能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.35 魔術師はクランを作る
クラス内ではあちこちで会話の声が響いていた。それは1ヶ月後の集団戦、基集団戦実技のクランを作るためだ。クランとは、互いに互いを裏切らないという契約の元、奴隷魔法を使って行われる集団のことだ。
奴隷魔法と言われれば悪く聞こえるが、実際には主と従者という区分に分かれるために使われるだけであり、無理やり言うことを聞かせると言ったような行為は奴隷の首輪という魔法具をつけていないとできない。
クランの中で、主はそのクランを束ねる者、つまりは王だ。主はその魔力量や強さによって従者への力が供給される。弱ければ僅かに力が付与され、強ければ莫大なる力を得る。この主が殺られれば戦闘は終了とされ、従者へ供給される効力も消える。
一方の従者は、主から供給される力と自分の力を合わせ仕える存在で、人によってはその戦闘内で1番強くなる者もいる。基本的には主を殺りに行く存在だが、主を守ったりする事も出来る。要は戦闘の駒という事だ。ルールとしては昔にあった将棋という娯楽に似ている。
「主は魔力が一定以上ある者が好ましいな。それを考慮してクランを結成するといい」
まぁそうだろうな。主が弱ければ効力も弱くなる。当然だろう。しかし奴隷魔術にそんな使い方があったとはな、少し驚きだ。
「僕はクルシュのところに入るよ」
「つまり俺が主になれと?」
「僕はクルシュ以上に主にふさわしい人はいないと思うけど」
その言葉にクラス全体が俺を凝視する。エリルはその視線を一瞥するだけで黙らせる。
「無駄だお前ら。クルシュにそんな目を向けた所であいつがクルシュの下に入る事は変わんねぇよ」
そう言ったのはグレイだ。呆れたように肩を竦め、しかしその目は俺たちを見ていた。
「あ、グレイ。どう?」
「悪いが俺はクルシュを認めたわけじゃねぇ。そんなやつの下にはいるのはゴメンだ」
「うーん、まぁ本人が嫌なら僕は強制しないよ」
特に争うことも無く、二人の会話は終着した。その時、勢いよく前の扉が開かれた。
「失礼するわね。クルシュ・ヴォルフォードはここに居るかしら?」
「うん?リアではないか。いるぞ、クルシュは」
レオが俺を指さしその人物に言う。朱色の髪をたなびかせるその人物はリア、そしてその後ろにダークブラウンの髪の少女アリスが続く。そして俺の机の前に2人がたった。
「クルシュ、あなたのクランに私たちを入れてもらえる?」
「「はぁ!?」」
その声は俺とエリルとその他1名以外のクラス全員の声だった。ひそひそと声が聞こえてくる。
「あいつらって確か.........」
「Aクラスの美人2人組だろ?ほら、アリスさんとリアさんだよ」
「な、なんで実力派美女の二人があんな能無しに.........」
リアはその声のした方にキッと鋭い眼光をむける。するとひそひそと話した声は一瞬で静かになった。
「まず他クラスのクランに入れるのか?」
「入れるぞ。言ってなかったが人数は無制限、クラスは問わない。集団戦だからな、何もクラス外の人物が入ってはいけないというルールは無い」
「だ、そうよ。クルシュ」
ふむ、クラスは関係なく、人数も無制限か。まぁなんでもいいが、別に俺が主でなくてもいいだろうに。
「クルシュ君、お願いっ!」
「私からもお願いするわ」
「まぁ別に構わないが、俺でいいのか?」
「あなた以外のどこのクランに入れって言うのよ?」
「まぁなんでもいいが」
ふむ、さっきのルールだとアリスは予想できるがリアが?まぁ弱い者を嫌うと言っていたから俺は強い部類に入るのだろうが。
「なんであいつなんだ?」
「わ、分からねぇ。意味がわからねぇ.........」
「おい、また誰か行くぞ!」
「あ、あれって確か........」
その声の先にいるのは優雅に教室を歩く少女。金髪ロングに碧眼のその顔は、どこかで見たことがある。
「私もいいですか?」
「ん?お前は.........」
「覚えてないですか?ミナ・リンドハイムです」
「ああ、確か王族の第1皇女だったか」
「はい。私もクルシュさんのクランに入れてもらってもよろしいですか?」
ふむ、どういう風の吹き回しだ?貴族層は能無し刻印への差別は大きいと聞いたが?
「何故俺なんだ?しかも王族であるお前が」
「入学試験でのリアさんとの戦闘、見せていただきました。あんなすごい魔法を放つ人です、きっといい主になるでしょうから」
「不思議だな、お前は主の素質があると思うが?」
「王族はエリートと思われがちですが、そうでもありません。少なくとも私にはリーダーシップがありませんから」
「ふむ。まぁ俺はどうだっていいが。ミナ、刻印は?」
「金色ですよ」
「あ、私と同じね!」
ふむ、さすが王族と言ったところか。同期も別に怪しくはない。
「まぁいいか、分かった」
「ありがとうございます」
「ほら、お前達もしっかりクランを作るんだぞ。さっきも言ったがクラス間は自由だからな」
その声で再び視線は散り散りになる。と、そこでとある男子生徒が立ち上がった。グレイだ。
「クルシュ、俺はお前を認めたわけじゃない」
「俺の耳は馬以下じゃないぞ。知っているが?」
「必ず一ヶ月後にお前のクランを倒してみせる」
「ほう?勝算があるのか?」
「能無しに負けるほど俺は弱くない。叩きのめしてやる」
「では、首を洗って待っておくとしよう。楽しみにしているぞ」
2人の視線が交わり、クルシュはニヤッと笑った。
前回リアはアリスと仲良くなって良かったですねぇ〜。あ、どうも作者です。ついにクルシュは皇女も味方につけちゃいましたか........。そして案の定アリスとリア。さてさて、このあとどうなることでしょう。
奴隷魔法と言われれば悪く聞こえるが、実際には主と従者という区分に分かれるために使われるだけであり、無理やり言うことを聞かせると言ったような行為は奴隷の首輪という魔法具をつけていないとできない。
クランの中で、主はそのクランを束ねる者、つまりは王だ。主はその魔力量や強さによって従者への力が供給される。弱ければ僅かに力が付与され、強ければ莫大なる力を得る。この主が殺られれば戦闘は終了とされ、従者へ供給される効力も消える。
一方の従者は、主から供給される力と自分の力を合わせ仕える存在で、人によってはその戦闘内で1番強くなる者もいる。基本的には主を殺りに行く存在だが、主を守ったりする事も出来る。要は戦闘の駒という事だ。ルールとしては昔にあった将棋という娯楽に似ている。
「主は魔力が一定以上ある者が好ましいな。それを考慮してクランを結成するといい」
まぁそうだろうな。主が弱ければ効力も弱くなる。当然だろう。しかし奴隷魔術にそんな使い方があったとはな、少し驚きだ。
「僕はクルシュのところに入るよ」
「つまり俺が主になれと?」
「僕はクルシュ以上に主にふさわしい人はいないと思うけど」
その言葉にクラス全体が俺を凝視する。エリルはその視線を一瞥するだけで黙らせる。
「無駄だお前ら。クルシュにそんな目を向けた所であいつがクルシュの下に入る事は変わんねぇよ」
そう言ったのはグレイだ。呆れたように肩を竦め、しかしその目は俺たちを見ていた。
「あ、グレイ。どう?」
「悪いが俺はクルシュを認めたわけじゃねぇ。そんなやつの下にはいるのはゴメンだ」
「うーん、まぁ本人が嫌なら僕は強制しないよ」
特に争うことも無く、二人の会話は終着した。その時、勢いよく前の扉が開かれた。
「失礼するわね。クルシュ・ヴォルフォードはここに居るかしら?」
「うん?リアではないか。いるぞ、クルシュは」
レオが俺を指さしその人物に言う。朱色の髪をたなびかせるその人物はリア、そしてその後ろにダークブラウンの髪の少女アリスが続く。そして俺の机の前に2人がたった。
「クルシュ、あなたのクランに私たちを入れてもらえる?」
「「はぁ!?」」
その声は俺とエリルとその他1名以外のクラス全員の声だった。ひそひそと声が聞こえてくる。
「あいつらって確か.........」
「Aクラスの美人2人組だろ?ほら、アリスさんとリアさんだよ」
「な、なんで実力派美女の二人があんな能無しに.........」
リアはその声のした方にキッと鋭い眼光をむける。するとひそひそと話した声は一瞬で静かになった。
「まず他クラスのクランに入れるのか?」
「入れるぞ。言ってなかったが人数は無制限、クラスは問わない。集団戦だからな、何もクラス外の人物が入ってはいけないというルールは無い」
「だ、そうよ。クルシュ」
ふむ、クラスは関係なく、人数も無制限か。まぁなんでもいいが、別に俺が主でなくてもいいだろうに。
「クルシュ君、お願いっ!」
「私からもお願いするわ」
「まぁ別に構わないが、俺でいいのか?」
「あなた以外のどこのクランに入れって言うのよ?」
「まぁなんでもいいが」
ふむ、さっきのルールだとアリスは予想できるがリアが?まぁ弱い者を嫌うと言っていたから俺は強い部類に入るのだろうが。
「なんであいつなんだ?」
「わ、分からねぇ。意味がわからねぇ.........」
「おい、また誰か行くぞ!」
「あ、あれって確か........」
その声の先にいるのは優雅に教室を歩く少女。金髪ロングに碧眼のその顔は、どこかで見たことがある。
「私もいいですか?」
「ん?お前は.........」
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「はい。私もクルシュさんのクランに入れてもらってもよろしいですか?」
ふむ、どういう風の吹き回しだ?貴族層は能無し刻印への差別は大きいと聞いたが?
「何故俺なんだ?しかも王族であるお前が」
「入学試験でのリアさんとの戦闘、見せていただきました。あんなすごい魔法を放つ人です、きっといい主になるでしょうから」
「不思議だな、お前は主の素質があると思うが?」
「王族はエリートと思われがちですが、そうでもありません。少なくとも私にはリーダーシップがありませんから」
「ふむ。まぁ俺はどうだっていいが。ミナ、刻印は?」
「金色ですよ」
「あ、私と同じね!」
ふむ、さすが王族と言ったところか。同期も別に怪しくはない。
「まぁいいか、分かった」
「ありがとうございます」
「ほら、お前達もしっかりクランを作るんだぞ。さっきも言ったがクラス間は自由だからな」
その声で再び視線は散り散りになる。と、そこでとある男子生徒が立ち上がった。グレイだ。
「クルシュ、俺はお前を認めたわけじゃない」
「俺の耳は馬以下じゃないぞ。知っているが?」
「必ず一ヶ月後にお前のクランを倒してみせる」
「ほう?勝算があるのか?」
「能無しに負けるほど俺は弱くない。叩きのめしてやる」
「では、首を洗って待っておくとしよう。楽しみにしているぞ」
2人の視線が交わり、クルシュはニヤッと笑った。
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