会社員(26歳)の俺にJKのストーカーがいるんだが。

伏見キョウ

14.俺とJKとホワイトデー ~チョコレート大戦争編完結~



 いや、誰だよ?!


 なかなか連絡のつかないストーカーJKを探して明大高校にやって来た。
 さすがに侵入するのはまずいと思い、校門近くで鈴鹿と同じ学年の子を探していた。
 そしたら声をかけてきた見知らぬJK。


 「まさかこういった場面で会うとは……。」




 「え??は??」


 いや、ちょっと待て。
 目の前のショートカットJKのことを知ってる気がする。


 「お前、鈴鹿か?!」


 「はい!よく分かりましたね!」


▼△▼△


 さすがに校門付近で女子生徒と私服姿の明らかに成人済みの男が話してるのは目立つ。
 小山駅にあるロッテリアで話すことにした。


 「ここは私が出しますよ!」と相変わらず貢ぎ体質でもある鈴鹿が名乗り出たが断った。JKのヒモになるなんて、ごめんだ。
 俺の奢りだからと言うと遠慮するかと思った。しかしダブル絶品チーズバーガーのふるぽてセットに更に単品でふるぽて、オニオンフライ、シェーキも頼んだ。
 恐るべしJKの胃袋……。
 ちなみに俺はキリマンジャロブレンドのコーヒーのみ。




 「まず、鈴鹿。」


 「は、はい!」


 席につくやすぐにチーズバーガーを頬張る鈴鹿に聞く。


 「どうして連絡くれなかったんだ?さすがに1ヶ月もないのは心配するぞ。」


 「すいません……。実は14日の次の日に連絡しようと思ったんです。でも……」


 少し言いにくそうな顔で続ける。


 「15日に和人さんにカットモデルを頼まれてひきうけたは良いんですけど切りすぎちゃって!それで恥ずかしくて連絡も会いにも行けなかったんです。」


 「は?」


 おい、和人。お前知ってて昨日あぁ言ったのか?
 次会ったら絞めておこう。


 「しかも、私が吹奏楽部入ってるのはご存じですよね?」


 「あぁ。確かユーフォ。」


 「それでこの前の日曜日に定期演奏会があってずっと練習漬けで体力が持たなくて……。」


 「そんなに明大高校強いの?」


 茨城の中高だったから栃木の吹奏楽強豪校は詳しくない。せめて野球も強い咲城田さくきた高校だろうか。


 「毎年関東大会は出てます。あと私、1年生の金管セクションリーダーと学年代表なんですよ。」


 「え、よくそれで俺の家来てたよな。」


 「……サボり魔なんで。」


 「まぁ、なんとなく分かった……。」


 「はい!これからはまたいつも通りお家行きますね。」


 「いや、条件がある!」


 「え?」


 中高男子校の俺。実は吹奏楽部部長だった。毎年全国大会にコンクールメンバーとして出場して全て金賞。
 そんな熱血系出身だからこそ音楽のサボりはよくない。


 「部活には必ず出てくれ。」


 「またコンクールシーズンになれば体力が持たなくなるだろうしな。その代わり、平日の家事は俺1人でこなす。」


 鈴鹿に出会うまでは1人で毎日やっていたのだから出来ないわけではないしな。
 1年生の金管セクションリーダー、学年代表ならきっと今後に期待されているだろう。


 「悠志さん!」


 「お、おう?」


 「それはつまり!!部活に毎日行けば悠志さんお手製のご飯が食べれると言うことですか?!」


 「そうなるよな。」


 「私、部活行きます!!」 


 ちょろいと思ってしまったのは申し訳ない。
 いつの間にか冷めてしまったコーヒー。思ったより味が良かった。
 鈴鹿、お前は一体いつ食べたんだ。俺がコーヒーを飲むときには既に完食していた。


▼△▼△


 いつも朝は一緒だったけれど、小山から古河に帰るときは時間が違うので初めて一緒に帰れる。


 ちょっと嬉しく思う鈴鹿。


 まだ16時過ぎで仕事終わりの人もそんなにいなくてがらがらの電車。
 悠志と鈴鹿は隣に座るものの悠志は疲れからか寝てしまった。


 悠志さんが寝てる貴重……!


 鈴鹿は周りを見渡す。
 同じシートには隅っこに遊びに行くであろう小学生二人。
 向かい側は誰もいない。
 左右見渡してご老人や寝てる人のみで自分達を注目してる人はいない。


 チャンス到来!!


 スカートのポケットからスマホを取り出し、無音カメラを起動。
 右隣で眠ってる悠志の顔を撮る。


 ……ホワイトデーだし良いですよね?




▼△▼△


 「はいこれ。」


 古河に戻ってきて悠志の家。
 鈴鹿が久しぶりに夕飯を作りたいと申し出たのだ。
 リビングに通されると悠志から小さな紙袋を渡された鈴鹿。


 「……?」


 きょとんとした顔で紙袋の中に手を入れる。
 中には小さな箱。
 丁寧にダイニングテーブルの上に箱を置いて開ける。


 「わぁあ……!」


 箱を開けるとキラリと光る飾りつきのヘアピン。
 

 「それ実は俺がパーツ買ってきて昨日から徹夜で作ったんだよね。」


 「世界で1個だけですか?!」


 「そうかもね。」


 「大切にします~!」


 感激のあまり泣きそうになる鈴鹿。


 1か月前のあの日からは想像できないくらいだ。
 

 ちらりと時計を見て鈴鹿は慌てる。


 「悠志さん!!そろそろ時間ですよ!」


 「え、なんの?」




 「夜ご飯ですよ!今夜は何にしますか?」






 今までよりもスッキリとした笑顔。少しドキッとしたのは鈴鹿にバレないようにしておこう。









コメント

  • ノベルバユーザー265530

    仲直りしたか〜

    0
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