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黒山バルス

プロローグ

「どうする」
昼下がりの事務所に花代 詩の声が響く。沈黙とととにおとづれた静寂を切り裂く。
「バツは実害を出してんすか」
後ろで二つに結んだ緑髪をなびかせ、九時倉 玉呼が問う。
「事件というよりバツの周りで二件ほど死亡事故が起きてるの。ひとりは首吊り。もうひとりは焼身自殺」
玉呼の眉間にシワがよる。
「いづれも自殺って上は判断したらしいけど二人ともバツと深い関わりがあるとか、数日前から様子がおかしかったなんて情報が入ってきて多分...」
「なんらかの能力を用いたんじゃないかと」
玉呼が割るようにして話を繋げる。
「そう、だから今回こっちに依頼が回ってきたの」
玉呼はオフィスチェアからゆっくりと立ち上がり窓の方へ向かう。
「誰が行く」
その声とともに奥から稲葉 美里が少し古びたお盆とともにやってくる。
「お茶、お持ちしましたよ」
詩は少し手を挙げてお礼をする。美里は今大切な話をしている最中だと気づき、少し慌てたあとそっと各自の机にお茶を置き再び奥え戻る。少し場が和んでから詩がまた話題を戻そうとするがさっきから全く口を開いていなかったが手を上げ二人のほうを見る。
「私、行きます」
「リリィ」
リリィ・ハーミットは何らおかしくないような表情だか。二人は少し心配する様子を浮かべる。
「あんた昨日の捜査で」
「そうよリリィ、あなたまだ完治してないのに..」
昨日の捜査で傷を負ったばかりであったリリィを不安に思っていたようだが当の本人は意見を変える様子は無く手元に置かれたバツとされる女性の資料を片手に上着を着込む。
「本当に行くの...?」
「私なら特に能力が分かっていなくてもある程度なら対応できます」
リリィはクールでありながら少し自信の身を酷使することが多く、二人もそのことはよく理解している。彼女ら「特殊公安課」のシンボルともなる赤いジャケットをはおったリリィは事務所の扉を開ける前に一言、言い残す。
「すぐに終わらせます」
扉始まるが詩はなお困ったような表情を変えない。玉呼は先程美里からもらったお茶をすすりリリィの出た扉の方を見続ける。口には出さないものの彼女もまた心配しているようだ。
「本当に平気なのかな」
「大丈夫だと思いますよ。何かに合わない限り」
外はもう午後の八時であり街のネオンが窓から彼女らを照らす。
詩は再びバツの資料を意味もなしに目を通す。
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午後八時新宿駅前


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