甘え上手な彼女2
第24話
*
一番目は茂木のペアだった。
容姿だけは良い茂木は意気揚々と校内に入っていく。
「さぁ行こうか、何があっても僕が守ってあげるから!」
「あ、ありがと……」
臭い台詞を言われ、顔を引きつらせて答えるクラスの女子を引き連れ、茂木は順調に進んでいく。
少し歩くと、最初のポイントに差し掛かった。
最初のポイントは二階の階段近くの教室。
茂木達がそこに差し掛かると、教室の中から勢いよく青い火の玉が飛び出してくる。
「おっと、ハハハ子供騙しだね~、こんなの良くお店で売ってる悪戯グッズじゃないか」
「でも、さっき脅かしてた時も思ったけど、かなり手が凝ってるから……」
「ハハハ、心配ないさ、どうせ人間が………」
と茂木が言いかけた瞬間、茂木の目の前に人体模型の置物が飛んでくる。
「ハハハ、こんなのただの人形じゃないか」
そう言って茂木は飛んできた人体模型に触れる。
すると、人体模型の目がぎょろりと茂木の方を向き、同時に笑い声が廊下全体に響き渡る。
「あぁぁぁぁぁ!! おばけぇぇぇぇ!!」
「あ、ちょっと!!」
茂木はペアの女子を置いて、廊下を駆けて行った。
「あ! ちょっと!! ………これだから男は……」
茂木とペアの女子は溜息を吐いた後に、床に転がる人体模型を蹴って茂木を追いかけた。
*
「なぁ、御門」
「なによ?」
「お前ってマジで同姓じゃないとダメなの?」
後半四番目のペアは優一と由里華だった。
互いに異性の中では仲の良い相手なので、緊張も無く、話しをしながら屋上を目指していた。
既に三階の中盤辺りのポイントまで来ている二人だが、いままで一切驚いていない。
「いきなり何よ。紗弥の事?」
「ま、そんなとこだ」
「うーん……ちゃんとテレビのイケメンとかはカッコイイと思うし……紗弥以外の女の子には恋愛感情は抱かないからなぁ……」
「ふーん……そういうもんか……あ、そろそろ来るぞ」
「オッケー」
その瞬間、優一と由美華の前に血だらけの髪の長い女が、勢いよく現れた。
「痛い………いた…い……」
そうつぶやきながら、女は優一と由美華に襲いかかる。
「いたぁぁぁぁい!!」
「赤西、足下に画鋲落ちてるから気を付けろよ、裸足だろ?」
「え!? マジかよ! 掃除しておけよな!」
「もっと役に集中しなさいよ……」
血だらけの女の正体は、カツラを被った赤西だった。
優一の言葉で役を忘れ足下を確認する。
そんな赤西を見て、由美華は溜息をつく。
「じゃ、先行くからなー」
「おう! 気を付けてなぁ~」
「アンタがそれを言ってどうすんのよ!!」
「イテッ!!」
優一を呑気に見送る赤西を教室から出てきた西城が背後から叩く。
「はっ! そうだ! 俺はお化けだった!!」
「どんだけアホなのよ!!」
優一と由美華はそんな二人の会話を背中で聞きながら、再び廊下を進んでいく。
「あいつら仲良いよな」
「そうだねぇ、紗弥と八重君とは違う仲の良さだよね」
「嫌よ嫌よも好きのうちってな」
「ま、でもそれに当人達が気がつくのはまだまだ先になりそうだね」
「赤西は馬鹿だからなぁ……」
話しをしながら優一と由美華は四階への階段を上る。
「あんたは結局付き合わないの?」
「またその話しかよ」
「だって、芹那ちゃん可愛いじゃない。何が問題なの?」
「だから、あいつのドMなところだよ。海に行った時もそのせいで縛られたし、最近はドSにも目覚めて来やがった……」
「あの子も変わってるわね……」
由美華は苦笑いをしながら優一に答える。
「でも、それを抜きにすれば、かなり良い子よ。しかもいつもは普通の女の子だし」
「それはそうだが……」
「もう、付き合っちゃいなよ~」
「………お前はどうすんだ?」
「え? 何が?」
優一の言葉に由美華は首を傾げる。
「宮岡には恋人が出来ちまったわけだろ? お前はこれからどうすんだよ」
「どうって……今までと変わらずだけど?」
「他に好きな奴とか見つけねーの?」
優一の質問に、由美華は違和感を覚える。
なんで今日に限って、こんなに自分の事を聞いてくるのだろう?
そんな疑問を浮かべていると、優一は静かに話しだした。
「俺、お前の事を好きって奴を何人か知ってるんだよ」
「え、ホント?」
「ホントだ、最近お前と一緒にいることが多いから、俺はそいつらから目を付けられて大変なんだよ」
「あぁ……そういうことね……それは申し訳ない」
「ホントにそう思ってるなら、早く彼氏でもつくってくれ……学校が始まったら大変だ」
「アハハハ、そうは言ってもなぁ……いい人いないし~」
「俺が紹介してやるよ」
「それはどうも、でも今は良いの! 今は紗弥の隣にいるだけで幸せだから」
「あっそ……」
四階の各ポイントの脅かし要素を突破しながら、優一と由美華は屋上の扉の前に到達した。
「そういえば、おまえとここで高志と宮岡の昼を覗いたっけな」
「なんだか懐かしいね~、時間が経つのは早いよね」
「そうだな。よし開けるぞ」
優一はそう言って、屋上のドアを開けて外に出る。
屋上にも脅かし要素が準備されていることを優一は知っていた。
しかし、後半の脅かし要素がどうなっているかまでは知らない。
何が起こるのかと楽しみにしながら、外に出る。
「フハハハハ! 良く来たな勇者よ!」
「…………」
「…………」
屋上に居たのは、黒い布を頭から被り、スケルトンのお面を付け、木の棒を持った繁村だった。
優一と由美華はそんな繁村を見た後、無言で屋上に行った証明の黄色い髪を探し始める。
「繁村、紙どこだ?」
「おいこら!! もっと乗れよ!!」
「俺は肝試しをしにきたのであって、魔王に挑みに来た勇者じゃない」
「最後だよ! 最後の脅かしポイントだよ!」
「もっと何かあったろ……」
「ダンジョンの最後はボスだろ!」
「このゲーム脳が……」
野球部の繁村の趣味はゲームである。
優一と由美華はその後、繁村から無事証明の黄色い紙を貰い、スタート地点の学校の昇降口前に戻ってきた。
一番目は茂木のペアだった。
容姿だけは良い茂木は意気揚々と校内に入っていく。
「さぁ行こうか、何があっても僕が守ってあげるから!」
「あ、ありがと……」
臭い台詞を言われ、顔を引きつらせて答えるクラスの女子を引き連れ、茂木は順調に進んでいく。
少し歩くと、最初のポイントに差し掛かった。
最初のポイントは二階の階段近くの教室。
茂木達がそこに差し掛かると、教室の中から勢いよく青い火の玉が飛び出してくる。
「おっと、ハハハ子供騙しだね~、こんなの良くお店で売ってる悪戯グッズじゃないか」
「でも、さっき脅かしてた時も思ったけど、かなり手が凝ってるから……」
「ハハハ、心配ないさ、どうせ人間が………」
と茂木が言いかけた瞬間、茂木の目の前に人体模型の置物が飛んでくる。
「ハハハ、こんなのただの人形じゃないか」
そう言って茂木は飛んできた人体模型に触れる。
すると、人体模型の目がぎょろりと茂木の方を向き、同時に笑い声が廊下全体に響き渡る。
「あぁぁぁぁぁ!! おばけぇぇぇぇ!!」
「あ、ちょっと!!」
茂木はペアの女子を置いて、廊下を駆けて行った。
「あ! ちょっと!! ………これだから男は……」
茂木とペアの女子は溜息を吐いた後に、床に転がる人体模型を蹴って茂木を追いかけた。
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「なぁ、御門」
「なによ?」
「お前ってマジで同姓じゃないとダメなの?」
後半四番目のペアは優一と由里華だった。
互いに異性の中では仲の良い相手なので、緊張も無く、話しをしながら屋上を目指していた。
既に三階の中盤辺りのポイントまで来ている二人だが、いままで一切驚いていない。
「いきなり何よ。紗弥の事?」
「ま、そんなとこだ」
「うーん……ちゃんとテレビのイケメンとかはカッコイイと思うし……紗弥以外の女の子には恋愛感情は抱かないからなぁ……」
「ふーん……そういうもんか……あ、そろそろ来るぞ」
「オッケー」
その瞬間、優一と由美華の前に血だらけの髪の長い女が、勢いよく現れた。
「痛い………いた…い……」
そうつぶやきながら、女は優一と由美華に襲いかかる。
「いたぁぁぁぁい!!」
「赤西、足下に画鋲落ちてるから気を付けろよ、裸足だろ?」
「え!? マジかよ! 掃除しておけよな!」
「もっと役に集中しなさいよ……」
血だらけの女の正体は、カツラを被った赤西だった。
優一の言葉で役を忘れ足下を確認する。
そんな赤西を見て、由美華は溜息をつく。
「じゃ、先行くからなー」
「おう! 気を付けてなぁ~」
「アンタがそれを言ってどうすんのよ!!」
「イテッ!!」
優一を呑気に見送る赤西を教室から出てきた西城が背後から叩く。
「はっ! そうだ! 俺はお化けだった!!」
「どんだけアホなのよ!!」
優一と由美華はそんな二人の会話を背中で聞きながら、再び廊下を進んでいく。
「あいつら仲良いよな」
「そうだねぇ、紗弥と八重君とは違う仲の良さだよね」
「嫌よ嫌よも好きのうちってな」
「ま、でもそれに当人達が気がつくのはまだまだ先になりそうだね」
「赤西は馬鹿だからなぁ……」
話しをしながら優一と由美華は四階への階段を上る。
「あんたは結局付き合わないの?」
「またその話しかよ」
「だって、芹那ちゃん可愛いじゃない。何が問題なの?」
「だから、あいつのドMなところだよ。海に行った時もそのせいで縛られたし、最近はドSにも目覚めて来やがった……」
「あの子も変わってるわね……」
由美華は苦笑いをしながら優一に答える。
「でも、それを抜きにすれば、かなり良い子よ。しかもいつもは普通の女の子だし」
「それはそうだが……」
「もう、付き合っちゃいなよ~」
「………お前はどうすんだ?」
「え? 何が?」
優一の言葉に由美華は首を傾げる。
「宮岡には恋人が出来ちまったわけだろ? お前はこれからどうすんだよ」
「どうって……今までと変わらずだけど?」
「他に好きな奴とか見つけねーの?」
優一の質問に、由美華は違和感を覚える。
なんで今日に限って、こんなに自分の事を聞いてくるのだろう?
そんな疑問を浮かべていると、優一は静かに話しだした。
「俺、お前の事を好きって奴を何人か知ってるんだよ」
「え、ホント?」
「ホントだ、最近お前と一緒にいることが多いから、俺はそいつらから目を付けられて大変なんだよ」
「あぁ……そういうことね……それは申し訳ない」
「ホントにそう思ってるなら、早く彼氏でもつくってくれ……学校が始まったら大変だ」
「アハハハ、そうは言ってもなぁ……いい人いないし~」
「俺が紹介してやるよ」
「それはどうも、でも今は良いの! 今は紗弥の隣にいるだけで幸せだから」
「あっそ……」
四階の各ポイントの脅かし要素を突破しながら、優一と由美華は屋上の扉の前に到達した。
「そういえば、おまえとここで高志と宮岡の昼を覗いたっけな」
「なんだか懐かしいね~、時間が経つのは早いよね」
「そうだな。よし開けるぞ」
優一はそう言って、屋上のドアを開けて外に出る。
屋上にも脅かし要素が準備されていることを優一は知っていた。
しかし、後半の脅かし要素がどうなっているかまでは知らない。
何が起こるのかと楽しみにしながら、外に出る。
「フハハハハ! 良く来たな勇者よ!」
「…………」
「…………」
屋上に居たのは、黒い布を頭から被り、スケルトンのお面を付け、木の棒を持った繁村だった。
優一と由美華はそんな繁村を見た後、無言で屋上に行った証明の黄色い髪を探し始める。
「繁村、紙どこだ?」
「おいこら!! もっと乗れよ!!」
「俺は肝試しをしにきたのであって、魔王に挑みに来た勇者じゃない」
「最後だよ! 最後の脅かしポイントだよ!」
「もっと何かあったろ……」
「ダンジョンの最後はボスだろ!」
「このゲーム脳が……」
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