甘え上手な彼女2

Joker0808

第13話

「そ、それにしても熱いな……」

 高志はチラチラと隣の紗弥を見ながらそう切り出した。
 他の三人は、既にどこかに行ってしまった。

「じゃあ、海入る?」

「こ、この年になって海で目一杯泳ぐってのもな……」

「良いじゃ無い、それとも泳げないの?」

「人並みには泳げるよ」

「じゃあ、行こ!」

「え、ちょっと!?」

 高志は紗弥に手を引かれ、海の中に入っていく。
 紗弥はパレオとパーカーを脱ぎ、高志を海の中に誘う。

「うわ! 意外に冷たいな……」

「気持ちよくて良いじゃ無い、それ!」

「うわ! 冷たっ! 紗弥、やめろって」

「アハハハ!!」

 楽しそうにはしゃぐ高志と紗弥。
 そんな二人を焼きそばを食べながら、鼻血を出して見守る女子が居た。

「はぁ……ビーチではしゃぐ紗弥……可愛すぎ!!」

「由美華先輩も好きですね~」

 二人の様子を見ながら、由美華と芹那は焼きそばを食べる。

「仲良いですね~あの二人は」

「そうね~羨ましいわ~」

「……由美華さんは、好きな人に恋人がいても良いんですか?」

「ん? まぁ私の場合は絶対に実らない恋だから……」

「す、すいません! そんなつもりでは!」

「良いのよ、私が一番良く知ってるから……」

 悲しそうな顔をしながら答える由美華。
 そんな由美華を見て、芹那はこんなことを言うべきでは無かったと後悔する。

「ご、ごめんなさい。せっかく海に来たのに……こんな話しを……」

「良いのよ、変なのは私だし……女の子が好きなんて、自分でだっておかしいと思ってるわ、でも最近気がついたの……」

「え?」

「紗弥が幸せなら、私も幸せだって……だから、このままで良いのよ」

「……先輩は強いですね」

「そうでないとやってけないわよ~、早く食べましょ」

「……そうですね」

 芹那はいつもの調子で話す由美華を見て、自分も笑みを浮かべる。
 恋は人それぞれなのだと、このとき芹那は学んだ。
 一方で、海の中で戯れていた二人は……。

「高志」

「はい……」

「なんで、鼻血出してるの?」

「なんでもございません」

「さっき私を支えてくれた時に、どこかに鼻ぶつけた?」

「違います」

「じゃあ、なんで?」

「察して下さい」

「?」

 不思議そうに高志を見ながら、紗弥は首を傾げる。
 なぜ高志が鼻血を出しているのか、それはすこしだけ前に遡る。
 足を滑らせ、転びそうになった紗弥を高志が支えたのだが、その体勢に問題があった。
 紗弥を正面から受け止める形で支えた高志の腹部に、非常に柔らかい感触が二つ当たってしまった。
 いつもより布の面積が少ない上に、着ている物は布一枚だけ。
 そんな事を考えてしまった高志は、自然と体が反応してしまった。

「大丈夫? 熱中症? 一回上がろうか」

「あ、あぁ……その方がよさそうだ。そして紗弥は早くパーカーを着るんだ」

「? なんでパーカー?」

「良いから……あとパレオも……」

 高志は沖に上がる間、ずっと紗弥を直視出来なかった。
 




「………」

「まぁ……アレだ……人間誰しも向き不向きがある」

「同情するなら女をくれ!!」

「やらねーよ」

 戻ってきた優一は、ナンパに失敗し精神的にダメージを負って帰ってきた。
 喧嘩は強いのに、メンタルは豆腐みたいな奴だなと高志は思いながら、呆れた表情で優一を見ていた。

「くそ!! なんで俺はモテないんだ!!」

「ガツガツしてるからじゃないか?」

 ちなみに紗弥達女性陣は、皆でかき氷を食べに行っている。
 高志と優一は、ビニールシートに座りながら、飲み物を飲み話しをしていた。

「大体、お前には芹那ちゃんが居るだろ?」

「ふざけるな、俺とあいつが付き合う可能性は無い!」

「おまえ、そんな事言ってると一生彼女なんて出来ないぞ?」

「居るわ! 頑張れば、俺だって彼女の一人や二人……」

「無いって」

「そんな顔で言うな!!」

 高志の可愛そうな人を見るような視線に、優一は青筋を立てて高志を怒鳴る。
 そんな事をしていると、紗弥達女性陣が帰ってきた。

「ただいま~」

「おかえり、食べてきた?」

「うん、はい、ラムネ飲む?」

「うん、ありがと」

 高志は紗弥からラムネを受け取りそれを飲む。 
 しかし、それを見た優一は……。

「爆発しろリア充が! 何自然と間接キスとかかましてくれてんだ!!」

「「あ」」

 優一の言葉で二人は気がつき顔を赤らめる。
 それを見た優一は再び……。

「初恋か!!」

 紗弥と高志にツッコミを入れる。
 
「なんなんだ! この悲しい夏は!! 俺にも青春させろ!」

「勝手にしろよ……なにキレてんだよ」

「うるさい!」

「じゃあ優一さん! 是非私と青春を!!」

「そんな汚れた青春は嫌だ!」

「酷い!!」

 そんなこんなで、一同は海から上がり。
 今夜止まる場所に向かい始める。

「ところで今日はどこに泊まるんだ?」

「近くのホテルだよ、そこの割引券貰ったからな」

「だから、宿泊費が安かったのか……」

 一同は荷物を持ってホテルに向かう。
 到着したホテルは、真新しい綺麗なホテルだった。
 夏だからか、他にも沢山のお客さんが居た。
 フロントで鍵を貰い、高志達は部屋に向かう。

「えっと、女子の三人はこっち。俺と優一はこっちだな」

「わかったわ」

「優一さんと部屋は別ですか……」

「普通だろ」

「今から部屋取るか? 俺は一人部屋でも良いし」

「私、フロントに聞いて来る?」

「なんで皆してノリノリなんだよ!! おかしいだろが!!」

 結局部屋は男女で別々とし、夕飯まで体を休めることになった。
 高志と優一は部屋に荷物を置き、ベッドに横たわる。

「あぁ……なんか色々疲れたな……」

「俺はなんか精神的に疲れたよ……」

「スポドリ飲むか?」

「飲む」

 高志は優一にスポーツドリンクを渡す。
 渡されたスポーツドリンクを優一は勢いよく飲み干し、深く息を吐く。

「はぁぁぁ~……美味い」

「それは良かったな」

「美味いついでに聞いていいか?」

「なんのついでだよ……」

 

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