ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE21 王宮庭での楽しいお茶会

 無事、結界を張って、一息ついた私達は……というと。
「うーん、美味しい♪」
 キッドがいつもの装備で、暖かくて美味しいロイヤルミルクティーに舌鼓。
「こ、このケーキ、すごく美味しい!!」
 私はとっても上品なフルーツタルトで幸せいっぱい。
「このクッキーもいけるよ、サナちゃん」
 セレさんは、フルーツの入ったクッキーを頬張っている。
「ああ、なんて私は幸せなんだろう……」
 そんなセレさんを見つめながら、ほうっとため息をこぼすのはカインさん。


 私達は、よくやったとご褒美で、王宮の庭園に招かれました。
 ついでにこうして、お茶会なんぞ、開いてもらっています。
 うーん、幸せー♪
 やっぱ、仲間とこういう甘い時間ができるのはいいよね!!
 今頃、戦ってるラナ君達には悪いけど……ねぇ?
 ついでに言うと、なぜか、ラブラブのリシアス王子とミラーセ姫も同席中。
 あれだね、ここでラブラブしたかった、それだけですよね!?


 それはさておき。
 さすがは、王宮の庭園!!
 色とりどりの草花があって、スッゴク綺麗なんだ!!
 テーブルの上にも切花を入れた花瓶が幾つか乗っていて、これまたムード満点!!


「そういえば、セレさん。結界を張るときに『ライジング』って言ってましたけど、あれって何なんですか?」
 そう、セレさんが結界を張るときに、ライジングの光とかって言ってたんだよね。
 このゲームもライジング・サーガっていうし。
 ちょっと、気になってたから、聞いちゃった。
 ………あれ?
 なんで、みんな、黙っちゃったの?
 じっと私の方を見てるんですが!!
「あ、そっか。サナちゃん、初心者の館、パスしちゃったんだったっけ」
「パス?」
「どういうことなんです?」
 かくかくしかじかと、初ログインのときの事故の話をする私。
 そしたら、案の定。
「なんで、生きて帰ってこれたの!?」
「あの魔王の城に行って、無事で済むとは……!!」
 あははは、これもこの隠しスキルのお陰です。
「「そのスキルもって、プレイしてるってぇえええ!?」」
 だよねー。思わず苦笑してしまう。
「まあまあ、二人とも、それくらいにしてあげて。この子の彼氏、ラナン君だから、仕方ないよ」
「ああ、あの」
「ああ、なるほど」
 そ、そこ、納得するところですか!?
「それよりもさ、今回のイベントクリアで、サナちゃんは、何レベルになったの?」
 セレさんに言われて、私はさっそくステータスを確認する。
「えっと……40ですね」
「うーん、まだまだだね。でも、あと10レベルあげれば、移動魔法使えるようになれるね」
「本当ですか!?」
「一度、行った場所じゃないと使えないけどね」
 そ、それはわかってますー。でも、それが使えれば、今回のように、離れ離れにならなかったと思うし!! あと10レベルあげなきゃ。頑張るぞっ!!
 ついでに、キッドとカインさんの自己紹介も改めてしておきました。
「ライジングサンに入りたいの? リーダーがラナン君だからなー」
 ちらっと私を見る。と、同時にカインさんもキッドも私を見た。
「え、えっと……お願いしてみます、私」
「ぜひぜひぜひお願いします!!」
 鬼気迫るカインさんと。
「頼むよ、サナっち!!」
 ぎゅっと抱きしめるキッド。
 それに、彼らとお別れするのもやだなって、思ってたんだ。うん。お願いしてみよう。
「サナちゃんと同じくらいの子達が入ると、レベルアップもしやすくなるからね。どちらにせよ、うちのパーティ、人数少ないから大歓迎だよ」
 セレさんがそう話してくれた。どうやら、セレさんもキッドやカインさんのこと、受け入れてくれたみたいだ。
「ところで、時間もできたことだし」
 ずずーっと紅茶を飲むセレさんが、私を見据える。
「ラナン君との馴れ初めを話してもらおーか♪」
「ぶーーー!!」
 思わず飲んでいたお茶を吐いてしまった。さすがはゲーム世界。被害は0です。けほけほ。
「あ、それ、あたしも聞きたい!!」
「今後の参考にもなるだろうしね」
 キッドは良いとして、カインさん、その今後の参考ってもしかして……。
「ささ、ずずいっと!!」
「いや、そんな恥ずかしいの、いえませんって」
「「恥ずかしいの!?」」
「そこ! 変なところで反応しないの!!」
 もう、何とかしてよーーーっと、思っていた、そのとき。


「サナ様! サナ様! 一大事でございます!!」
 何だか兵士さんみたいな人がやってきた。
「ファーストレインの町が、魔物に襲われていますっ!!」


 ええええええっ!?
 一難去って、また一難って、このことだよね!?
 でも、魔物ってことは、魔王軍じゃない?
 これって、どういう……こと?
 そ、それよりも、ライジングの話、聞きそびれてるんですけど!!
 私の、明日はどっちだ!?

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