dis 3011

秋原かざや

◆隠された真実

◆隠された真実


 クレイン博士に導かれて、旬とエルシィは、地下道を歩いていく。
 聞こえるのは、脇を流れる水路の音だけ。
 と、クレイン博士は、足を止めた。
「エルシィ、少し休もう。この部屋なら彼らも気づかないだろうから」
 ぴっという電子音とともに開くのは、秘密の扉。
 音もなく、扉は開き、クレイン博士達を歓迎するかのようであった。
「ありがとう、そうさせてもらうよ」
 エルシィは笑顔で応えると、部屋に入っていく。旬も続いて入り、最後にクレイン博士が入る。


 クレイン博士の注いだコーヒーを飲んで、エルシィ達は、やっと一息ついた。
「けれど、よかったよ。君達に出会えて」
 最初に口を開いたのは、クレイン博士だった。
「どういう、こと……?」
 思わずエルシィが尋ねる。
「エルシィは、この都市がどうやってできているかは、知っているね?」
 クレイン博士は何を言おうとしているのか。
「この都市は、危機を迎えている。存亡の危機というやつだよ」
 ことりと、カップをテーブルにおいて、クレイン博士は、語り始めた。
「マザーブレインが限界を迎えている」
「だから、それがどうって……」
 まるでわからないと言った表情で旬が呟いたのを。
「あの子は、もう駄目……なのか……」
 悲痛な表情を浮かべたエルシィの声が、遮った。
「ああ、持ってあと数週間ってところだろうね」
「そろそろだと、思っていたけれど……でも……」
「だから、代替が必要なんだ」
 ワケが分からない。
 旬がそう顔をあげたとき。
「そう、君が、ね」
「えっ? 俺?」
 おやっと首を傾げるクレイン博士に、旬は困惑する。
「エルシィ、君は彼に何も話していないのかい?」
「今はまだ、必要ないと……思っていた」
「そう。けれど、状況は変わった。彼にも話した方がいい」
「でも、旬はまだ……」
「状況は、変わったんだよ」
 厳しい顔でクレイン博士は、もう一つ告げた。
「言わないで置こうかと思ったが、こういう状況だからこそ、君達には知ってもらった方が良いね」
「博士?」
 エルシィも眉を顰める。
「この星で、残っている最後の都市は、ここだけだ。今、この星はエイリアンに襲撃されている」
「なっ……」
「それって……」
 クレイン博士の言葉に、息を飲む二人。
「だからこそ、旬。君が必要なんだ。新たな『マザーブレイン』としての、君がね……」
 彼から聞かされた事実は、とても信じがたいものだった。









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