うさぎさんのこい
うさぎさんのこい
むかしむかし、ある山にしろいうさぎさんが住んでいました。
ぴょんぴょんジャンプするのが好きで、よく野原に出かけては、ぴょんぴょん跳ねていました。
そんなある日のこと、うさぎさんは初めて、こいをしてしまったのです。
恐ろしい、くまさんに。
うさぎさんも、まさか、あの大きな体に黒い毛皮が、さらに怖さをひきたててる、あの恐ろしいくまさんにこいをしてしまうとは思わなかったのです。
でも、こいをしてしまいました。
雨が降っている山道を駆けてしました。
と、なにかに気づいて、足を止めたところ、その先に大きなくまさんがいたのです。
そのときです、山から大きな岩がころがってきました。
このままでは、うさぎさんのところにまで岩がきてしまいます。
うさぎさんは、とつぜんのことで足がすくんで動けなくなってしまいました。
もうだめだーと思ったそのときです。
がこん、ごろごろごろ。
岩はくまさんのところに転がっていき、くまさんはその岩を押しのけたのです。
そうすることで、うさぎさんのいのちが助かりました。
おそらく、くまさんからは、うさぎさんの姿がみえなかったと思うのです。
でも、たしかに助けられたのです。
そう思うだけで、うさぎさんのむねが、ぎゅっとあたたかくなりました。
いままで感じてたしあわせとは、まったく違うけれど、たしかなしあわせでした。
それに、くまさんの岩を動かしたときの姿ときたら、なんてかっこういいのでしょう!
思い出しただけで、うさぎさんの小さな胸が、はれつしそうになってしまうのです。
その日からです。
うさぎさんは遠くからくまさんをながめるようになりました。
そのすがたをみるだけで、その日、しあわせになれるようになりました。
うさぎさんはかんがえるようになりました。
あのとき、助けてくれたくまさんに、おれいをしたいと。
なにがいいかと、いろいろとかんがえました。
とおくで見ていると、くまさんはハチミツがだいすきなようです。
そして、そのチャンスがおとずれました。
山の中で、ハチの巣ばこをみつけたのです。
ですが、ハチがいっぱいでちかよれず、ミツを取ることができません。
うさぎさんは、なんにちもミツがとれる方法をかんがえました。
ある日、にんげんがあらわれ、その巣ばこからミツを瓶にいれていったのです。
うさぎさんは、これだと思いました。
とくいのジャンプで瓶にたいあたりしました。
すると、びんがとんでいき、ぱかーんと割れて、なかみがこぼれました。
とてもおいしそうなミツです。
うさぎさんはすぐさま、そのみつをかたあしにどっぷりつけて、三本足でにげました。
とちゅう、たおれそうになりましたが、ミツのついた足をどろの地面につけることはできません。
にんげんは、なにかをいっていたようですが、うさぎさんを追うことはありませんでした。
ですから、うさぎさんはあんしんして逃げ出し、くまさんの住むどうくつまでむかいました。
さあ、くまさんをよびましょう。
でも……こいの相手ではありますが、うさぎさんは、まだおおきなくまさんと会うのはこわいです。
それでも……うさぎさんは、ゆうきをふりしぼって、こえをあげました。
「くまさんくまさん、でてきてくださいっ」
ぷるぷると震えながら、そのときを待っていました。
なかなかくまさんはあらわれません。
「くまさんくまさんっ! でてきてくれませんかっ!?」
こんどはさっきよりも大きい声で呼びました。
すると、のっそのっそと、くまさんがでてきました。
びくんと、跳ね上がりそうになるのをこらえながら、うさぎさんはミツのついた前足をさしだしました。
「くまさんにたすけてもらったので、お礼をしにきました」
ぷるぷる震えながらも、うさぎさんは言います。
「すくないですが、ハチミツをどうぞ……」
こわくていつの間にか、そのあかい目をつむってしまいました。
「……たすけたおぼえはない」
くまさんはこたえました。
「でも、くまさんがよけた岩で、わたしはいのちびろいしました。だから、お礼……したいのです」
「じゃまだったから、よけただけだ」
「でも、もらっていただかないと、こまってしまいます。これを得るのに、たいへん苦労しましたから」
そんなうさぎさんのことばにくまさんはだまってしまいました。
しばらくしたのち。
「……じゃあ、もらうことにする」
そうくまさんがいいました。
びくっと体をふるわせて、うさぎさんはその前足をぐっと高くあげました。
あげてから、うさぎさんは気づきました。
そういえば、くまさんはうさぎさんをたべることができることを。
もしかしたら、この前足も、ぱっくんと食べてしまうかもしれない。
そう思ったしゅんかん、うさぎさんの体はがたがたとふるえだしました。
くまさんにわかってしまうとおもっても、体の震えはとまりません。
……ぺろり。
くまさんは、やさしくやさしく、なめてくれました。
ぱっくんとはせずに、その舌でぺろぺろと。
すっかりハチミツをなめきってしまうと。
「ありがとう」
そのひとことを残して、くまさんはまた、どうくつの奥へと入っていってしまいました。
へたへたへたん。
うさぎさんは、その場で、ぺったんとすわりこんでしまいました。
正直、こしがぬけてしまったのです。
けれど、おもわず笑みがこぼれました。
「くまさんの舌って、あったかくって、やさしいんだね」
うさぎさんは、つぎの日も巣ばこのところへいき、にんげんがハチミツを取り出す段になったら、とつげきして、ハチミツをうばっていきました。
そして、くまさんのところに行っては、ハチミツをささげていました。
そんなことをくり返すうちに、うさぎさんはくまさんをこわがらなくなりました。
くまさんもうさぎさんのことが、少しずつ気になったようです。
「ここに住めばいい」
なんと、くまさんからそんなことばをかけられたのです。
うさぎさんは、おもわずぴょんと跳ね上がって。
「いいんですか?」
「いいもなにも、毎日ここに通うよりも楽だろう?」
その日から、くまさんのおなかは、うさぎさんのあたらしい布団になりました。
うさぎさんは、こいしたくまさんといっしょにすごせるようになって、とってもとっても喜びました。
そして、今までかんじたことのない、『しあわせ』をかんじるようになりました。
ですが、しあわせな日々は、ながくはつづきませんでした。
いつものようにうさぎさんは、巣ばこのところに来ていました。
そろそろ、にんげんがくる日です。
今か今かと待っていると……。
今日は少し違っていました。
にんげんはひとりではなかったのです。
にんげんは、なんにんかのにんげんをひきつれてました。
そして、見知らぬ黒くてながいものを持っていました。
うさぎさんは、それがなんだか怖いもののように感じていました。
くまさんの毛皮と同じ色なのに、どうして、こんなにも怖いのでしょう?
ですが、今日もくまさんは待っています。
あのどうくつで、待っていてくれています。
うさぎさんは、くまさんにハチミツをわたしたときと同じくらいの勇気をだして、ミツをいれている瓶にとつげきしました。
かしゃんと割れて、さっと前足にミツをつけると、すぐさま逃げ出しました。
もう何度もしていることです。
三本足で逃げるのも慣れています。
でも……。
それよりも、黒いものの方が、早かったようです。
ばあああんっ!! と、ものすごい音が響きました。
うさぎさんは、後ろ足を撃たれてしまいました。
ぽたぽたとうさぎさんの目と同じ色の血がこぼれおちてきます。
だんだん力が抜けていきます。
ああ、ここでしぬかもしれない。
でもそのまえに、ひとめだけでも、くまさんにあいたい……。
そんな願いは、思いがけずに叶えられました。
「どうした、だいじょうぶか!?」
どうやら、あの音をききつけて、ここまでやってきてくれたようです。
「あしを……撃たれました……」
うさぎさんは、そうくまさんにいいました。
「なんだって!?」
「くまさん、これがさいごのハチミツです……うけとってくれますか?」
「ああ、うけとるさ。けれどその前に」
くまさんはうさぎさんの後ろをみました。
そこには、黒いながいものをもった、にんげんたちがいました。
おおきなくまさんを見て、驚いています。
「おまえを撃ったこいつらを、ゆるせない」
くまさんは、にんげんに襲い掛かりました。
にんげんもあわてましたが、黒いながいものを持っているのに気づいて。
ばあああん、ばあああん、ばあああん。
くまさんも撃たれてしまいました。
何発も何発も体に受けて。
それでも爪を振るうことを止めませんでした。
なんにんかのにんげんを傷つけることができたようです。
でも、そこまででした。
くまさんも、たくさん撃たれてしまい、しにそうになっていました。
くまさんは、ゆっくりとうさぎさんのところにいきます。
「うさぎ、もうしんだのか?」
「……はじめて、なまえを呼んでくれましたね」
それが、くまさんとうさぎさんのさいごのことばになりました。
けれど、くまさんとうさぎさんは、しあわせそうに微笑みながらまぶたを閉じていきました。
ゆっくりとゆっくりと……。
「ねえ、ママ!! うさぎさんとくまさん、しんじゃったの?」
「そう、しんじゃったの。残念ね」
「うさぎさんとくまさん、かわいそう……」
ママはやさしく、女の子の頭をなでながらいいました。
「ふふふ、でもね、それだけじゃないのよ?」
ママは言います。
「うさぎさんとくまさんは、一緒に天国に行って、また幸せに暮らしたの。ずっとずっとね」
「いっしょになれたの? しあわせになれたの?」
女の子の言葉にママはやさしくうなづきました。
と、そのときです。
「帰ったぞー」
玄関からのんびりした声がきこえてきました。
「あ、パパだっ!!」
女の子はぴょんと飛び上がり、パパの元へかけてゆきました。
「まあ、うさぎさんみたい」
ママは思わず笑みを浮かべました。
「おかえりなさい、あなた」
「ただいま」
ママは女の子を抱えたパパを出迎えて、微笑みました。
「ねえねえ、パパ! うさぎさんとくまさん、いっしょでしあわせ?」
「ああ、しあわせだとも。こんなかわいい子がいるんだからな」
おおきなおおきな手で、パパは女の子のあたまを、ゆっくりとしあわせそうになでてあげました。
おしまい。
ぴょんぴょんジャンプするのが好きで、よく野原に出かけては、ぴょんぴょん跳ねていました。
そんなある日のこと、うさぎさんは初めて、こいをしてしまったのです。
恐ろしい、くまさんに。
うさぎさんも、まさか、あの大きな体に黒い毛皮が、さらに怖さをひきたててる、あの恐ろしいくまさんにこいをしてしまうとは思わなかったのです。
でも、こいをしてしまいました。
雨が降っている山道を駆けてしました。
と、なにかに気づいて、足を止めたところ、その先に大きなくまさんがいたのです。
そのときです、山から大きな岩がころがってきました。
このままでは、うさぎさんのところにまで岩がきてしまいます。
うさぎさんは、とつぜんのことで足がすくんで動けなくなってしまいました。
もうだめだーと思ったそのときです。
がこん、ごろごろごろ。
岩はくまさんのところに転がっていき、くまさんはその岩を押しのけたのです。
そうすることで、うさぎさんのいのちが助かりました。
おそらく、くまさんからは、うさぎさんの姿がみえなかったと思うのです。
でも、たしかに助けられたのです。
そう思うだけで、うさぎさんのむねが、ぎゅっとあたたかくなりました。
いままで感じてたしあわせとは、まったく違うけれど、たしかなしあわせでした。
それに、くまさんの岩を動かしたときの姿ときたら、なんてかっこういいのでしょう!
思い出しただけで、うさぎさんの小さな胸が、はれつしそうになってしまうのです。
その日からです。
うさぎさんは遠くからくまさんをながめるようになりました。
そのすがたをみるだけで、その日、しあわせになれるようになりました。
うさぎさんはかんがえるようになりました。
あのとき、助けてくれたくまさんに、おれいをしたいと。
なにがいいかと、いろいろとかんがえました。
とおくで見ていると、くまさんはハチミツがだいすきなようです。
そして、そのチャンスがおとずれました。
山の中で、ハチの巣ばこをみつけたのです。
ですが、ハチがいっぱいでちかよれず、ミツを取ることができません。
うさぎさんは、なんにちもミツがとれる方法をかんがえました。
ある日、にんげんがあらわれ、その巣ばこからミツを瓶にいれていったのです。
うさぎさんは、これだと思いました。
とくいのジャンプで瓶にたいあたりしました。
すると、びんがとんでいき、ぱかーんと割れて、なかみがこぼれました。
とてもおいしそうなミツです。
うさぎさんはすぐさま、そのみつをかたあしにどっぷりつけて、三本足でにげました。
とちゅう、たおれそうになりましたが、ミツのついた足をどろの地面につけることはできません。
にんげんは、なにかをいっていたようですが、うさぎさんを追うことはありませんでした。
ですから、うさぎさんはあんしんして逃げ出し、くまさんの住むどうくつまでむかいました。
さあ、くまさんをよびましょう。
でも……こいの相手ではありますが、うさぎさんは、まだおおきなくまさんと会うのはこわいです。
それでも……うさぎさんは、ゆうきをふりしぼって、こえをあげました。
「くまさんくまさん、でてきてくださいっ」
ぷるぷると震えながら、そのときを待っていました。
なかなかくまさんはあらわれません。
「くまさんくまさんっ! でてきてくれませんかっ!?」
こんどはさっきよりも大きい声で呼びました。
すると、のっそのっそと、くまさんがでてきました。
びくんと、跳ね上がりそうになるのをこらえながら、うさぎさんはミツのついた前足をさしだしました。
「くまさんにたすけてもらったので、お礼をしにきました」
ぷるぷる震えながらも、うさぎさんは言います。
「すくないですが、ハチミツをどうぞ……」
こわくていつの間にか、そのあかい目をつむってしまいました。
「……たすけたおぼえはない」
くまさんはこたえました。
「でも、くまさんがよけた岩で、わたしはいのちびろいしました。だから、お礼……したいのです」
「じゃまだったから、よけただけだ」
「でも、もらっていただかないと、こまってしまいます。これを得るのに、たいへん苦労しましたから」
そんなうさぎさんのことばにくまさんはだまってしまいました。
しばらくしたのち。
「……じゃあ、もらうことにする」
そうくまさんがいいました。
びくっと体をふるわせて、うさぎさんはその前足をぐっと高くあげました。
あげてから、うさぎさんは気づきました。
そういえば、くまさんはうさぎさんをたべることができることを。
もしかしたら、この前足も、ぱっくんと食べてしまうかもしれない。
そう思ったしゅんかん、うさぎさんの体はがたがたとふるえだしました。
くまさんにわかってしまうとおもっても、体の震えはとまりません。
……ぺろり。
くまさんは、やさしくやさしく、なめてくれました。
ぱっくんとはせずに、その舌でぺろぺろと。
すっかりハチミツをなめきってしまうと。
「ありがとう」
そのひとことを残して、くまさんはまた、どうくつの奥へと入っていってしまいました。
へたへたへたん。
うさぎさんは、その場で、ぺったんとすわりこんでしまいました。
正直、こしがぬけてしまったのです。
けれど、おもわず笑みがこぼれました。
「くまさんの舌って、あったかくって、やさしいんだね」
うさぎさんは、つぎの日も巣ばこのところへいき、にんげんがハチミツを取り出す段になったら、とつげきして、ハチミツをうばっていきました。
そして、くまさんのところに行っては、ハチミツをささげていました。
そんなことをくり返すうちに、うさぎさんはくまさんをこわがらなくなりました。
くまさんもうさぎさんのことが、少しずつ気になったようです。
「ここに住めばいい」
なんと、くまさんからそんなことばをかけられたのです。
うさぎさんは、おもわずぴょんと跳ね上がって。
「いいんですか?」
「いいもなにも、毎日ここに通うよりも楽だろう?」
その日から、くまさんのおなかは、うさぎさんのあたらしい布団になりました。
うさぎさんは、こいしたくまさんといっしょにすごせるようになって、とってもとっても喜びました。
そして、今までかんじたことのない、『しあわせ』をかんじるようになりました。
ですが、しあわせな日々は、ながくはつづきませんでした。
いつものようにうさぎさんは、巣ばこのところに来ていました。
そろそろ、にんげんがくる日です。
今か今かと待っていると……。
今日は少し違っていました。
にんげんはひとりではなかったのです。
にんげんは、なんにんかのにんげんをひきつれてました。
そして、見知らぬ黒くてながいものを持っていました。
うさぎさんは、それがなんだか怖いもののように感じていました。
くまさんの毛皮と同じ色なのに、どうして、こんなにも怖いのでしょう?
ですが、今日もくまさんは待っています。
あのどうくつで、待っていてくれています。
うさぎさんは、くまさんにハチミツをわたしたときと同じくらいの勇気をだして、ミツをいれている瓶にとつげきしました。
かしゃんと割れて、さっと前足にミツをつけると、すぐさま逃げ出しました。
もう何度もしていることです。
三本足で逃げるのも慣れています。
でも……。
それよりも、黒いものの方が、早かったようです。
ばあああんっ!! と、ものすごい音が響きました。
うさぎさんは、後ろ足を撃たれてしまいました。
ぽたぽたとうさぎさんの目と同じ色の血がこぼれおちてきます。
だんだん力が抜けていきます。
ああ、ここでしぬかもしれない。
でもそのまえに、ひとめだけでも、くまさんにあいたい……。
そんな願いは、思いがけずに叶えられました。
「どうした、だいじょうぶか!?」
どうやら、あの音をききつけて、ここまでやってきてくれたようです。
「あしを……撃たれました……」
うさぎさんは、そうくまさんにいいました。
「なんだって!?」
「くまさん、これがさいごのハチミツです……うけとってくれますか?」
「ああ、うけとるさ。けれどその前に」
くまさんはうさぎさんの後ろをみました。
そこには、黒いながいものをもった、にんげんたちがいました。
おおきなくまさんを見て、驚いています。
「おまえを撃ったこいつらを、ゆるせない」
くまさんは、にんげんに襲い掛かりました。
にんげんもあわてましたが、黒いながいものを持っているのに気づいて。
ばあああん、ばあああん、ばあああん。
くまさんも撃たれてしまいました。
何発も何発も体に受けて。
それでも爪を振るうことを止めませんでした。
なんにんかのにんげんを傷つけることができたようです。
でも、そこまででした。
くまさんも、たくさん撃たれてしまい、しにそうになっていました。
くまさんは、ゆっくりとうさぎさんのところにいきます。
「うさぎ、もうしんだのか?」
「……はじめて、なまえを呼んでくれましたね」
それが、くまさんとうさぎさんのさいごのことばになりました。
けれど、くまさんとうさぎさんは、しあわせそうに微笑みながらまぶたを閉じていきました。
ゆっくりとゆっくりと……。
「ねえ、ママ!! うさぎさんとくまさん、しんじゃったの?」
「そう、しんじゃったの。残念ね」
「うさぎさんとくまさん、かわいそう……」
ママはやさしく、女の子の頭をなでながらいいました。
「ふふふ、でもね、それだけじゃないのよ?」
ママは言います。
「うさぎさんとくまさんは、一緒に天国に行って、また幸せに暮らしたの。ずっとずっとね」
「いっしょになれたの? しあわせになれたの?」
女の子の言葉にママはやさしくうなづきました。
と、そのときです。
「帰ったぞー」
玄関からのんびりした声がきこえてきました。
「あ、パパだっ!!」
女の子はぴょんと飛び上がり、パパの元へかけてゆきました。
「まあ、うさぎさんみたい」
ママは思わず笑みを浮かべました。
「おかえりなさい、あなた」
「ただいま」
ママは女の子を抱えたパパを出迎えて、微笑みました。
「ねえねえ、パパ! うさぎさんとくまさん、いっしょでしあわせ?」
「ああ、しあわせだとも。こんなかわいい子がいるんだからな」
おおきなおおきな手で、パパは女の子のあたまを、ゆっくりとしあわせそうになでてあげました。
おしまい。
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コメント
ノベルバユーザー602339
あきらめないうさぎさんのこいと一緒に熱くなれる作品でした。
ドキドキワクワクしながら読むのがすごく楽しかったです!