会社員(26歳)の俺にJKのストーカーがいるんだが。

伏見キョウ

18.俺とJKと新JK 前編



 ピンポーン、ピンポンピンポーン


 悠志が鈴鹿にJKとなんなんだと問いかけた数日後。
 相変わらず定時で帰ると家事を済ませてギャルゲーを勤しむ悠志。
 既に全ルート攻略済みでイベントCGもコンプリートしている。しかし、悠志いわく「ここからが俺のハイスクールライフ」らしく、飽きる様子はない。


 時計を見ると6時半。この時間にインターホン。宅配便はこんな時間に頼まないし、知人の和人が来るとも聞いていない。
 それに和人ならインターホンは押さずに某ストーカーJKのように上がり込んでくるだろう。


 ピンポンピンポーン、ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン


 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!くっそうるせえ!誰だよ!!」


 鈴鹿かと一瞬思ったが、最近はインターホンを利用していない。何故かと聞いたところ『インターホンの連打は近隣の部屋のかたにも聞こえて迷惑になので。』らしい。


 コントローラーを机の上におきリビングを出て玄関に向かう。
 ドアの小窓から外を見ると、見たことのない女子高校生がいた。


 なお、未だにチャイムを連打しており部屋の中はピンポンという音が響いている。
 部屋違いか?
 そう思った悠志はドアのチェーンをつけたままドアを開け、女子高校生に声をかける。


 「すいません、部屋間違えていませんか?」


 「いえ、こちらのお部屋にご用がありますので。」


 よく見ると鈴鹿よりも明るい茶色の髪の毛。ショートカットで鈴鹿と印象は被るが少しだけ右側の髪の毛をちょこんと縛っている。
 そしてどこかで見たことのある制服……明大高校のセーラー服だ。タイの色は赤。
 黄色のタイの鈴鹿より1つ上の学年なのか下なのかは分からない。


 「すいませんがお名前を伺っても?」


 自分よりも10歳近く下のJKに敬語で対応する悠志。
 悠志の言葉を聞くと目の前のJKは少し頬を膨らませた。


 「もう!本当に覚えてないの?悠兄ゆうにい!」




▼△▼△


 悠志の部屋を訪ねた少女―永江雫ながえしずくは悠志のいとこである。
 彼女の家は悠志のマンションから30分ぐらいバスで揺られると着く。
 悠志が独り暮らしするまで、高校生の頃まではしょっちゅう顔を合わせていた。
 しかし、悠志が独り暮らしを始めてからはほとんど会っていなかった。


 「雫が俺の部屋来るとか変なもんだな。」


 「ちょっとなによそれ。ひどくない?」


 おそらく何か用があるのだろう。そう思った悠志は雫を部屋にあげリビングに通した。


 「少し散らかってるけどまぁ気にするな。そこら辺座ってて、今お茶出すから。」


 「はーい!それにしても相変わらずオタク趣味あるんだね、きもっ!」


 テレビに映し出された美少女を見た雫はさりげなく言った。
 悠志はお茶の用意をしながら一旦ゲームをとめておけば良かったと後悔した。
 雫はあまりオタク趣味に理解がなく昔からよくバカにされていたからだ。


 「人の趣味をバカにするのはやめてほしい。」


 ダイニングテーブルにお茶とカントリーマアムが入った箱を置きながら悠志は言う。


 「しょうがないもん、キモいものはキモい。事実だよ。」


 悠志が置いたカントリーマアムの箱からバニラ味だけを取っては食べる雫。


 「で、一体なんのようなんだよ?」


 悠志は雫の向かい合う位置の椅子に腰かける。


 「悠兄と同棲したくて。」


 「は?なにいってんの?」


 「あ、ごめん。言葉が足りなかった。私の高校分かる?」


 左手の人差し指で自身を指差す雫。


 「明大だろ。」


 「そうそう!けどさ私の家が駅から遠いのは分かるでしょ?」


 「この部屋からよりは明らかに遠いな。」


 「でしょ?だから一緒に生活しよ?料理も洗濯も掃除もなんでもやるよ?」


 「うーん……。」


 確かに1年前の自分なら許可しいていたが、今はなぁ……。


 「鈴鹿がいるからなぁ……。」


 「え、誰それ。」


 しまった。口に出していた。


 「鈴鹿?悠兄の彼女?」


 「え、いや、そういうのではないんだけど……。」


 怖くて目線が合わせられない。ふと壁にかかった時計を見るともうすぐ7時半だった。
 つまり、そろそろ部活を終わらせたストーカーJKがやって来る。


 「雫!」


 「ん?」


 「ちょっと一時間ぐらいこっちにいてくれ!」


 立ち上がり雫の手を掴むと3つある部屋の1つ、楽器がたくさんある防音室に入らせた。
 そしてカントリーマアムファミリーパックとペットボトルのお茶を渡した。


 「え、どゆこと?」


 「もうすぐ友人が一時間だけ来るんだ。けど雫がいたら相手が気を使うから一時間待っててくれ。家には俺が車で送ってくから、叔父さんに言っておけ。」


 「え~、どうしようかな?」


 「この部屋の楽器、好きに吹いて良いから!」


 雫は中学時代、吹奏楽部でフルートをやっていた。この防音室のなかにはフルートもある。


 「やったー!!フルート!!良いよ!」


 笑顔で了承してくれた雫。


 「さんきゅ。」


 軽く礼を言い、ドアを閉めた。
 そして光の早さで靴箱の中に雫の履き物を隠してリビングに戻る。
 鈴鹿が来たときに変に思われないよう、ギャルゲーを進めておく。


 案の定、悠志がギャルゲーを進めてから3分後鈴鹿がやって来た。


 「こんばんは悠志さん!」


 元気よくリビングの扉を開けて入ってきた。
 いつも通り、そこら辺にスクールバックを置きキッチンで悠志の作った夕飯をレンジでチンしてる。
 内心、いつ気づかれるかまたはバレないかヒヤヒヤしてゲームどころではない悠志。


 どうか気づかずに帰ってくれ……。


 「そういえば悠志さん、今日部活でこんなことがありまして……。」


 いつもなら関心を持つ吹奏楽の話も頭に入ってこない。
 なんとなく適当に相づちをうっていた。 




 「……ということでして。」


 「なるほどなるほど。」


 「ところで悠志さん。」


 「ん?」


 「今この部屋、誰か来てますよね?」




 ニコッと鈴鹿は笑った。






 

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