能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.63 エリルVSジルヴァ
金属音が響く。死体が辺りに転がるその場所で、ただひたすらに金属音が響く。打ち合うのは仮面の少年と筋骨隆々の男、エリルとジルヴァだ。戦況でいえば互角といったところだろうか、今はそう見える。
「はぁッ!」
「フンッ!」
エリルの振り下ろしとジルヴァの横薙ぎがぶつかり合う。キィン!とけたたましい音を立てながら両者の獲物は拮抗し合っており、一方に引く気配がない。
「なかなかやるな」
「そりゃどうも〜」
「だが...........」
ジルヴァがそう言い溜めると、瞬時に黒塗りの刀が消える。直後、何かを感じたエリルがバックステップで距離を取ると、先程までエリルがいた場所を刀が通過していた。通常で見れば避けたと思った一撃は、しかし。
パキンッ!
そんな音を立ててエリルの仮面が縦に両断され、地面に破片が落ちた。
「ッ.........!」
「.........闇塗り『影移し』。当てたと思ったがな」
「術者の意図によって変わる常闇の刻印。...........厄介だね」
顕になった顔で苦虫を噛み潰したような表情をする。
『エリルさん!大丈夫ですか!?』
『うん、大丈夫だよ。.........それよりも、ミナさんは相手の魔法の穴を見て欲しい。そして分かったら直ぐに僕に伝えて』
『わ、分かりました!』
直後、仮面の奥でミナが『透視の光眼』を発動させた。それに伴ってエリルもまた剣を構える。
「影塗り『現身』」
ジルヴァの横に魔法陣が出現したかと思うと、その魔法陣がゆっくりと上へ動き、もう一人のジルヴァを出現させた。
「奇怪なことをするね」
「手早く終わらせる。行くぞ」
その言葉を以て互いに走り出した。ジルヴァは交互に位置を入れ替えながら接近し、エリルは直上を進む。1人目のジルヴァとエリルの武器が交差する。直後、首を狙ったもう1人のジルヴァの攻撃をしゃがんでよけ、蹴りを入れながら後退した。だがまだ攻撃は終わらない。左、右、交互に繰り出される剣戟はエリルのローブを僅かながらに裂いて行く。
『エリルさん!分身は右、首を狙ってください!』
『分かった!ありがとう!』
だがしかし、エリルも避けるだけではない。ミナの解析を待っていたのだ。支持を受けたエリルは左のジルヴァの剣を弾き返すと、右の懐へ一瞬で踏み込み腹部を殴打し、怯んだところを上段から振り下ろした剣が首を両断した。すると、だんだんと像が薄くなっていき、やがて消えた。
「ほう、俺の『現身』を破るか」
直後、その視線がエリルの少し後ろにいるミナに向く。
「なるほど、その眼か」
そういうが早く、ジルヴァの刀がミナに飛来する。咄嗟の事に体が硬直したミナは回避行動を取れず、ただ刀を待つのみの状況となる。その刀が眼を切りさこうと言う時、その眼を守るようにしてエリルの腕が水平に上がる。そして
「っ!」
「.......ほう?」
エリルの片腕の表皮を刀が切り裂いた。鮮血がミナの仮面と辺りに飛び散る。打ち返そうと剣を振ると、ジルヴァは後退した。
「痛ッ............」
「エリルさん!」
「大丈夫だよ。問題ないから」
「ご、ごめんなさい。私が油断したばっかりに..............」
「気にしないで。今は腕の回復よりさきにあいつを倒すことに専念しよう」
エリルはだらんと下がった左腕を庇うことなく右手で剣を構える。その光景をミナは心配した表情で見守り、ジルヴァは鼻で笑った。
「その状態で何が出来る?」
「出来るさ。元々片腕だけでも君を倒せる」
「満身創痍の足掻きというわけか?、面白い。来い」
直後。エリルが地面を蹴る。しかしその速度は先程とは全く以て比べ物にはならず、速い。あっという間に懐に潜り込んだエリルが下段から振り上げた剣をを、ジルヴァは紙一重で避けた。
「何っ!?」
「手負いだからって舐めないでもらいたいね」
軽々と空中を剣が舞う。エリルが繰り出していく乱舞が、どんどんとジルヴァを追い詰めていき、どんどんと戦況はエリル有利に傾いていく。
「はぁッ!」
「なんのっ!」
再び打ち合う剣と刀。エリルの乱舞に対して、ジルヴァの刀撃。ミッドレンジでは明らかに有利な刀が、しかし押されている。それは、片腕を無力化された瞬間から明らかに戦闘スタイルが変わったエリルのせいだ。
「君、身体強化の魔法を使ってるよね?」
「..........何?」
「僅かながらに魔法の発動が見えたからね。君の腕は強化魔法での補助もあるんだよね?」
「当然だろう。まぁ、貴様もこの身体強化についてこられるだけの魔法を..........」
と、続けようとした瞬間、エリルの剣がジルヴァの刀と打ち合っている状態からそのままジルヴァごと吹き飛ばした。なんとか空中で一回転し、地面に着地したジルヴァは体勢を立て直す、が、しかし。
「あはは、魔法?なにそれ?」
「何だと?」
「君さ、僕がいつ、『魔法を使った』なんて言ったのさ?」
「騙しのつもりか?悪いがそんな手には..........」
「嘘じゃないよ」
キッパリと、明確にエリルはそう言い捨てた。
「君程度のスピードに僕がついてこられない?、頭に乗るのも大概にしなよ。君は僕を見くびりすぎだよ」
「あ、ありえんっ!なんの魔法も使わず生身の身体能力で俺についてくるなど、断じて..........」
「ありえる。今ここに僕がいるだろ?」
まるで嘲笑うかのような視線が、ジルヴァに突き刺さる。その視線を受けて、ジルヴァはふるふると震わせている右手を構え、そして突っ込んできた。
「ふざ............けるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮混じりの我を忘れた突進はしかし。
――その滑稽な姿にエリルは笑みを乗せ。
「その感情が君の敗因だ」
――地を蹴り剣を構え。
「参ノ太刀、『瞬』」
――無慈悲に刈り取る。
いつの間にかジルヴァの背後にいたエリルが剣を納刀するのと同時期、パキンッ!と刀が半ばから折れ、膝立ちになったジルヴァの体が大量の鮮血を辺りに吹き散らした。
ドサッと前のめりに倒れたジルヴァに振り返ったエリルは何の感情もない笑みを見せ。
「強さも覚悟も足りなかったね」
まるで弱者に諭すようにその言葉は空間へ消えていった。
エリル強いですね〜。お察しかもしれませんがあと3連戦あります。
「はぁッ!」
「フンッ!」
エリルの振り下ろしとジルヴァの横薙ぎがぶつかり合う。キィン!とけたたましい音を立てながら両者の獲物は拮抗し合っており、一方に引く気配がない。
「なかなかやるな」
「そりゃどうも〜」
「だが...........」
ジルヴァがそう言い溜めると、瞬時に黒塗りの刀が消える。直後、何かを感じたエリルがバックステップで距離を取ると、先程までエリルがいた場所を刀が通過していた。通常で見れば避けたと思った一撃は、しかし。
パキンッ!
そんな音を立ててエリルの仮面が縦に両断され、地面に破片が落ちた。
「ッ.........!」
「.........闇塗り『影移し』。当てたと思ったがな」
「術者の意図によって変わる常闇の刻印。...........厄介だね」
顕になった顔で苦虫を噛み潰したような表情をする。
『エリルさん!大丈夫ですか!?』
『うん、大丈夫だよ。.........それよりも、ミナさんは相手の魔法の穴を見て欲しい。そして分かったら直ぐに僕に伝えて』
『わ、分かりました!』
直後、仮面の奥でミナが『透視の光眼』を発動させた。それに伴ってエリルもまた剣を構える。
「影塗り『現身』」
ジルヴァの横に魔法陣が出現したかと思うと、その魔法陣がゆっくりと上へ動き、もう一人のジルヴァを出現させた。
「奇怪なことをするね」
「手早く終わらせる。行くぞ」
その言葉を以て互いに走り出した。ジルヴァは交互に位置を入れ替えながら接近し、エリルは直上を進む。1人目のジルヴァとエリルの武器が交差する。直後、首を狙ったもう1人のジルヴァの攻撃をしゃがんでよけ、蹴りを入れながら後退した。だがまだ攻撃は終わらない。左、右、交互に繰り出される剣戟はエリルのローブを僅かながらに裂いて行く。
『エリルさん!分身は右、首を狙ってください!』
『分かった!ありがとう!』
だがしかし、エリルも避けるだけではない。ミナの解析を待っていたのだ。支持を受けたエリルは左のジルヴァの剣を弾き返すと、右の懐へ一瞬で踏み込み腹部を殴打し、怯んだところを上段から振り下ろした剣が首を両断した。すると、だんだんと像が薄くなっていき、やがて消えた。
「ほう、俺の『現身』を破るか」
直後、その視線がエリルの少し後ろにいるミナに向く。
「なるほど、その眼か」
そういうが早く、ジルヴァの刀がミナに飛来する。咄嗟の事に体が硬直したミナは回避行動を取れず、ただ刀を待つのみの状況となる。その刀が眼を切りさこうと言う時、その眼を守るようにしてエリルの腕が水平に上がる。そして
「っ!」
「.......ほう?」
エリルの片腕の表皮を刀が切り裂いた。鮮血がミナの仮面と辺りに飛び散る。打ち返そうと剣を振ると、ジルヴァは後退した。
「痛ッ............」
「エリルさん!」
「大丈夫だよ。問題ないから」
「ご、ごめんなさい。私が油断したばっかりに..............」
「気にしないで。今は腕の回復よりさきにあいつを倒すことに専念しよう」
エリルはだらんと下がった左腕を庇うことなく右手で剣を構える。その光景をミナは心配した表情で見守り、ジルヴァは鼻で笑った。
「その状態で何が出来る?」
「出来るさ。元々片腕だけでも君を倒せる」
「満身創痍の足掻きというわけか?、面白い。来い」
直後。エリルが地面を蹴る。しかしその速度は先程とは全く以て比べ物にはならず、速い。あっという間に懐に潜り込んだエリルが下段から振り上げた剣をを、ジルヴァは紙一重で避けた。
「何っ!?」
「手負いだからって舐めないでもらいたいね」
軽々と空中を剣が舞う。エリルが繰り出していく乱舞が、どんどんとジルヴァを追い詰めていき、どんどんと戦況はエリル有利に傾いていく。
「はぁッ!」
「なんのっ!」
再び打ち合う剣と刀。エリルの乱舞に対して、ジルヴァの刀撃。ミッドレンジでは明らかに有利な刀が、しかし押されている。それは、片腕を無力化された瞬間から明らかに戦闘スタイルが変わったエリルのせいだ。
「君、身体強化の魔法を使ってるよね?」
「..........何?」
「僅かながらに魔法の発動が見えたからね。君の腕は強化魔法での補助もあるんだよね?」
「当然だろう。まぁ、貴様もこの身体強化についてこられるだけの魔法を..........」
と、続けようとした瞬間、エリルの剣がジルヴァの刀と打ち合っている状態からそのままジルヴァごと吹き飛ばした。なんとか空中で一回転し、地面に着地したジルヴァは体勢を立て直す、が、しかし。
「あはは、魔法?なにそれ?」
「何だと?」
「君さ、僕がいつ、『魔法を使った』なんて言ったのさ?」
「騙しのつもりか?悪いがそんな手には..........」
「嘘じゃないよ」
キッパリと、明確にエリルはそう言い捨てた。
「君程度のスピードに僕がついてこられない?、頭に乗るのも大概にしなよ。君は僕を見くびりすぎだよ」
「あ、ありえんっ!なんの魔法も使わず生身の身体能力で俺についてくるなど、断じて..........」
「ありえる。今ここに僕がいるだろ?」
まるで嘲笑うかのような視線が、ジルヴァに突き刺さる。その視線を受けて、ジルヴァはふるふると震わせている右手を構え、そして突っ込んできた。
「ふざ............けるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
咆哮混じりの我を忘れた突進はしかし。
――その滑稽な姿にエリルは笑みを乗せ。
「その感情が君の敗因だ」
――地を蹴り剣を構え。
「参ノ太刀、『瞬』」
――無慈悲に刈り取る。
いつの間にかジルヴァの背後にいたエリルが剣を納刀するのと同時期、パキンッ!と刀が半ばから折れ、膝立ちになったジルヴァの体が大量の鮮血を辺りに吹き散らした。
ドサッと前のめりに倒れたジルヴァに振り返ったエリルは何の感情もない笑みを見せ。
「強さも覚悟も足りなかったね」
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