甘え上手な彼女2

Joker0808

第22話




 夕方の18時過ぎ、学校の校門前には高志のクラスの生徒全員が集まっていた。
 あまりの出席率の良さに、高志は驚きながらもみんなノリが良いなと思いながら、久しぶりに会ったクラスメイトと話しをしていた。

「久しぶりだな、夏休み何してた?」

「俺はずっとゲーム」

「俺はずっと部活」

「俺はずっとバイト」

「まぁ、現実なんてそんなもんだよな……」

 クラスメイトの夏休みの過ごし方を聞き、高志は苦笑いをする。

「そういうお前はどんな夏休みを過ごしてんだよ」

「え、俺は……」

 高志は夏休み中の自分の一日の過ごし方を考える。
 午前中は紗弥と宿題をし、午後は基本紗弥と遊ぶ。
 高志自身も充実した夏休みの過ごし方だと感じていたが、他と比べると本当に充実している事がわかり、言うに言えない。

「ま、まぁお前らと同じようなもんだよ……」

「そうなのか? 俺はてっきり宮岡と毎日イチャイチャしてるのかと思ったが……」

「ま、まぁ……お互いにプライベートもあるしな……」

 嘘は言っていない、毎日イチャイチャはしていないと高志は自分に言い聞かせ、クラスメイトの話しを聞く。

「毎日会ってるなんて聞いたら、俺は高志をそこのプールに沈めてたかもしれない」

「俺は撲殺して、校庭に埋めていたかもしれん」

「お前ら……怖いよ……」

 高志がクラスメイトからの殺気を感じていると、優一がマイクを持ってみんなに話し始める。

「全員集まったなー、じゃあ二年三組の諸君、こんばんわ」

「「「こんばんわー」」」

「いきなりの招集にも関わらず、全員出席というノリの良さに感謝するぞ、独り身の諸君」

「「「余計なお世話だボケ!!」」」

「まぁ、余計な話しは放っておいて、肝試しのルールを始めるぞ~」

 優一はマイクを握り、肝試しのルールを説明し始める。
 ルールは学校の校門から入って、屋上のゴールまで決められたルートをたどって男女一組で行って帰ってくるというものだ。
 最初に脅かし役と脅かされる側に別れ準備をし、準備が出来たらスタートする。
 最初の脅かされる側が全員帰って来たら、役を交代しまたスタートという流れだ。

「屋上には屋上に行った証明のための黄色い紙が置いてあるから、それをちゃんと取ってくるんだぞ~、じゃあ最初の脅かし役をクジで決めるぞ」

 優一はクラスの全員にクジを引かせ、最初の脅かし役を決める。

「あ、高志と宮岡はちょっと待て」

「え? なんでだよ」

 高志と紗弥がクジを引こうとしたところを優一が止める。

「お前らカップルのために、俺が気をつかってやってんだ、おまえらは最初は脅かし役をやれ」

「ゆ、優一……」

「まったく、お前らバカップルには手を妬くぜ」

「ありがとう! 親友!」

「あぁ、気にするな………フフ」

「ん? なんか笑ったか?」

「いや、なんでもないさ。よし! 最初の脅かし役は集まれ!!」

「?」

 優一のかけ声によって、クラスは綺麗に二つに別れた。
 




「で……俺と紗弥はここで話しをしてれば良いのか?」

「そんなのでみんな驚くかしら?」

 校舎内に入った脅かし組は、各ポイントに散らばり脅かしかたの打ち合わせをしていた。
 ここでも高志と紗弥はセットで脅かし役をする事になり、優一から脅かす内容を聞いていた。

「暗くてしずかな教室から、急に話し声が聞こえてきたら怖いだろ?」

「まぁ、そうだが……」

「だろ? じゃあよろしくな」

「あ、おい!」

 優一は簡単に説明をすると、直ぐに行ってしまった。
 高志と紗弥は、二人きりになった暗い教室の中で、向き合って座っていた。

「はぁ……本当にこんなんでいいのかな?」

「でも、こう言う雰囲気だと、風の音でも怖くなっちゃうからね、結構効果あるかもよ」

「それもそうだな、じゃあ気長に誰かが来るのを待つか」

「そうだね」

 高志と紗弥は椅子に座り、話しをしながら人が来るのを待った。
 
「二人っきりで教室にいると、あの日を思い出すね」

「あの日?」

「私が高志に告白した日」

「あぁ、そうだな……あの時は本当にビックリしたよ」

「私もあの日はかなり積極的だったと思うよ。必死だったし」

「いきなり抱きつかれた時はビックリしたよ」

「だって……高志がうんって言わないから」

 二人は昔話に華を咲かせながら、人が通るのを待つ。
 しかし、一向に人が来る気配が無い。
 
「来ないな」

「そうだね……ねぇ……」

「ん? どうした?」

「二人っきりだね……」

「まぁ、最近はほぼ毎日じゃないか?」

「そ、そうだけど……こういうシチュエーションでは始めてというか……」

「ん? まぁ確かにそうだな」

「じゃあさ……あの……その……キスしても良い?」

「え!?」

 紗弥の言葉に高志は驚く。
 最近の紗弥は海で言ったとおりに、積極的になっていた。
 頻繁に高志にくっつき、甘えることも前より多くなっていた。
 それもこれも、高志が紗弥を不安にさせてしまったからなのだが、高志自身はこれで良いものかと悩んでいた。

「さ、紗弥……俺もしたいが……誰か来たら……」

「ダメ……?」

「い、いや……ダメとかじゃなくて……」

「じゃぁ……ん……」

「え……あ、いや……紗弥、ちょっと!」

 顔を近づけてくる紗弥に、高志は顔を赤くして戸惑う。
 
「嫌?」

「い、嫌とかじゃなくて……だ、誰か来たら……」

「いや、とっくに来てるわよ……」

「え?」

 高志が教室のドアの方に視線を向けると、懐中電灯を手に持ったクラスメイトの男子と女子が、顔を赤くしてドアの前で立っていた。

「「あ……」」

「あ……じゃねーよ!! ちゃんと脅かせよ! イチャついてんじゃねー!!」

「そうよ! そして早く続きをしなさい!!」

「出来るか!! さっさと行けよ!!」

 まさかの出来事に高志も紗弥も顔を赤らめる。
 最初のペアが行った後、高志と紗弥は俯き、互いに顔を伏せる。

「こ、こういう事があるから……」

「う、うん……ごめん……」

 気まずい雰囲気の中、高志は紗弥に言う。

「か、帰ったらな?」

「え……」

「だ、だから……帰ったら部屋で……な」

「あ……うん……」

 お互いに顔を上げ、再び見つめ合う二人。
 高志からの言葉がうれしかった紗弥は、頬を緩ませ微笑む。
 そんな紗弥の手を取り、高志はやさしく握る。

「紗弥……」

「高志……」

 見つめ合う二人。
 そんな二人元に再び……。

「イチャついてないで脅かしなさいよ!!」

「見てるこっちが恥ずかしいわ!!」

 二組目のペアがやってきてしまった。

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