廃屋に潜む、闇の中

秋原かざや

誰か嘘だと言って!

「なあなあ、せっかくだし心霊スポットってやつ、行ってみないか?」
 最初に言い出したのは、トールだった。
 ここは私の部屋。
 ちょっと広いからって、みんなの集合場所になってたりする。
 けれど、無下にはできなくて……。


 というのも、みんな、短大で出来た友達なんだ。
 なかなか出来なくて、孤立しそうになってたのを、ハルカが声をかけてくれた。今でもそのときのことは忘れない。
 けどね。
 ハルカはもちろん、ユキまで彼氏持ちってどうよ?
 ハルカの彼氏はトール。茶髪の見るからに軽めな男だ。ただ、これでも親が金持ちらしく、ボンボンってやつらしい。意外とちゃっかりしてるよね。
 で、ユキ。
 ショートカットの勝気なユキは、スポーツマンタイプのカズとくっついている。実はカズの一目ぼれっていうから、驚きだよね。
 おっと、脱線したかな?


「いいんじゃない? ちょっと面白そう」
 セミロングの髪を揺らしながら、ハルカが同意する。
 そういえば、ハルカの家もどちらかというと裕福だったような気がする。
「で、でも……そういうのって、危ないんじゃ……」
 反論するのは、もちろん私。
「じゃあさ、出かける前に神社で願掛けして、懐中電灯とかちゃんと買って行けばいいんじゃない? そういうのってさ、実はデマだったりするんだよね?」
 ユキがそういって、面白がってる。
 ううう、私はそういうのは苦手。
「俺もそう思う! だってさ、幽霊なんて見たことないし」
 いや、カズ君。見てないからって、これから見ないって保障はどこにもないんだよ? ねえ?
「じゃあ、多数決で決めようか!」
「………しなくてもいいよ。その代わり、ちゃんと願掛けさせてね?」


 家からお守りをこっそり持ってきた上で、神社で願掛け。
 ついでに深夜までやってるホームセンターに入って、懐中電灯をバッチリ買って来ました。電池も新しいの入れたから、これで電池がなくなるってこともない。それに私のは手回しで充電もできるから、とっても安心だ。


 トールの運転する車は、山道をずんずんと進んでいく。
 意外と道は舗装されてて、そこまですんなり行けた。
「おお、雰囲気バッチリ……」
 楽しそうにユキが言う。
「うん、それに涼しいっ♪」
 ハルカも嬉しそうだ。
 そ、そういえば……ここに来たとたん、暑苦しいのが急にヒンヤリしてきていることに気づいた。
「おっと、入る前に面白い話を教えてやるよ」
 トールが得意げに口を開いた。
「面白い話? もしかして、ここの噂とか?」
「お、カズ。いいとこ付いてるな。そう、噂というか実話?」
 そういって、カズの背中をぽんぽんと叩きながら、トールは話してくれた。


「昔さ、ここ病院だったんだよ。町一番のな。けど……何故か破産して潰れちまったんだ。……理由、教えてやろうか?」
 そのトールの言葉に、私を含めた四人がごくりと息を飲む。
「『呪い』だよ」
「の、呪い?」
 思わずハルカが言い返す。
「ここでさ、酷い医療ミスがあったらしいんだ。それで死んだやつが、夜な夜な現れて入院患者を次々と殺していくんだって」
「ひっ……」
「それにさ、病院になる前……戦時中はこの地下に防空壕があったんだってさ。この病院で働く看護婦が良く兵隊の幽霊を見てたって……」
「ふぐっ……」
 な、なんですか、その怪奇現象のオンパレードはっ!!
「まあ、そういうわけで、ここは曰くつきなんだよ。確か……この奥に社があるから、そこに花でも置いてくればいいんじゃねー? それで、今日は終わり。いいだろ?」
「さんせーっ!!」
 それでも十分、怖いです、先生っ!!
 どうせ、多数決で決めるから、私の意見なんて聞いてくれないんだろうけどさ。
 というわけで、近くにあった花を抜いて、持って行くことになった。
 奥にある社にこの花を手向ける。
 そしたら、肝試しは終わりだ。


 なのに……どうして、ここはこんなに寒いんだろう?
 ううう、パーカー着てきてよかった。


 私達はまず、玄関らしきところから入っていった。
 扉には南京錠が掛けられていたけれど、誰かが壊したらしく、すぐに開いた。
「いいね、こういうのも悪くない」
 カズが面白がってる。うう、そんなの気づかないで。
 それにしても……何だか、妙な気配を感じるのは気のせい?
「や、やっぱり帰ろうよ?」
「もう怖気づいたの、サナ? まだ入ったばかりだよ? 怖がりなのはわかってるけど、もう少し気張ってはどう?」
 そんな風にユキに言われてしまった。
「そうそう、怖いの全然出て来てないし」
 ずんずんと奥へと歩いていく。
 中は鉄筋コンクリートで出来た通路……ううん、これは廊下だ。
 窓際あたりが壊れかかってる。雨風に晒されて、壊れたって感じ。
 うう、それだけなのに、怖いと感じるのは、気のせいだろうか?
 ぞくぞくしてくるよぅ……。


「お、部屋はっけーんっ! 開けてみてもいい?」
 トールが勢い良く、その扉をあけた。
 がしゃーんっ!!
 あけたんじゃなくて、勢い良く、倒れた。
 とたんに煙が舞う。ううん、これは……砂煙?
「けほけほ、気をつけてよ。埃が凄い」
 なるほど、埃か。けほけほ。
「おいおい、落書きされてるぜ」
 カズがそういって壁にライトを当てた。


『かえれ』
『お前に用はない』
『かえれかえれかえれ』
『熱海参上!』
『11:35 帰宅』
『ねえ』
『あそぼ』
『うしろ』


 ひっ!!
 思わず、私は後ろを見る。
 誰もいない。暗いばかりの入ったばかりの道。遠くに開いた入り口が見えた。
「どうかしたの、サナ?」
「う、ううん、なんでもない……」
 こ、怖すぎる……。ううう、一番後ろがいいかと思っていたけど、もしかして、真ん中がいいかな?
 けど……カップルの邪魔をしたら、怒られそうだし……。
 私は仕方なく、彼らの後を付いていこうとして。


 ぐいっと、足に何かが絡んだ。
「へっ!? きゃああっ!!」
「ちょっと、驚かさないでよ!」
「変なところで転ばないで」
 そう声をかけられた。
 私はばっつり転んで……ああ、お気に入りのスカートが汚れてしまった。
「待って、今行く……」
 立ち上がって、みんなの後を追いかける。
 ちらりと見えた光が通路の先を曲がった。
 私も急いでそっちに向かうが……。


「あ、あれ?」
 いない。誰も……いないっ!?
 ももも、もしかして、これって……一人ぼっちになっちゃったっ!?


 柊サナ、ここに来て……心霊スポットで一人ぼっちになりました。
 ふええええ、嫌だ嫌だ!! 誰か、嘘だと言ってよっ!!
 これって、絶対、なんかフラグ立ったよ、コレっ!!


 

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