親父様とまじかる☆すとーん

秋原かざや

小話 くの一の手裏剣と手紙

 ゆらりゆらりヒサクへ向かう船の上。ミカエルは丁度ダズが甲板に出てくるのを見つけた。
「ダズさん」
 ミカエルはダズを引き留めた。
「ん? なんじゃい?」
 ダズは振り向き、ミカエルの前に出る。
「あなたは確か舞姫さんの伴侶さんでしたね。実は、舞姫さんの忘れ物を預かっているんです」
「舞姫の?」
 ダズはその目を大きくさせた。
「本当は直に手渡せたら良いのですがでしょうが……あの方、なかなかボクの前に出てきてくれませんから」
 そう苦笑しながら、ミカエルは舞姫の手裏剣をダズに渡した。
「忍者さんの大切なお仕事道具でしょう? なくしてはいけませんよって、伝えて下さい」
 そう言い残し、ミカエルはその場を後にした。
「舞姫、いるんじゃろ?」
 ダズの声に舞姫はそっと現れた。
「ダズ様……」
「後で礼を言わぬといけんの」
 ダズはそっと暖かくなっていた手裏剣を舞姫の手に渡した。
「はい……」
 頬を赤くさせながら、舞姫は頷いた。


「あの……」
 ミカエルの前に突如、樽が現れた。
「はい!?」
「あ、お、驚かないで……下さい……」
 どうやら、その中に舞姫がいるようだ。樽から舞姫のか細い声が聞こえる。
「舞姫さん、ですか?」
 驚きながらも、そっと樽に近づいていく。
「あ、あの、その、こ、これを……」
 そういって樽から何かが出てきた。どうやら、手紙のようだ。ミカエルがそれを受け取るとすぐさま樽は爆発してなくなった。
「け、けほ、けほ……」
 煙の中には無惨にも砕け散った樽のかけらが散らばるばかり。舞姫はどこかへ行ってしまったようだ。
「あ、手紙……」
 どうやらそれはミカエルに宛てたもののようだ。手紙には『ミカエル様へ』と書かれている。ミカエルはそれをぱらぱらと広げた。
『先ほどは手裏剣をお返し下さり、誠にありがとうございました。何かご用があれば、お呼び下さい。微力ながら、お礼にお手伝いさせていただきたいと存じます。 舞姫』
「ご丁寧にどうもありがとうございます」
 ミカエルは誰もいない場所でぺこりと頭を下げた。ミカエルは心の中がほんのりと暖かくなるのを感じながら、ゆっくりと手紙を懐にしまい、その場を後にした。





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