セミになりたい少女と内気な僕

ノベルバユーザー173668

先生との出会い

 電車に揺られながら、僕は、思い出していた。弟が、亡くなったときのことだ。
 僕は、弟が、亡くなったあと学校にも行かず家に引きこもっていた。弟の命を救うことができなかったのも悔しかったが、それ以上に、弟とした、一緒に公園で遊ぶという約束を破ったことだ。この約束は僕が勇気を出せば守れた約束だ。僕は、自分を攻め続けた。両親が心配してきたが、反抗期でもあった僕は、両親に反発し続けた。そんなある日、僕は、あるカウンセリングに連れていかれた。それが先生との出会いだった。連れていかれた僕は、どんなことを聞かれても無視するつもりだったが、先生に優しい言葉を掛けられ、泣き崩れるように全ての心境を打ち明けてしまった。きっと、先生の謎の親近感のせいとどこか心の奥では助けを求めていたのかもしれない。すると、先生は、
「君は、弟の約束を破ってしまった。自分が許せないんだね?」
僕は、
「はい。」
と言った。すると、先生は優しく、
「そうか。君は優しいんだね。他人のことをよく考える。でも自分にも優しくないと駄目だよ。」
と言った。僕は、
「優しい?」
と聞くと、先生は、
「そうだよ。」
と言った。その後も先生にたくさん優しい言葉をかけてもらった。僕は、
「明日もきていい?」
と聞いた。それから、1年間毎日先生の元に通った。先生といるだけで気が楽になった。そして、先生みたいなカウンセラーになりたいという夢が芽生えた。僕は、
「先生、僕でもカウンセラーになれますか?」
と聞いた。先生は、笑顔で、
「君は、正直に言うと精神的にとても弱い。」
と言った。僕は、
「弱い僕では無理ですよね。」
と言った。先生は、
「弱いからこそ、弱い人の気持ちを分かってあげられる。それが君の一番の強さだよ。」
と言った。そっか今まで忘れていた。どこかで、頼りになるカウンセラーになりたいと思うばかり、強がっていたかもしれない。そんなことは必要ない。ありのままの自分で自分の弱さを生かして、一緒に答えを探す、それが、僕の憧れたカウンセラーだ。
 電車に揺られながら僕は、すっかり忘れていた夢について思い出すことができた。

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