会社員(26歳)の俺にJKのストーカーがいるんだが。

伏見キョウ

8.俺とJKとデート +4



 「彼女?!やっとあいつにもできたのか!」


 「やっと、とは??」


 「悠志のやつ、学生時代ずっと浮いた話がなかったんだよな。彼女いたことないって本人もいってたし。」


 「あら、そうなんですね!」


 目の前で繰り広げられている和人と鈴鹿の会話に入れない千尋。






 え、え、えーーーー?!


 悠志さん彼女いたの?しかもJK!
 でもこの前会社でお話ししたときに『彼女とか作れるもんなら作りたい』って言ってたよね。
 そのあと?そのあとにできたの?
 JKとは??女子高生だよね?どうやって知り合ったの?


 千尋の頭の中は沢山の疑問だらけになった。


 確かに目の前のJKはすごく可愛い。
 原宿とかでモデルスカウトされても良いレベルなのでは……?
 10代のキラキラJKと20代半ばのお茶出しもろくにできないOL(自分)を比べて肩を落とす千尋。


 「アイナさん、身内の話に付き合わせてしまいすいません。」


 急に和人に話を振られビクッとした。


 「い、いえっ?!」


 頭の中で目の前のJKと自分を比較していた分、余計に鈴鹿と目線を合わせるのがきつく下を向く。


 「そろそろ時間も経ちましたし会場も落ち着いたと思います。会場まで送っていきますよ。」


 「あ、はい。お会計するので少しお待ちくださ……」


 「お会計は大丈夫ですよ。無理してお連れしてしまった分もありますのでこちらで支払いますよ。」


 普段美容師として働いている和人はコミュニケーション能力がすごく高く、紳士的な対応をする。


 和人のペースに乗せられた千尋はいまだに真っ白の悠志と鈴鹿に会釈をして和人とカフェを後にする。


 ちょっと複雑だな……。


 何とも言えないもやっとした気持ちを千尋は感じた。








 10分後、戻ってきた和人はようやく復活した悠志を見た。


 「やっと戻ったのか。」


 「ついさっき、鈴鹿が盗撮しようとシャッター音鳴らしてそれで我に帰った。」


 「どんな復活方法だよ……。」


 悠志の隣の鈴鹿はしょぼんと寂しげな目を悠志に向けている。


 腕時計で時間を確認した和人は「この後秋葉でオフ会あるから。」と足早に去っていった。


 悠志と鈴鹿、二人が残ったテーブル席。
 机の上には四人分の支払い伝票が残っていた。


 「さすが和人、あいつちゃっかりしてるな……。」


 「とても話しやすい方でしたね。」


 「え、お前話したん?」


 「はい!悠志さんが真っ白になってるあいだに!」




   「確認するけど?何も?変なことは言ってないよね?」


 「大丈夫ですよ!私は悠志さんの彼女だとお二人に紹介しました。」


 「は??彼女?」


 「いずれは彼女になるかもしれないじゃないですか!」


 ……何言ってるんだこのストーカー。
 ストーカーに返す言葉が見つからず無言で席をたち会計に向かう。


 アイナさん、どこかで見たこと会った気がすんだよな。
 悠志はふと思いながら支払いを済ませ鈴鹿とカフェを後にした。








▼△▼△ 


 外に出るとコスプレ撮影会の会場に入るための待機列ができていた。
 悠志と鈴鹿が来たときは並ばずに入れた。


 「いや~、早めにきて良かったですね。」


 「お、おう。」


 「さて、次なんですが……」


 鈴鹿はカバンからマップを出して広げ、悠志に見せる。


 「ここにいきましょう!」












 「実際のお城は全然違いますよね!」


 鈴鹿が目にしたのは、かの有名な魔法魔術学校を舞台にした映画に出てくる学校を再現した建物だ。
 その建物の中には魔法魔術学校生活を体験できるアトラクションがある。
 今はそれの待機時間だ。
 とはいえ平日なので列が進むのは早くまだ20分ほどしか並んでないのにそろそろ建物の中入れる。


 鈴鹿はこの作品の大ファンのためすごく興奮している。
 悠志の方は興奮はしていないがちょっと楽しみといった感じで口角が少し上がってる。


 「城の外でもクオリティ高いのになぁ。中も期待だ。」


 「悠志さん、ちなみに一番好きなシリーズは?」


 「アズカバン一択」


 「えっ、悠志さん?」


 「はい?」


 「うん。ほどよい怖さ。」


 「いやいや、炎のゴブレットの方がヤバイですよ?名前を読んではいけないあの人が復活するんですよ!」


 「ゴブレットは人が死ぬから苦手かな。」


 それぞれの好きなシリーズについて語っていると中に入れた。
 中には入れてもすぐに乗れるわけではなく、学校の世界観が表されているセット等を見て待機。
 「もう少しですね。」


 「だな。高画質ってきくし期待が高まる。」


 あっという間に列は進み搭乗する。
 荷物は事前にロッカーに預けた。


 1台四人のりだが人数調整の関係で悠志と鈴鹿の二人のみ。


 「最初に乗ったジェットコースター思い出しますね!」


 「うお、思い出させるようなこと言うなよ。」


 今回乗るアトラクションは室内型。
 1台四人乗りの乗り物。3D眼鏡を着けて体験する。空を飛ぶ映像を見ながら乗り物が左右に揺れたりする感じ。実際に空を飛んでる気分になるとネットのレビューには書いてあった。


 最初のジェットコースター同様、安全バーを下げてスタッフさんが確認したらスタート。




 最初に映像に映ったのは作品の主人公。


 「キャー!!ハリー!!」


 おもいっきり叫ぶ鈴鹿。


 物語は主人公たちと空を飛ぶ競技をやってみたり、闇魔術の動物に襲われそうになるところを主人公に助けてもらったりといったものだ。


 『君も一緒に飛ぼう!』


 「イエス、ハリー!!」


 映像に映ったキャラクターにしっかり答える鈴鹿は、まるで応援上映に来てる人みたいだ。


 途中、物語の演出の関係で乗り物が左右にぐるんぐるん揺れる。


 と思ったら、急降下する映像に。


 「「うわあああああああああああああああああああああああああ」」


 最初にジェットコースターに乗ったときのような浮遊感を感じ、悠志もとうとう叫んだ。


 もちろん鈴鹿はこっそり上着の袖の裏地につけておいた録音機で録音済みだ。















コメント

  • ノベルバユーザー265530

    つーかこえーよ!この鈴鹿さんって娘。いやでもなんでJKが会社員をストーキングしてるのか不思議?でもすんげぇ面白いね。

    0
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