三代目魔王の挑戦!

シバトヨ

初めての魔力抽出に挑戦!

「クサリさん……」

「この際ですから、もっと抽出しておきましょう!」

 「いや、抽出するのは別にいいんですけど、ね?」

 腹が減って死にそうなんですけど?

「大丈夫です魔王様。二日三日食べなくとも、簡単には死にませんから」

「死ぬよっ!?」

 その後。
 クサリさんから舌打ちと昼食を貰ったんだが……

「なぁクサリさん」

「なんですか?」

「俺って魔王なんだよな?」

「そうですよ? 燃料様」

「魔王じゃねぇのっ!?」

 完全に燃料扱いされた。マジでに落ちねぇ。



 液体魔力。
 水の代わりはもちろんのこと、ガスや電気の燃料として用いられることが多い。
 ただ、下位互換という欠点が大きい。使用する量が膨大になるため、広い敷地面積が必要になる。
 そんで。広大な土地を持ってない、いわゆる一般家庭には広まっていなかった。

 それが、発電所などの普及により、どんな家庭でもガスや電気が自由に使えるようになった。

 しかし、それにも問題が発生した。

「消費量が供給量を越えたのです。端的に言えば使いすぎってことですね」

 だそうだ。

「だからって、あんなに沢山作る必要があったのか?」

 昼食を終えてから、二時間ちょっと抽出されて、カプセル四十ちょっと。一般家庭百世帯が一ヶ月はもつ量らしい。
 ここ、魔王城の付近には、民家が十件ちょっとしかない。
 メチャクチャな量だ知ったのは、抽出を終えた後だったし、抽出途中はヤケ糞気味に効率を重視してたし。

「そうですね……」

 クサリさんは晴れ渡る青空に顔を向け、

「来月には、半年分くらいは貯蔵しておきたいですね」

 なんて……

「飯は食わせてくださいよ?」

「もちろん」

 本当だろうなぁ。
 そんな未来に、俺は少しの不安を覚えた。

「で? 俺には魔力があるって分かったんだよな?」

 俺の体内から魔力を抽出して、液体魔力が手に入った。
 この事実から、俺には魔力があるらしい。自分で感知できねぇけど。

「……そうですね。魔力が備わっていることは分かりました。ですので」

 クサリさんは笑顔を向けて、

「今日も十五ラウンド。参りましょうか!」

「メチャクチャ晴れやかな笑顔で、メチャクチャ物騒な台詞を聞きたくなかったっ!!」

 はい。地獄決定ぇ~(涙)。



 魔王領。
 大陸と呼ばれているこの大地。その大半は、勇者領が占有している。
 一時は九割弱が魔王領になったらしいんだが、今は完全に盛り返されている。
 十年前は全ての国が、勇者領と魔王領のどちらかに所属していたらしい。
 それが、勇者領が民衆によって二分され、姫騎士領という新しい領土が創られた。
 今じゃ全ての国が、勇者領か姫騎士領のどちらかに所属している。例外は魔王城だけだな。
 俺やクサリさんたちが生活している魔王城だけは、魔王領のままだからな。
 九日後に開戦する隣街――ペルンは、勇者領の一つだ。
 なお、魔王城の後ろは海だ。大陸の端に建てられたってわけだ。

「なぁクサリさん」

「はい魔王様」

「ペルンが勇者領なら、俺たちが勝ったら連戦になるんじゃねぇの?」

 ペルンに隣接している街は、いずれもが勇者領だ。
 なんなら一つずつじゃなく、一斉に攻め込まれる可能性だってあり得る。
 が、クサリさんは首を横に振って、

「その可能性は低いでしょう」

 と。

「まず、ペルンの情勢です。経済的な支援をかなり受けている国ですから、むしろ、居なくなった方が勇者領としては嬉しいでしょうね」

「いやいや、仮にも勇者を名乗る領土なんだろ?」

「そうですね。勇者を名乗る領土ですから、増援
が来る可能性はあり得ます。しかし、領土全体の三割ほどの出費を出している国は、領土としていかがなものなのでしょうか?」

「そ、その辺は……ほら、金欠も勇者の特徴だろ?」

「会計が甘いだけですね。それに、この国は奴隷を認めている国ですからね。果たして、勇者と呼べる国なのでしょうか?」

「…………それは」

 勇者じゃねぇだろ。むしろ悪役じゃねぇか。

「いかに国王のフットワークが軽かろうと、全ての国の管理は難しい。そういうことなのでしょうね」

「………………」

 国王。
 勇者領を束ねる最高責任者。
 クサリさんが言った、フットワークが軽いってのは、国王が持つ武器の特性を活用しているからだとか。
 確か、エクスカリバーとか言う時空と距離を司る剣らしい。
 詳しくはクサリさんも知らないとか。

「ともかく。勇者に相応しくない国が無くなるのです。勇者領としては、願ったり叶ったりだと思われますね」

「それはそれで複雑だな」

「こちらとしては好都合ですが」

 いや分かるけど。

「さて。勝った後の心配よりも、どうやって勝利するのか。そちらの方が、今は重要です」

 そりゃそうだな。

「負ければ国が無くなるわけだしな」

 負けられない戦いだってことには変わりが無い。

「なので、さっさと魔力の使い方を覚えてください」

「………………」

 善処します!

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