誑かした世界に終わりを告げて

山永

06



魔力の使いすぎと疲れで翌日は動けず、ベッドの住人になっていると、レイノとリアンが部屋に訪れてきた。
ベッドまで近づいてくる二人に愛らしさを覚える。


ベッドまで近づいてきても、大人が優に3人寝れるベッドの中央に寝ている私とはまだ距離がある。


「姉上大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないかも…」


ボソッと零れた本音が聞こえたのだろう、リアンは不安げな顔だ。


「こういうとき魔力が多いといいわよね」


苦笑を浮かべるレイノに頷くリアン。


リアンの魔力はB。この場では一番私の気持ちが分かってくれる相手だろう。
魔力以前に体力があるので、使いすぎてもベッドの住人にはならないだろうけど。


「それでも明日には王宮に赴かなければいけないのよね」


「そうなのですか?」


「えぇ、神子様のお相手をお願いされているの。だからリアン、お供お願いね」


「はい、承りました」


レイノの疑問に答え、リアンにお願いするとリアンは快く応えてくれる。


今はリアヴィの町と呼ばれるようになった元貧困街に行くのは暫くできそうにないな、と一人思う。
リアヴィの町とはリアンが死んでから少しして呼ばれ始めた名前だ。
呼び始めた住人たちに名前の由来を聞くと改革者の偉大な二人、リアンとヴィヴィを繋げたのだと誇らしげに言われた。
その名前はあっという間に広がり、違う町の人々からも呼ばれるようになった。
あまりにも誇らしげに言われ、名前の変更を進言できなかったのは良く覚えている。


リアヴィの町は改革を始めた13年前が嘘のように発展し、今では商業の要となっている。
リアヴィと言えば商業と言われるほどだ。
これも住民の頑張りのおかげだろう。
前ほどリアヴィを訪れなくても町は回るようになった私は今は月に一度程度に通っている。


今のリアンが前のリアンを知ったとき…
「確かに、この名前は重いですね」
と哀しげに呟いていた。
その哀しげな表情からはリアンに対する追悼なのか、己の名前の悲しさなのかは分からなかった。


それ以来、私がリアヴィの町に行くときリアンはなるべく姿をみせないようにしている。
流石に護衛ということでリアヴィの町に行かないということはしなかった。
その時まだ護衛になれなかったリアンは私が護衛を撒くという行為に困惑していた。
懐かしい思い出だ。


今では私の護衛部隊長を任されている。


「明日でも体調が戻らない場合はちゃんと断ってくださいね」


「分かっているわ」


心配ですと顔に書かれているレイノの言葉に頷き、了承すると、二人は少し表情を和らげた。


魔力が枯渇するわけでもないのに、二人は心配しすぎだと思う。
魔力の枯渇など…まだしない予定だ。


「それでは姉上が休めないので、これで失礼しますね」


「十分休養なさってください、ヴィーラ様」


「はいはい、お見舞いありがとう」


そういって二人は退室していった。




「と、いったものの…。あれがいるから休めないのよね」


誰も居ないはず部屋で一人ボソッと呟く。






***


「さて、王宮へ行きましょうか」


「ヴィーラ様大丈夫なんですか?」


「体調は万全のつもりよ?」


「ならいいのですが…」


体調は万全だ。
神子の苦手意識もレイノおかげで緩和されている。


今日は神子のお相手のほかに国王陛下とリアヴィの町について話合う予定も入っているのだ。
昨日ああは言ったが個人的な会見とはいえ、国王陛下との約束を断ることはできない。


意気揚々とはいかなくとも、若干テンションを上げリアンに言うと納得しきれて居ないが、了承したしたので馬車に乗り込む。


王宮までの道程は特に珍しいものもなく、順調に進む。
賓客用の門を過ぎ、馬車を降りる。
神子の移住区まで来ると、神子専属の侍女が出迎えてくれる。


侍女の案内の元神子の仮の部屋まで来ると、なにやら中から楽しげな声が聞こえる。


「中から楽しそうな声が聞こえますわね」


「…えぇ、先日の夜会で仲良くなられた方が個人的にお会いに来たようでして」


侍女に聞くと、なんとも微妙な顔で声の正体を教えてくれる。


私との約束は前から言われてるだろうに、随分と良いご身分だ。
あぁ、神子とは良いご身分だったと思い直す。


若干声が低くなったのを感じたのだろう侍女は、焦りながらも事の詳細を話し始めた。


「わたくしはご遠慮願うように申したのですが、神子様がよろしいと申されまして…」


「そう、貴方も大変ね」


そういうと、侍女は驚いた顔でこちらを見る。
先ほどの微妙な顔といい、今の言葉といい、彼女はどうやら神子に少しの不信感を持っているらしい。
中々人の見る目のある侍女だ。
神子の専属侍女はエリートと聞くがこれなら真実なのだろう。


不信感を抱かせる言葉を付いた侍女に労わりの言葉をかけた私を未だに見ている侍女。
恐らく叱られると思ったのだろう。
安心させるように微笑む。


「叱らないわ、安心なさい。誰にも言わないわ」


「あ、ありがとうございます!!」


私の言葉に侍女は感極まったように深く礼をする。
そこまで感謝されるようなことは言っていないのだが。


「貴方は正しいわよ…」


「え?」


「何でもないわ。開けてもらって良いかしら?」


「は、はい!」


彼女に近づき耳元でぼそりと囁く。言われたことが分からないだろうけど、そのうち分かるだろう。
聞き返される前に扉を開けるように急かす。


「カリーナ様、ロズベルク公爵家のヴィーラ様が参られました」


そう一声かけ、扉を開く。



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