死んだ幼馴染が幽霊になって帰ってきました

淳平

4話 前編

「新幹線なんて修学旅行ぶりじゃないかな。 やっぱり普通の電車に比べたら速いね。 ね、あっくん。 って聞いてるの?」

隣に座っている沙希に頬をつねられた。
痛い。 ということは夢ではない。
そう、夢ではないのだ。
信じられないが今、僕の隣には死んだはずの沙希がいる。
その姿は僕以外の人間には見えないけれど。

「ちょっと聞いてるのあっくん」

沙希は僕の耳元で大きな声でそう言った。

「……沙希、頼むから静かにしてくれ」
「え、何? 聞こえないよ」
「だから静かにしろって」

やや声を荒げてそう言い放ったと同時に我に返る。
気づくと僕が大声を出したからか周囲の視線が僕に集まっていた。

「す、すみません」
「もうあっくん、新幹線の中では静かにしなきゃダメだよ」
「……お前なあ」

そう、僕以外の人には沙希の姿は見えない。
だから今も僕がいきなり一人で大声を出したように他の人には映るのだ。
それからしばらくすると沙希は大人しく車窓から映る景色を眺めていた。
窓から刺す夏の日差しが眩しい。 
乗り初めは高層ビルばかり見えていたが次第に減っていき徐々に田んぼなど、田舎の景色が見えてきた。
僕と沙希の地元に近づきつつあった。
沙希の方に目を向けるといつの間にか眠りについていた。
騒ぎすぎて疲れたのだろう。 本当に眠ってる時は可愛いのにな。 起きている時は騒がしいたらない。
整った顔立ち。 顔のパーツのどれを取っても女の子の誰もが憧れるものを持っている。
ただそれだけじゃない。 それだけじゃない雰囲気というかオーラというか沙希にはそういった心が惹かれる何かがあった。
故に沙希はとにかくモテた。
日差しがさらに強くなってきたので僕は窓についているカーテンをそっと閉めた。
手元にある切符を見るとそこには僕と沙希の地元の名前が書いてあった。
そう、沙希が地元に行きたいと言い出したのだ。
月曜から仕事だから明日には帰らなければならない。
そんなことを考えていると沙希の頭が僕の肩に寄りかかってきた。
暖かい確かな温もり。 すーっと微かな寝息だって聞こえる。
確かに沙希は死んだ。 そして今は幽霊、いや猫の姿になって僕の隣にいる。 なんだか感覚が狂っているような気がした。
それからしばらくして僕たちの地元の駅へと到着した。


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