ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE28 いっしょになろう

 ラナ君が指定した場所は、誰も居ない女子部屋だった。
 セレさん、カインさん、キッドには、別の場所で待機してもらってる。


「で、私に何のお話があるの?」
「えっと、その……」
 ちょっと戸惑いながら、けれど、何かを決めたような眼差しで。
「結婚しよう!」
「お断りします」
「えええええええっ!!!」
 思わず、即答しちゃった!!
「だ、だって、結婚だなんて、急に言われても……その、困っちゃうよ」
 一方、ラナ君は、顔に何本もの縦線を入れて、がーんと青ざめている。
「今は無理だけど……その、順序ってのがあるでしょ? デートとか、ご両親のご挨拶とか……それに、私、まだ未成年だし……その……」
「……もしかして、サナ。リアルな方、言ってる?」
「へっ!?」
 ラナ君は気を取り直したらしい、それでも青ざめてるが、なんとか口を開いた。
「ゲーム内で、結婚……いや、エンゲージしようって言ってるつもりだったんだけど」
「ゲーム内、での?」
 なんだ、びっくりした!!
 それに、ラナ君の言葉で、エンゲージの意味も分かったよ。
 そっか、ゲーム内で結婚するのが、エンゲージっていうんだ。
 あれ? でもなんで、即答しちゃいけないんだろ?
「なんだ、びっくりさせないでよ、もう。それならそうと言って。そういうことなら、OKだよ。だって、ラナ君となら、大歓迎だし」
「ほ、ホント!?」
 さっきの青ざめもどこへやら。
 ラナ君は乗り出す勢いで、私の顔を見た。
「うん、ホント。ゲームの中なら、全然問題ナッシングだよ」
「ホントにホントにホント?」
「……しつこいよー? ホントに良いってば」
 その私の言葉に、ラナ君は嬉しそうに片手の拳をあげた。
「いやったああああああ!!!!」
 ちょっと涙目なのは、気のせいかな? 感動しちゃってる?
「ところで、アルフさんが即回答しちゃいけないって言ってたけど、エンゲージしたら、やばいことってあるの?」
 きょとんとした表情でラナ君は、すぐに答えてくれた。
「そうだね、離婚するのに1ヶ月かかるかな」
「……何、それ?」
 ラナ君の話によると、ライサガで結婚するのは簡単だけど、離婚するのは大変らしい。
 離婚イベントを受けて、各地を『徒歩』でお使いイベントをこなさなくてはならないそうなのだ。
「転移魔法も使った時点で、イベントキャンセルされちゃうから、もう大変なんだよね」
「でも、どうして1ヶ月もかかるの?」
「500箇所」
「???」
 ラナ君は続ける。
「世界各地の500箇所を回るんだ。かなり遠回りされたりするし、ホント、あれは途中でくじけそうになった」
 ……そりゃ、たいへ……待って!!
 今、『くじけそうに、なった』って、どういうこと!?
「あ……えっとその……」
 気まずそうにラナ君は、言葉を選ぶかのように語り始める。
「ほら、父さんというか、魔王に? イベント確認頼まれてるでしょ?」
「うん」
「これもやってくれって、頼まれて……嫌だって言ったんだけどね、バグがあったら大変だからって、頑として聞き入れてくれなくて」
「うん」
「僕だけでなく相手側にも、こっそり特典あげるからって、言われてさ。しぶしぶ……その、結婚しました」
「相手はだれ!!?」
 相手によっては、私、怒りますけど!!
「み、ミスティ」
 ……え? セレさんじゃなくて、ミスティ、さん?
「だって、セレは嫌がってたし、男となんて結婚したくなかったし……そうなると、その……あまっちゃうでしょ?」
「…………」
「それに、特典に食いついてきちゃって……その、本当に、仕方なく……」
「………………」
「ごめんっ!!」
「まあ、いいよ。それでも離婚したんだよね?」
「うん、この世界じゃ、バツイチになっちゃってるけど……でも、一番はサナとやりたいって思ってたんだよ、これはホント!! イベント確認なかったら、絶対、そうしてた!!」
 でもまあ、想像してみた。
 大変な離婚イベントを確認するために……あのミスティさんと1ヶ月もお使いイベントをこなすラナ君が、ちょっとかわいそうに思えた……。
「わかった。そういうことなら、仕方ないよね」
 それに、一番は私だって言ってくれてるし。
 なにより、とっても必死にすがり付いてくる勢いだ。
「うん、それも含めていいよ。エンゲージしても」
「いやったあああああああ!!!」
 腕を振り上げ、ジャンプも加わりました!
 そんなに嬉しいのかな?
 でも、そんなに喜んでくれると、こっちも嬉しい。


 だって、ゲーム内でも、大好きなラナ君と結ばれるんだもの。
 その後、エンゲージをすると、アイテムなしで通信ができるようになるとか、一緒にいると夫婦効果で、技と魔法の攻撃力がアップしたり、コンビネーション技とか出せるようになると教えてもらって。
 いよいよ、明日、エンゲージ儀式……と言う名の、結婚披露宴をすることになりました!!
 ちょっと早いけど、ま、いっか♪
 楽しみだな、結婚披露宴♪

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品