嫌悪感マックスな青春~マジでお前ら近づくな~

黒虱十航

思いやり部と友達2

「で、もう一つってのがその友達云々ってことか?」
「云々って言葉、好きなの?まあそうだけれど。二つ目の目的が依頼をこなし導く中で自身らの友好関係を深め友達と認め合える関係に成長すること、よ」
「胡散くさ」
友達、だなんて言葉を活動内容に入れる時点でもう胡散臭い。なんなら友達って言葉自体が胡散臭いのだ。だが、俺がつぶやくとハチも北風原も俺をじーっとみて動かない。
「なんでしょうか?」
「あなた、言葉には気をつけなさい。どこか胡散臭いのかしら?」
「いや、すまんすまん。」
流石に怒らせたみたいだし謝っておこう。何が悪いとか分かってないのに謝るだなんてまじで自分の社畜適正がありすぎて怖い。
「謝罪はいいわ。どこが胡散臭いのか聞いているの」
「いや、ほんとにすまんって。別に胡散臭いとか思ってない」
「うそよ。」
「・・・・ぐ・」
正直北風原にも俺を負かせる勢いをもてるのだな、と驚いたが女性は怖いというし不思議でもない。だがまあ、それよりも今は自分の状況をどうにかしなければなるまい。
「いや、友達とかそんな不確定な要素が胡散臭いって思っただけだ」
「友達が胡散臭い・・??」
「大体、お前は友達多いだろうが。わざわざそんな活動目的にしなくたって大丈夫だろうが」
「・・・・・・・・・・あなたには理解できないかもしれないわね。不器用な人間が自分を優れているように振舞うことでどんな違和感を持つのか。あなたは元々天才に近しい存在だろうしある程度は素だろうけれど私は違う。全く素の自分とは違うのよ?友達なんかいるわけ無いじゃない」
分かった。北風原のスイッチはこれだ。自分が友達はもう十分すぎるほどにいると思われること、こそがこいつのスイッチなのだろう。急に真剣な音になったし歯軋りも聞こえる。怒りのにじむ声が響く。目では見えないが確かに分かる。こいつは、真剣だ。
「そうかもな。けど友達なんて不確定すぎるし活動目的は具体的じゃないとだめだろ」
「そうかもしれないわね。だからはっきりした活動内容に変換するのなら『友達ごっこ』をすることになるわね。活動目的の為の活動内容。しっかり出来ているわよ」
目的の為の道筋を立てた。中身はしっかりしている。ただなぁ。友達ごっことかこいつからそんな言葉を聞くことになるとは思いもしなかった。まあ、人生何があるかわかんないってことだな。
「ま、なら今やってるように喋ってティータイムをしておけばいいって感じか?俺的には友達とか気持ち悪くて嫌なんだけど」
「そうですね・・。私もあまり友達ごっこというのはよく分かりません」
「ま、まあこのままでいいんじゃないかしら?」
「そう」
「ほほぅ。なるほど。ならば私の願いも聞きうけてもらえるのだな」
俺が相槌を打とうとするとそれを邪魔する何者かの声が聞こえていらっとした。やけに可愛らしい声だがちょっとタイミングが悪かったようだな。恨むなら自分の間の悪さを恨んで欲しい。
「誰だ、おまえ」
「何を言っているのかしら?遂におかしくなってしまったの?」
「・・・そうかもしれん。何か変な声が聞こえた」
この場で耳を聞こえるのが俺と北風原だけな訳で北風原が聞こえなかったという事は俺の耳がおかしいのかもしれない。神の耳で聞こえちゃっただけかもしれないし俺が悪いな。
「じゃ、まあ食べるか。頂きます」
俺は、一言そういってからまずメロンパンを口にする。流石、伝説と呼ばれるだけの事はあってしっかりとした味だ。だが正直プロの作ったメロンパンならこれぐらいの味が当然なんじゃないかと思う。だがその瞬間である。急により強いうまみが俺を襲う。これは、スパイスだ。辛いといえるほどではないがちょっとだえピリッとする。と思ったらメープルシロップの甘みが降りかかってくる。練乳のような甘みも広がり若干だがカカオの香りまでする。
「やばいな、これ美味い」
「そう、ね。流石伝説のメロンパン。今度、クラスの人たちに買おうかしら」
そういいながらまた一口食べる、すると先ほどとはまったく別の食感が俺を包み込む。かりっとした焼きたてのクッキーのようなかなり固めの食感だ。ミルフィーユのような何枚か重なったような食感。甘い香りが鼻に入りするっと抜けていく。シナモンの香ばしい香りも出てきて鼻を楽しませてくれる。
「ふむぅ・・・。今度作ってみるか。ちょっと難しいけど出来そうだな」
「師匠がお望みならば毎日買っておきますが」
「それはいい。あんまりハチに無理させるのは師匠の役目じゃないからな。ほら、結構眠そうだし」
「そうですか・・・。やはり師匠はお優しい。流石です」
「そんなんじゃないって。でもまあ、何となくレシピも分かったし作れるだろうな。どうだ?今度で来たら持って来るから試食してくれよ」
「そうね。いいわよ」
「はい。勿論でございます」
そう話しながらメロンパンをもぐもぐと食べる。もう、耳が聞こえないことが無かったかのように会話できている。ハチだってこう見えて無茶苦茶頑張っているのだ。けれどどうしたって限界がある。読唇術だって完璧じゃない。ましては独学だ。感情を読み取る事は難しいしなにより本人の声を聞けないというのは、かなり大きい。
「おぬし達ぃ。何故に我を無視するのだ。もしやそなた達こそサイレントスターズ・・・。」
「・・・・・・・なあ、聞こえたよなぁ?」
「・・き、気のせいよ。扉も開いてないし扉の目の前に立っていれば鈴がなるはずだわ。そういう風にセンサーをつけておいたもの。」
「お前、それはやりすぎだろ。俺なら帰っちゃうぞ」
「あなたは依頼に来ないでしょう?」
「まあ、そうだけどな。って俺の事はどうでもいい。それよりも今の声。絶対お前も聞こえてるだろ。動揺してるし」
「でも実際いないじゃない」
「くっくっく。やはり愚民には我が姿を捉える事はできないのか。まあ、闇の魔神、吸血鬼である我を捉えることの出来るものなどいるはずも無いがな。」
実を言うと俺は振動などによってどこに声の元がいるか自体は分かっている。けれどそういうことじゃない。いつの間に入ったのかというのが不思議なのだ。だがそれよりも北風原たちの反応が面白い。
「師匠、どうなさったのですか?」
「ああ、何か声が聞こえるんだよ。どこからかわかんないけどな」
「何を言っているの?そんな声聞こえないわよ。やちま・・ハチちゃんにまで変なことを吹き込まないでくれるかしら」
「そろそろ気付け。この部屋にいるから」
そういってから俺は、いいことを思いついて2人にメールを送信した。

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