ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE32 出撃、ライジングサン! おまけにイベント発生?

「というわけで、黒き山脈に行くことになったよ」
 ふうとため息零しながら、ラナ君がそう告げました。
 あ、ちなみにここは、ライジングサンが根城にしている、例の宿屋さんです。
 本当、ここのご飯って、美味しくてたまんないよねー。つい、お替りしちゃいます。
「ああ、あそこね」
「知ってるんですか? セレさん」
 思わず私は尋ねてしまう。
「うん、ボクでもクリアに時間がかかった場所。あれはないよねー」
 あのセレさんが時間がかかったって……。
「そう、びびらないで。初心者がかかるハニートラップみたいなものよ」
 ミスティさんが付け加える。
「入り口らへんは、初心者でも大丈夫だけど、最深部になるとレベルが300必要な場所なのよ」
「そ、それって……なんて、初心者殺し」
 私の言葉を聴いて、キッドが付け加える。
「そう、それで付いたあだ名がなんと!」
「呪いの初心者殺し山」
 ああ、あたしが言いたかったのにーという声が聞こえるけど、カインさんは気にしていないみたいだ。
「しかも無限」
 とうさんがそう付け加える。
 ……無限? 無限ってどういう……??
「ダンジョンのモンスターってのは、ある程度、狩りきっちまうと、それ以降、モンスターが出なくなっちまうんだよ。けど、黒き山は別。ダンジョン内にあるスイッチを押すと、モンスターは無限に出まくる」
 そうアルフさんが教えてくれました。
「だからこそ、初心者殺しって言われているんだ。まあ、その罠を解除すれば、また元のダンジョンに戻るんだけど……それまで耐え忍ぶのが大変なんだよね。あそこ」
「何度死んだかわからないよー。ホント」
 ラナ君がそう教えてくれて、セレさんは嫌そうな顔をしてました。
「そこに誰かが迷い込んじゃったってこと?」
「ご名答。それで動けなくなってるみたいなんだ。助けてやって欲しいって、運営からメールが来ました」
 私の言葉にラナ君が続く。
 まあ、ラナ君以外、最高レベルに達してるのは、誰も居ないみたいだし。
 だからこそ、こういう依頼もやってくる。
「助けてあげれば、何か良い報酬とかも用意してくれるって話みたいだから、みんな、協力してくれる?」
「あれ、珍しいね。ラナ君、一人じゃいけないところ?」
 きょとんと首を傾げると。
「うん、あそこの罠の解除法は、一人じゃ無理なんだ」
「二人が一緒にスイッチを操作しないといけないのよね。しかもその間、モンスターが増え続けるというオマケ付きよ」
 ミスティさんが説明してくれました。なるほど。
「それに、サナやキッド、カインのレベル上げにもいいと思うんだ」
 なるほどなるほどーって、私達もですか!?
「置いてくわけにもいかないしね」
 って、ラナ君、そっと顔を近づけて。
「サナのことは、僕が守るから」


 ぼんっ!!


「あら、赤くなっちゃったわねー」
「まあ、あの二人、新婚さんだから仕方ないよね」
「ん」
「じゃあ、準備しないと」
「あー、それじゃああたし、買い物いってきまーす! 他にも何か居る人いる?」
「じゃあ、ハイパートリプルポーションWY買ってきてくれるか? 金やるから」


「って、気にせず話を進めないでくださいーっ!!」


 というわけで、準備を終えた私達、ライジングサンは、黒き山につきました。


「あっという間、だったね……」
 あっという間でした。ラナ君の移動魔法で、一瞬でした。
「その方が、楽でしょ?」
 いや、そうなんですけどー。
 反論できないのが、ちょっと悔しい。


 でもって、目の前の山を見上げる。
 名前のとおり、本当に黒々したおっきい山いや、山脈です。
 その中腹あたりというか、今いる場所なんですが、そこに巨大な洞窟の入り口があるわけで。
「中はモンスターだらけだから、気をつけてね。トラップも多いから、進むときは一声かけること」
「りょ、了解ー」
 ちなみに今回の旅には、まゆちゃんも同行してます。
 さすがにレベル1は不味いだろうって、今回の旅でいろいろとレベル上げしようって話になりました。
「さて、作戦の確認よ。ハンターの私と」
 あ、ミスティさん、念願かなって今はハンターになりました。ちょっぴり嬉しそう。
「武道家の俺が最深部に行って、罠を解除」
「その間に、私達、シルティーキャットαがレベル上げ!」
 思わずキッドに尋ねます。あるふぁーって何?
「まゆっちとラナ、ついでにセレっちが同行してくれるんでしょ? だからアルファー」
 ああ、なるほど。それでプラスアルファーってことですか。納得。
 あ、でもミスティさんとアルフさん、二人だけで大丈夫ですか?
「ふふふふ、伊達に盗賊してなかったわよ。敵から身を隠すスキル持ってるし」
「回復アイテムはかなり補充しておいたからな」
 あ、そういえば、出かける前にキッドが頼まれて買ってたあれ、回復アイテムだって言ってました。
「まあ、いざとなったらラナン君かボクが行くことになるし、だいじょーぶだいじょーぶ☆」
 そういわれると、ちょっと安心してきました。
「じゃあ、そろそろ行こうか?」
「「おおーっ!!」」


 隊列を組んで、いよいよダンジョンの中に足を踏み入れて……。


 ぴんぽーんっ!


 間の抜けた音が響いた。
「へっ?」
 頭上でぺろんと出てきたのは、青白い見慣れたテキストウィンドウ。


『イベントが発生しました。
 竜の姫は、最奥にいるダークドラゴンを倒してください。
 それまでこのダンジョンから脱出はできません』


「「何だってーーーっ!!」」


 待って、どこから突っ込めばいい?
 私がドラゴンを倒さなきゃいけないってところ?
 それとも、ダンジョンから出られなくなったってところ!?
「両方だよ!!」
 だ、だよねー。じゃなくって!!
「こんなイベント、見たことないっ!!」
 ラナ君が叫ぶ。
「だって、仕方ないんじゃない? それ、『竜の姫限定イベント』みたいだから」
 なにその、限定イベントって……。
 なんだか、助けに行くつもりが、大変なことになってしまいました……。
 とほほーっ……。





コメント

  • ショウ

    こwれwはw面w白wいwww

    1
コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品