ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE29 夢の結婚披露宴

 そして、当日を迎えた。
「それじゃあ、僕は向こうで着替えてくるから」
「うん、楽しみにしてるね」
 ラナ君と別れて、私はいよいよ、純白のドレスを身に纏う。
 どうやら、好きなドレスを選べるようだ。部屋に入ったとたんに、いくつものドレスがウインドウに現われる。
「やっぱり、これかな?」
 白くてふわっとした、可愛らしいドレス。
 レースにブーケ、靴も選んで、それらを自動的に纏った。
『メイクはどうしますか?』
 おまかせメイクと、ナチュラルメイク、ハードメイク、ハーフメイクの3種類が表示される。
 おまかせは、その名の通り、運営が自動的にメイクをするらしい。
 ナチュラルメイクは、より自然な形に近いメイクをしてくれるそうだ。
 ハードメイクは、ちょっぴりロックっぽいメイクができるらしい。
 ハーフメイクはナチュラルとハードの中間っぽいメイク。実例にゴスロリ風なんてのが書いてあった。なるほど。
 私は奇抜なのは好きではないので、ナチュラルメイクを選んでおく。
 すると。


 ぽんっ!!


 あっという間に完成! メイクもいい感じ♪
 ミスティさんとセレさんに呼ばれて、私は、会場に向かった。
「さあ、新郎がお待ちかねだよ」
 扉をあけるセレさんに導かれて、私はドアをくぐる。
 とたんにいくつものクラッカーが鳴り響いた。
 紙吹雪も舞ってるらしい。
 奥の壇上には、すっごく格好いいラナ君が、真っ白なタキシードを着こなして……あれ、固まってる?
「ラナ、君?」
 てけてけと、ラナ君の元へ向かい、ぴこっと首を傾げる。
「やべー、このまま掻っ攫いたくなった……」
 それは冗談ですよね? ね?
「じゃなくって……すっごく、本当に……綺麗だよ、サナ」
「ラナ君も、格好いいよ……」
 いつもの髪をしっかり撫で付けて、大人っぽい。
「では、誓いの言葉を……」
 神父さんの言葉に従って、私達は愛を誓って、皆の前でキスを交わした。


 式はあっという間だった。
 後は、いろんな人達にご挨拶。
 本当は、近しい間柄だけでいいんだけど、ラナ君は、一応、この大地を救った英雄なので、全ての国王に挨拶しなきゃいけないんだって。
 まあ、ラナ君の転移魔法で、さくさくっと終わらせちゃったけど。
「魔王様にも挨拶、するんだね?」
「まあ、一応?」
 親だしと呟くラナ君が、ため息を零す。
「本当はこんなフラグ折りたいところなんだけどね、バグが発生するのが嫌だから」
 なるほど、魔王様、そんなフラグを立てたんですか。


「へえ、孫にも衣装だな」
「帰るよ」
「悪かった悪かった」
 挨拶する前に帰りそうになったラナ君をなだめて、やっと魔王様こと、ラナ君のお父さんにもご挨拶。
「まあ、いろいろと面倒なやつだけど、よろしく頼むわ」
 ちょっぴり嬉しそうな、けれど僅かに淋しそうな笑みを浮かべて、魔王さまは私達を祝福してくれたのだった。


 挨拶周りが終わったら、今度は動きやすいドレスに着替えて、いつもの宿屋でドンちゃん騒ぎ。
 ラナ君が、その場に居る全員におごったものだから、凄いことになってしまった。
 見たこともない凄いご馳走ばかりが並んで、周りにいた人達も口々に祝福してくれて。
 凄く楽しくて楽しくて。


 気がつけば、夜だった。
 みんな、気を使ってくれたのか、私とラナ君は同じ部屋で泊まることになった。
「楽しかったね」
 綺麗な月を見上げながら、私はラナ君にそう告げた。
「うん、あっという間だったね」
「もっと、感慨深いのかなーって思ってたけど、意外とあっさりしてた」
「そう?」
 うんと頷いて、ラナ君を見上げた。
「やっぱ、ここに両親がいないから、かな?」
「ここから出られたら、サナのご両親にご挨拶、しに行こうか」
「うん」
 ラナ君の肩にそっと頭を預けて、月を眺める。綺麗な月。そして、星も。
 こんな時間がずっとずっと続けばいいのに……。
 まあ、出られた方がもっともっと嬉しいけど。


「サナ?」
 思わずラナは、サナに声をかける。
 サナはラナに頭を預けながら、すうすうと寝息を立てていた。
 ラナは何も言わずにそっと微笑むと、彼女を起こさないよう注意しながら抱きかかえ、二人で寝るベッドへと運ぶ。
 本当はいろいろなことを伝えるはずだったのに、伝える前に寝てしまった。
「まあ、いっか」
 心の中でそう呟いて、ラナは部屋の明かりを消した。
 二人だけの夜。
 隣に愛する人が居る夜に、幸せを感じながら、サナのふわりとした金髪をそっと撫でて、ラナもゆっくりと瞳を閉じた。
 

「ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く