能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.49 魔術師は尾行する
数日後、とある話が教室にいる生徒達の会話の大半だった。
「ふむ、最近騒がしくなってきたな」
「聖夜の舞踏会らしいね」
「何だ?それは」
「我がリンドハイム王国のミシェルダ大聖堂で行われるダンスパーティーのことですよ。うちの学園は希望者がいれば参加できる制度となっています」
エリルへの質問にミナが返す。それを聞いてエリルは少し面白そうにミナの方を向いた。
「へぇ〜、社交ダンス?」
「そうですね。2人1組、もちろん男女の組となるのですが、大抵の参加者が貴族層なのでご婦人ばかりでかなり質が高いのですよ」
「よく知っているんだな?」
「はい。私も今年から参加するように父上から言い渡されまして、お兄様と兄妹で出ることになっています」
「へぇ〜そうなんだ」
エリルの反応にミナは少しだけ悲しそうな表情をしたような気がしたが、まぁ気の所為だろう。さて、俺にしてみれば特に関係はないな。
「じゃあ聖夜の所以はなんなんだ?」
「まさにその日が聖なる日だからですよ。最近肌寒くなってきましたよね?ちょうど2ヶ月後の事なのですが、その頃には雪が降り積もって、この舞踏会は1番雪が降り積もる日に開催されるのです。光魔法でのライトショーもあって凄いんですよ!」
嬉々として語るミナにエリルは微笑んでいる。たしかに少し微笑ましくは思うな。
「それは面白そうだね」
「ですよね!エリルさんも一緒に..........あ、でも私は既に...........ごめんなさい!」
「なんか僕、知らないうちに振られちゃった?」
「さぁな。俺はそういうのには興味ないからな」
「ち、違います!わ、私もエリルさんなら喜ぶんですけど...........兄と一緒に出なければならなくて............」
「いいよいいよ、気にしてないから。にしても面白そうじゃない?クルシュ〜」
「俺に女装の趣味はないぞ」
「クルシュ結構行けるんじゃない?」
「やろうとしたら凍結魔術使うからな」
「怖い怖い。手出ししないよ〜」
おちゃらけたポーズで応対するエリルと俺の光景を見たミナは少し笑う。
「お二人共、本当に仲がよろしいですね」
「長い付き合いだからねぇ。必然的というかなんというかね」
「腐れ縁だったりもするがな」
そう言われたエリルはやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。なおもその光景をミナはニコニコしながら見ている。
「本当にお二人は面白い方々ですね。............少し、羨ましいです」
一瞬だがその表情が悲しいものに変わる。そしてすぐに元の笑顔になり一礼して戻って行った。
「人間って複雑だね〜」
「お前にしてみれば今更だろう」
「まぁね。見飽きたってのが本音かな」
「まぁいい。そら、次の授業だ」
丁度話していると次の授業担当の先生が入室して授業が始まった。そして放課後。
「クルシュはこれからどうする?」
「少し気になることがあってな、先に帰っておけ」
「いや、僕も行こう。君の考えてる事は何となく分かるからね」
「ならアリスには言っておかなければな」
隣のクラスのアリスに私用とだけ伝え学園を出た。少し前方に一人の少女を望みながら、俺とエリルは街道を歩いていた。
「いやー、まさかクルシュにストーカー性質があるとはね」
「変なことは言うものじゃないぞ。俺は別に恋心なんて抱いていないからな」
「ホントかな〜?」
ニヤニヤとこちらを見てくるエリルを全面的に無視しながら前方の少女の行動を観察する。なおもその少女は変わらず街道を進んでいた。
「むしろ興味があるのはお前の方なんじゃないか?」
「興味はあるけどね、んー、どうなんだろ」
「ハッキリとしないな。珍しい」
「なんかあの子に対しては感覚が変わるんだよね。あ、もちろんクルシュと話してる時もだよ」
「そうか。ふむ、お前にしては珍しいこともあるものなんだな」
前方の少女、金髪ロングの後ろ姿はとても様になっている。その少女、ミナを俺とエリルは尾行している。すこし休み時間の表情が気になったためだ。
「クルシュ、あれ見てよ」
エリルが指さした前方、ミナが誰かと話している。いや、その顔は見たことがある。長身で赤髪銀眼のその男は、確か入学式でミナと共に視線を集めていた王族か。
「やぁミナ。今日も定刻通りだね」
「お兄様も今日は早かったのではないですか?」
「いやいやそんな。愛する妹のために早く学園を出るのは当たり前だからね」
そう言いながら男は肩をすくめる。その様子にミナは愛想笑いで返しクルっと踵を返す。
「では帰りましょう、アイル兄様」
「ん?珍しいね名前で呼ぶなんて。............って、お〜い、待ってくれよ〜」
そう言いながらアイルと呼ばれた男はミナの後ろを追いかけていく。これではどちらが上かわかったもんじゃないとは思うが。
「追いかける?」
「いや、今日はここまでだ。...........にしても、そうか」
「んー、君の言いたいことは何となくわかるよ」
「それを承知で言うがあのアイルという男、魔力の流れがおかしかった」
「それは僕も感じた。なんというか異質だったよ」
「確かAクラスだったか。アリスとリアには注意を促しておく方がいいだろう」
「そだね。じゃ帰ろっか」
「ああ。興味本位で来てみたが少し収穫はあった」
そう言いながら転移魔術で家へと戻った。扉の先ではアリス、そしてリアが椅子に座っていた。
「おかえり、クルシュ君、エリル君」
「おかえりなさい、お邪魔してるわ」
「珍しいね。なにか心境の変化でもあった?」
「心外ね、私だって来たい時は来るわ」
そう言いながらそっぽを向いてしまった。俺はそのままリアの横に座り、エリルがアリスの横に座った。
「そういえばお前達のクラスにアイルという男がいるだろう?」
「あぁ、アイル・リンドハイムね。いるけどそれがどうかしたのかしら?」
「特にという訳ではないが注意している方がいい。少し今日探ってきてな」
すると不思議そうにアリスが言う。
「なんで?普通にクラスじゃ皆から好印象だけど」
「念の為だ。少し警戒しておいてくれ」
「...........また、何かあるの?」
心配そうにリアが言う。
「今は僕達でもそれは推測しかねるよ。でも何か怪しいんだよね〜」
「まぁ警戒しておくに越したことはないという事だ」
納得しないような表情で2人は頷いた。さて、俺の方でも少しばかり警戒しておいた方がいいかもしれんな。先のリアの件がある、また帝国か、それとも魔族単体なのか。今はまだ分からないけどな。
お待たせしました、作者さんです。
大まかな内容が定まらなくて四苦八苦してたんですよねぇ。なんとか書けたので次の話もお楽しみにしていただければ幸いです。
それにしても今回の黒幕は一体どんなかませなのか..........。
「ふむ、最近騒がしくなってきたな」
「聖夜の舞踏会らしいね」
「何だ?それは」
「我がリンドハイム王国のミシェルダ大聖堂で行われるダンスパーティーのことですよ。うちの学園は希望者がいれば参加できる制度となっています」
エリルへの質問にミナが返す。それを聞いてエリルは少し面白そうにミナの方を向いた。
「へぇ〜、社交ダンス?」
「そうですね。2人1組、もちろん男女の組となるのですが、大抵の参加者が貴族層なのでご婦人ばかりでかなり質が高いのですよ」
「よく知っているんだな?」
「はい。私も今年から参加するように父上から言い渡されまして、お兄様と兄妹で出ることになっています」
「へぇ〜そうなんだ」
エリルの反応にミナは少しだけ悲しそうな表情をしたような気がしたが、まぁ気の所為だろう。さて、俺にしてみれば特に関係はないな。
「じゃあ聖夜の所以はなんなんだ?」
「まさにその日が聖なる日だからですよ。最近肌寒くなってきましたよね?ちょうど2ヶ月後の事なのですが、その頃には雪が降り積もって、この舞踏会は1番雪が降り積もる日に開催されるのです。光魔法でのライトショーもあって凄いんですよ!」
嬉々として語るミナにエリルは微笑んでいる。たしかに少し微笑ましくは思うな。
「それは面白そうだね」
「ですよね!エリルさんも一緒に..........あ、でも私は既に...........ごめんなさい!」
「なんか僕、知らないうちに振られちゃった?」
「さぁな。俺はそういうのには興味ないからな」
「ち、違います!わ、私もエリルさんなら喜ぶんですけど...........兄と一緒に出なければならなくて............」
「いいよいいよ、気にしてないから。にしても面白そうじゃない?クルシュ〜」
「俺に女装の趣味はないぞ」
「クルシュ結構行けるんじゃない?」
「やろうとしたら凍結魔術使うからな」
「怖い怖い。手出ししないよ〜」
おちゃらけたポーズで応対するエリルと俺の光景を見たミナは少し笑う。
「お二人共、本当に仲がよろしいですね」
「長い付き合いだからねぇ。必然的というかなんというかね」
「腐れ縁だったりもするがな」
そう言われたエリルはやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。なおもその光景をミナはニコニコしながら見ている。
「本当にお二人は面白い方々ですね。............少し、羨ましいです」
一瞬だがその表情が悲しいものに変わる。そしてすぐに元の笑顔になり一礼して戻って行った。
「人間って複雑だね〜」
「お前にしてみれば今更だろう」
「まぁね。見飽きたってのが本音かな」
「まぁいい。そら、次の授業だ」
丁度話していると次の授業担当の先生が入室して授業が始まった。そして放課後。
「クルシュはこれからどうする?」
「少し気になることがあってな、先に帰っておけ」
「いや、僕も行こう。君の考えてる事は何となく分かるからね」
「ならアリスには言っておかなければな」
隣のクラスのアリスに私用とだけ伝え学園を出た。少し前方に一人の少女を望みながら、俺とエリルは街道を歩いていた。
「いやー、まさかクルシュにストーカー性質があるとはね」
「変なことは言うものじゃないぞ。俺は別に恋心なんて抱いていないからな」
「ホントかな〜?」
ニヤニヤとこちらを見てくるエリルを全面的に無視しながら前方の少女の行動を観察する。なおもその少女は変わらず街道を進んでいた。
「むしろ興味があるのはお前の方なんじゃないか?」
「興味はあるけどね、んー、どうなんだろ」
「ハッキリとしないな。珍しい」
「なんかあの子に対しては感覚が変わるんだよね。あ、もちろんクルシュと話してる時もだよ」
「そうか。ふむ、お前にしては珍しいこともあるものなんだな」
前方の少女、金髪ロングの後ろ姿はとても様になっている。その少女、ミナを俺とエリルは尾行している。すこし休み時間の表情が気になったためだ。
「クルシュ、あれ見てよ」
エリルが指さした前方、ミナが誰かと話している。いや、その顔は見たことがある。長身で赤髪銀眼のその男は、確か入学式でミナと共に視線を集めていた王族か。
「やぁミナ。今日も定刻通りだね」
「お兄様も今日は早かったのではないですか?」
「いやいやそんな。愛する妹のために早く学園を出るのは当たり前だからね」
そう言いながら男は肩をすくめる。その様子にミナは愛想笑いで返しクルっと踵を返す。
「では帰りましょう、アイル兄様」
「ん?珍しいね名前で呼ぶなんて。............って、お〜い、待ってくれよ〜」
そう言いながらアイルと呼ばれた男はミナの後ろを追いかけていく。これではどちらが上かわかったもんじゃないとは思うが。
「追いかける?」
「いや、今日はここまでだ。...........にしても、そうか」
「んー、君の言いたいことは何となくわかるよ」
「それを承知で言うがあのアイルという男、魔力の流れがおかしかった」
「それは僕も感じた。なんというか異質だったよ」
「確かAクラスだったか。アリスとリアには注意を促しておく方がいいだろう」
「そだね。じゃ帰ろっか」
「ああ。興味本位で来てみたが少し収穫はあった」
そう言いながら転移魔術で家へと戻った。扉の先ではアリス、そしてリアが椅子に座っていた。
「おかえり、クルシュ君、エリル君」
「おかえりなさい、お邪魔してるわ」
「珍しいね。なにか心境の変化でもあった?」
「心外ね、私だって来たい時は来るわ」
そう言いながらそっぽを向いてしまった。俺はそのままリアの横に座り、エリルがアリスの横に座った。
「そういえばお前達のクラスにアイルという男がいるだろう?」
「あぁ、アイル・リンドハイムね。いるけどそれがどうかしたのかしら?」
「特にという訳ではないが注意している方がいい。少し今日探ってきてな」
すると不思議そうにアリスが言う。
「なんで?普通にクラスじゃ皆から好印象だけど」
「念の為だ。少し警戒しておいてくれ」
「...........また、何かあるの?」
心配そうにリアが言う。
「今は僕達でもそれは推測しかねるよ。でも何か怪しいんだよね〜」
「まぁ警戒しておくに越したことはないという事だ」
納得しないような表情で2人は頷いた。さて、俺の方でも少しばかり警戒しておいた方がいいかもしれんな。先のリアの件がある、また帝国か、それとも魔族単体なのか。今はまだ分からないけどな。
お待たせしました、作者さんです。
大まかな内容が定まらなくて四苦八苦してたんですよねぇ。なんとか書けたので次の話もお楽しみにしていただければ幸いです。
それにしても今回の黒幕は一体どんなかませなのか..........。
コメント
ノベルバユーザー232154
それにしても今回の黒幕は一体どんなかませなのか..........。
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それにしても今回の黒幕は一体どんなかませ犬なのか..........。
ノベルバユーザー232154
噛ませ→噛ませ犬
でしょう
ノベルバユーザー232154
数日後、とある話が教室に渦巻いていた。
→
数日後、クラス内はとある話題で持ちきりだった。
侵害→心外
です