甘え上手な彼女2

Joker0808

第44話

 いよいよ優勝者の発表となり、高志と紗弥はステージに注目する。
 一体誰が優勝したのか、ここまで来ると高志も気になってきていた。
 しかし、なんとなくだが予想はついていた。

「今年度の浴衣美女コンテストの優勝者は………保永愛奈さん! おめでとうございます!!」

「やっぱりか……」

 紗弥が二位の時点で、優勝は恐らく愛奈だろうと高志は思っていた。
 流石に大人の女性である先生には勝てない。
 子供と大人では色気が違いすぎると思っていたので、この結果は高志にとっては納得だった。

「先生じゃ勝てないよ~」

「まぁ、あの人は普通に美人だしなぁ……って痛いです、紗弥さん」

「大丈夫、ヤキモチだから」

「何が大丈夫なの……」

 紗弥に足を踏まれながら、高志はステージを見る。
 しかし、ステージに愛奈の姿は無い。
 
「あれ? 先生来ないな」

「どうしたのかしら……」

 いつまでたってもステージに上がってこない愛奈。
 司会者も優勝者がステージに上がってこないので、戸惑っている。

「えっと……保永愛奈さん! いらっしゃいませんか?」

 司会者が愛奈を探していると、ようやく愛奈がステージにやってきた。
 しかし、愛奈は顔を真っ赤にして酔っ払っており、大石から肩を借りて壇上に上がってきた。

「すいません、ちょっと酔ってるので、早く終わらせて貰えますか」

「えっと……一応優勝者なので、一言欲しいのですが……」

 大石は愛奈に肩を貸しながら、司会者に説明する。

「いや、今のこの子は面倒なので、喋らせないで下さい」

「そんなどや顔で言われましても……」

「う~……大石先生! 早くホテルに行きますよ!!」

「「「ホテル!?」」」

「保永先生! 少し黙ってて下さい!!」

 ステージの先生は、酔っているせいかトロンとした目をしており、浴衣も崩れて肩が見えており、なんともセクシーな姿だった。
 しかも発言のせいもあってか、会場はある意味盛り上がっていた。

「う~……早く二人っきりになりましょうよ~」

「貴方は喋らないで下さい!」

 ステージの上で漫才のような会話をする大石と愛奈。
 愛奈の方はかなりべろべろに酔っ払っており、大石に抱きついている。
 そんな大石を見て高志は無意識に呟く。

「………良いなぁ……」

「えい……」

「いったぁ! ど、どうした、紗弥?」

「別に……」

 紗弥は高志にそっぽを向き、再び足を踏む。
 そんな中、大石は愛奈の代わりに商品を受け取り壇上を素早く下りていく。

「何やってんだか、あの先生達は……」

「保永先生って大石先生のこと好きなのかな?」

「まぁ、学校でもそういう雰囲気あったよな……」

 生徒の間でも愛奈が大石を狙っているという話しは有名だった。
 事あるごとに大石に話しを掛け、アピールを繰り返す愛奈を生徒は良く見ていた。

「あの二人……この後……」

「今、エッチなこと考えたでしょ?」

「そ、そんな訳ないだろ……」

「正直に」

「………ごめんなさい」

「もう……スケベ」

「う……男の子なので勘弁して下さい……」

 無事にコンテストも終わり、高志と紗弥はそろそろ帰ろうとかと言う相談を始める。






「おい、秋村」

「もう~優一さんったら~、芹那って呼んで下さいよ~」

「調子に乗るな! そしてくっつくな!!」

 優一と芹那は、屋台の裏の方でかき氷を食べながら話しをしていた。
 一応付き合うことになった二人だが、優一は選択を間違えたのではないかと思っていた。

「はぁ……一時間前に戻りたい」

「私はずっとこのままが良いですぅ………」

「熱っ苦しいから離れろよ!」

「離れるなって言ったのは優一さんじゃないですか!」

「だからそういう………もういいや、好きにしろ」

「じゃあ、遠慮無く……」

「だからって、キスをしようとするな」

「あん……良いじゃないですか~減るもんじゃ無いし~」

「減るわ! 俺の初めてが減るわ!」

「そんなの私が全部貰うんだからいいじゃないですか」

「誰が全部やるって言ったよ!」

「あ、私のは優一さんに全部あげますよ」

「いらん、興味もない」

 付き合ってもあまり変わらない二人の会話。
 しかし、優一の手はしっかり芹那の手を握っていた。

「優一さん」

「今度はなんだよ」

「好きですよ」

「………言ってろ」

「えへへ~」

 幸せそうに笑う芹那を見て、優一は口元を歪めてため息を吐く。
 
「じゃあ、そろそろいきますか!」

「は? どこにだよ」

「ホテルです!」

「行くかボケ!」

「付き合ったら縛ってくれる約束じゃないですか!」

「そんな約束してねぇよ!!」





 大石は愛奈を連れて、自宅に向かって歩いていた。
 愛奈はビールの飲み過ぎで寝てしまい、大石は愛奈をおぶって家に向かって歩いていた。

「はぁ……災難だったなぁ……」

 愛奈に連れ回された気がして、大石はかなり疲れていた。
 背中でスースー寝息を立てて眠る愛奈を見ると、それでも綺麗な顔に少しだけドキドキする。

「寝てる時は普通に美人なんだがな……」

 なんで自分をこんなに好いてくれるのかはわからない。
 だが、その気持ちが迷惑かと言えば嘘になる。
 こんな美人に好かれて、内心は嬉しい。
 しかし、いつか離れていくのではないかと不安になる。
 そうなったときに、やっぱり付き合わなければと思うならば、いっそのこと最初から夢を持たない方が良いのではないかと……。

「ん~……大石先生ぇ~」

「ん? 寝言か……」

「ん~、どこにも行っちゃダメですよぉ~」

「へいへい」

 背中に乗ってるんだから、どこにも行く訳ながないと思いながら、大石は愛奈の寝言に相づちを打つ。

「私は……どこにも行きませんから……」

「………」

 そんなことを言われてしまっては、大石も少し本気になってしまう。
 
「本当ですか?」

 興味本位で聞き返すと、愛奈は嬉しそうに笑いながら答える。

「ホントですよ~……むにゃむにゃ……」

「……フッ、まったく……」

「逃がしませんよ~……」

「え………」

「手錠で……こうそくして……一緒私のものに………うふふふ………」

「………」

 一気に顔が青ざめるのを感じた大石は、急いで愛奈をアパートに送り届けることにした。

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