異世界転移したら勇者になったんだが?

sirokuro

洗脳された英雄

「な、なに!?」
「まさか、魔王軍か!?」

茜とバドがすごく驚いている中、ソウタとセリスとメイはおいしそうにチャーハンを食べている。

「これ美味しいね!」
「そうだな」
「うふふっ、嬉しいです〜!」
「「なんで呑気に食べてるの!?」」

何故か茜さんとバドにドン引きされてしまった...

そうか、利き腕じゃないのに普通に食べてるからか。

「あぁ、左手で食べるのはかなり食べにくいぞ」
「やっぱりそうだよねー、って違う!」
「これがノリツッコミというやつですね!」
「さすが茜!」」
「あーもう!そうじゃなくて!」

茜さんが何故か怒ったように迫ってきた。

「ソウタ君!」
「な、なんだ?」
「今外で凄い音が鳴ったよね?」
「あぁ、そうだな」
「何とも思わないの?」
「そうだな」
「敵が来たかもしれないのに?」
「俺には関係ないことだ」
「!!!!」

そう言ってチャーハンを食べようとしたら、パチンッという音が部屋に響いた。

茜がソウタのことをビンタしたのだ。

「何すんだよ」

ビンタされた頬を触りながら茜さんの方を見ると涙目になっていた。

「なに泣いてんだよ」
「泣いてない!ソウタ君なんて大っ嫌い!」
「待って!茜!」
「行ってはダメです!」

そう言って茜は部屋を出て行ってしまった。

その後ろ姿を追って行ったセリスとメイを目で追っているとバドに話しかけられた。

「このままでいいの?」
「...今の俺が何かできると思うか?」
「今の状態でも君ならできるでしょ?」
「俺のことを過大評価しすぎだ」
「情けない男だね。彼女達の為なら命だって賭けるんでしょ?ならやらないでどうするの?そういえば君ってヘタレだったよね。それなら口だけの男でも仕方ないか」
「おい」

ソウタがおもいきりバドの胸ぐらを掴むがバドは口を止めようとしない。

「まぁ、もう嫌われた訳だし茜ちゃんの為に命を賭ける訳ないよね」
「もういい、黙れ」
「君が行くまで僕は黙らないよ」

ソウタが威圧をかけながらバドを睨むが一切怯んだ様子はない。

それに呆れたソウタはバドに思っていることを話すことにした。

「俺はこの街の為に何かしたいだとかしようとかこれっぽっちも思っていない。なんならこの世界が破滅しようが俺はどうでもいいんだよ」
「でも彼女達は...」
「わかってるよ。俺が戦う理由はあいつらと楽しく過ごす為だ。だから今はこうして飯を食べてるんだろ?」
「え?どういうこと?」
「今日一日ゆっくりしたが全然魔力が回復しなかったんだよ。だからこうやって食べて少しでも回復しようと思ってな」

バドが凄く驚いたような顔をして俺を見ている。なんでそんなに驚いているんだ?

「君、行く気なかったよね?」
「そうだな、茜さん達が行ったから行く気になったんだよ」
「え、それじゃあ...」

バドはその瞬間、とてつもなく嫌な予感がした。

「よくもまぁ、あんなに煽ってくれたな?」
「ひぃぃ!」
「後で覚えておけよ」
「は、はい」

ガクガク震えている。先程のソウタの半分程度の威圧でもギリギリ耐えていたのに、一瞬だけ本気の威圧を受けたので、この後のことを考えると恐ろしかったのだろう。

「うしっ、ごちそうさまでした」

ちゃんと手を合わし、挨拶をしてキッチンにお皿を持って行く。

「魔力は回復した?」
「あぁ、でも三分の一程度しか回復してない」
「そっか。頑張ってきてね」
「行ったら、戦うな!って言われそうだけどな」
「あははっ!確かにそうかもね!」

二人で笑っているとまた爆発音が聞こえた。

「三人とも大丈夫かな」
「大丈夫だろ。じゃあ行ってくる」
「うん!行ってらっしゃい!」

俺は窓から外に飛び出して、先程爆発が起きたであろう場所に行くことにした。

「あの場所、確かおっさんが店を出してた場所じゃないか!?」

この街をどうなろうがいいが、あのおっさんを見殺しにすることはできない!

そう思ったソウタは全速力でその場まで走っていくと、案の定チョーカーを売ってくれたり、アドバイスまでしてくれたおじさんがいた。

よしっ、よく生きててくれた!と思ったが、そのおじさんには巨大な火の玉が迫っていた。

「ちくしょぉぉー!!」
「聖壁ッ!」

聖壁にぶつかった火の玉は消滅した。その光景を見たおじさんは凄く驚いた様子でソウタの方を見た。

「...兄ちゃんが、助けてくれたのか?」
「まぁな。それより、おっさんの家族は大丈夫か?」
「あぁ、もう先に逃がしたんだ、って兄ちゃん!その腕は!?」
「これか?大迷宮に行ったら、ちょっとしくじっちまったんだ」
「...そうか。兄ちゃん悪いんだが頼みがあるんだ、いいか?」
「なんだ?」

おっさんが真剣な顔で言ってくる。余程大事なことなのだろう。

俺はこの人のことが嫌いじゃない、むしろ好きな性格をしている。なので俺にできる限りのことならしようと思う。

「ケガ人に言うことじゃないとわかってる!助けてもらっておいて図々しいのはわかってる!それでも!あんたにしか頼めねぇんだ!」
「気にするな。俺もおっさんには助けられてるんだ。これで平等だろ?それで、俺は何をすればいいんだ?」
「そう言ってくれると助かる。俺やここに住んでる奴らは全員この街が好きだ!だから、この街を助けてくれないか!?」
「あんたの頼みだからな、もちろんいいぜ。でも、俺は彼女の安全優先で戦うっていうことをわかってくれよ」
「あぁ、わかってる。この街と住んでる人達が全部無くならなければそれでいい!」
「了解。それじゃあ、とりあえず火の玉を撃ってきた奴のところに行ってくるよ」
「おう!任せたぜ!」

そう言っておっさんは逃げて行った。

さて、こんなことをした元凶はいったいどんな奴だ?

火の玉が飛んできた方向に向かって全速力で走っていくと、モンスターの群れに遭遇した。

「なんでこんなにモンスターがいるんだよ!」

その数は百体以上、いや、ヘタをすれば五百体以上のモンスターがいた。

そのモンスターの群れと戦っている人達がいた。たぶんギルドの人達だろう。

「なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだが...」
「あぁ!?あんたケガしてるじゃねぇか!ここは食い止めておくから早く逃げな!」
「いや、話を聞いてく...」
「ほら!早く!」
「...はぁ」

ソウタは話を聞いてもらうのを諦めてため息を吐くいてしまい、それを見たギルドの人はイラッときたのでモンスターとの戦いを抜け出し、ソウタの胸ぐらを掴んだ。

「俺達が命懸けで時間を稼いでるんだ!さっさと逃げてくれ!」
「悪かったよ。どうやったら話を聞いてもらえるか考えてたんだ」
「は?」

ソウタの言うことか訳が分からないといった様子だ。そりゃあそうだろう、こんな戦場で自分の話を聞いてもらえる方法を考えるなどただの変人だ。

「なぁ、あんたらギルドの人達だろ?」
「あぁ」
「じゃあ金の冒険者の証って知ってるだろ?」

そう言って金の証を見せると驚いていた。

「もしかして、君がソウタ君かい?」
「やっぱり知ってたか...」
「それはもちろん。俺達はギルドの職員だ。金の冒険者の証を持ってる人ぐらい知っているさ」
「そういうものなのか?」
「そうだ、大体の人達は冒険者の証を貰うことすら難しいんだよ」
「まぁ、その事は後で教えてくれ。とりあえずここにいるモンスターは吹き飛ばすぞ」
「え!?」

そして俺は創造魔法を使用するためにイメージする。

「おい!!全員伏せろー!!!!」
「「「「「「「え?」」」」」」」

そう言った瞬間、全員がその場で伏せた。

さすがギルド職員、判断能力が速くて助かる。

「雷撃ッ!」

左手を横に薙ぎ払うようにして放たれた雷撃は、ソウタの目の前にいたモンスターを全て葬った。

その様子を目の当たりにしたギルドの職員達は口を大きく開けて驚いている。

「よし!この街に来たモンスターはこれだけなのか?」
「...へ?あー、いや、まだいる!こんな奴らとは比べものにならないくらい強かった!」
「どんなモンスターなんだ?」
「...モンスターじゃない」
「は?」
「たぶん、魔王軍の奴、だと思う」
「たぶんってなんだよ」
「人間だったんだ。俺達と同じ、人間の女性だった」
「...」

もしかして、とソウタは嫌な予感がした。

この嫌な予感は当たってほしくない。俺がこんなケガをしている時に英雄と呼ばれていた奴を相手にできるか不安だ。

なので、あの洗脳されたという英雄のことを聞く。

「...英雄シルって知ってるか?」
「...もちろん」
「そのシルが来てる、なんて言わないよな?」
「...」
「そうか」

無言で首を横に振られたということは、最悪の事態が起こっているということだ。

「その英雄は今どこにいる?」
「空の大迷宮の近くだ!今は茜さんと二人の女の子が戦ってくれている!」
「そうか、ありがとな。シルは俺達が倒す。だからあんた達は心配せずにその辺のモンスターからこの街の人を守ってやってくれ」
「あ、あぁ!わかった!」

俺がそう言うとギルドの職員達は街の方へと走って行った。

「早く行かないとな」

ソウタは英雄と呼ばれた存在と利き腕無しで戦うこと
が不安だったが覚悟を決め、空の大迷宮まで限界突破Lv5を使用して全速力で移動した。

そして、大迷宮の前に着くと茜さんとメイは倒れており、立っているのはセリスと、かつて英雄と呼ばれたであろう女性だけだった。

だが、よく見るとセリスの足は地面に着いておらず、少し浮いていた。

「うそ、だろ?」

なんと、セリスは女性が持っている剣に貫かれているせいで浮いていたのだ。

「...ゴフッ、ごめ、んね?ソウ、タ」
「セ、セリス?嘘だろ?なぁ、冗談だよな!?」

ソウタが叫ぶと、女性はセリスから剣を引き抜いた。

「カハッ!」
「セリスッ!!」

限界突破Lv10と覇王を発動させ、倒れそうになったセリスを抱きしめ、その場から離れた。

「てめぇ、死ぬ覚悟はできてんだろうなぁ!?」
「フンッ」
「あっ、待てやゴラァ!!」
「ソウタ君!行っちゃダメ!」
「離せっ!!」

女性はソウタを見て鼻で笑うと、すぐにどこかへ行ってしまった。

ソウタは気付いたら、いつのまにか起きていた茜さんに腰を抑えられていたので、その女性を追うことはできなかった。

「何すんだよ!」
「こっちのセリフだよ!セリスちゃんは刺されて大ケガしてるんだよ!?それなのにここで戦いなんて始めたら死んじゃうかもしれないんだよ!?」
「っ!?...すまん。少し落ち着かせてくれ」

深呼吸をして落ち着き、セリスを助ける方法を考える。

「茜さん!メイは無事か!?」
「うん!気を失ってるだけだよ!」
「ならこっちに連れてきてくれ!」
「わかった!」

そして、メイを連れてきてもらうと二人を担ぎながらイメージする。

「茜さん!俺に付いてきてくれよ!」
「え!?う、うん!」

戸惑いながらも茜は返事をした。そして創造魔法を発動させる。

「ゲートッ!」

ソウタの目の前に黒い空間が広がり、その中に躊躇なく二人は飛び込んだ。

「え!?ここどこ!?」
「エーテル王国だよ!」

一瞬で周りの景色が変わったことに茜さんが驚いているが、この国にいるはずのクラスメイトの元に急ぐ。

「ちょっと待ってよ!ソウタ君!」
「今は待てん!また後でな!」

そう言って限界突破を発動させ、セリスとメイを担ぎ、クラスメイトの夏川に会うためにお城に行って中に入っていくと、リアに遭遇した。

「おい!夏川はどこにいるか知らないか!?」
「え!?あなた、もしかして、黒輝ソウタさんですよね?戻って来てくれたんですね!って、その子すごいケガをしてるじゃないですか!?」
「いいから早く答えてくれ!」

ソウタはリアの反応にイライラを隠せずに大声で言うと、まわりに人が集まってきた。

その中に一人だけ、見覚えのある人物がいたことをソウタは見逃さなかった。

「夏川!」
「え?え!?黒輝くん!?なんでここにいるの!?」
「お前に頼みがあって来たんだ!この銀髪の方のケガを治してくれないか!?」
「え?」

混乱していた夏川だがセリスのケガを見るなり目の色が変わり、刺された部分を見つけると、すぐさま回復の魔法を発動させてくれた。

「ふぅー、これで一応は大丈夫だと思うけど、しばらくは安静にしておいてもらってね」
「あぁ、悪い。助かった。ありがとな」
「どういたしまして。それで、どうしてこんな大ケガをしていたの?」
「それはコイツらから聞いてくれ」
「え?どういうこと?どこ行くの!?黒輝くん!」

ソウタは再びスカイシティに戻るためにテレポートのイメージをする。

「その二人が起きたら、俺は約束を果たしに行ったとでも伝えておいてくれ」
「ちょっと待って!本当にどこに行く気なの!?」

ガシっと腕を掴まれたが、ソウタは気にせずに続ける。

「あと、俺がしばらくしても戻って来なかったら...」
「...なに?」
「すまない。って伝えておいてくれ」
「黒輝くん、もしかして、君...」

ソウタはようやく夏川の方を向くと、笑顔を見せた。

「約束を果たすだけだ」
「...わかった。でもちょっと待って」
「ん?」

そう言って夏川はソウタの右腕があるはずの部分を触ると泣きそうな顔をした。

「やっぱり。すぐに治すから」

夏川が魔法を発動させると、数分後には右腕が元通りになっていた。

「おぉ!すげぇな!」
「私はこういうことが得意だから。でも、まだ完全に治ってないから無理したら取れちゃうからね」
「そうか。夏川、本当にありがとな」
「お礼なんかいらないから、絶対に戻ってきて」
「努力するよ」

そう言ってソウタはゲート発動させ、スカイシティへと戻って来た。

「さてと、右腕も治ったし、これならもうあいつとやり合えるだろ、っていうか、」

そこでソウタは思い出した。自分がチート級の回復アイテムを持っていることに。

「くそっ!あれがあれば無駄にエーテル王国に行かなくてもよかったんじゃないか!?それに右腕も治ったかもしれなかったじゃねぇか!」

つくづく自分のアホさ加減に呆れると、すぐに冷静さを取り戻し、ポーションをコントロールスペースから取り出して飲む。

そして右腕の状態の確認をし、大丈夫だと判断した。

「これで腕も魔力も全回復だな。さてと、俺の嫁に傷を負わせたんだ。ただで済むと思うなよ?」

ソウタは冷静に、だがセリス達がやられたという怒りを忘れずに、シルを探すのだった。


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