セミになりたい少女と内気な僕

ノベルバユーザー173668

二人目の友達

それからと言うもの、いつもセミちゃんに病院の外の世界について、教えにいった。来る度にいつも顔をくちゃっとして、笑ってくれる。ぼくは、その顔を見るのがとても好きだった。それに、セミちゃんに病院の外の世界を教えるのがなんだかとても楽しかった。なんだか、それは、とても懐かしかったからだ。僕は、最近写真にはまっている。それは、セミちゃんに見せるためだ。日常的に直感的、何気ない写真を撮る。自動車が走っている道路、公園で遊ぶ子供たち僕にとっては何が凄いがよく分からないが、セミちゃんはとても嬉しそうに眺めている。
「外の世界はこんなに、凄いものがあるんだ。…」
と、とても喜んでいる。その姿を見るのがとても嬉しかった。セミちゃんは、
「ねえ。このカメラを見せて。」
と言った。僕は
「いいよ。」
と言った。僕は少し恥ずかしかった。それは、10年くらい前に買ったとても汚いカメラだったから。僕は、
「汚くてごめんね。」
と言った。すると、セミちゃんは
「とても素敵なカメラだね。」
と言ってくれた。
 ある秋の日僕がセミちゃんの病室に入ると、セミちゃんは
「ハッピーバースデー先生!!」
とクラッカーを鳴らした。僕は、そのとき思い出した。あっ今日は誕生日だったな。僕は、
「ありがとう。」
と言った。セミちゃんは僕に小さな袋をくれた。僕は、驚いていると、セミちゃんは
「さあ、開けて、開けて。」
と言った。そこには僕が欲しかったカメラが入っていた。僕は、ふと思い、
「何で誕生日を知ってるの?」
と聞くと、セミちゃんはくちゃっと笑って、
「職員名簿を見ました!」
と言った。僕は、カメラを見て、3日前に何が欲しいのか聞かれたことを思い出した。とても油断できないトーク力だなと思った。僕は、
「こんな、高いもの。貰えないよ。」
と言うと、セミちゃんは自慢げに言った。
「友人にプレゼントをあげる。それもやってみたかったんだ。」
と言った。僕は、思った、友達か。セミちゃんは、ニヤリと笑って
「まさか、先生友達いないの!?だから友達の話がなかったのか!」
と言った。僕は、図星で、苦し紛れにこう言った。
「別に友達なんて要らないし!一応一人いるし!」
セミちゃんは、
「誰?」
と聞いてきたが、僕は、恥ずかしくなって
「秘密。」
と言った。セミちゃんは、
「しょうがないな、じゃ私が先生の友達になってあげる。」
と言った。謎のどや顔がいらっときたが、僕は、
「ありがとう。」と言った。
これが、僕にとって二人目のの友達ができた瞬間だった。

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く