dis 3011

秋原かざや

◆その頃……

「なるほどね……。それは想定外だ」
 声が聞こえる。
「当初、そんなことになるなんて、想定していなかった。いや……想定していたはずのものが、いつの間にか消え去ってしまったのかもしれない」
 しんとした一室で、彼は語り続ける。
「万が一のために、『あれ』を用意しておいたけれども、もしかすると、それでは太刀打ちできないかもしれない」
 しばしの間。熟考しているのだろうか。
「かといって、このままにしておくわけにもいかない」
 息を吐いた。ため息のようにも聞こえるのは、気のせいだろうか。
「ちょっと手伝ってくれるかい? プログラムを一つ、作ろうと思うんだ」
 僅かに唇の端が少し上がる。
「大丈夫、なんとかなるよ。あの子がいるんだからね」
 そういって、彼は立ち上がる。
「僕らの  切り札エースが、ね……」

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