能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.90 剣神との交戦
時は少し前、同じくエリルとアリスの2人がクルシュ達と別れた後の事。
「見えてきたわ!」
「いや、ちょっと待って............あれは!」
アリスが指さしたその先でエリルの眼に映ったのは、巨大な大樹の根元。しかし、その太幹がセリギウスの放った神たちによって削られている最中だった。数にして、およそ300。
「アリスさん、僕を飛ばせるかい!?」
「え?.........あ、出来るけど」
「なら僕を思い切りあそこに投げ込んで!」
エリルの危機迫った表情に状況を察したアリスは磁石の要領で自分とエリルの磁力を操り、彼を磁力で弾き飛ばした。さらにエリルが自身で空中の力場を変えその速度は増していく。まるで銃弾のように加速したエリルが神の軍団に突き刺さった瞬間、その神体が宙に舞う。刹那、その場に足をついていた神達は一文字に胴体が切り離された。
「伍ノ太刀『風華閃燎』!」
グラディースが次々と神々の身体を切り裂いていく。まるでそれは疾風の如く、一陣の風となったエリルは瞬く間に神々を半数以下にまで減らした。
そこからの展開は早く、追いついたアリスの重力魔法によって抵抗虚しく神々はその首と胴体が次々に切り離され、やがて時間が経ったものから自然に光の粒子となって消えうせた。
「なんだ、楽勝ね」
「ほとんど働いたの僕なんだよねぇ...........」
苦笑いを零すエリルとそれを見て笑うアリス。戦場の真ん中で少しだけ気が抜けたような気がして、だがしかし。
「うむ、見事なり」
重低音の、押しつぶされそうなほど重いが響いた。その瞬間、2人の背筋が凍りつくのがわかった。射殺すように冷たい殺気、意識せずとも放出する強者の威厳、そんな重圧の塊が背後に突如として出現した。振り返りたくない、本音を言えばそうだった。しかし、さすがは神狼、そして戦場を体験した人間か。体はまだ動き、その視線が背後へと移された。
「お前は.........いや、なんでこんな所に......っ!」
エリルが苦虫を噛み潰したような表情をする。彼は神に仕えていた身であり、神のことはそれほどには知っている。だが、今目の前に浮遊している神は無知であろうとも名前ぐらいは聞いたことがあるだろうという者。つまりはそれほど名が知れ渡っており、名が知れ渡っているということはそれほどの強者であるということ。
「ほう、聞いたことがある声と思えばニルフィーナの眷属では無いか。久しいな?」
「剣神カルヴァン.......ッ!!」
視線が思いを代弁するかのように、エリルはカルヴァンを睨んだ。
「良い、相変わらずその目は腐れてないようだな」
「なんでお前がここにっ!」
「当然、この神樹を切り倒すためだ。だが、邪魔をするのであれば殺すぞ」
「殺せるならねっ!!」
エリルがグラディースを構え突進する。その剣は鮮やかな弧を描きながらカルヴァンの首筋へと吸い込まれていく、がしかし。
カァン!
まるで金属に打ち付けられたかのような軽い音が返り、エリルは目を見開いた。
「なっ..........!」
「奇襲にしては軽すぎるな、ふざけているのか?」
その神剣、グラディースをカルヴァンは手刀で止めていた。この程度、剣を抜く必要も無い、と。
「エリル君どいてっ!!」
その声にエリルが後退した瞬間、合間を縫うようにしてアリスが斬細剣フレスロアの斬撃を放つ。不意打ちにもかかわらずカルヴァンはそれら全てを手刀で捌いたが、その手の表皮は切り裂かれ、流血していた。
「ほう、手刀とはいえ我が神体を傷つけるとはな」
「こっちは文字通りの死ぬような訓練してるのよ!」
音を置き去りにするアリスの剣擊に、続けてカルヴァンはもう片方の手刀で対応する。だが、次も先ほどと同じく手から流血が垂れていた。
「なるほど、偶然ではなかったのか」
「よそ見してる場合っ!?」
「クク.........面白い!」
キィン!
瞬間、金属音が響いた。アリスの手には斬細剣フレスロアが、そしてカルヴァンの手にも血が塗られたように紅い紅蓮の剣が握られていた。首元に迫ったアリスの剣を薙ぎ払いで跳ね返したが、アリスはそのまま宙で回転して地面に着地する。
「まさか人のレベルで我に剣を抜かせる者がいるとはな。驚いたぞ」
「あら、その程度のレベルでふんぞり返ってたの?程度が知れるわね?」
「先程のは様子見だ、勘違いするな」
するとカルヴァンは舞うようにしてその剣を宙へと滑らせた。
「血睿剣ログザリア、我が忠実なる神剣よ」
それでもなおアリスの表情は変わらない。神剣と言えど剣であることに変わりはなく、フレスロアに付与された『魔壊』の効果は効く。相手がどんな能力を持っていようと、それをフレスロアにて叩き斬る、彼女の脳内はそれだけだった。
故に地面を蹴る。そうして接近したアリスに、カルヴァンは口角を釣りあげ。刹那、紅い槍が近距離でアリスへ飛来した。
「ッ!?」
エリルも顔負けの恐るべき反射神経でそれを叩き切ったアリスは、警戒のために距離を取った。その頬には冷や汗が垂れる。
「ほう、初見で躱したか」
「な、何今の.....!?」
「我が神剣、血睿剣ログザリア、文字通り血を操る。先程のは我の血を利用して作った槍よ」
「2つ武器とか騎士精神の欠けらも無いわね..........」
「強者には強者の戦い方がある。当然よな」
「剣神なんて聞いて呆れるわね。それでも剣の神様かしら?」
煽るように嘲笑するアリスを、しかしカルヴァンは気にしない。それでもなおアリスが続ける。
「あなたの本当の剣は、おそらく後ろのエリル君にも届かないわよ」
「ッ!」
――図られた
そう気づいた時にはもう既にエリルが近距離まで接近していた。迫る斬撃にカルヴァンは自身の剣を以て防御する。グラディースが接触時に爆風を巻き起こした。最初から全力で叩き切ると言うという意思表示のように。
「僕の事忘れてないよね?」
「ちぃ、犬風情が!」
「行くよカルヴァン、今の時点でお前に届くのか、試させてもらう!」
その神狼の眼は真っ直ぐにカルヴァンを捉え、固く言い放った。
さっむ!布団からコンニチワ、作者さんです。一応この戦いがこの章最後の戦闘シーンかな、と思ったりしてます。予定では、ですけどね。
頑張って年明けまでにはこの章を終わらせたいです。
「見えてきたわ!」
「いや、ちょっと待って............あれは!」
アリスが指さしたその先でエリルの眼に映ったのは、巨大な大樹の根元。しかし、その太幹がセリギウスの放った神たちによって削られている最中だった。数にして、およそ300。
「アリスさん、僕を飛ばせるかい!?」
「え?.........あ、出来るけど」
「なら僕を思い切りあそこに投げ込んで!」
エリルの危機迫った表情に状況を察したアリスは磁石の要領で自分とエリルの磁力を操り、彼を磁力で弾き飛ばした。さらにエリルが自身で空中の力場を変えその速度は増していく。まるで銃弾のように加速したエリルが神の軍団に突き刺さった瞬間、その神体が宙に舞う。刹那、その場に足をついていた神達は一文字に胴体が切り離された。
「伍ノ太刀『風華閃燎』!」
グラディースが次々と神々の身体を切り裂いていく。まるでそれは疾風の如く、一陣の風となったエリルは瞬く間に神々を半数以下にまで減らした。
そこからの展開は早く、追いついたアリスの重力魔法によって抵抗虚しく神々はその首と胴体が次々に切り離され、やがて時間が経ったものから自然に光の粒子となって消えうせた。
「なんだ、楽勝ね」
「ほとんど働いたの僕なんだよねぇ...........」
苦笑いを零すエリルとそれを見て笑うアリス。戦場の真ん中で少しだけ気が抜けたような気がして、だがしかし。
「うむ、見事なり」
重低音の、押しつぶされそうなほど重いが響いた。その瞬間、2人の背筋が凍りつくのがわかった。射殺すように冷たい殺気、意識せずとも放出する強者の威厳、そんな重圧の塊が背後に突如として出現した。振り返りたくない、本音を言えばそうだった。しかし、さすがは神狼、そして戦場を体験した人間か。体はまだ動き、その視線が背後へと移された。
「お前は.........いや、なんでこんな所に......っ!」
エリルが苦虫を噛み潰したような表情をする。彼は神に仕えていた身であり、神のことはそれほどには知っている。だが、今目の前に浮遊している神は無知であろうとも名前ぐらいは聞いたことがあるだろうという者。つまりはそれほど名が知れ渡っており、名が知れ渡っているということはそれほどの強者であるということ。
「ほう、聞いたことがある声と思えばニルフィーナの眷属では無いか。久しいな?」
「剣神カルヴァン.......ッ!!」
視線が思いを代弁するかのように、エリルはカルヴァンを睨んだ。
「良い、相変わらずその目は腐れてないようだな」
「なんでお前がここにっ!」
「当然、この神樹を切り倒すためだ。だが、邪魔をするのであれば殺すぞ」
「殺せるならねっ!!」
エリルがグラディースを構え突進する。その剣は鮮やかな弧を描きながらカルヴァンの首筋へと吸い込まれていく、がしかし。
カァン!
まるで金属に打ち付けられたかのような軽い音が返り、エリルは目を見開いた。
「なっ..........!」
「奇襲にしては軽すぎるな、ふざけているのか?」
その神剣、グラディースをカルヴァンは手刀で止めていた。この程度、剣を抜く必要も無い、と。
「エリル君どいてっ!!」
その声にエリルが後退した瞬間、合間を縫うようにしてアリスが斬細剣フレスロアの斬撃を放つ。不意打ちにもかかわらずカルヴァンはそれら全てを手刀で捌いたが、その手の表皮は切り裂かれ、流血していた。
「ほう、手刀とはいえ我が神体を傷つけるとはな」
「こっちは文字通りの死ぬような訓練してるのよ!」
音を置き去りにするアリスの剣擊に、続けてカルヴァンはもう片方の手刀で対応する。だが、次も先ほどと同じく手から流血が垂れていた。
「なるほど、偶然ではなかったのか」
「よそ見してる場合っ!?」
「クク.........面白い!」
キィン!
瞬間、金属音が響いた。アリスの手には斬細剣フレスロアが、そしてカルヴァンの手にも血が塗られたように紅い紅蓮の剣が握られていた。首元に迫ったアリスの剣を薙ぎ払いで跳ね返したが、アリスはそのまま宙で回転して地面に着地する。
「まさか人のレベルで我に剣を抜かせる者がいるとはな。驚いたぞ」
「あら、その程度のレベルでふんぞり返ってたの?程度が知れるわね?」
「先程のは様子見だ、勘違いするな」
するとカルヴァンは舞うようにしてその剣を宙へと滑らせた。
「血睿剣ログザリア、我が忠実なる神剣よ」
それでもなおアリスの表情は変わらない。神剣と言えど剣であることに変わりはなく、フレスロアに付与された『魔壊』の効果は効く。相手がどんな能力を持っていようと、それをフレスロアにて叩き斬る、彼女の脳内はそれだけだった。
故に地面を蹴る。そうして接近したアリスに、カルヴァンは口角を釣りあげ。刹那、紅い槍が近距離でアリスへ飛来した。
「ッ!?」
エリルも顔負けの恐るべき反射神経でそれを叩き切ったアリスは、警戒のために距離を取った。その頬には冷や汗が垂れる。
「ほう、初見で躱したか」
「な、何今の.....!?」
「我が神剣、血睿剣ログザリア、文字通り血を操る。先程のは我の血を利用して作った槍よ」
「2つ武器とか騎士精神の欠けらも無いわね..........」
「強者には強者の戦い方がある。当然よな」
「剣神なんて聞いて呆れるわね。それでも剣の神様かしら?」
煽るように嘲笑するアリスを、しかしカルヴァンは気にしない。それでもなおアリスが続ける。
「あなたの本当の剣は、おそらく後ろのエリル君にも届かないわよ」
「ッ!」
――図られた
そう気づいた時にはもう既にエリルが近距離まで接近していた。迫る斬撃にカルヴァンは自身の剣を以て防御する。グラディースが接触時に爆風を巻き起こした。最初から全力で叩き切ると言うという意思表示のように。
「僕の事忘れてないよね?」
「ちぃ、犬風情が!」
「行くよカルヴァン、今の時点でお前に届くのか、試させてもらう!」
その神狼の眼は真っ直ぐにカルヴァンを捉え、固く言い放った。
さっむ!布団からコンニチワ、作者さんです。一応この戦いがこの章最後の戦闘シーンかな、と思ったりしてます。予定では、ですけどね。
頑張って年明けまでにはこの章を終わらせたいです。
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