僕はそっと、魔法陣から後ずさる。

 僕が魔法陣から離れたその時、魔法陣は爛々と輝いて、いきなり一際強い光を部屋中に放った。

 放たれた光は淡い紫色の透明色。 

    これは.......氷の属性なのか?

 光は一気に強くなり、僕達の視界を淡い紫色に染める。

「眩しいっ!」
「目がぁっ!」 

 僕とアシュレイはあまりにも眩しさに思わず腕で目を押さえた。光は部屋から溢れ出し、空間を照らしていく。

 目を押さえる事数秒。光は急速に力を失っていき、やっと収まった。

「うぅ.......目がチカチカする.......」

 僕は目を擦りながら瞼を開いた。 

 そこに写った光景は、魔法陣から一筋の光が名簿を照らし、ページをパラパラと捲っていたものだった。

「成功よ。さあ、この核を作った人物を教えなさい」
  
 エマの言葉に呼応するように、パラパラと一ページずつ名簿が捲られていく。

 真ん中の方まで進むと名簿を照らしていた光が消え、とあるページでピタリと止まった。

「ちょっとなによこれ.......どうゆうことよ.......?」

 エマは険しい表情で名簿を見つめていた。

 そのページに書かれていた人物の名前は、

「この魔力の持ち主はユリウス=ナサニエルですって.......?    何で三百年前以上の錬金術師がこの核を作り出せたのよ!?」
「はぁ?  意味が分からないよ。少し見せてくれ」

 僕はエマの手の中から名簿を取った。

 名簿の中を見ると『ユリウス=ナサニエル』という名前とその本人の人物像が確かに書かれてある。 

  ユリウス=ナサニエルは銀髪の髪に白いマントがよく似合うイケメンだった。

「へー、エルクセム王都の王家直属の錬金術師だったのね.......」

 エルクセム王都と言えば、この街から一番近い大きな都市だ。ちなみにこれは、僕と夕食を一緒に食べていたアリアから聞いた情報だ。

「どれ、私にも見せてくれ」

 目をぱちぱちとさせながら、アシュレイが僕の横から名簿を見る。

「ほほう、戦争を終戦に導いたり、王都を魔物から防衛したりと、ユリウスとやらは中々の働きをしているな」
「放たれた光の色は紫色だったから、ユリウス氷属性なのかな? あ、全盛期には氷の錬金術師も呼ばれていた、とも書いてある」

 情報を纏めると、ヒュージスライムキングの核を生み出したと割り出されたのはユリウス=ナサニエル。三百年前以上の人物であり、エルクセム王都直属の錬金術師で、ユリウスは氷の錬金術師と呼ばれ活躍していたと。

「こんなのお手上げじゃないか。そもそも、人間が三百年以上も生きられ筈ないじゃないか。ユリウスはとっくの昔に死んでいるだろ」

 僕はエマの手に名簿を閉じて返した。エマは重たそうにプルプルと名簿を掴むと、ギュッと両手で抱きしめた。

 やっぱりちびっ子のエマには重かったんだな.......その名簿。 

「変態の言う通りよ。ユリウスはもう死んでいるはずだわ。でも、この実験は確実に成功するから私も驚いているのよ」

 エマはため息を吐いて、核を見つめた。 

「この核をもう少し詳しく調べてみるわ。また何か分かったら連絡するから、待っておきなさい」
「分かった。期待しないで待ってるよ」

 僕は頭を掻きながらエマに答えた。

「はぁ.......結局何の手掛かりも掴めなかったようなものだな。よしウェルト。今日もクエストに行くか」

 アシュレイはやれやれと肩を竦めながら僕の肩に手を乗せて話し掛ける。

「そうだなアシュレイ。僕もお金を稼がないといけないし.......ってアシュレイも一緒にクエストに来るのか?」

 アシュレイが突然僕とクエストに行きたいと言い出した。どんな心境の変化があったのだろうか。

「なに、ヒュージスライムキングとワイルドボアの討伐でウェルトの強さは分かったぞ。お前なら安心して背中を任せられる」

 アシュレイは人差し指をピンと立てて笑って言った。

「ふふっ、私はいい仲間を見つけた。エマ、私はウェルトとパーティを組もうと思う」
「ええええ!? だめよお姉ちゃん、こんな変態のどこがいいのよ! 早く目を覚ましなさい!」
「僕は変態じゃないから!」

 エマはギャーギャーと騒いでジタバタと暴れ回る。見た目と同じで年相応のちびっ子だよ、エマは。
   
  「そうだな。ウェルトのいい所か.......。えーと.......えっと.......何かあったか?」
「本人に聞くな! 後、せめて何か言ってくれ!」
「まぁ、とにかく。私とパーティを組んでくれウェルト」
 
 アシュレイは顔に笑顔を浮かべながら僕に向かって手を差し伸べた。アシュレイの手を取った僕は思わず、一緒にこなしたクエストを思い出した。

 重砲の圧倒的な火力はとても頼もしい。そうか、これが仲間ってものだったのか。村で同年代の友達が誰もいないまま寂しく育った僕の始めての仲間。

「まあ、その.......よろしく、アシュレイ」

 僕は照れ臭そうに笑うと、アシュレイの手を握り締めた。




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