能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.37 魔術師はリアに付き合う
その翌日も、特に変わったこと無く放課後を迎えた。廊下が茜色に染まる中、俺はリアとその場所を歩いている。
「クルシュ、ちょっと付き合ってくれない?」
「いいが、どこへ行くんだ?」
「まぁついてきて」
俺が彼女に連れていかれたのは、外装から見て白を基調とした教会のような場所。確かセルシャーダ王立医院だったか。
「ここよ」
「何故俺を連れてきた?」
「いいから」
彼女は短く言葉を切って中に入って行く。廊下を抜け、1つの病室に入室した。そこには弱々しくもまだ生気のある顔を浮かべる一人の女性がいた。リアと同じ朱色の髪、その肌はとても白く、弱っている姿からでも分かる、元は綺麗な容姿をしていたのだろう。
「お母さん、来たわよ」
リアは彼女の手を握り話しかける。しかし返ってくる言葉はない。意識ここに在らずという事だろう。
「............お母さんはね、数年前から病気を患ってるの」
「それは現代の医学じゃ治せないのか?」
「治ってたらこんな所にはいないわ。............こんな所になんか」
ふむ、どうやら訳ありらしい。しかし状態から見て衰弱しか確認できない、医学的に見ても単純に体が弱いというわけでもなさそうだしな。
「衰退病、これが私のお母さんの病気。日に日に弱って行って、最後には苦しみながら死ぬ結末が待っているらしいわ」
衰退病か、聞いたことがないな。少なくとも俺の時代にそんな病はなかった。そんな病があったとしたら俺は目をつけていたはずだからな。
「発病から少しの間は元気にしてたんだけどね、だんだん年が経つにつれて衰弱して行って、今は意識も失って喋ることすら出来ない。こうなったのが1年前よ」
しかしおかしいな、衰弱しているのはそうだが魔力の乱れもない、体内の疾患もない。細胞組織もしっかりと正常に働いている。衰退病というよりは毒で弱らされているようなそんな感覚だな。まだここでは言わないでおくか。
「治す方法は解明中らしいけど、もうすぐ見つかるとは言っていたわ」
「良かったじゃないか。助かるかもしれないぞ」
「............助かったらいいけどね」
「まぁその時は俺が治してやろう」
「本当に出来そうだから怖いわね。ごめんなさい、少し外すわ」
リアはそのまま出ていった。俺は現在進行形で衰弱している体に逆証魔術をかけてみる。するとやはりと言うべきか、何かの術式が霧散した。苦しんでいた顔がとても楽な表情になり、穏やかに眠るようになった。
恐らく状態異常、それも徐々に蓄積される系の毒だな。おそらく治療と称した毎に隠蔽魔法でも使いながら蓄積させて行ったんだろう。ふむ、少し泳がせておくか、なにか釣れそうだからな。
「お待たせ」
「別に待ってはいないがな。お前の母親、すこし楽になったように見えるぞ」
「え?あ、本当だ...........」
リアはその様子に少し安心したような表情を浮かべる。
「それじゃあまた来るわね、お母さん」
そう言ったリアと共に医院を出た。街道を歩く最中、先を行ったリアが振り返りこちらを見た。
「ね、クルシュ。前に帝国のこと話したわよね?」
「ああ。それがどうした?」
「最近過激になってきてるって話よ。知らない?」
「聞いたことないが?」
「やっぱりまだウチしか知らないのかしら。ちょっと来て」
そう言って俺を近くの喫茶店に連れていったリアは対面に座りさっきの話を続けた。
「最近何だか帝国の方が騒がしいの」
「お前のところはスパイでも送り込んでるのか?」
「まぁ、ちょっとね。で、近々リンドハイムを襲撃する計画を立ててるみたいに聞いたわ」
「ふむ。まぁたしかにやりそうではあるな」
「だから気をつけてた方がいいと思って」
「何故俺にそれを言う?普通もっと上の階級のやつだろう?」
「どうせ言っても相手にされないもの。なら相手にしてくれる人に言う方がいいでしょ?」
まぁ別におかしいことは無いが俺は何もする気がないのだがな。
「つまり俺の魔法で倒せ、と?」
「襲撃してきたら守るくらい出来るでしょ?」
「まぁ造作もないが」
「だからもしもの時は守ってね、って事」
リアがこんな事を言うところを見たことは無いが、今日はやけに大人しいな。
俺が少し驚いているとリアがジト目でこちらを凝視する。
「何よ、その顔」
「いや、そんなことも言うのかと思ってな」
「失礼ね!」
「まぁいい。そういえば先程からメニューを凝視しているが?」
「ばっ、ち、違うわよ!べ、別に欲しいとかじゃ..........」
「そうだな、3品までなら許してやろう。今日は色々と個人的には楽しめたからな」
「じゃ。じゃあお言葉に甘えて............」
その後甘いものを堪能したリアと俺はその場で別れた。
クルシュは何を楽しめたんですかねぇ..........。そして今回から登場したリアのお母さん。そしてリアから教えてもらった帝国の襲撃。さてさて、何が起こるのでしょうか?
「クルシュ、ちょっと付き合ってくれない?」
「いいが、どこへ行くんだ?」
「まぁついてきて」
俺が彼女に連れていかれたのは、外装から見て白を基調とした教会のような場所。確かセルシャーダ王立医院だったか。
「ここよ」
「何故俺を連れてきた?」
「いいから」
彼女は短く言葉を切って中に入って行く。廊下を抜け、1つの病室に入室した。そこには弱々しくもまだ生気のある顔を浮かべる一人の女性がいた。リアと同じ朱色の髪、その肌はとても白く、弱っている姿からでも分かる、元は綺麗な容姿をしていたのだろう。
「お母さん、来たわよ」
リアは彼女の手を握り話しかける。しかし返ってくる言葉はない。意識ここに在らずという事だろう。
「............お母さんはね、数年前から病気を患ってるの」
「それは現代の医学じゃ治せないのか?」
「治ってたらこんな所にはいないわ。............こんな所になんか」
ふむ、どうやら訳ありらしい。しかし状態から見て衰弱しか確認できない、医学的に見ても単純に体が弱いというわけでもなさそうだしな。
「衰退病、これが私のお母さんの病気。日に日に弱って行って、最後には苦しみながら死ぬ結末が待っているらしいわ」
衰退病か、聞いたことがないな。少なくとも俺の時代にそんな病はなかった。そんな病があったとしたら俺は目をつけていたはずだからな。
「発病から少しの間は元気にしてたんだけどね、だんだん年が経つにつれて衰弱して行って、今は意識も失って喋ることすら出来ない。こうなったのが1年前よ」
しかしおかしいな、衰弱しているのはそうだが魔力の乱れもない、体内の疾患もない。細胞組織もしっかりと正常に働いている。衰退病というよりは毒で弱らされているようなそんな感覚だな。まだここでは言わないでおくか。
「治す方法は解明中らしいけど、もうすぐ見つかるとは言っていたわ」
「良かったじゃないか。助かるかもしれないぞ」
「............助かったらいいけどね」
「まぁその時は俺が治してやろう」
「本当に出来そうだから怖いわね。ごめんなさい、少し外すわ」
リアはそのまま出ていった。俺は現在進行形で衰弱している体に逆証魔術をかけてみる。するとやはりと言うべきか、何かの術式が霧散した。苦しんでいた顔がとても楽な表情になり、穏やかに眠るようになった。
恐らく状態異常、それも徐々に蓄積される系の毒だな。おそらく治療と称した毎に隠蔽魔法でも使いながら蓄積させて行ったんだろう。ふむ、少し泳がせておくか、なにか釣れそうだからな。
「お待たせ」
「別に待ってはいないがな。お前の母親、すこし楽になったように見えるぞ」
「え?あ、本当だ...........」
リアはその様子に少し安心したような表情を浮かべる。
「それじゃあまた来るわね、お母さん」
そう言ったリアと共に医院を出た。街道を歩く最中、先を行ったリアが振り返りこちらを見た。
「ね、クルシュ。前に帝国のこと話したわよね?」
「ああ。それがどうした?」
「最近過激になってきてるって話よ。知らない?」
「聞いたことないが?」
「やっぱりまだウチしか知らないのかしら。ちょっと来て」
そう言って俺を近くの喫茶店に連れていったリアは対面に座りさっきの話を続けた。
「最近何だか帝国の方が騒がしいの」
「お前のところはスパイでも送り込んでるのか?」
「まぁ、ちょっとね。で、近々リンドハイムを襲撃する計画を立ててるみたいに聞いたわ」
「ふむ。まぁたしかにやりそうではあるな」
「だから気をつけてた方がいいと思って」
「何故俺にそれを言う?普通もっと上の階級のやつだろう?」
「どうせ言っても相手にされないもの。なら相手にしてくれる人に言う方がいいでしょ?」
まぁ別におかしいことは無いが俺は何もする気がないのだがな。
「つまり俺の魔法で倒せ、と?」
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「まぁ造作もないが」
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リアがこんな事を言うところを見たことは無いが、今日はやけに大人しいな。
俺が少し驚いているとリアがジト目でこちらを凝視する。
「何よ、その顔」
「いや、そんなことも言うのかと思ってな」
「失礼ね!」
「まぁいい。そういえば先程からメニューを凝視しているが?」
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「じゃ。じゃあお言葉に甘えて............」
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