甘え上手な彼女2

Joker0808

第40話

「高志ぃぃぃぃぃ!!」

「お前は宮岡さんだけじゃ飽き足らずぅぅぅぅ!!」

「死ねぇぇ!!」

「待て! お前ら俺の話しを!!」

「黙れ! お前も優一と一緒にボコボコにしてやるぅぅぅ!!」

 高志は祭りの会場を逃げ回った。
 後ろから追いかけてくるクラスメイトと、それに便乗した他の男達も追いかけてくる。
 必死に逃げる高志の服を誰かが掴み、茂みに引き込んだ。

「消えた!?」

「どこに行った!」

「探せ! 草の根分けても探しだせぇぇぇ!!」

 高志を追いかけていた男達は、高志を見失いちりぢりに散っていった。
 
「おい、大丈夫か」

「あぁ、まさかお前に助けれるとはな……優一」

 高志を助けたのは優一だった。
 肝試しの一件などもあり、こういうときは絶対に敵になる優一だったあが、今回は同じ立場の仲間らしい。

「くそ! あいつ余計なことを意味深な感じで言いやがって……」

「まぁ、地元の祭りだし、学校の奴らもいるよな……」

「それよりこれからどうするかだ!」

「このままじゃ、俺たちは絶対に血祭りに上げられるな……」

 茂みの中でこれからどうするかを考える高志と優一。
 コンテストに出る紗弥を見たかった高志だが、それも叶いそうにない。
 
「そう言えば先生は?」

「あぁ、教師の立場をフルに利用して、あいつらを黙らせてたな……」

「どうやって?」

「夏休み明けの成績がどうなっても良いんだな? って脅してた」

「流石先生だな……」

「ただでさえ大石先生のテストは難しいのに、これ以上成績に響くなにかがあるのは避けたかったんだろうな……」

 先生という立場は役得だなと思いながら、高志と優一は再びこのあとのことを考える。

「てかお前、結局芹那ちゃんと来てるじゃん」

「うっせぇ! 成り行きだっての!」

「ふぅ~ん……本当は段々好きになってきたんじゃねーの?」

「んな訳あるかボケ!」

「馬鹿! 大声出すな!!」

 高志は咄嗟に優一の口を押さえる。
 高志は茂みの隙間からバレていないか確かめる。

「おい! なんか声がしたぞ!」

「この辺りからだ!」

 高志と優一の居る辺りに先ほどの男達が集まってくる。

「おい! どうすんだよ!」

「ちっ! やむ終えない……ここは俺が囮になろう」

「な! 良いのか!?」

「良いも悪いも仕方ないだろ……さぁ、お前は今のうちに裏から!」

「わ、悪いな優一!」

 そう言って高志は茂みの裏側から逃げて行く。
 高志は優一に感謝しながら、ソーッと逃げていくと……。

「おーい! 高志が居たぞー!」

「優一ぃぃぃぃぃ!!!」

 簡単に優一に裏切られた。

「居たぞ! 高志だ!」

「殺せぇぇぇ!!」

 高志は再びクラスメイトとの追いかけっこが始まってしまった。
 その隙をみて優一は逆方向に逃げて行った。

「ふぅー……高志、お前の犠牲は忘れないぞ……」

 高志は優一の裏切りに合い、あっけなく捕まってしまった。
 地面に正座させられ、周りをクラスメイトの男子(馬鹿)が取り囲んでいる状態だった。
 
「さてさて高志君……」

「さっきのあれはどう言うことかなぁ~?」

「待て! お前ら落ち着けって!」

 高志に話し掛けているのは、赤西と繁村だった。
 どっちも額に血管を浮かべ、顔をは引きつった笑顔だった。

「モテモテだねぇ~高志君」

「本当に羨ましぃよぉ~殺したい程になぁ!」

「だから! 俺と彼女はそんな関係じゃないし! 俺は紗弥一筋だって言ってるだろ!」

「黙れ! それでもお前は有罪じゃボケェェェ!!」

「どうしようもねぇのかよ!」

 何を言っても許すしてくれなさそうな雰囲気に、高志は冷や汗を流す。
 最早絶対絶命のピンチ。
 高志が諦め掛けた時、男達の群れをかき分けて誰かが高志の元に歩いて来た。

「ねぇ、退いてくれる?」

「あぁ? 今大事な……って宮岡さん!?」

 やってきたのは、浴衣姿で少しムスッとした表情の紗弥だった。
 紗弥は高志の前に出ると、高志の手を掴んでそのまま連れて行く。

「ほら、行こ」

「え……あ、はい……」

 紗弥の怒った雰囲気に圧倒され、高志は紗弥の言う通りにする。
 しかし、そのまま見送る繁村と赤西ではない。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「宮岡さん、今は俺たちが高志と!」

「ダメ、退いて」

 紗弥のそのたった一言に繁村と赤西は圧倒され、道を空ける。
 完全に怒っていた。
 なんで怒っているかは、よくわかっていた。
 夢にあんなことを言われたあげく、会場から逃げ出して肝心な紗弥を見ていない。
 あぁ、また怒らせてしまった。
 そんなことを思いながら高志は紗弥に連れられて、人気の無い祭り会場の外に連れ出される。

「えっと……紗弥、あの……」

「高志……」

「な、なに?」

「ごめん、あんまりこう言うこと言いたく無かったけど……」

 もしかして我慢の限界で別れ話でもされるのか?
 などと悲しい想像をしながら、高志は紗弥の言葉を待った。
 
「高志はさ……」

「は、はい……」

 紗弥は高志に抱きつき囁くように呟く。

「私のだから、ほかの女の子とあんまり仲良くしないで……」

「え……いや、別に仲良くしてないよ?」

「あの子……仲よさそうだったじゃん……」

「いや、アレは村上さんが……」

「それでも私にはそう見えたもん……」

「す、すいません……」

 紗弥は高志に抱きつきながら、真っ赤な顔でそう呟く。

「ごめん……なんか最近私……独占欲強すぎだよね……」

「い、いやそんなことないって……俺が悪いんだし……」

「なんか最近……私、変……」

「え? 別にそんなことないけど……」

「そうじゃ無くて……ん……」

 紗弥はそう言うと、更に強い力で高志にしがみつく。
 高志はそんな紗弥を優しく抱きしめる。

「だって……最近高志が一緒じゃ無いと……不安になっちゃって……ずっと一緒に居たいって思っちゃうのが増えてきて……なんか……あんまり離れたくない……」

 顔を上げて紗弥は高志を涙目で見つめる。
 そんな紗弥を見て高志の心は、告白された時以上に深く打ち抜かれてしまった。

「俺も同じ気持ちだよ……不安にさせてごめん。一番好きなのは……紗弥だから」

 そう言って高志は紗弥を強く抱きしめる。
 紗弥はそんな高志の言葉に安心し、笑みを浮かべながら、高志の胸に顔を埋める。

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