不良品な青春ループ

黒虱十航

△月の声2

あれから何日もたった。俺の人気は鰻登りで誉田先生以外の先生からも生徒からも人気だった。下駄箱にはラブレターが
入っていることもしばしば。それがものすごく悲しかった。始めにラブレターを入れられたのは入学式の2日後。それから増えて
おそらく女子生徒の全員から貰ったであろう枚数になった。勿論複数入れられることを考慮して、である。何より中学2年の時には
既に直接告白されるようにもなった。皆が皆俺の本当の姿なんかみてなくてなのに恋をしていた。ただ、勘違いならそれもよかった。けれど俺の作り上げた仮面に本気で”マジ”で恋をしてきているのだ。それが絶望的だった。ふざけるな、そう叫びたくなった。
結局俺と同世代の奴は誰一人仮面の奥を見破れず先生だってかなり鋭いであろう誉田先生以外見抜くことは出来なかった。
児童心理学を学んでいる教師ですら、見破れるのはただ一人。いや、あの先生だって全ては見破っていない。むしろ大事な一点を
見逃している。つまり俺はこの世界に完全に勝利したわけだ。ゲームをクリアしきった。ゲームセット。完全クリア。
裏ラスボスも何十回も倒してステータスをしっかりと振ってレートで1位になったようなレベルにやりこんでクリアした。
そして何より勉強に於いても俺が1位だった。勉強については傾向を読んでしまえば簡単に暗記できたし授業中の話を記憶するだけで十分だった。中学1年の選挙で俺は生徒会長になった。それから学校の改革にも成功した。神になった。GMとして学校という
ミニゲームを制御するにいたった。それがちょっと策を練って努力しただけで出来てしまった。それに絶望してショックで
ショックでたまらなかった。
「お兄ちゃんさ、何か最近元気ないよね。生徒会長を続投することになってでもそんなんで疲れるほどお兄ちゃんが
やわじゃないのも分かってるし何かあったの?振られたとか?」
「振られた?・・・ああまあどうだろうな。振られたことねえし分かんねえけどな。でも、ほら1年間待って読んでたラノベの
最終巻を読み終えたときみたいな感覚なんだよ。分かるだろ?」
「あぁ、なるほど。たとえが中学校でのお兄ちゃんのリア充っぷりに反してオタクすぎるけどまあ分かる。そっか・・・そんな感じ。まあ、いいんじゃない?頑張っていこうよ。もう、あと数ヶ月でおにいちゃんも受験の中学3年生なんだしさ」
「そだな」
1月1日。正月の朝。そんなことを二人で話した。




俺はこのゲームを攻略し続けた。この世界がクソゲーかどうかを断定するにも十分な材料がある。けどそれ以上に断定できたことが
ある。それはこのゲームの”プレイヤーがくそ”だということだ。


この日、俺はこのゲームを攻略するのをやめた。この世界がクソゲーなのも確かでプレイヤーもクソでだったら攻略する
必要が無いのだと俺は断定した。そしてアニメ、ゲームにのめりこんだ。




この世には残酷な運命とは言うものが存在する。例えば俺の人生。きっと俺の人生はかなり残酷なものなんだと思う。
それは例えば客観的にみて哀れむべき人生だ、とかそういうことじゃないんだと思う。多くの創作家が言う。伝える。
「この世はとても生きづらい」と。そして結果的に言う。「頑張ってみる価値ぐらいはある世界なのだ」と。もしも、
もしもそうだとしてそれを語る彼らはこの世界を完全に知っているのだろうか。それを知っていなければ頑張ってみる価値くらいは
あるだなんて言ってはいけない。ライトノベル、アニメ。そういった文化は宝だ。創作の中でもライトノベルやアニメといったものはよりリアルに人々の”理想”をあらわしている。つまりラノベとは、アニメとは理想である。それこそもてない人間が
きゃっきゃうふふなラノベを欲しアニメを欲するように、周りに可愛い人のいない人間が可愛いキャラを欲して求める。
気が利くキャラやぼっちのキャラ。結局は全て求められているのだ。そんな世界で誰しもが始めに提示する「世界が腐っている」
という言葉と最後に提示する「世界をまだ見限るのは早いかもしれない」という文言。それがとても嫌いだった。
というより大嫌いだ。何度も何度も攻略した。この世界を。小学生の時も中学生のときも完璧に自分を磨き結果としてゲームを
完全に攻略しきった。その結果得たものは、ただ一つの結論。
                「世界は腐りきっていてどうしようもない。」
そのありきたりでけれども俺が十数年かけて得た結論こそ、この世界のルールである。まあ、大抵のやつはこんなことを言っても
聞き流すよな。けど俺はそいつらよりもやりこんでいるし縛りプレイをしている。そんな生半可な俄かプレイヤーに否定されるほどの攻略レベルじゃない。
――――――――――そもそも俺は強キャラだった。親にはかなり恵まれた。子供は生まれてくる親を選べないって言うがその中で
俺は結構いい親に生まれられた。それについてはラッキーだったがそれが無くても何とかなっていただろう。母親は作家、
父親は役者。中学校生活3年の間にも二人はどんどん成功して行き父親はレギュラー番組も数本掛け持ちしているし自分の
冠番組ももっている。かと思えば母親は、推理小説から純文学、童話など様々な分野に創作を広げていってシンプルで奥深い童話を
ベースにしている純文学「昔話の行く末に」シリーズがかなり売れていてドラマ化もされた。ラノベについては、かなり厳しい姿勢をもっているようでコメンテーターとしてもよくテレビに出て話している。妹は中学生になっている。と、言う事は勿論俺は
高校生になったのだが何より妹は、すごい。ネットでアイドルをやっているらしい。テレビには出ていないがそれでもかなり人気だ。歌が上手いのと可愛いのと喋り方が上手いという3点によってかなりの人気を博しており俺も鼻が高い。まあ、基本的には
俺の教えた技術なんだけど。まあ、俺の家族のことだなんてどうでもいい話だ。高校生。義務教育ではない。正直勉強は
そこそこ難しい。それでもよく考えれば何とかなる部分はある。ゲームのおかげで時間がどんどん削られている部分があるが
その分ゲームもやりこめた。アクションRPGであるライデイは、3まで発展しレート対戦が可能になりよりシンプルかつ奥深い
アクションどスキル制ゲームになった。その中で俺は「NEKOMI」というキャラ名で登録しレート1位を保っている。
同率、だけど。


そんなわけで同率で並んでいる「KAMO」を抜くために今日もレートをもぐっている。俺の名も知られているので大抵、
俺をみたら捨てバトルのように捨て身アタックをしてくるがたまに慎重になる奴以外は簡単に倒せる。最速タイムを更新してまた
一戦を終える。楽勝。ノーダメージだ。今日だけで既に15勝目。まだ1時間もやっていない。だが色々とやらなくてはならない
部分もある。そのうちの一つが入学時に出されていた宿題。作文である。テーマは人生について。めんどくさいテーマだが、
それでも書かなくてはならない。何しろ明日が高校の入学式当日。正直この世界はクソゲー判定されたのでライデイほどの
価値もないし攻略する気はさらさら無いのだがそれでも作文は書いておかないと将来に差支えがある。一応食って行く分の
金ぐらいは自分で稼ぐつもりだしそうなった場合、よりいい大学にいかなくてはならない。そこから派生して少しでもいい印象を
与える為にも始めから忘れ物とかありえない。かつて、印象について学んで置いただけの事はあって人の印象のコントロールは
得意だ。けど人にこびるつもりは無い。友達は作る必要性もないしだったら人の感情を伺ってコミュニケーションを練習して作戦を
練る必要も無い。ここまで来るのに時間が掛かったが攻略し終わったゲームだと思えばそれで問題ない。一度ライデイを
ストップして机に向かい、作文を書く。と、思うのだが時間は既に19時を回っていた。ついつい春休みということもあり
時間感覚がずれている。料理は俺が作ることになっているので流石に作文を書いてる余裕も無い。そんなことしてたらきっと・・・。
「おにいちゃーん。おなかすいた。ご飯まだー?」
間延びした妹猫実春ねこざねはるの声が響く。やっぱり、
こいつ食い意地は張ってんだよな。まあ、別にいいけど。
「すまんすまん、今から簡単なの作るから。それで?父さんと母さんは?」
「あ、ああさっき電話でお母さんは、ネタ探しで急に北海道に行きたくなったから2泊3日でいってくる
らしい。お父さんは収録で泊まり。」
「おうよ。全く母さんのマイペースさはどうにかして欲しいもんだ。まあ、小説自体は面白いから
文句言えないんだけど。じゃ、今日ぐらいはお前の好物作るか」
「おーサンキューお兄ちゃん。大好きだよー」
そんなやり取りをして夕飯をつくる。ずっと昔からこいつとは一緒にいた。けれどこいつも知らない。
3年前。中学校の入学式とは全く別物のこの日常がある。同じ入学式前だけれど違う点ばかりだ。
俺が今住んでいる家だって違う。千葉じゃ不便だってことで東京に引っ越すことになりならば自由が丘とかおしゃれな町に
いけるところがいい、ってことで引っ越した田園調布。近くに専門のゲームショップが無いのと千葉じゃなくなってしまったのが
残念だが俺がすんでいたところは標準語を使っていた地域だったので言葉で困ること自体はなかった。けれど全くの別物。
年だけじゃなくて俺の思考自体が変わってしまった。いや、俺の目標の一つが達成された。だから構わない。
変わってしまっているわけじゃなくてただ一歩進んで成長しただけなのだ。そう信じたい。








翌日の入学式も大過なく過ぎ去った。勿論何かあった方が異常なのだがそれでも可能性として捨てきれない部分があった。
と、言うか大過というほどではないものの異常事態が起きた、という点では一つ挙げるべき
ことがあっただろう。端的に言ってしまうとうちのクラスの担任について、である。ほんとにぼっち直帰をして
頭を落ち着かせてもまだ具体的な答えにたどり着かない辺りマジで奇怪である。誉田先生。俺の中学1年の時の担任だ。
その人はきっとこの世界で俺を理解しうる可能性が最も大きい人物であろう。というのもあの人は俺の暗号を解いている。
それでも1%ぐらいの小さな小さな確率でしかないので何の問題は無いのだけれど。きっと人というのは全てをみている気になる。
あの人もそうだ。例外では無かった。誰一人として俺を知ることすら出来ていなかった。だからこの世界はクソゲーだ。
俺程度の人間を知ることすら敵わなかったのだ。明らかに俺よりも経験値をつんでいるやつらでさえ俺に敵う事は無かった。
それはつまりこの世界の人間がゴミでしかないということだ。そりゃ、小さい頃はそんな奴らに恋をすることを夢見ていた。
馬鹿だった。ほんとに俺はそう思う。恋されることはあってもそれは仮面に恋しただけ。だからリアルに恋することは無かった。
その代わりに俺は2次元に恋をする。恋に次元の境は無い、というのはよく言う話であり俺も全くそうだと思う。
そもそも創造の産物というのは魅了する為にあるのであって魅了されないほうがおかしい。恋というのがどういうことなのか、
勘違いされることがしばしばあるが実際どうだろう。恋とは何だ?まあ、そんな事はどうでもいい。それよりも。
何より一つ問題がある。何だと思う?簡単さ。”作文を忘れた”。なぜかって?坊やだからさ!じゃなくて
ほんとに昨日うっかり忘れて寝ちまった。もうちっと未来を見通して生活しないとな。初日から誉田先生に
むっちゃ怒られた。というより過去を知っているだけあって「何故そうなったんだ?」みたいな口調が
メインになっている。なにこの人。そんなに俺にこだわってるの?そもそも何故に移動してるの?
そりゃ転勤かも知んないけどそんな偶然ってあるのですか?
「ちょっと、お兄ちゃん。顔を引きつらせてないで人の話し聞いてよ」
「あ?ああそうだな。で?何でここにいるんだ?」
「そこから~~?」
急に話しかけてきたのでマジでびびったゾ☆・・そーでなくて。マジでこいつなんでここにいるんだよ。
こいつも今日が中学校の入学式だろ?じゃあまさか終わったのが同じ?いやいやでもこいつは、
リア充真っ盛りだったわけだからありえなくね?いやいやでもなぁ。ありえるのか。これが愛の成せる技なのかっっ!!
いや、それキモいから。ほんとにそういう趣味は無い。
「だ・か・らさっきも言ったように今日は早めに帰ってきたの。基本的に同じ学校の人ばっかだったから
コミュニケーションで困ることも無かったし。それでお兄ちゃんが心配になった。
「マジか。愛のなせる業か。おうおう、分かるぞ。そうなるように育てからなぁ~~」
春の頭をなでながらしみじみといってみるがどうにもお気に召さない様子でございます。あっれれ。
おっかしいな。こういう時翻訳ソフトがあると便利。何を言いたいのか分かる。全国的に
導入することを視野に入れて生きるべきだと思った今日この頃。
「違うし。あれだよあれ。お兄ちゃん、年を老うごとに腐っていくじゃん。だからマジで心配。
最近はほら、アニメのキャラの人気投票にまで手を出したんでしょ?マジでやばいし」
「ううせぇ。いいか?お前だって好きな奴が生徒会選挙に出たら投票するだろ?それと同じ道理なんだよ。
アニメだから特別やばいとかそういうことは無いだろ?」
「そういうもんなのかねーー。ちょっとよく分かんない」
無知でかわいそうな春の事はおいておいて俺はちゃっちゃと歩く。教科書とかは事前に配られてたので無茶苦茶軽くてすむ。
マジでありがたい。作文作文っと。
「そうだお兄ちゃん。お兄ちゃんの学校に何か声優さんがいるらしいよ。生徒に。そういう噂に詳しい人が先輩にいてさ。
教えてくれたんだけど。」
「あ?そうなのか。声優か。まあ、声優って言っても神から塵まで幅広いからな。俺が知らないって事はどうせろくな奴じゃ
ないんだろ。気にしとくけど期待しないでおく」
声優、声が優れている人々のことだ。その点で行ってしまうと俺もかなりその気が強い。というのも俺は、
声を操るのも得意なのだ。主にトーンという意味で。トーンの扱いならば一級品といっていい。
俺は勿論声優が好きなので有名どころから期待できそうな新人まで完全に頭に入っている。分かっている情報は大体頭の中だ。
なので俺が知らない時点で基本的に期待できない声優という事だろう。
「つーか早く帰ってやることあるからお前と話す余裕も無いんだけど」
「えー、折角可愛い妹が友達と話すのを諦めてまで一緒に帰ろうとしてるのに?いいの?そんなことしても。ほらほら、
私と一緒に下校だなんて私のファンの人ならうらやましがるよ」
「うっせー。早く行くぞ」
うざったいネットアイドルの春を跳ね除けてちゃっちゃと家に向かって鍵をあける。今日は、父さんも母さんも仕事でいない。
というか母さんはネタ集めとかでしばらく帰ってこない。全く、あの自由奔放さはどうにかして
欲しいところなんだけれど。まあ、別にいっか。
「んじゃ昼飯作っちゃうか。」
「おー」
腹も減ったし時間的にも昼飯を作る時間なので昼飯を軽く作って振る舞い部屋に戻る。机にもろもろの筆記用具を出して
作文を書き始まる。とはいえ分量はそこまで多く無くていい。なのでちゃちゃっと書き上げても問題ないしむしろ凝ってしまうと
あの先生に何かやられかねない。
「つっても何を書くか・・・」
ぶつぶつとつぶやきながら悩み結局小学校の頃からずっと書き続けている小説を書くことにしてパソコンを立ち上げる。
ネットゲーも色々とチェックしておく。期間限定イベントなんかを適当に攻略しながら快適空間で小説を執筆し始める。
これいい。無茶苦茶快適だわ。リズムを鳴らすようにキーボードを鳴らす。それと共に大好きなアニメのドラマCDを聴くこと
にした。これは限定1000枚のみという無茶苦茶レアリティの高いアイテムである。いや、癒される。




人生
人生とは何であろうか。そう尋ねられれば多くの人間がこういうはずだ。人によって違う、と。それも沿うであろう。何しろ彼らは
主に群れるのだから。ただ群れるだけでなく群れない人間の生活の邪魔をするのだから。この世には平等なんか存在しないのだ。
例えば、人は一人では生きていけない、だなんて言葉が存在する。しかしよく考えて欲しい。太古から人は群れていたわけではない。元々は群れず、群れても極小規模の集団だったのだ。アダムとイブだって共に男女唯一の存在だ。だが、いつからか一人で
生きるよりも群れたほうが楽だと思った人間から群れ始めいつしか群れることが正当化され始めた。だがな。よく考えて欲しい。
人は一人でも生きていける。農業をするとして一人分の食料しか作らなくて言いのだったらどれだけ楽だと思う?確かに群れるほうが楽かもしれないけれど生きて”いけない”というほどでもない。そんなことをいう連中は群れるというぬるま湯につかっている奴らの戯言でしかないのだ。
そんな奴らに限って一人のほうが楽だ、だなんて本気で言ったり「一人で居たいだなんて甘え」だのと言い出すのだ。
もしも一人が楽だと思うならば一人になれば良い話だし何より彼らが一人でいる平穏を邪魔しているのだ。そして何より俺は
集団でぬるま湯につかっているほうが甘えだと思うのだ。もしも違うというのなら言ってみてほしい。どんな論理であろうと
論破してみせる。なぜならば群れて甘える、というのを正当化することが悪である、だなんて当然の論理であるからだ。
逆説的に考えて群れを正当化せずぼっちを貫く俺こそジャスティス☆正義である。正義は必ず勝つ!!といわれているのだから人生の本当の勝利とはぼっちのように世間から冷たい目で見られることにあるのではないだろうか。つまりぼっちこそが人生の勝ち組であるといえよう。そんな勝ち組の選ぶ将来も勿論勝利の職業である。働かずに悪である社会から冷たい目で見られけれどもただ怠けるわけではない専業主夫こそ勝ち組の職業である。
専業主夫はいい。
社会に出ないことにより勝ち組の我々が冷たい目でみられることも無くなりさらに残業という悪に屈する行為をする必要も無い。
さらにただ働かないわけでなく奥さんに家事をしなくてよいという利益を与える為完全なウィンウィンの関係が成立するのだ。
結論をまとめると勝ち組の俺はこの高校生活3年間でお金を持ち、寂しい思いをする独身キャリアウーマンの方々に貰って
もらえるように学歴とマダムキラースキルを得ていこうと思う。強いては教員の皆様にも是非そういった教育をして欲しいと思う。愚かどもよ思い知れ。俺こそヴィクトリーだっっ!!


正直自分でも何を言っているか分からなくなっている作文を書き上げてその日は眠ることにした。
うむ、やはり流石だな。よくよく考えると世間へのアンチテーゼと専業主夫の需要の低下を考えてある素晴らしい作文だ。将来は専業主夫になろうかなぁ。まあ、若干ネットのコピペ混じってるけど。


翌日、登校してすぐに誉田先生にそれを提出した。すると何故かこめかみをぴくぴくとさせる。顔は明らかに笑っている。
とても面白がっている様子だ。
「あのな、猫実。どうしてそうなった?」
「いやどうもこうも人生について書けといわれましたので人生について攻略論を展開しただけです」
「いや、作文のことじゃない。まあ作文についても言いたいことはあるがそれよりもその思考がどこから来たのかと聞いているんだ。3年前はもっとまともだったじゃないか。猫を被ってはいたものの、な。あれについてはかなり心苦しかったから変わって欲しいと
思った。だから変わってくれてうれしいよ。だ・が・なこれについては喜びがたい。むしろ変わりすぎだ。
何があったらそんな風に変わるんだ。」
「そんな風といわれましても俺はこういう人間です」
いや、ほんとにこの人なにいってるの?まあ、言わんとしてる事は分かる分かっちゃうのかよ。
いやホントに分かってはいるんだけどね。それとこれとは別じゃん?怒ってるっていうかこれは呆れてるな。
「そうだったのならばそんなのは捨ててしまえ。高校生のうちから専業主夫になるためにマダムキラースキルを身につけ
学歴をつけるために勉強するだなんて考える馬鹿がいるか。」
「いますよ」
「どこに?」
「ここに」
「貴様、流石に旧知の仲とは言えど容赦しないぞ。知ってるか?ここの校訓は、抑圧抑制制御なんだ。
生徒が誤ったほうに行くぐらいならばどんな方法を使っても引き戻すのが教師の役目だ。」
「いやそれは自分で自分を制御しろってことでしょうが。むしろ先生こそ変わりすぎ」
「私こそこういう人間だ」
誉田先生は、そういいながら赤いばつを書いた原稿用紙を机に叩き付けた。
「まあいい。君が面白くなってくれてうれしいからな時に猫実。君に合わせたい人がいるんだが」
「会いたくありません。俺はいつもオンリーワンなんです」
「そうか。ならば作文の書き直しを命じよう。確かにちょっと教育上よろしくないだろうしな。それにこんなことを考えたらお前が
ラブコメの主人公みたいになってしまうだろうしな」
「何を言ってるかわかんないんでけど」
「要するに書き直し。それでペナルティーを与える」
書き直しじゃとどまらない辺りが先生らしい。マジでちょっと酷いんじゃないの?3年前はふざけた作文書いても何も
言われなかったんですけど。まあ人は変わるって事ですよね。はい、そうですか。
「なーに簡単だ。地下にある第2図書室の掃除をやってもらいたいだけだ。そこで私が君に会わせたい人も働く予定だしな。」
「えー、一人の方が楽なんですけど」
「それは猫を被る必要があるからか?私の目的は君に労働を強いることだけじゃない。君に会わせてみると面白そうな奴と
君を会わせてみたいだけだ」
「まあ、クラスの中で阻害されないレベルに無難には過ごしたいんで。中学3年でぼっちは経験したんでわざわざ自分で
望むことでもないですし。ていうか私情過ぎるだろ」
実際ぼっちがいいのだがだからといっていじめとかも面倒なのでカーストのなかで下の上ぐらいには位置しようと思う。
だから若干猫を被る。それでいてぼっちという立場は守りぬく。その名もすぅブロックだ。それにしても会わせたい人とか
ろくな響じゃない。
「ということで今日の放課後から毎日やってもらう。とはいえ今日は私が案内する。場所自体知られていないような場所だしな」
まあ、図書室の掃除なら問題ないしいいけどさ。それよりも早く帰らないとやばい。
「あの先生。俺が家の鍵を持ってるんで妹が帰れないんですけど。」
「そうか。なら大丈夫だ。妹さんの中学に電話して君が今日、帰宅するまでに時間が掛かることを伝える。
妹も君と同じく猫を被ることが出来るんだろう?なら友達も多いはずだしそれぐらい大丈夫だ」
「・・まあそうですけど。分かりました。やりますよやります。じゃあ放課後に」
そう言い放って職員室を去った。はぁ、メンドイ。




職員室から出て教室に向かう。まあ、まだ放課後まで時間があるしこっちからも電話できるから問題ないんですよ。
先生にばれなければ今日は良いって言ってくれると思ってたんですけどね。まあ、しょうがない。今回の件に関しては何故俺が
ペナルティーをくらってるのか分からんのだがでも権力には逆らえない。けん力に逆らえないとかマジで世界は残酷だ。っく、
これが世界の定めなのかっ。という茶番はおいておく。それで、だ。何でリア充って学校に早く来るの?・・・いや、俺も実際昔は
早く行ってたしそういうグループに属してたから理由は分かるんですよ。でもやっぱり言いたくなるなぁって言う感じ?大抵の学校がそうなのだがうちの学校もスマホ含め携帯電話の所持が許されている。故に俺には暇を潰すことが出来るのだっ。


アニメ。この数年間で俺がどはまりしたのはこれである。この数年で大きく変わったのはアニメにのめりこんだっていう点であろう。まあ他にもあげるべき点がいくらでもあるのだけれど。その理由としてあげられるのはやはり、暇になったからだ。中学3年の時に
このまちに引っ越して来てそこそこいいところの中学に入学して。それからも勉強はやり続けていたのだがそれはもう
ルーティンワークレベルでやっていた為に、無茶苦茶暇なわけだ。そこでゲームにアニメとのめりこみライデイのレート対戦では
技術向上に力を尽くしアニメではより好きなアニメの人気投票には必ず参加しさらにそこから派生したアプリ、コラボしている
アプリなどは必ずスマホに入れている。特に好きなアニメが「キララ」というアニメである。なんと言ってもキャラのすべてが
星の名前で出来ているだけでなく星についての知識もしっかりとしているのである。そして何より豪華な声優陣。これがほんとに神で有名声優は何人もやっているだけでなくヒロインの中の数人はほとんど無名の声優だ。それなのにも関わらず緊張の色すらなく
きれいに演じていて無名なわりに無茶苦茶上手いと評判である、その中でも俺の推しているキャラは、全体の平均的な人気こそ
無茶苦茶少ないものの声もキャラ設定も素晴らしい。俺的にはマジで大好きなキャラである。その名もベネトナシュ。通称ベナだ。
声優はまだ学生だとかでメディア露出はゼロで、この作品が初作品らしいのだがそれがもう素晴らしい。社会人になった暁には絶対にサイン会を開いて欲しい。泣く演技がとても上手いしほんとにもう・・。
閑話休題である。よし、ちょっとヒートアップしすぎた。ここはキララのドラマCDの録音を聴きながらキララの文庫版を
読むとしよう。ああ、キララとベナのことを考えていたらマジで癒されて嫌なことをわすれられた。あ、・・・人気投票第2回って
もうそろそろだったか?個人的には前回の総投票数100000票の3分の1くらいの票は入れたい。はがきさえあれば手書きで、
みたいな形だし月々の小遣いもかなり多いしバイトもちょこっとすることにすれば何とかなるだろう。
さて、ドラマCDドラマCDっと。


ドラマCDに聞惚れていると朝のホームルームが始まったようで急いで荷物をしまってホームルームを聞くのだが正直言って
クラスについて興味があるわけじゃないのでどうでもいいんだけどね。何か委員会を決めなきゃいけないらしい。まあ、10人ぐらいがなればいい。なので別に問題ない。俺は働き気はないし逆に仕事任されて働けといわれてしょうがないので
120%の結果を出してちょっと休みなよ、とか言われるとと癪なのでこういうのには参加しないことにしている、というのは
まあご察しの通り言い訳で実際はぼっちになりきってたらそれが体に馴染みすぎたんですけどね。元来人がぼっちであると遂に
証明された瞬間だった。ま、それはいい。んでもって今日の1時間目がちょうどそれらしい。興味が無いので寝たふりをして教室を
観察することにする。やはりほとんどの奴らがやりたくないようだが大抵真面目、というのか仮面被りっていうのかそういう
奴がいるので必ず手を挙げる。迷ってる時もあるけど。大体の場合、前期後期と分かれているので前期は全く情報なしで
投票したり立候補するわけなのでほんとにあいつらの気が知れない。マイナスのほうが多いだろうに。そう思ったので軽く鼻
で笑い教室を観察するのをやめた。
「立候補者なし。なるほどな。よし、じゃあ分かった。私が趣味で選ぼう」
「趣味かよ・・」
ナチュラルに言っている先生に誰にも聞こえない声で突っ込む。声の強弱のコントロールは結構勉強したので
意識しなくても勝手に脳で処理できる。
「よし、じゃあ猫実。お前がやりたまえ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ん?何か声が聞こえたなぁ・・。猫実?ああ、千葉ですか千葉。いいですよね千葉。我が故郷千葉。最強の都であるといえよう。
千葉といったらマッカンだぜ!あ、田園調布駅にもマッカンあったな。ラッキー。
「猫実涼。前にでできたまえ。さもなくば更なる刑罰を与える」
ったく早く出ろよ。猫実涼とかホントマジで空気を読めない話を聞いてない・・・ん?誰かが俺の悪口言ってるのか?いやね、
悪口言われてるのは慣れてるんですよ。そーでなくて。
「はぁ?俺・・・ですか・・?何で?」
「いや、私が選んだから、それだけだ」
「だから何故?俺にも自由がありまして」
「主夫が夢だのと真剣に語るだめ男に自由なんて無い。だめ男は皆、消えてしまえば・・・」
「自分で言って自分で思い出すんだったらやめてくださいよ。言っておきますが人権というものが」
「君に権利は存在しない。学校の役割は罪には罰を、悪人には足枷を、だめ男には仕事を与えることにある。
先程言ったペナルティと追加でこの仕事もやってもらおう」
「横暴だ・・・」
急にお鉢が回ってきてまともに論争も出来ないって言うのに権力振りかざして容赦なくやってきやがってこの先生ほんとに
人のお手本になれる人ですか?
「違いますよ。罪には情を、悪人には更正を、だめ男には養う人を、です。それが世界の揺るがぬ法則なんですよ。
ほら、分かったらお帰りください」
「帰らん。これは命令だ」
そんな更なる一言が投げかけられて俺は学級委員の仕事までさせられることになった。後9人決めるだけでいい。
俺に司会がまわったので特別にステルスをオフにしてリア充モードに切り替える。
「はいはい、じゃあ学級委員やりたい人。女子でいませんか」
・・・・・はいきましたねこれ。わかってはいましたよ。だって俺、昨日だけでも非リアオーラだしまくってるもんね。
俺と仲良くしたい奴なんかいないはず。


だが、予想に反して申し訳なさそうに手が上がった。声はあくまで出されない。
「よし、じゃあ決定だな。前に来たまえ」
先生がそういってからぴょこぴょことした感じの歩き方で教室の前に来た。なるほど、ふわふわ系キャラのつもりなのね。




学級委員は何かよく分からないが決まったのでいいのだがというか何故俺なんだ?感が教室にあふれているのは何でなんでしょうね。あれ?これってもしかしてこいつ誰?感のほうでしたかね。元リア充の俺の名が泣くぞ、お前ら。俺無茶苦茶すごいからな。
くっそ・・・俺の中学時代を知っているのが先生だけという点が惜しまれる。むしろ先生は知らなくてよかったんだけどね。
きわどいこともしましたよ。生徒会長戦についてはほんとに反省してます。
と、いうニュアンスを織り交ぜて先生を睨んでおく。睨む必要あるのかとか言わない。何となく睨んどきたい気分なんだよ。
ま、それは完全においておいてもいいか。それよりもさっさと司会進行して別の委員会も決めてしまわないとな。そうしないと
この冷たい空気には耐えられない。何が辛いって昨日の段階でグループを作り上げたらしいうちのクラスの中心人物、
鹿渡修しかわたししゅうの取り巻きが無茶苦茶めんどくさそうな態度をとっているからだ。それでも鹿渡は結構真面目に
取り組んでくれているので文句が言えずに歯がゆい。とはいえそれは俺もやった手口なので止むを得ない。それにしてももう一人の
学級委員の奴、自分で手を挙げたわりに全然喋らねぇな。全く、希望したんだったらちゃんとやって欲しいもんだ。
それにしても希望という言葉のポジティブ語感は異常。さて、そーでなくてさっさと決めるか。
「えー、じゃあ次に生活委員?を決めます。何をやるかは先生から説明があります」
「誰かがやると言った。それも自分でしたまえ。それが運命を選択した君の義」
「ちょっと待ってください。俺は希望してなったわけじゃないんですよ。働きたくない人間に働けというのは残酷なことなんです。
ですから、それぐらいやってください。働きたくない、やる気の無い奴には仕事を任せずやる気のある奴に全部仕事を
放り投げてしまうのが世界のジャスティスです」
「何を言っているんだね君は・・・・。まあいい。そこまで言うのならやってやってもよかろう。生活委員というのは
端的に言えば制服のチェックとかだな。生徒指導は形式上、森山先生なんだが何だかんだで私が生徒指導をやることになっていてな。私の元で働くのが仕事内容だ。」
誉田先生が話す間、俺は少し休む。久しぶりのリア充モードだし何年も積み重ねた分そこまで感覚が鈍ってはいない
とはいえ疲れてしまうのも確かである。何よりリア充という生物が面倒臭い。ほら、俺の笑顔をみて鹿渡の取り巻きが
威嚇してるよ。鹿渡は別だけどその取り巻きは大抵俺より下なので威嚇するのも無理は無い。あ、嘘言いました。鹿渡の隣にいる
東浪見鈴とらみすずとかいう奴は怖い。あれはもう明らかに獣だ。ビーストだ。動物園より動物してる。怖いな。
「てことでやりたい人。」
募集して真面目そうな少年少女が手を挙げる。おお、中々協力的ではないか。いいぞいいぞ。俺の仕事が鰻登りで減っていく。
だが、人が多いと逆に困るわけでじゃんけんではなく投票で決めるせいで俺はさらに面倒な目にあっている。それを
やっている間さえ隣の少女は喋らない。一応同学年の生徒の名前は網羅している為俺は、彼女の名前も知っている。
だがどういう人間なのか、ということはよく分からない。名前だけなら分かっている。彼女の名前は、八街町やちまたまち
彼女について詳しく知るわけではないのだがそれにしても働いて欲しい。専業主夫志望の俺としてはこんな役割分担とかいらない
スキルを身につける必要ないんですけど。非常にだるい感情を何とか押さえつけて笑顔を貫き、票数を数える。ただ、
それぐらいはやってくれるようで黒板に書いていってくれる。あら、しかも無茶苦茶早く数え終わってる。正しいし。
俺はどんどん名前を言っていき挙手させる。全員が終わったところで結果発表。人気が高かった2名の名前を読み上げて
次の委員会の募集に入る。とはいえそこまで多くは無いのでちゃちゃっと済ませてしまう。


やがて全委員会の募集が終わり俺は自分の席に戻る。すると誉田先生が話し始まる。やっぱり毎度毎度の定番を話す気は無いようで
馬鹿じゃないの?みたいな言葉を発し始まる。それだけじゃない。どうにも意識が八街のほうに向いてしまう。いや、
別に何か理由があるわけじゃないんですけどね。ただ、なんとなく、何となくって話なんですけどね。ただ、言葉を発しない。
という感じが何か不思議だった。昔に出会った奴にもそんな奴がいたような気がする。まあ、こいつと似て非なる感じだけど。
そんなことを考えていると話が終わったようでそこからもどんどん授業が終わりいつの間にか昼休みになった。大抵、
受験をやっている場合高校1年の範囲なんて終わらせているのが普通なわけでそれは俺にも言えること。全くもってつまらない
レベルで頭に入っているので簡単簡単。暗記系はまあOKだけどな。何か数学がちょっと難ありな部分もあるけれど。
計算は得意なんだけどな。公式だって理解できているし。なのにちょっと点数が悪い。理由は自覚してるからいいんだけど。
というわけで昼休みになったんだけど昼は食べない主義なので教室から出て人気の無いところでゲームを始める。
プレイホームミニマム。通称PHMを取り出してやるのは勿論キララである。ライデイ?ああ、あれは前はPHMでも
出来たんだけどスペックが上がっちゃったこともあって出来ないんだ。なのでちょっと前に発売されたキララ・ザ・ゲームを
やっている。ネット対戦とかもあって基本格ゲーのRPGであるこのゲームに俺がはまるはずも無くやりこみまくっている。
そのせいで何十週もしちゃったんでやることがなくなってきたけどな。それでもベナの可愛さをみているだけで癒されるんだけどね。だがまあ、今日だけは特別。アップデートで少し前に増えたエピソードを攻略中なので気を抜いていられない。今だけは俺の時間。
誰の邪魔も許しはしない。これぞ世界の・・・これもしつこいな。


それにしてもまずい。あの東浪見とか言うやつに目をつけられた。まだ情報は入手できていないが今後入手しないと主に
俺の学校生活が危ない。まあ、ゲームという世界で神ならばそれでいいんだけどね。まあ、それも1位じゃねえし油断できない。
それはどうでもいい。そうじゃなくてどうやったら仕事をサボれるかだそうじゃない。何を言い出してるんだ?俺。そーでなくて
本気で言えばそれも間違ってないんだけどそれよりも問題はペナルティの問題だ。誉田先生のことだ。端的な図書室の整理なんて
させてはくれないだろう。


正直マジで不安だった。仕事なんて物自体嫌なものだという認識しかないのだ。それでもカーストで上位を保つ為に昔は
嫌々やっていた。それをあえてほんのり匂わせることで嫌だけど頑張ってくれてる優しい人、けなげな人という認識を与えることが
出来る。身内で話すときの話題にもなるしな。それは生徒会長にもいえることでとにかく、俺は働きたくない。
そもそも何故今回ペナルティーを受けないといけないのかが不明だ。働かない事はどう考えたって世界のジャスティスなのに
それを突き通そうと論ずるとペナルティーを喰らうだなんて全く不条理なワールド過ぎてダークになってしまいそうだぜ・・・・
おっとカタカナ族なってしまうところだった。まあ、それはいい。元々そっち系に生きていた人間だし。
そーでなくて問題は仕事だ。まあ、もうしょうがないので図書室の掃除ならばまだよい。だが、この学校の第二図書室はまずい
。さっきは完全に聞き流したけどあれだ。教室で耳に入った話とかを統計的に客観視するとちょっとほんとにやばそうな話だった。
俺の耳のよさには定評がある。


曰く、この学校、都立銀杏高校とりついちょうこうこうには、結構やばい噂がある。それが本当か嘘かは誰も確かめようと
しないらしい。というか、もうそこが胡散臭いしそこで思考を放棄する時点でどうでもいいレベルだと思う。んで、
その噂って言うのが殺人事件らしい。何でも警察に終われて追い込まれた連続通り魔とやらがこの学校に逃げ込んだらしい。
幸か不幸か学校には誰もいなかったため窓を割って簡単に侵入した。とはいえすぐに追い詰められるのは分かりきっていることで
やがてその人は地下へ向かう。そっちに出口が無いんだし相当あせっていてもそんなことはとらないと思うのだがやっぱり噂
だからな。それで警察に追い込まれたそいつはどんどん進んでいった。だが、その日本当にたまたま学校に忘れ物を取りに来た
新任の教師がいた。主事の人には許可をとっておいて鍵の場所も教えられていたので窓が割れていることにも気付かないし
夜だということもあって警察も小規模で追ってきていたから気付かなかったそうだ。そして地下の第二図書室に向かい、扉をあけた。そのとき、逃げていた通り魔はチャンスだとでも思ったようで見事に新任の教師を人質にした。それだけならばよかったのだ。だが、その二人は知人だった。新任の教師、というのが昔通り魔を振った女性だったのだ。彼を通り魔にしたきっかけともいえる彼女の顔を見た彼は激怒した。自分がこんなにも堕ちているのになぜこいつが堅気の仕事をしているのだ。公務員なんかやっているのだと思ったそうだ。そして彼は新任の教師を殺した。あまりに狂った様に警察も慄いたそうだ。それでも流石に止めに入る。だがそいつらも
皆殺された。怒りの力、憎しみの力だろう。新任の教師を串刺しにしてそれこそぐちゃぐちゃと表現できるようなレベルまで
殺しつくしてその通り魔も疲労しすぎて死んでしまったという。で、第二図書室への行き方は生徒のほとんどが知らずもし知っても
大抵の場合行くことが許されない。第二図書室はそのときの血が飛び散っていて壁、床共に真っ赤に染まっているそうだ。


と、言うのが俺の盗み聞きした話。いや実際俺、幽霊とか信じないし抵抗は無いんですよ。そっち系では。ただなぁ。
もう厄介なキーワードがそろいまくっている。血で染まっている&片付け&誰もいけない。ここから導き出される答えは幾つか
あるがそこにペナルティー、誉田先生というキーワードが追加されることで一瞬にして一つに絞られる。もしも・・・もしも本当に
そんな事件があったんだとしたら。もしも本当に血が飛び散っているのだというのなら・・・・。ならば、その片づけを
やらされるのではないだろうか。いや、むしろもうこれは決定事項というか揺るがぬ選択みたいな部分がある。まあ、誉田先生も
この数年で変わっている。それは事実だ。何より国語の教師から数学の教師に代わっている。資格をわざわざとったのか元々数学の
免許ももっていたのか知らないがどっちにしたって少しは打算的な人になってくれていると願いたい。・・のだがほぼ国語もに
なっているあの先生だ。やはり打算的になることなど願えないかもしれない。何せ生徒指導だからな。熱さではかわらないどころか
パワーアップしているはずだ。生徒指導でさえなければそもそもこんなペナルティーを与えられること事態無かったのになぁ。
そう思いながらも考えても無駄だと思い教室に帰る。そろそろ時間だ。一応ぼっちではいるつもりだからそこまで人間関係構築する
気は無いけどだからといって狙われてしまうのも困る。ある程度存在を主張して釘を刺しておかねば・・。
何せまだ俺の最強固有スキル「ステルス」が完成してないからな。


説明しよう・・・ステルスとは言わずもがな存在感の薄さを生かして気配を遮断するわざ。やましいことには使えない。
別にそんな事する気ないんだけどね。それよりも説明しよう!だなんて粋がってたわりにどうでもいいことだったんで個人的に
泣きたい。泣いてもいいんだよ。


んで、俺は教室に戻る。俺が即席で見つけたベストプレイスから教室までは、約3分。長いとは思わないし結構近いほう。
何よりこの学校が大きいのだ。生徒の数は平均的なんだろうけどそれだって少なく感じるこの広さ。ぼっちだから周りに人が
いなくて少なく感じるとかじゃありませんよ、多分。教室まで歩く間にも何人かの生徒とすれ違う。1年生の俺からすれば3分の2が先輩というこの学校なので若干気まずいがそれはどうでもいい。年上も年下も等しく皆、俺より劣っていて腐りきったどぶ沼に住む
外来魚のようなものなのだから。だから俺が別段考えてやる必要も無い。例えば今聞こえてきた「あの先生マジうざくない?
ホント意味わかんないしマジで運が悪い~~」「え~~でもその分○○君が同じクラスだしいいじゃん。うちなんて先生は普通だけど不細工ばっかだし」みたいなどうでもいいやり取り。こんなのを聞いているだけでも反吐が出てしまう。こんな下位の奴らの
好意なんて飽き飽きするほど受けたしそれこそトラウマになるほど貰った。だから、今はもうリアルなんていらない。
教室に戻るがまあ、まだ少し時間に余裕があった様でだべっているリア充が多い。そんな様子を観察しながら俺は、席に座る。
席に座って時間を確認しスマホを取り出す。イヤホンをつけてダウンロードしたベナのキャラソンを聞く。これ、ホント
ダウンロードするの大変だった。まあ、結構人気あるアニメだから捜すのは簡単なはずだったんだけどCD発売してから少しして
やっとダウンロードできたくらい配信が遅かったのと俺自身スマホを落としたせいで解約とかに手間取った。つまり主に俺のせい。
マジで反省してる。キャラソンを聞いて癒されながらチャイムがなるのを待つ。こういう時ほんとに揺れたりしてリズム
とりそうだから机に突っ伏して聞くしかない。そうするとどうしても眠くなってくるわけでベナの
癒し系ボイスのせいでさらに加速するぅぅ。

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