能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は来世の世界を哀れみ生きる〜
EP.28 アリスの気持ち
レオがいなくなって十数分、俺はコーヒーを飲みながら魔導書をめくっている。あの家と同じ構造ながらやはり書斎もあり、本棚もあったのだが、中身は違った。まぁ俺としても既に読み飽きた本をまた並べられても困るから良いだろう。
それにしてもどの魔導書も酷い。的はずれな文章ばかりが載っているだけでなく術式に不備がありすぎるのだ。よくも周りの奴らはこんな不完全術式を使おうと思えるな。
「クルシュ君...........落ち着きすぎじゃない!?」
「ん?何がだ?」
「ここにいるの2人なのよ!?」
「そうだな?それが?」
「2人ってことは............ 」
そこでハッとしたように口を紡いだ。何か言いたい言葉があったようだがそれを我慢したような感じか。
「その...........間違いが起きてもおかしくないって言うか..............」
「俺とお前の間になんの間違いが起きるんだ?」
「いや、それは..........その..........」
みるみるうちにアリスの顔が赤くなっていく。数秒したら茹でダコの出来上がりとなっていた。
「何を考えているのか知らんがみだらな行為なら興味ないぞ」
「いやっ、あのっ、その.............」
「?、つくづく分からんな。何を赤くなる必要がある?」
「いや、それはその...........ちょ、ちょっと2階行ってくる!」
「ああ。15時頃には降りてこいよ」
その言葉を聞くが早いかアリスは2階に駆け上がってしまった。ふむ、つくづく女はわからん。
◇
駆け上がった先、寝室のドアをしめきりアリスは肩で息をしていた。
(な、なんで最近クルシュ君見てると熱いの!?)
アリスは自分の顔をドレッサーで見る。やはり頬を朱に染めて羞恥を表に出していた。
(で、でもそういう事じゃなくて..........。べ、別にクルシュ君と暮らせるのが嬉しいとかそんなわけじゃ..........)
果たして本当にそうだろうか?アリスは自分の心に自問自答する。この2年間、1番側で彼を見てきた。魔法を教える姿、勉強を教える姿、戦う姿、いつを取っても彼が自分の目の中で輝いていた。
(...........今日クラスが一緒じゃなくて、がっかりしてたの?私)
確かに同じクラスになれなくて、じゃあなと言われたあの時、心を締め付けられる感覚に襲われた。直接の傷はなくとも、痛かった、悲しかった、こんな運命を呪ってやりたかった。1番彼を見てきたのは自分で、いちばん彼を理解できるのは自分、そう思っていた。だから、クラスも同じになると信じていた。
(...............なんでかなぁ)
今更に、彼と一旦別れるのが辛い。彼の横で彼に名前を呼ばれたい。彼と顔を合わせたい、いつもいつまでも。彼の1番が、自分でありたい。
トクン、トクン、トクン
心臓が高鳴る。彼の事を思う度に顔が熱い、言葉が出ない。この辛さの正体を知っている。これが、彼に対してのどういう感情なのかも。
アリスは近くにあったベッドに身を投げ、仰向けになる。天井を見つめて、そして横になって目を瞑り、膝を抱く。
(私だって最初はこうじゃなかったもん................)
最初の印象は、自分に自信を持っていて、生意気で、それで................優しくて、楽しくて、格好良くて、賢くて、強くて、大人びてて..............。
(..........あれ?最初って、どんなだったっけ?)
分からない。もういっぱいありすぎて、悪いことなんか忘れた。それくらい、彼の全部が、頭に残っている。魔法を頑張って褒めてもらうとしたのも、学園に行くように仕向けたのも、入試試験を褒めて欲しかったのも、全部自分。それほど、彼と同じ場所に居たかったから。
(.............やっぱり、私は)
――私は、彼の事が...........
考えうる全ての可能性から導き出された答えは、果たして睡魔に襲われて意識は落ちた。暗闇の中でも、まだ彼の夢を見るアリスであった。
◇
時刻は既に夕方15時を示している。俺は魔導書に栞を挟み時計を確認すると、コーヒーを飲む。
「何やっているんだ?」
当然降りてこなければ不思議に思う。そこから10分待ってみたが、やはり降りてくることはなく。
さてさて、どうしたものか。まさか寝ているのか?そんなわけはないよな?まだ夕方の15時だぞ?一般的に言うおやつの時間だぞ?
(すこし上がってみるか)
俺は木造の階段を上がっていく。見事に2階の構造も同じで、このまま真っ直ぐで扉を開ければ寝室だ。
しかしアリスのことだ、ベッドで休んでいるうちに寝てしまうくらいはあるだろう。そしてそれが今回起きた、と考えるのが妥当か。
「入るぞ」
返事はない。俺が扉を開けると、まだ外は明るいと言うのに部屋には廊下からの明かりだけが差し込む。全体的に薄暗いその中で、ベットに横になって眠るダークブラウンの少女が。
全く、本当に手のやける。.........しかし、よくよく考えれば俺はまだ他人の寝顔というものを見た事がないな、どれ、少し観察してみるか。
アリスに近づいて顔を覗き込む。とても穏やかな表情で、静かに寝息を立てながら寝ている。俺もこんな寝方をしていたらよかったのだが、後でレオに聞いておこうか。
「アリス、起きろ。15時だぞ」
「ん、んん.........ん?」
俺が体を揺さぶると寝返りを打って仰向けになったアリスが俺の顔の近くに来る。今外からこの光景を見たものがいれば、俺はアリスを押し倒しているように見える、そんな体勢だ。
「クルシュ................君?」
「俺以外の顔に見えるならお前の目は腐ってるぞ」
俺がいつも通りの言葉を返すと、聞きなれない言葉が帰ってくることとなった。
「.................好き」
それにしてもどの魔導書も酷い。的はずれな文章ばかりが載っているだけでなく術式に不備がありすぎるのだ。よくも周りの奴らはこんな不完全術式を使おうと思えるな。
「クルシュ君...........落ち着きすぎじゃない!?」
「ん?何がだ?」
「ここにいるの2人なのよ!?」
「そうだな?それが?」
「2人ってことは............ 」
そこでハッとしたように口を紡いだ。何か言いたい言葉があったようだがそれを我慢したような感じか。
「その...........間違いが起きてもおかしくないって言うか..............」
「俺とお前の間になんの間違いが起きるんだ?」
「いや、それは..........その..........」
みるみるうちにアリスの顔が赤くなっていく。数秒したら茹でダコの出来上がりとなっていた。
「何を考えているのか知らんがみだらな行為なら興味ないぞ」
「いやっ、あのっ、その.............」
「?、つくづく分からんな。何を赤くなる必要がある?」
「いや、それはその...........ちょ、ちょっと2階行ってくる!」
「ああ。15時頃には降りてこいよ」
その言葉を聞くが早いかアリスは2階に駆け上がってしまった。ふむ、つくづく女はわからん。
◇
駆け上がった先、寝室のドアをしめきりアリスは肩で息をしていた。
(な、なんで最近クルシュ君見てると熱いの!?)
アリスは自分の顔をドレッサーで見る。やはり頬を朱に染めて羞恥を表に出していた。
(で、でもそういう事じゃなくて..........。べ、別にクルシュ君と暮らせるのが嬉しいとかそんなわけじゃ..........)
果たして本当にそうだろうか?アリスは自分の心に自問自答する。この2年間、1番側で彼を見てきた。魔法を教える姿、勉強を教える姿、戦う姿、いつを取っても彼が自分の目の中で輝いていた。
(...........今日クラスが一緒じゃなくて、がっかりしてたの?私)
確かに同じクラスになれなくて、じゃあなと言われたあの時、心を締め付けられる感覚に襲われた。直接の傷はなくとも、痛かった、悲しかった、こんな運命を呪ってやりたかった。1番彼を見てきたのは自分で、いちばん彼を理解できるのは自分、そう思っていた。だから、クラスも同じになると信じていた。
(...............なんでかなぁ)
今更に、彼と一旦別れるのが辛い。彼の横で彼に名前を呼ばれたい。彼と顔を合わせたい、いつもいつまでも。彼の1番が、自分でありたい。
トクン、トクン、トクン
心臓が高鳴る。彼の事を思う度に顔が熱い、言葉が出ない。この辛さの正体を知っている。これが、彼に対してのどういう感情なのかも。
アリスは近くにあったベッドに身を投げ、仰向けになる。天井を見つめて、そして横になって目を瞑り、膝を抱く。
(私だって最初はこうじゃなかったもん................)
最初の印象は、自分に自信を持っていて、生意気で、それで................優しくて、楽しくて、格好良くて、賢くて、強くて、大人びてて..............。
(..........あれ?最初って、どんなだったっけ?)
分からない。もういっぱいありすぎて、悪いことなんか忘れた。それくらい、彼の全部が、頭に残っている。魔法を頑張って褒めてもらうとしたのも、学園に行くように仕向けたのも、入試試験を褒めて欲しかったのも、全部自分。それほど、彼と同じ場所に居たかったから。
(.............やっぱり、私は)
――私は、彼の事が...........
考えうる全ての可能性から導き出された答えは、果たして睡魔に襲われて意識は落ちた。暗闇の中でも、まだ彼の夢を見るアリスであった。
◇
時刻は既に夕方15時を示している。俺は魔導書に栞を挟み時計を確認すると、コーヒーを飲む。
「何やっているんだ?」
当然降りてこなければ不思議に思う。そこから10分待ってみたが、やはり降りてくることはなく。
さてさて、どうしたものか。まさか寝ているのか?そんなわけはないよな?まだ夕方の15時だぞ?一般的に言うおやつの時間だぞ?
(すこし上がってみるか)
俺は木造の階段を上がっていく。見事に2階の構造も同じで、このまま真っ直ぐで扉を開ければ寝室だ。
しかしアリスのことだ、ベッドで休んでいるうちに寝てしまうくらいはあるだろう。そしてそれが今回起きた、と考えるのが妥当か。
「入るぞ」
返事はない。俺が扉を開けると、まだ外は明るいと言うのに部屋には廊下からの明かりだけが差し込む。全体的に薄暗いその中で、ベットに横になって眠るダークブラウンの少女が。
全く、本当に手のやける。.........しかし、よくよく考えれば俺はまだ他人の寝顔というものを見た事がないな、どれ、少し観察してみるか。
アリスに近づいて顔を覗き込む。とても穏やかな表情で、静かに寝息を立てながら寝ている。俺もこんな寝方をしていたらよかったのだが、後でレオに聞いておこうか。
「アリス、起きろ。15時だぞ」
「ん、んん.........ん?」
俺が体を揺さぶると寝返りを打って仰向けになったアリスが俺の顔の近くに来る。今外からこの光景を見たものがいれば、俺はアリスを押し倒しているように見える、そんな体勢だ。
「クルシュ................君?」
「俺以外の顔に見えるならお前の目は腐ってるぞ」
俺がいつも通りの言葉を返すと、聞きなれない言葉が帰ってくることとなった。
「.................好き」
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