(連載版)底辺工業高校。そこはある意味異世界だった。

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最終話 今いじめや暴力で苦しんでいる貴方へ

 こうして最終召喚魔法『110』により、召喚獣『国家権力』がやって来ました。
 オークさんたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出しました。
 足が遅くて逃げ遅れた赤羽とY岸が警察に連れて行かれたのを私は2階からゲラゲラ笑いながら見てました。
 なんとも締まらない終わり方ですが、これで私の屈辱にまみれた3年間は終わったのです。
 さてこの後どうなったのか?
 私は逮捕されたのか?
 実はなんのお咎めもありませんでした。
 逮捕もされなければ、取り調べも受けませんでした。
 オークさんたちも同じです。
 新聞を見ても『卒業式の日に教師を暴行、卒業生を逮捕』なんて記事はありませんでした。
 誰も処分されず、暴力を振るったもの勝ちという最悪の結果に終わっただけです。
 どうにもスッキリしません。
 でもこれで終わりです。
 現実なんてそんなものです。
 圧倒的クソゲーなのです。
 なにかあったとしたら、それから一年ほど家の電話に週に数回イタズラ電話がかかるようになったくらいです。
 無言電話です。
 たまにくだらない替え歌が流れてくることもありました。
 ですが鬱陶しい以外は無害なものです。
 結局、犯人はわからずじまいでした。
 もしかするとK平かもしれません。


 Sさんは無事に鉄道の会社に入社しました。
 設備系の作業をしてたそうです。
 準公務員待遇なので身分保障は完璧です。
 ですが二年が経ったある日、前々から親密に交際していた風俗のお姉さんと駆け落ちし半年後に北海道で発見されました。
 会社は退職されたそうです。
 普段温厚な人ほど実は情熱的なんでしょうね。
 私の中をどんなに掘ってもない感情です。
 そこまでできるってのは正直羨ましいなあと思います。
 その後、大学に入り直し……たんですが、2年生の時に膵臓を悪くして病院に運ばれました。
 地獄のような苦しみだったそうです。
 私には膵炎だと言ってますが、字面よりも重篤な病気のような気がします。
 なにせ脂肪の摂取量を管理しなければならないほどの症状です。
 私はSさんには長生きして幸せになって欲しいなあと思っています。
 だってあまりに不公平じゃないですか!


 K室くんは確かプログラマになったはずですが、卒業してから連絡が取れなくなりました。
 なにがあったのかは怖いのであまり考えたくありません。
 でも今でも人気者に違いありません。


 K田は推薦で大学に進学しました。
 みんな名前を知っている有名私立です。
 でも私が通ってた大学のキャンパスと彼の大学のキャンパスは歩いて数百メートルくらいの近所だったんですよねえ。
 道場の友人が数人通っていたのでよく遊びに行きました。
 なのに一度も会いませんでした。
 一度会おうと思って友人に探してもらいましたけど見つけだすことはできませんでした。
 辞めたのかなあ?
 おそらく辞めたのでしょうね。
 これは結構現実的な話なのです。
 私もそうですが、我々は大学に入ってからがナイトメアモードです。
 だって基礎学力が足りてないんです。
 入った瞬間から人の3倍勉強してなんとか平均値です。
 私と同じような学力の高校を卒業した中学時代からの友人がK田と同じ大学の哲学科に行きましたが僅か半年で辞めました。
 どうしても人間というものは同じ学校に通う学生の中で自分が圧倒的に劣っているという客観的事実を認めるのが難しいのです。
 プライドの管理はかくも難しいものなのです。
 その点私はプライドらしきものがぺちゃんこに潰された状態で出荷されたのでなんとか楽しくやっていけました。
 でもK田くんは今でも元気に私の知らないところで何人もの人間を破滅に追い込み続けているんじゃないかなと思います。
 だって寿命のある悪魔ですから。


 W辺、Y岸には積極的に会おうとは思いません。
 情報すら集める気にはなりません。
 でもSさんが成人式で会ったときにW辺は大はしゃぎして成人式の壇上にパンツ一丁で上がりつまみ出されたそうです。
 最近私は思います。
 彼らは日本の社会が生み出したバグキャラなのではないかと。
 それを私たちは真面目に考えすぎていたのかもしれません。
 深く考えたら負けだと思います。


 K平は道で会ったら問答無用で殴ると思いますが、残念ながらその機会は一度もありませんでした。
 一度も会ってません。


 赤羽はそれこそ全くわかりません。
 彼が目指していたハリウッドの俳優になれたのでしょうか?


 O倉、K宮などアニメスキーな二人はゲームの専門学校に行ったそうです。
 もしかすると有名ゲームの製作にも関わっているかもしれません。
 そうだったらいいなあと私は思います。


 A地くんに関しては噂が錯綜してます。
 夜間の学校に行ったとか、フリースクールに行ったとか、アニメ関係の学校に行ったとかです。
 私が耳にしたのはアニメ関係の学校に行ったという噂です。
 もしかするとトップクリエイターになったかもしれません。


 私はというと150㎏オーバーだった体重を1年で70㎏台前半にまで落としました。
 ヒザと股関節それに足首に痛みが出たためです。
 それに仰向けに寝られなくなったのです。
 自分の肉の重みで息ができなくなるからです。
 痩せたこと自体はいいことが多かったような気がします。
 服もLサイズで入りますし。
 ただ……無茶なダイエットで確実に寿命を縮めたような気がします。
 その後、人生を無駄にしつつも一般受験で大学へ進学。
 ここで人間扱いを受け自分の価値観が全面的に狂っていることを思い知らされます。
 4年間も半分死にかけながら黒歴史を量産。
 楽しい思い出ばかりなのに思い出したくないという矛盾に苦しめられます。
 育ちの良いお坊ちゃまお嬢様は生物としてスペックが違うんだなあと悩み続けることになるのです。
 最終的に格闘技は合気道とカリを長くやることになります。
 ガツガツしてないからのびのびできるのです。
 でも……たぶん達人になれる日は永遠に来ないような気がします。
 どうしても私には闘争本能が足りないのです。


 そして少し絶望的な話をすると同級生のほとんどが一年以内に最初の就職先を辞めました。
 ミスマッチとかそういう話ではなく、やはり全員に社会生活を継続できないレベルの致命的なストレスがあったのでしょう。
 誰も幸せになってないし、誰も得してません。
 もちろん私もです。
 『今幸せか?』と言われると『投稿サイトで小説を発表するのは楽しいけど、たぶん幸せではない』と答えるでしょう。
 心に穴が空いてしまったのかもしれません。
 なにも自己正当化をするつもりはありません。
 私は案外人を殴ることができたのです。良くも悪くも。
 結局、3年間で我々が得たものはなにもありませんでした。
 やはり安全というものは何にも代えがたいのです。




 そのせいか私はいじめ自殺のニュースなどを見ると心が痛みます。
 なぜ被害者側にばかり我慢を強いるのでしょうか……
 何年経っても社会は同じ価値観を持ち続けているようです。


 今いじめや暴力で苦しんでいる貴方へ。
 我慢なんてしないでください。
 確かに我慢は美徳ですが苦しみを引き延ばすだけです。
 人生の中では戦うべき時が必ず来ます。
 それが今なのです。
 人の助けはあてになりません。
 親も教師もあてにできません。
 警察も学校内のことには消極的です。
 自分のことではないからです。
 だから親と教師に話しても埒があかなければ、思い切って迷惑をかけてしまいましょう。
 孤独を恐れてはいけません。
 人間はどこまでも行っても孤独な生き物です。
 暴力で繋がっているような人間関係に価値なんてありません。
 嫌われるのを恐れるのは愚かなことです。


 今自殺を選ぼうとしている貴方へ。
 死はなにも解決しません。
 貴方を踏みにじった彼らは来年には貴方のことを若い頃のヤンチャだとゲラゲラ笑っています。
 人の命の価値なんて他人から見たら案外軽いものなのです。
 そして生きている限り貴方のような被害者を作り出していきます。
 彼らはそういう生き物なのです。
 そんな目に遭うくらいなら単純な暴力で解決した方がいくらかマシです。
 それに相手は問題を表に出されることを何よりも恐れています。
 だから『みっともない』とか『我慢すべき』と貴方を脅しているのです。
 大騒ぎしてもいいのです。
 泣いてもいいのです。
 どんな汚い手を使おうとも死ぬよりはマシです。
 そう、考えている中で一番汚い手段を用いてもいいのです。
 他人から見れば貴方の命は無価値であっても、貴方にとって貴方の命は重いものです。


 我々は我慢を選択しました。
 なあに3年間だけ我慢すればいいさ。
 親も教師もいい加減なものです。
 辞めさえしなければ死んでもいいと思っているのでしょう。
 我々は暴力を振るうまでに我慢しすぎたのです。
 そのせいで失ったのは健康です。
 Sさんは40歳くらいまでしか生きられないだろうと言われています。
 私も内臓がボロボロです。
 今日明日に死ぬということはありませんが、まあ……長生きはできない可能性は結構高めです。
 これが我慢のなれの果てです。
 何もいいことはありません。
 たとえ嫌われようと、憎まれようと、恨まれようとも戦う方がずっとマシですよ。
 恐ろしいことはありません。
 勝てない人間などこの世にはいません。
 暴力で勝てなければ勝てる勝負に持ち込めばいいのです。


 私の高校生活はどこまでもクソゲーでした。
 だから皆さんにはぜひ楽しい学校生活を送って頂きたいと思います。

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