不良品な青春ループ

黒虱十航

△月の声

この世界は腐りきっている。そんなことを思い始めたのは俺が、2歳のころだった。まあ、無理もない。
実際にこの世界は腐りきっているのだから。ゴミみたいに腐敗しつくしている。全く、だめだ。
リア充たちの雄叫びの声。非リア充たちの嫉みの声。ずっと続く負のスパイラルだ。
努力の無い幸せも努力のある幸せと同じように扱われる。終わりよければ全てよし、何て言葉があるぐらいだ。
終わりよければ全てよし、なんていうのは途中で頑張ってそれで失敗することを知らず失敗する前に努力を放棄して人に任せる
強者のやることだ。そんな奴らばかりが得をする。そんな社会が俺には腐っているように見えた。そもそもこの世界は腐る前に
狂っている。連帯責任、何て言葉があるだろ?あと、よく言われる止められたはずなのに勇気が出なくて!っていう理由で
連帯責任に巻き込まれる奴。ホント、ああいうのはクソゲーの塊だと思う。確かに止めるべきだろう。出来るならばな。
だが、そんなのは強者の戯言。俺みたいな不適合弱者には、無理なことだ。もし、そんなことがしたいなら身内で勝手にやってろ。
そもそもそれを言い出したらきりが無い。じゃあ、無差別殺人事件で生き残った、すぐ近くにいた人に
「何故止められる距離だったのに気付けなかった?お前も連帯責任で逮捕だ」などといって罪を償わせるのか?
仲間だからこそ連帯責任が適用される。滑稽な話だろ?仲間でもないのに勝手に仲間扱いしてそれで常に誰の仲間にもなれない俺も
連帯責任に巻き込まれなきゃいけないんだ。その理屈が分からない。例えば論理展開をしてくれて分かりやすく
説明してくれるならば俺だってもしかしたら、ということがあるかもしれない。だがな、この世界の連中が今のところ
そういったポイントさえ存在しない。頭が悪いんだ。言葉を弄するのが圧倒的に下手。何せ、小学4年生の俺が教師達の言葉を
毎回毎回脳内論破しつくしていて数度、ほんとに論破しつくしてるんだぜ?この世界の奴らの頭はおかしいとしか
言いようが無いと思わないか?俺は思う。大いに思う。なぜならば、俺が一つの点で劣っているのにも関わらず人間は、
俺に勝てないのだ。俺のもっているハンデキャップが有効な場面でも、である。小学4年生。俺は毎日のように退屈な日々を
過ごしていた。勉強は簡単だったし中学校の分のもやれと言われたので塾でそのコースを選択したらそれも全クリした。
クラスでも俺はそこそこ人気者で上手く思考を隠して取り繕って中心人物として存在している。その目的はただひとつ。
俺はどんなクソゲーでもゴミみたいな世界でも極めてからじゃないとそれが腐っていると断定しない。その結果がこのざまだ。
まだ、俺のかけている部分に気付いてすらいない。仲良くしている風に見えて皆が皆、偽善者だ。
おそらくだが俺のそのかけている部分を知ったとき俺の周りにいる奴らは、きっと消えうせる。何よりそうでなくては困る。
逆に心配して近づかれようものならそのほうがうざったい。望んでもいないことを与えてくるのはただの傲慢でしかないのだ。
さて、ここまで例に出せば分かっただろうか?この世界がどれほどまでにクソゲーで腐っているかどうか。
そして俺という人間でさえこの状況を打破することが出来ないということが。もし分かってくれたならそれで構わない。
ただ・・・・・打破できないからといって放棄する気は無い。俺はまだ、このゲームの中でトッププレイヤーで居続けて
更にゲームをよりよくするためにもっともっと極め続ける。


ゲームに代えはあるし命にも代えはある。例えばお前が死んだとしてもお前の代わりに社会に貢献できる人間が何人いると思う?
悲しむのなんてせいぜい周りのやつらだけ。変わりになってくれる奴らがこの世には山ほどいる。モブモンスターだって
倒しても倒しても代わりが出てくるしそのゲームがサービス終了されても別のゲームで別のモブモンスターがプレイヤーの経験値や
素材になってくれる。だが、な。トッププレイヤーであり腐ったゲームに適合せずにいる不適合者の俺には代わりがいない。
それには自信がある。何故って俺がどれだけここに登り詰める努力をしてきたと思ってるんだよ。ハンデキャップを背負って
それで尚勝ち続けることが出来てるんだぞ。そんだけのトッププレイヤーに代わりがいるはずが無い。だから、
本気でこのゲームをアップデートする。


――――――それが俺が小学4年生の時の野望であり夢だった。古びたノートに乱れた字で書かれているその目標は決して
叶うことは無いだろう。名門中学への入試に合格した俺は、勿論入学式にも力を抜かない。それがあの時決めたルールなのだ。
このゲームを極める。世界のレベルはだんだんと上がっていた。俺が釈然ともっていた自信さえも通用するかは、分からない。
だから小学校が終わり中学校になるまでの春休み役2週間。俺は更なる技術の向上を目指した。レベル上げだ。曰く、
この世界のものは全て、ゲームのステータスのようになっているんじゃないかとこのごろ思い出した。
中学生男子の妥当な感情だろう。だが、それは俺にとっておかしいものだった。並みの中学生と同じ感情。それが腹立たしく思えたがそれもまた妥当な反応だと自分で理解しているからイライラとしてしまう。その連続だ。それが人生?そんなはずねえだろ。
だがこの数年の間に俺も少し変わった部分がある。まず一つ。小説を書き始めた。といってもライトノベルが主だったりするが
基本的にはヒューマンドラマだ。そしてもう一つ変化があった。だがまあ、それは口にする必要も無いことだ。とにかく、
俺の書いた小説はずっと貯め続けている。誰かに見せるわけじゃないのだがまあ年頃として自分の想像を文にしてみたいというのが
あったり文章力の更なる上昇という意味だったりあと、かなり前から頼んでいたパソコンのハイスペックなものを
小5になってやっと入手できたのでその区切りとして、というのがある。だがまあそれはおいおい。それよりも今は
中学入学式に備える。


俺が中学生になる春。桜は若干散り始め中学校への登校路を歩いていた。この道も完全に覚えている。
ハンデキャップももろともしないほどの努力。それが俺にはある。生まれてこの方ずっとずっとこの努力を欠かすことはなかった。
そのおかげで小学校では何とか俺の持つハンデキャップを誰にも知られることが無かった。といっても昔から俺は、
努力が好きだったのだ。育成ゲームをやるならば個体値厳選は、欠かさずやったしレート戦などだって自分の納得いくまで
ずっとやり続け戦法を考えた。小学1年生の頃だ。それまでにも独学で勉強し続けて自分の納得いくまで自分の知力を高めた。
その頃には既に小学2年生の範囲は終えることが出来ていた。それもこれも全部、誰かに褒めてほしいとか誰かの為とか
感謝されたいとかそういうことのためにやったんじゃない。ただ、自分がやりたかった。他より優位に立っていたかった。
だが、現実とは非情だ。俺の学力に驚いた両親は小学校に入ってすぐに塾に入れた。しかも小学3年生レベルのコース。
俺はそこでも何とか頑張ろうと決めていた。小学校では人生というゲームを攻略するために上手に媚を売り上手に仲間を作る。
そうやって俺の世界は全て努力でかたどられてきた。
ある程度歩くと名門私立夢丘中学にたどり着いた。これまでの距離、大体2キロメートル。電車を使うことも考えたがとりあえず
初日は徒歩である。これには無論このハンデキャップが関係しているのだがそういったことを考えている余裕も無い。
中学校入学式。どう考えたって俺からすればボス戦なのだ。ここで上手に関係を作ることが出来たものがその学年の中で
優位に立てる。そうすれば後は、大人への対応だ。これは直接関係性に響いてくるわけではないんだけれど大人と
仲良くなっておけば後々有利になる。そもそも信頼を得ておけば色々と助かるのだ。このハンデキャップを隠す上でも。
実を言うと俺のハンデキャップについて気付いているのは両親と下にいる妹ぐらいだ。いや、まだ妹は小学4年生だし
気付いていないかもしれない。まあ、後々もう一度話すことになるだろうけど。だが、小学校では教師にすら悟られずに済み、
親も話す必要が無いと判断した。俺がこの呪いみたいなハンデを背負ってすぐに気付かれない努力を極めたから、
というのがあるだろうが何より実の息子、しかも”将来が有望だと思っていた”息子がそんなハンデキャップを
背負ってしまうだなんて考えたくも無かったんだろう。
「すぅちゃん?どうしたの?具合でも悪いの、考え込んじゃって」
「あ、いや、なんでもない。ちょっと色々策を練ってただけだから。ほら、いつものあれだよ。」
そこまで考えていると隣にいた母親が俺に言ってきた。すぅちゃん、という呼び方は流石にやめて欲しいのだがもうこれ以上
言ってもしょうがないので諦めた。この母親には助けられた場面もあるし利用した場面も山ほどある。何せ、俺は両親や妹相手に
コミュニケーションの特訓を隠れてしていたのだから。会話を切り出す技術は言葉のプロとも言える小説家の母親から、
抑揚や表情はミュージカル俳優の父親から学んだ。
「ならいいわ。ほら、じゃあ、入りましょう」
「おう」
母に促され中学校の門をくぐる。他にも周りに多くの中学生がいるのが分かる。皆、難関入試を潜り抜けて来た頭のいい奴ら。
しかも声を聞けば分かるように一部の小学校からは数人がそのまま来ているのかすでにグループが作られている。
こういう時頭のいい小学校に入っていると有利だ。コミュニケーションとは印象で決まる。それはつまり前、だめだったとしても
印象をもっていない人がみれば挽回の可能性がありそうじゃなければ挽回できない。小学校から引き継がれない場合小学校で
悪い印象をつけてしまったものからすれば挽回のチャンスだろう。だが、な。俺は違うんだよ。俺は小学校から手を抜かなかった。
失敗をすることがあってもそれを更に武器に変えてきた。印象をやっとのことでよくした。最大限に良好化させた。
それがゼロになってしまうのは個人的には惜しい気もするがしょうがない。とりあえず俺も上手にグループに入らないといけない。
とはいえ、ここから式場へ直行だ。その後で色々チャンスがあるのでそのときの方がよかろう。と、思ってしっかりと覚えていた道を進み式場(体育館)に向かう。だが、まだ大きい制服の袖を掴まれた。母親だ。この力は確実に。
振り向いて急になんだ?と顔でアピールする。
「ちょっと校長先生のところに行かなくちゃいけないからすぅちゃんも来て。すぐ終わるし校長室に行って少し話すだけだから。」
「・・・まあ、いいけど・なんだ?」
俺が何故行くのだ、と問うてみたもののスルーされて仕方が無く校長室に向かう。ここの場所から校長室までの距離を計算して
母親の速度にあわせていく。この一つの動作にもどれだけの時間をかけたのか分からない。全てはあの日、あの時、
あそこでああなってしまったからいけない。まあ、過去の事はどうでもいい。与えられた縛り条件の中でプレイして
トッププレイヤーを目指すだなんてそこらの実況者がよくやっていることだ。今更何か思うことがあるはずも無い。俺がこの世界で
ありのままでいられる場所。それがあるとすればそれはゲームの中だ。ゲームにのめりこんで時間を忘れてるあの瞬間以外は
誰にみられても恥ずかしくないようにと常に仮面を被ってもっと上手く笑える、もっと上手に抑揚を付けられる、と練習している。
だからゲームの中だけだ。それでも十分すぎるほどだけど。
「着いたか?」
「ええ、流石ね。入ったらあいさつ・・」
「分かってるって。」
俺は、母の声をさえぎってそういってから校長室の扉をとんとんとノックする。探り探りにすら見えるであろうその動きも
俺ならばそつなくこなせる。そう、自身を持つに値するだけの苦しみを受けている。ナルシストだなんていわせない。
「失礼します。」
一言、そういって校長室に入って行く。とはいえ、流石にどこに座ったらいいか分かるはずは無いので校長先生に促されるままになってしまう。何だか申し訳ない気持ちになりながらもそこそこ良質なソファーに腰掛ける。
「よく来てくれた。猫実涼ねこざねすう君。早速だが君は、今年の我が高校の入試で最も高い点数をとった。なので今回は君に入学式の時の言葉を頼みたいと思ってね。それだけなんだが、やってくれるか?」
なるほど・・・と校長先生の話を聞いて思う。何せここの入試は合格者だけで点数は発表しないし順位も発表してくれないからな。
1位だったとは驚いた。だが、それだけの努力があったってことか。ならそれに与えられる報酬も武器にするほかあるまい。
「ああ、やらせていただきます。光栄です。入学式まであと・・・10分って所ですか。2分くらいの分でよろしいでしょうか?」
「そうだ、な。うむ、頼んだ。原稿はこれに書いてくれ。普通の原稿用紙だがこれをとりあえず3枚渡しておく」
俺の問いに簡単に答えてくれた校長先生は俺に原稿用紙を渡してくれた。後はバッグに入っている筆箱からシャーペンを出して
さらりさらりと書いていく。小説を趣味で書いている、ということもあって字はさらさらと浮かんでくる。
パソコンでやっていて勝手が違うのでスピードは普段の3分の1程度になるがそれでも
10分で800~1200文字なんてちょろい。


そして俺の中学校生活第一日目は、始まりを告げた。
無論、何の問題も無く原稿を書き終えた。何かを書くという行動は、俺をとても落ち着かせてくれる。勉強だって何だって俺は
ずっと書き続けることで覚えた。それしか方法が無かった、というべきだろうか。ただ、どんどん文字を書き真っ白だった
紙が鉛筆で塗られていく。この様は、俺でも感じられる心地良い感じである。だからまあ、なんの躊躇いも無くさっさと書き終えて
校長先生に提出した。ぱらぱらと音がなりやがて原稿用紙を手渡され俺は、一礼してから校長室を出る。母親は俺についてきて
体育館に向かう。ここからの距離をもう一度確認。歩数計算をしてからさっさと体育館に向かう。その道中でもやはり声が聞こえる。式場も既に五月蝿さを醸し出している。分からなくも無い。小学生が中学生に進学、というのは些細な変化に思えて本人からすれば
とてつもなく大きな変化なんだ。俺だってそう。だが、彼ら彼女らと俺のそれは、明らかに違う。違うというのも意味合い的には
同じはずだろう。だが、みている世界が圧倒的に違うのだ。彼ら彼女らの見ている世界は、偽物でしかなくてゲームで言えばバグ、
表面といったところだ。ゲームの主は裏面だというし改造データはバッシングを受ける。それと同じだ。そんな偽物の世界には何の
意味もない。だが、な。いくら低レベルな表面連中や違法な改造野朗であっても俺は、負けるわけにはいかない。トップにさえ
立てればそれだけでどれだけ動きやすくなることか。リア充のみている世界がどんなものか、流石にまだ知りえていないがそれを
中学生、高校生でやっと分かるはずだ。だから、その景色をみて、それでこの世界が極める価値さえないクソゲー以下だと、
そういえるのならば、もしくはそれを否定できるのならば俺のやってきたことの意味はある。まあ、意味なんか無くても別に
いいけどさ。式場で到着を意味する名簿に名前を書きその他書類を提出してから母と分かれる。そこから迷うことなく自分に
当てはめられた場所に向かう。ある程度近づくと話していた俺の同級生連中が「君はそこだよ」だの「よろしくね」だのと
いってくる。欠かさず満面の笑みであいさつをして指定された席に座る。後ろには2年生、3年生の先輩がいること、入学式の流れ
なども既に予習済みだ。予習さえ出来ていれば完璧。元々、頭がただ、よかったわけじゃない俺は、基礎を固めた。暗記能力、
コミュニケーション能力。それらの基礎を固めて笑顔の練習もした。相手が喜ぶであろうトーンで話す練習もしたし相手のトーンを
聞くだけでどんな答えを望んでいるかも分かるように沢山沢山パターンを覚えた。今の暗記能力は、その頃から来ている。
「いやぁ、緊張するねぇ。うちの小学校から誰も来て無くてさ。周りの人、結構同じ学校の人も居るっぽいから大変だよ。君は?」
「俺も俺も。でもまあ、大丈夫だって。小学校が同じであろうと無かろうと仲良くなれる人とは仲良くなれる。」
「そうかな?」
「そうだと思うよ。まあ、俺も周りの人が小学校違う人ばっかで緊張してるけど」
「何だよ、結局緊張してるんじゃん」
隣に座っていた男子生徒が話しかけてくる。やばいな、まだ流石に名前は分からない。まあ、入学式で全員の名前を呼ばれるし
それに返事をする。それで声を当てはめれば問題ないはずだ。どうでもいい会話。それをあたかも面白くするコツ。
簡単だ。表情とトーン。そして茶目っ気を見せる。例えばほら、今、校長先生が入ってきた。こういう時には・・・
「お、もう始まるんじゃね?」
「いや、まだ後5分あるし来てない人いるし始まらないでしょ?」
「あ、そっか。あせりすぎたか。うーん、やっぱ緊張しすぎて調子悪い。
いつもならもっと大きく間違えるのになぁ」
頬をかきながら恥ずかしがるようにそう言葉を発する。それも全部暗記の賜物。コマンド選択みたいなものだ。
これでちょっと間の抜けてる男の子みたいなイメージが定着する。他のやつには他のイメージを定着させる。それによって
「俺はこいつのこんな一面を知ってるんだぜ」みたいな話になってくれる。
「なんだよ、結局間違えるんじゃん。ま、いいけどさ。でも皆、頭よさそうだね。マジでインテリ系って言うの?そういう感じの顔の人ばっかりじゃん。俺とか馬鹿っぽくてさ」
「そうか?それいったら俺なんてしょっちゅう言われるぞ?ただギリギリで勉強したらちょうど山張ってたところが入試にでて
受かったレベルだしもうちょっと頑張らないとどんどん馬鹿に見えるかもな」
嘘である。勿論、当然に決まってるだろ?すでに中学生の範囲は終えそうだ。軽く流すレベルでいい。問題はここから。
俺のエネルギー消費の半分以上が人間関係の構築と維持。その点で、こいつは第1号の友人である。ポイント稼いで手放さないようにしないと。


少しして俺も周りの連中と話し始めた。名前を名乗ったりとかそういうのは後でって感じでお前とか君とかそういう代名詞で
呼び合っていた。くだらない話。それでもいい。それだからいい。くだらない話だからこそ誰かとシェアしてその話題の価値を
上げようとする。くだらない中でもより良質なものを。そうやって日ごろから話題を探すのだ。そして俺はノートに何十回も書いて
覚えたいくつもの会話を頭に浮かべる必要も無く振っていく。といっても5分ほどしかない。そこまで話せることも無く短い話題を
振ってきりのいいところで切り上げた。
「じゃ、後はこれ終わったらにしないか?ちょっと時間的にもそろそろだし入学早々起こられるのは俺も嫌だぞ。
小学校の入学式で前科あるからな」
「マジかよ。まあそうだな。じゃ、後で一緒に帰ろうぜ」
「おう、」
数人でそんな会話を交わして入学式の始まりを告げる副校長先生のアナウンスが響く。うちの学年は3クラス30人。
約100人いるが名前と声を覚えるぐらい容易い。俺はB組なのでB組の連中は、特に覚えなければならない。紹介された1年の
学年主任の先生が呼ばれた生徒は返事をしなさい、ということを前置きしてからそれぞれの名前を呼ぶ。それぞれに返事をする。
それを全て脳にバックアップ。書き換えて新しいデータにする。それを幾つものファイルに保存して消えても消えないようにする。
そこから更に自分の返事にも力を入れる。猫実涼。その名前を呼ばれ、俺は全力で演じて返事をする。
「はいっ」
――――と。そう一言発するのにどれだけの集中力を有したものか。トーンの工夫も笑顔も感情にさえも仮面をつけて息を吸って
発したその返事は式場である体育館に響き渡った。その後も呼ばれていく奴らの名前を全暗記する。その中には変わったものから
平凡なものまであったが流石に中学校ということもあり天才でなければ絶対に受からないというわけじゃないのできゃぴきゃぴとした
声の奴らもいた。こいつらをどう、引き込むか、だな。まあ、どちらにせよ俺の策はもう始まっている。この世界を攻略する。




続々と名前が呼ばれC組の出席番号30番の奴の名前が呼ばれ次のプログラムに進んだ。例によってというか型にはまってというのか校長先生の話である。声が野太く、やはり色々な手を使って昇進したんだなと思ってしまう。しっかりと仮面を被りあたかも
優等生のように話をよく聞く。だが正直言って全く面白くない。何が協力して頑張ろうだ。何が共に学びあえだ。全くもって
馬鹿馬鹿しいしこんなことを毎年毎年話す校長先生側の気が知れない。まあ、覚悟はしていたので聞き流す。後で感想を
聞かれたときのために完全に頭にインプットしておく。なに言ってたか分かる?とか言われたら困るし一字一句記憶し同時に
要約してその感想を教師用と生徒用で分けて更に保存する。どうよ、この高スペック。努力の甲斐があってこの程度造作も
無いといえよう。他の生徒もだるそうながら一応そこそこの優秀な人間たちということもあり流石に言葉をさえぎって話していたりはしないようだ。だが、甘いといっちゃ甘いけど。
「ええ、これど話を終わりたいと、思います。新入生の皆さん。あなた方の先輩はあなた方を見ていてくれると思います。
なのではじめのうちはどんどん頼ってください」
テンプレコメントで話を終えた校長先生は舞台から降りて席に座る。この次はPTA会長の言葉。その次が現生徒会長の言葉で
その後が新入生代表つまり俺の言葉である。PTA会長は、呼ばれて席を立ち舞台にあがって行く。ものすごく記憶に根深い光景。
それこそ卒業式の時だってこんな流れだったしもう慣れた。
「この良き日に皆さんが入学できたことを喜ばしく思います――――――――――。」
またいつもの言葉から始まりさっさと進む。小学校の入学式のときは子供ではなく親に向けていっていた言葉だが6年たった今。
俺たちに向けて話す言葉はあの頃のような幼子に言うようなものではなくだからといって自身のしたの存在であることを明確に
示すようなトーン。トーンの扱いが下手すぎるな。
「これをもって祝辞とさせていただきます」
その言葉と共に話が終わった。次は生徒会長の言葉だ。生徒会長は舞台に向かって後ろから歩いていき舞台に立って話し始めた。
男だ。かなりトップカースト。やはり生徒会長選挙は、人気投票な節があるな。いくら人気投票じゃないと分かっていたとしても
自分が仲がよくも無い人に公約だけで票を入れるのは無理な話だ。例えば応援演説だって人気が無ければやってもらえないし推薦人
だって人気が無ければいくら日ごろ働いていたとしても不可能である。つまりこの世は、非常だ。一歩踏み間違えればそれでアウト。
「在校生一同、皆さんの中学校生活を応援したいと思います。何かあったら迷わず声をかけて下さい」
そんなリア充オーラ全開の言葉が連なり最後にまた一緒に頑張りましょう的な言葉を発して生徒会長の言葉も終わった。
あたかも人生の成功者のような話だった。トーンも無意識にやっているのだとすればホントにリア充の中でも最高峰の天才。
いや、リア充自体おそらくかなりの天才だ。人生の天才。人間関係の天才。いろんな意味の天才であるけれどその点で言えば俺は
何も出来てはいない。俺は天才じゃない。努力家だ。
そう考えていると俺の名が呼ばれた。俺の言葉である。原稿は舞台においてあるといっていたしおそらくあのよく使われる台的な
ところにあるんだろう。ほら、司会が書類とかおいてるあれ。ということで舞台に上がりおいてあった原稿をとる。
まあ、言う事は完全暗記してるけど。これは才能じゃなくて特別に記憶能力を鍛えたからというだけだ。
やっぱり天才がうらやましい。
「在校生の皆様、ご来賓の皆様、職員の皆様。温かいお言葉有難うございます。桜吹雪の舞う心地よいこの春の日にこの学校に入学できたことを心地よく思っております。」
よし、完璧だ。順風満帆。原稿をみたふりをしているものの全く読んではいない。さらさらと次の言葉が出る。
こういう多くの人間が俺をみているとどうしても内臓の奥の奥に隠して埋め立てた言葉を吐き出してしまいそうで気持ちが悪い。
でもそれを顔には出さない。よし、次の言葉だ。
「先程まで、先輩方が怖かったらどうしよう。先生方が信用なら無かったらどうしよう。同級生と仲良く出来なかったら
どうしようと思っていた人もいたと思います。ですが校長先生の温かいお言葉やPTA会長様のためになるお言葉。
生徒会長様の頼りがいのあるお言葉を聞きそんな心配は吹き飛んだんじゃないでしょうか?僕は勿論吹き飛びました。
中学生になったら優しかった小学生でさえ冷えきってしまうのではないかとそう心配でしたが
そのような心配は無駄だったのでしょう」
息を呑みながら次の言葉、次の言葉と御託を並べていく。だめだな。どうしたって吐き出してしまいそうだ。
でも俺の仮面ならば抑圧するぐらい簡単だ。トーン、スピード、声量。どれもしっかりしている。それでも課題は見つかる。
それはもっと努力しておかないといけないな。
「今一度先生方、ご来賓の皆様、先輩方にお力添えをお願いいたしまして結びとさせていただきます」
最後の一言、力を入れて集中して発する。何の問題も無い。天才に追いつくレベルの努力を俺はしている。天才すらも
見下しうるようなそこまでしても許されるほどの努力が俺にはある。一礼して原稿をおき席に戻っていく。周りでは、
「すげぇ、同い年かよ」「完璧じゃん。まじカッケー」などの声が聞こえる。
それらの言葉にはどうしても喜べないし苛立ってしまう。いや、これはただの八つ当たりだな。
ただの八つ当たりでしかないのならそれは、忘れるべき感情だ。
その後、保護者向けの説明を少しされて教室に戻り担任の話を聞いてから集合写真を撮った。簡単だ。写真一つ取っても
ものすごく集中力が必要だ。何が大変って同級生の両親にいい印象を与えるにはこの方法しかないのである。故に作り笑顔を
完全に隠す究極といえるような笑顔を見せた。
「はい、いいですね。有難うございましたこれで終わりです」
そう、写真家の人が言ってその日は、解散となった。さっき約束したように俺は同級生と帰る約束をしているのだが
そういったときは親を親同士で仲良くさせる。それにより印象がアップする。ちょうどよく母親はそこらの親が
食いつく仕事をしているからな。


             ――――――俺の策に抜かりなし。1日目完了。




入学式当日。帰りに同級生数人と一緒に近くの店で軽く食事をとりながら話をして最終的に日が落ちるよりちょっと前まで
話してから解散となった。藤本、横山、東野の3人と話した。藤本というのが初めに話した男子生徒で横山と東野が同じ
小学校だったという。まあ、初めの内は同姓同士で群れていたほうがいいだろう。俺は、スペック的に女子にもてないはずがないし
両親曰く社会的にみても顔はいいほうらしい。自称するのはよくいる中学生だが世間的に色々活躍していて世間の顔の平均を
職業柄知っている両親が言うのだ。お世辞分をひいたとしたってイケメンになるレベルである事は明らかだ。
まあ、それを鼻にかけているわけではないんだけどまあ、女子グループと近づくのも簡単ってことだ。後は俺の持ち前の
コミュニケーション能力でどうにかなるわけで今、俺は生徒の名前を復習して翌日からの作戦を練っておく。
まず、俺に並ぶほどにコミュニケーションの達人グループの中心になりうる奴と近づかなければならない。
ある程度全体を観察しなければならないのだがそれともう一つ水面下で進めなければならないことがある。それは、上手に
先生たちとも仲良くなること。それはまあ、色々理由があるんだけど思い出してくれ。必ずクラスに数人くらい先生と仲のいい奴が
いただろ?そいつだけ冗談をなんの躊躇いも無くいっても何の関係も無く過ごせたりとかする奴。ああいう奴は基本的に
クラスの中でも中ぐらいのカーストに存在するのである。故にそいつと仲良くすることによって全体を取り締まることが出来る。
そこからならば下のものにも上のものにも関われるというわけだ。簡単だろ?それにもろもろなところでそういう奴と関われると
都合がいいだけじゃなくて先生と仲良くなれるだけでも利点がある。仮面を被るのならばそういったところも計算しておかないとだ。
「・・・、と。この程度かな。中々の作戦が完成した。これで何とかなるだろう。」
一人でそんなことをつぶやきながら考えた作戦をもう一度脳内で復習する。名前はその間にも無意識にノートに書き連ねている。
完璧だ。やっぱり腐ったこの世界でなら俺がトッププレイヤーになるのなんて簡単だな。でも今日も色々とミスった部分もある。
その辺はしっかりとしておかないとだめだ。俺よりトッププレイヤーがいないとも限らない。
力を抜いてはいけない。常に努力。それこそ正義!
それはともかく、俺にはもう一つやることがある。これは、俺が俺になれる少ない居場所。ゲームである。GAMEでござる
。今、はまっているのがRPGである。アクションRPGは、結構楽しいぜ。努力すればするだけレベルが上がるしそれが
カンストしたって色々なスキルをとったりとか動きを極めたりとか出来るというわけである。あと、普通のアクション。
これもこれで動きを極めたりするのが難しくて楽しい。要するに時間をかけて特訓したりするのがすきなのである。そういうこと。
OK?ってことで、ゲームだゲーム。無茶苦茶楽しい。最近発売されたライジングデイショメン1(ライデイ)。
アクションRPGながらも大会の時には公式ルールとしてどスキル制に変化する。キャラの性能もほとんど関わってこないので
アクションとして楽しめる。端的に言えば二つ楽しみ方があるのである。それはおいておこう。
時間は既に8時。3時ごろに作戦を考えてそのほかに色々と練習もする。それで7時ごろになった。そこで夕飯を7時に作って
食べた。それで帰って軽く練習して作戦考えたら8時になった。で、ゲームをやってるんだがそういうときにも笑顔を絶やさない。
それにより口角も鍛えられているしそのままで冷たい声を出す練習もしている。そこからあいうえおを色々なトーンで発する。
「あーいーうーえーおー」
「あぁいぃうぅえぇおぉ」
「あっいっうっえっおっ」
「っあっいっうっえっお」
「っぁっぃっぅっぇっぉ」
「ぁーぃーぅーぇーぉー」
色々な種類のあいうえおを発しだす。俺の部屋には俺しかいないのは確かなんだけど音が静か過ぎて悲しい部分がある。
母親は、今日、小説家仲間でちょっと飲みに行くらしく父親は今期も連ドラに出演してるので今は家には俺と妹の二人しかいない。
その妹がやたらと静かなのは、ちょっとよく分からないのだがな。様子を見に行ってやりたいのも山々なんだけど今は、
ライデイで忙しい。特にZコマンドと呼ばれる動きと練習を今やっている。これを今月中に安定させておきたいのでそれこそ妹に
構っていられる程の余裕が無い。
「よし、じゃ、次々」
いつもやっている数十種類のトーンによるあいうえおを完了させていたので次のノルマ。いつもやっている早口言葉を
色々なスピードとトーンで話す。完璧だ。それが終わったら明日のために考えた数十種類の会話を色んなトーンで試してみる。
どれがしっくり来るか考えといたほうがいいしな。
「あ、あ、なあなあそういえば入試って難しくなかった?」
「なあなあ、入試ってさ、難しかったよな。勉強もきついのかな?」
「おいおい、入試って結構難しかったけど勉強も難しいのかな?マジできつそ・・」
「ちょっとお兄ちゃん」
俺が練習しながらゲームをやっていると扉がばたりと開いた。妹、猫実響である。通称ひび、響。ステータス化してみよう。
まず、一つ。人間関係スキルについては俺と違って天才。意識しなくても俺と同レベルに動けている。小4にして完璧な会話回し。
俺でさえすごいと思ってしまうレベルである。さて、じゃあ勉強だ。勉強レベルで言うと残念といっていい。
そこまで優秀ではない。成績だとクラスの中じゃ下に位置しているはずではあるのだが、ここに俺が登場。
俺の教育スキルの賜物で妹は中の上ぐらいの成績だ。
「勉強教えてもらおうと思ったんだけど・・・・なにやってたの?」
「何ってゲームに決まってるだろ?ライデイだよライデイ。で、勉強って?何が分からないんだ?」
「・・・・・・・お兄ちゃんって案外努力してるんだね。そっか天才じゃなかったんだ」
何だこいつ?小4にしてなに深いことを・・・・。まあ、俺の妹であることも遺伝して思考能力自体はそこそこ優れてるしな。
だからまあ、分からなくも無いんだけど、さ。
「うっせー。そう思うならお前も努力しろ努力」
「・・・・そうだね。はいはい。じゃ、国語なんだけどここが・・・」
因みに、こいつは理系であり理系については小5レベルになる。それはまあ、俺的には微妙なんだけどそれでも
すごいという風に思う。俺は文系だし国語とか社会を聞かれる場合が多い。
「じゃあ、まず自分で問題を言ってみろ。読み上げるだけでも気付くところがあるぞ」
「うん、そっか・・・・」
と、言う風に話して勉強を教える。ライデイは、一旦切り上げる。


こうして作戦準備時間1日目が完了。遂に明日から本格的な中学が始まる。




翌日。俺は、指定されていた少ない荷物をバッグに入れ右肩にかけた。この感じだと荷物が増えれば右肩が痛くなるだろうな。
考えてみると恐ろしいしリュック型に変更することも視野に入れないとな。そんなことを考えながら扉をあける。
今日の朝飯も旨かったし昨日考えた作戦もしっかりと復習済みだ。考えた話題もしっかりと頭に入っている。大丈夫だ。
むしろ中学の生活でトップカーストに慣れればもっと高みを目指せるだろう。もっと報酬は大きくなるだろう。極めきったゲームの
新しい報酬が手に入ると思えばいい。例えば、俺に作る気は無いにせよ彼女とかも作れるし中学に入れば行動範囲は大きく
広がってくれるはずだしそうしたら遊んだりするのも楽しくなってくれるはずだ。そう願いたい。小学生の時ずっとずっと
つまらなかったポイント稼ぎがやっとたのしくなることを願っているし上手くやっているだけで成績はよくなる。
協調性云々っていうだろ?あれだよ、あれ。
まだ春も始まり立て。四月は、卯月とか呼ぶらしい。それには色んな説があるらしいのだが俺はこう思う。期待の卵が
壊れるかもしくは壊れずにはぐくまれ中にいる期待がその姿を現すか。その分岐点なんじゃないか、と。だからこそ手が抜けない。
まあ、手を抜いたとしても大して問題は無いだろうけどな。まだ、涼しい風が吹き抜け俺の頬をかすめる。これが少ない
季節を感じることの出来る瞬間だ。無論、桜や駅前の学生。そいつらは、確かに季節を感じるかもな。だが、それは季節とは
呼ばない。時の流れ。それに逆らわずに演じているだけだ。きっと俺みたいに仮面を被っている。それが俺に見極められる時点で
まだまだレベルが甘い。俺は、もっともっと上手に演じられる。仮面を被れる。俺の仮面は、固い。剝がれること等無い
完璧な仮面だ。今一度笑顔の練習をしながら登校する。風が強い。
その日、登校すると教室には昨日話した奴らがいる。藤本、横山、東野の3人だ。主にこの3人はグループのリーダー格に
なれる人物だ。しかしそれは俺のそれとは格が違う。圧倒的無さだ。言うなればガチ勢の中で1位の人間とクラスの中で
1位の人間、のような差。それは誰がみても圧倒的だ。俺は強い。ガチ勢だ。それに、あいつらはグループのリーダー格に
”なりうる”というだけであって実際はおそらくなれない。小さなグループでなら別だけれど中ぐらいのグループじゃ不可能だ。
まず理由としてあげられるのがあいつらの会話術の特性。会話術によってタイプが違う。例えば自分の話を話すタイプ。これは、人に与えられた話題をテーマとして話す相槌型と自分から会話を切り出して考えを話す切り出し型の2タイプに分かれる。
それ以外に流すように返事をするタイプ。さばさばしている、相槌が上手いといえば聞こえはいいが基本的には自分から
話を切り出さないし切り出した時には失敗することが確かだ。「それだよなそれ」とか「分かるわ」とか中身の無い相槌をする
相槌を履き違えてるタイプが一つ。それとしっかりしていて「ああ、分かる。でも○○じゃない?」などと会話を広げるのが
模範的な相槌タイプ。そういった人間は切り出し型とも似ているタイプで中々俺的には厄介だ。それに対抗するのは難しい。
それ以外にも切り出すのに特化しているタイプも存在している。だが、その中にも色々タイプがある。まあ大きく分けると
考えを交えずにぽん、と話題を放り投げるタイプと逆に自分の話したことをきれいに広げるタイプ。話を上手に周りにもふり、
話題を、グループを回すのがこれで俺もそれに入っているがあの3人はどちらも相槌系。話題提示のスキルはかなり劣っている。
それでも何とかなるのかもしれないけどそんな特化していないことをやられて俺が負けるはずが無い。上手く俺のグループに混ぜれば武器として使える。完璧だ。
「おう、藤本、横山、東野。やっぱ、朝だから調子が悪そうだな。俺も、朝は苦手でさ」
「そうだなぁ。マジキツイ。いっその事昼ぐらいから夜まで学校してくれないかねぇ」
「おまえ、馬鹿言ってんじゃねぇよ。考えてみろ。昼から始まったら早く起きた時にそれまでだらだらと過ごすことになって
でも学校あるって分かってるから中途半端にしか休めないだろ?なあ、藤本」
「そうだぞ。全く、横山はよくこの学校は入れたよな」
「ホントそれな」
このどこと無い会話をみても分かるように人それぞれタイプが違う。ただ、俺の予想ならば藤本だけこの2人とはタイプが違う。
横山、東野の二人は基本的には相槌型。横山のほうは、主に自分の意見が主で東野は相槌メイン。このときは相槌しかしないが
会話によって意見も言う。だが、藤本は基本会話が振られないとどうしようもない。昨日話しかけてきたのもかなり勇気を振り絞った行動だったんだろうな。まあ、それは俺にはどうでもいい話だ。こいつが勇気を振り絞ろうと関係のない話だ。
俺がこのクラスのカーストを定める中心になる。グループの中でトップ。
「ていうかさ、今日の1時間目作文?とか書くんだろ?マジきついよなぁ」
「そうか?作文は簡単だぞ。本を読め本を。だから東野に馬鹿だって言われちゃうんだぞ。なぁ?」
「そうそう。作文は、本とか読んでおけば1,2枚分ぐらいかけるって。」
「マジィ?俺も作文は無理だわ。二人とも勉強出来るんだな。マジ尊敬だわ。」
1時間目の作文についての談義。これをしながら周囲のグループにも耳を済ませる。俺の聴力はこういうときのために
鍛えられている。鍛えた、といったほうが正しいな。
「それよか、作文って何書くんだろうな。意見文とか読書感想文とかは無理だろうし」
「ああ、それそれ。でもあれじゃね?中学生になってどう思うか、的な奴だろ。何だって地獄だし」
「そうだなぁ。中学生になっても何も無いよな。中学生まで義務教育なんだし何か考えたりしないっつぅの。ああぁ、
めんどくせぇな。」
「全く、横山はだめだな。藤本も俺も同い年だぞ?俺、色々考えるぞ。藤本も多分」
「まあ、いやでもね。小学校から中学校って大きな変化だし」
「そうそれ。それは流石の俺でも考えるから」
「マジかよぉ。俺だけ?」
きれいに会話を完結させる。そして余韻に浸る間も無く次の会話にせわしなく動く。そんなくだらないどこか反吐が出てきそうな
気持ちの悪い会話が続く。仮面がはがれないように、もっと上手く隠そうとする。それをすると勿論、気持ち悪いわけで内臓の
奥の奥にある言葉がつっかえている。


――――――――――コノママジャヤバイ。






きれいに会話を切り上げてホームルームが始まるのに気付きそれぞれ席に戻る。俺の席は五列中一番廊下側の列の一番後ろ。
四隅の一角を押さえている四天王感がすごい。因みにチャンピオンも俺なんでそのつもりでお願いします。あれだ。
昇級したんだよきっと。遂に力が解放されるっ、なんていう中2病系の相手向けの話題は奥にしまっておいて特に何か無く
ホームルームも終わる。1時間目の作文。その授業を受け持つのは、国語の教師。とても教えるのが上手いと評判で国語が得意な
俺としては無茶苦茶喜ばしくて更にこの人が担任って分かったときにはホントに舞い上がったものである。まあ、内心ってだけだ。
それよりも、問題が一つ。作文のテーマが何か、である。それを周りの奴らも知りたがっていたのだろう。1時間目の授業が始まり
一気にテーマを発せられるのを待っていた。俺もその一人、のふりをしていた。どうせ、テンプレなテーマだろう。別にこの人は
特に暑苦しい熱血教師でもなさそうだしな。それは俺の観察能力により分かる。培っていたしこんだけの観察能力がそういっていた。だが、その予想は一瞬で裏切られた。
「ええ、皆が心配している作文のテーマだがな。それを言う前に条件を言う。簡単な幾つかの条件にそってくれればそれで十分だ。
まず一つ。基本的にテーマにさえ沿っていればどんな暴言を書いても私は文句を言わない。」
まず放たれたその言葉。それはつまりテーマにさえ沿っていれ”何をしてもいい”ということである。例えば中学生という
テーマだとしたら中学生から派生して教師をバッシングするのもよし、ということだろう。まあ、それで内申点の悪化や今後の
監視対象にされたりする可能性はあるけれど。ただ、その一言は確かにそういうことを指している。もしそれで監視対象にされたり
内申点が悪くなったりしないのならばもしかしたら面白い作文がみれるかもしれないがその分恐ろしい文になるだろう。
「次の条件は、えぇっと原稿用紙の制限なし。たった2行でも空白でも構わない。とにかくテーマに沿って提出してくれれば
それで十分だ」
「「「「え?」」」」
クラス中がどよめいた。どんな量でも構わない。書かなくたって大丈夫。そんな馬鹿げた条件をこの教師は打ち立ててきた。
難関中学であるこの高校は勿論国語のレベルも高い。はずなのだが何故こんな低レベル生徒向けのことをするのだろうか。
それが誰しも不思議で仕方が無かった。俺だって不思議だ。考えられるのは、この人の教育方針か
それともかなり難しいテーマなのか。知らないけれどやっぱり異常だ。
「言いたい事は分かるが質問は応じない。これが私の教育方針だ。文句があれば立ち去れ」
何故?という疑問符が全員の頭上に浮上していると先生は言った。図太く強い声だ。それによって頭上の疑問符が消え去る。
俺も納得していないが理解した。
「素直でよろしい。じゃあ、テーマの発表だな。ずばり、テーマは『本音』だ」
「ちょ、せんせ」
「私の教育ではな、質問という二文字は存在しない。私が必要だと感じた者にのみヒントを与える。故に何の質問も受け付けない。
今、ヒントを与えるべきだとすればそれは猫実。たった一人だ」
「え?俺・・・」
急に名前を呼ばれ心臓がびくりと飛び跳ねる。マジでびびった。何なんだろうこの人。そもそも質問を受け付けないとか
ちょっとあれじゃないのか?それともしっかり考えている者は、みれば分かる的なことか?まあ、年齢的にはアラサーらしいし
教員暦もそこそこ長いだろうからその勘が存在していても不思議じゃない。で?何で俺?考えてませんよ。やっぱりそれ
間違ってるんじゃないの?だって俺はテンプレ作文を速攻で考えてたんだぜ。なのによく考えているっておかしくない?
うむ、やっぱおかしい。この人の眼は狂っているんじゃないかね?
「さあ、今から配るから始めたまえ」
その一言が無慈悲にも放たれ俺も配られた原稿用紙に向き合う。そして考えていたテンプレ作文を書こうとする、と先生は
俺の手を止めた。温かかった。温もり、という奴なんだろう。だがな。それは俺の忘れているものである、だなんて言葉もう
いらない。そりゃ、勘付いた小6の教師が俺に似たようなこと言ってきたけどさ。そんなの俺の勝手なんだよね。
俺は仮面を被りたい。それだけなんだから別にいいだろ?お前らは結局俺のハンデに気付くことも無く1年何のサポートも
してこないんだ。そんな無知で愚かな奴らの言葉を聞く気は無い。結局小6の教師も俺のハンデには気付かなかった。
気付かずにただ、俺が哀れむべき存在なんじゃないかとそう決め付けた気持ち悪い同情だ。
「なんでしょうか?」
「言っておくがそんな文を許す気はないぞ。ルールにさえそれば自由だといったんだ。お前ほどの頭脳と文章力のある人間が
そんな文章を書くのは手抜きだ。手抜きは許さない」
この先生はそういった。残酷なまでの一言だ。この先生は今までに俺を諭してきた教師とはぜんぜん違った。
俺の力を認めた。哀れみは向けてこなかった。まあ、1年で変わるかもしれないけれど。


でも、この先生は実に興味深いと思った。誉田沙羅ほんださら、それが彼女の名だった。
俺は、生まれて誰かの名前を”胸に焼き付けた”。覚えたんじゃない。忘れない存在として認定した。
「分かりました。楽しませてみせます」
「ああ、昨日のようなつまらない言葉はもう必要ない。大丈夫誰にも見せない」
俺にささやくようにいった先生はどこか微笑んでいるように感じた。面白い文章。別に上手いこと言えとかそういうのを
求められているんじゃないと思う。単純だ。今は仮面を被らずに書け。昨日のあれは明らかに仮面を書いていた
つまらない文章だった。そういっているのだろう。何故、そう思うのか。俺の面白い文章をみたことがある人間なんていないはずだ。家のパソコンで何重ものロックをかけているテキストファイルぐらいしか俺の文章は無いはずだ。それ以外は仮面を被った文章。


あ、あと一つあったわ。それを心中で理解してあの先生のすごさを改めて知る。まさか、1時間もせずにあの人を
高評価してしまうだなんてな。俺にしては愚かな選択だろう。小6の夏に入試で有利になるために作文コンクールに出した作文。
表向きはしっかりと仮面を被った文章だったが俺でさえ忘れれば解けないような超難解の暗号。『この世界は腐りきっている』の
メッセージ。あれは全国的な有名作家の母さえも気付かなかった。それを解いたことへの敬意を表してたった1文だけ書いた。


今日出会ったばかりの人に―――例え暗号を解いたとしても―――打ち明けるような本音もそれについて話を
そらす労力も余ってはいません。


俺は、たった一文を原稿用紙に書き、提出する為に席を立つ。まあ、これは誰かに見られたりもしないものらしいしならば
この程度の道化をしても問題ないだろう。覗かれたりさっきの会話を聞かれたりしてたらまあ、別だけど流石にそんな事は
ありえないだろう。隣の席でさえ、俺の字を読み取ることは難しいはずだし話だってささやく程度の声でしか話してなかったし
耳元で言われただけだから内容を聞き取るのは不可能だろう。もし出来るのならばそれは俺並の聴力を持ってないと不可能だ。
伊達に鍛えただけの事はある。だが、そう思っているのは愚かなことで立ち上がった瞬間隣の席の少女があせって動いたのに
気付いた。その少女の名前も俺はしっかりと認知している。北風原菜月ならいはらなつき、それが彼女の名前だ。
俺の隣の席である事は勿論だがそれ以外にも俺が目をつけていた理由はある。まず、彼女がおそらくグループの中心に
なりえないだろうという確信。そこから俺が女子グループとの突破口にするつもりだった。北風原が女子グループの中に
上手に入り込んでくれれば後は、北風原と仲良くなりそこから女子グループとくっつく。まあ、俺の作る男子グループの中の
男子一人を女子の誰かとくっつけてしまえばそれでもう、つながりが出来るのだが。それ以外にも俺が女子の誰かを
虜にしてしまえばそこからつながりを持つことも出来る。もしもみられたか聞かれたかしたのだとすれば彼女を突破口にするのは
やめたほうがいいだろう。策があるのにわざわざ危険な手をとる必要は無い。何より、俺の人生方針だ。石橋を作って渡れ。
壊れそうな策をわざわざ使うほど必要性が無い。抜かりない。あっちも特に反応は大きくなかったし広められる心配も無いだろう。
広められたらそれはそれで冗談として武器にしてしまえばいい。先生をだました、とでも言えば何とかなるだろうな。
教卓まで歩き原稿用紙をおくと先生は、そっと微笑んだ。それをそっと感じた。


授業が終わる。第1時間目は無事終わりもってきておいた有名なライトノベルを購入する。これならばこういう趣味の中学生が
食いつくはずだろう。1ページ目をめくって時間を待つ。こういう終わったら読書、的なのはマジで困る。ポイント稼げないし
休み時間まで話しかけてくるのを待つしかないだろうが。残念ながらこれがあと40分ぐらい。マジで精神的にきついのだが
それでも待つしかない。その間に朝のHR前に得た情報を更新してグループの中心人物になりうる奴と接触しなければならない。
整理しよう。男子が桶谷進おけたにすすむ橋本遊星はしもとゆうせいの2名だろう。まあ、桶谷のほうは中カーストの中でグループの中心になれそうってだけで上位カーストでは無駄なので軽快すべきは橋本。まあ、それも俺の実力からすれば形無しなのでいいんだが要するにそういった人物を俺の周りにおけるかどうか、である。俺の周りは、しっかりとした人物で固めた強グループに
する。強キャラだけを集める。そしてそこから派生させて中、下カーストの人間と接触する。どうだよ?無茶苦茶効率いいだろ?
俺が考えた秘策である。これは小6で使った手段で既に試験運転が済んでいるので安定した手段である。俺がそんなことを
考えている間にも次々と書き終えて行く。おそらく案外真面目に書いているのだろう。もしくは誉田先生の意図を読んでいるのか。
だが、誉田先生の意図は本当に本音が知りたい、というだけのものだ。まあ、実際には文からそのまま探るわけじゃない。
書いているときの姿や書くスピード。書いた文の量とペンの進み具合。そして内容がどこまで本音に近いか。それで分析しているの
だろう。ほんの一瞬考えて迷わず長々と書いている人物は、おそらく話をそらしているはずだ。そんでもって本音とは何か、みたいなテーマに持ち込んで自分の本音から遠ざけようとする。逆に迷って短く書いた奴は3割ぐらい本音だろう。後の7割は簡単だ。
3割が醜い部分で4割が損得勘定。醜い部分はまあ、色々あるがおそらく中坊ぐらいならば自己防衛が中心だろう。まあ、
どこまで本音を密接に書いているかによってその人間の本音を探って性格を探る。全くよく出来た課題である。この人は素晴らしい。そんなことを考えながらまたページをめくる。読む気はないしただ読んでる風にすればいい。
そんなことをしているとやっと退屈な40分が過ぎた。
2時間目。色々すっ飛ばした作文の課題ということもあって困りきっていた全員だったが2時間目に行われた教科書配布が
やっと中学生になったのだという実感を持たせていた。俺は既にもっていたけど。その後2時間目は、誉田先生の話で終わった。
中々興味深かった。主に話し方なんだけど。
3時間目。俺もわかっていたのだが自己紹介の時間になった。このときのために用意していた自己紹介に使う趣味とその他の項目。
食いつきのいい話題を残すことでその時間が終わってから話しかけてくれるはず。番号順に自己紹介する面々。
それらの内容も頭にインプットする。親指と人差し指を接触させながら自分の番を待つ。そして自分の番になり立ち上がる。
立ち上がる時さえ集中しておく。それでも手抜き状態だが。
「猫実涼って言います。出身校はあきみ台小学校です。趣味はギターとかスポーツ全般とかアニメとか色々です。1年間、楽しく過ごしたいので皆さんよろしく」
最後、あえてため口にするのがポイント。ギターは音楽、スポーツは運動系、アニメはオタク向けの趣味だ。事実俺は、
ゲームもアニメも好きだ。声優の声の変貌具合は感動するレベルだ。ギターだってある程度の曲は練習すれば弾けるしスポーツも
結構できるほうだ。問題ない。誉田先生は哀れみの声を俺に聞こえるボリュームでのみ漏らした。前列の奴らが聞こえない声も
俺なら聞こえるレベルの聴力が役に立った。
「はい次」
つまらなそうに誉田先生は次の自己紹介を要求した。その後の自己紹介も頭にインプットして3時間目も大過なく過ぎた。
誉田先生のつまらなそうな声が俺にだけ「つまらない、そんな奴だったのか?」と聞こえてしまいそれがとても恐ろしかった。
昔に受けたそれとは少し違っていてそれがさらに恐ろしかった。


――――――――ヤハリドコカオカシイ




過去の事は、過去のことだ。あの先生がもしも俺の過去の暗号を解いたとしてもそれは小学生の脳で作った程度のレベルの
低いものでしかない。まあ、勿論それでも解ける人間なんて限られているだろう。それは、勿論母譲りの言語能力がなせる業であり
俺の努力のなせる業だ。だからそれについての言及はしない。問題は、あの先生をどうやって遠ざけるか、である。
それについて考えるのに4時間目を消費してその後その日は、解散ということになりいつものメンバーに加えてグループの中心に
慣れそうな候補数名と側近として扱いやすそうなメンバー数名に声をかけておく。それこそつばをつけておくのと同レベル。
俺が牽制しておけば後々仲間になってくれるであろう。後は勉強と運動。この辺でそれなりの実力を示せば何かしなくても味方は
増えてくれるし生徒を味方につけてしまえばたった一人の先生にはどうすることも出来ない。俺を変えようだなんて俺に面白さを
求めようだなんてそれこそ傲慢な話だ。俺に期待してもいいことなんか無い。期待なんかされても重いだけだしそれこそ
受け流してしまうだけなのだから。
そして俺は家に帰った。母は、部屋に篭ったままで小説を執筆しているので必然的に鍵をあけるのは俺、ということになる。
妹には鍵を持たせるのはまだ早い。というかあいつ、結構遠いところのあんまり頭のいいとはいえない普通の小学校通ってるから
俺の方が帰宅早いからな。そんなことを考えながら鍵をあける。
オープンザドアである。正直遺産相続で得た、古い家なのでお世辞にも新品さながらにきれいとは言えないためドアをあけると
ギギギッという効果音が鳴り響く。まあ、そんなのはいつものことで山を越えたら引っ越すらしいし気にすることは無いので
さっさと中に入る。家に入り自分の部屋に直行。制服から部屋着に着替えベッドに横たわる。明日の策を考えなくてはならない。
これについてはまあ、俺が特に困ることは無く問題はどこまであの先生に飽きられずに生徒の人気を集められるかである。
人気を確かめるのに最も便利なのは生徒会長選挙。口では人気投票じゃないといっても中学生、高校生の選挙なんて人気投票が
ほとんどである。それが9月なのでまあ、時間は残っている。9月までに全校生徒の5分の4以上の票を獲得できるような
人気を得る。それが俺の目的だ。なのでそれまでにプロセスを立てる。
まず1つ。男子の人気を得る。これが第1段階。これは部活などを使うと効率がいいのだが正直部活だと偏ってしまう可能性が
あるために使えない。なので部活以外の方法。まあ、部活に行く奴を応援してやったりすればいい。帰宅部、というのは中学生じゃ
少ないのでそれもまた一つの話題として使えるだろう。これをしておくことによって「男らしい」みたいな印象を女子から
受けることが出来る。女子とばかり話すとなよなよしてるぅ~~と思われたりしてしまうからな。
「たっだいまぁーー」
考えていると妹の間延びした声が聞こえる。俺の妹ということもあってそこそこ可愛い。だからモテるに決まっているのだが
中々友達を家に連れてこない。いやいや、妹の事はどうでもいいから。
第2段階。女子と仲良くなる。まあ、基本的には頼れるという印象を与える。それ以上に好意を持たせることが出来れば最高。
中学生だ。マセていなくたってそれぐらいありえるだろう。彼女も作る気が無いけど多分いつか告白されるだろうな。
むしろそれが目標。そして第3段階。クラスの中心になる。そして第4段階、学校の中心になる。
第4段階とゴールはほぼ等しいものである。それよりも、あいつ五月蝿いな。
「お兄ちゃん、昼ごはん作ってよ。おなかすいた」
「っち、五月蝿いな。分かった分かった。ちょっと待ってろ。」
妹の五月蝿い声をさえぎりキッチンにたった。

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