ライジング・サーガ ~初心者エルフとチート魔人~

秋原かざや

SAVE4 はじめてのおつかいとわらしべ長者

 前回までのあらすじ。
 素敵な仲間ができましたっ!!
 それと、隠しスキル、怖いですっ。いろんな意味で。


「あ、あれ?」
 ふと思う。どうして、魔王さまのところに言って無事だったの?
 あの、ドラゴンにラブラブされる竜の姫のスキルがあるからって、非情な魔王さまに攻撃を喰らわないということにはならないはずだ。
 その疑問に答えてくれたのは、セレさんでした。
「魔王さまはね、ドラゴンと魔人さんのハーフなんだよ。ドラゴンハーフってやつだね!」
 なるほど。だから、攻撃せずにあそこに……うわああっ!!
 思い出した。貞操の危機のことを!!
「よーく、わかりました」
「まあ、それだけじゃないと思うけどね」
 なんか、ラナ君が今、ぺろっとヤバイ台詞出したような気がするんですが、気のせいということでいいですよね? ねっ!?


 というわけで、食事を終えた私達は、というと。
「レベル上げだな」
 アルフさんが言いました。そうですね、私、1です。危険な香りがぎゅんぎゅんします。
 いうなれば、足手まといってやつですか? ……すみません。悪くないのに謝ってしまいます。
「じゃあ、あの簡単おつかいイベントで、レベル上げしちゃうのどうでしょ?」
 セレさんが面白い提案してくれました。
「そうね、あれなら、レベル1でも平気ね。どうせ、ラナン君も手伝うんでしょ?」
 ミスティさんがラナ君を見て言います。
「もちろん。最近、PCキラーも流行ってるからね」
「それと、変なスキル、配布されてる」
 ぽつりと、とうさんも話に加わります。無口な人かと思ったら、実はそうでもないようです。
「変なスキル?」
 私の言葉にラナ君は、ちょっと嫌そうな顔をしました。
「うん、嫌がる相手にいかがわしいことするスキル。もちろん、違法なんだけどね。どうやら、出回ってるみたいなんだ。嫌なことにね」
 ……あれ? なんだか、このゲーム、実は危険だったりします?
「僕らくらいまでレベル上げれば、襲ってくる人なんていないから、大丈夫だよ」
 にこっと笑ってくれました。っていうか、そこまでレベル上げるのに、どのくらいかかるんでしょーか!?
「じゃあ、僕達は冒険者ギルドに行って来るよ。サナのことも登録しなきゃいけないし」
「了解。俺達はいつものところで狩りしてるから、手が必要になったら教えてくれ」
「わかった」
 ここで、パーティの皆さんと一時、お別れ。
 どうやら、パーティの中で、良い装備を欲しい人がいて、そのために必要な材料を取りに行くんだって。私も早く一緒に狩りができればいいんだけど。
「サナ、冒険者ギルドに行くよ」
「うん、よろしくお願いしますっ!」
 差し出すラナ君の手に、そっと私の手を乗せました。


 というわけで、やってきました冒険者ギルド!!
 まず最初に、私が冒険者になりましたっていう、登録を行ないます。
 っていうか、初心者の館にいれば、この手続きは必要ないんだって。
 でも、私、初心者の館にいけなかったから……あううう、転生事故のばかーーっ!!
「どこのパーティに所属しますか?」
「ライジングサンで」
 ラナ君が即答してくれた。
「それって、ラナ君の?」
「うん、そう。ちょっと恥ずかしいんだけどね」
 話によると、どうやら、その場の勢いで決めちゃったんだって。でも、なかなか格好良いと思うよ、ラナ君♪
「これで、冒険者の手続きが終了しました。引き続き、クエストを受けられますか?」
「クエスト?」
 私の言葉に、ギルドのお姉さんが説明してくれた。
「冒険者の冒険には、フリーアドベンチャーと、クエスト、それにイベントの3つの種類があります。
フリーアドベンチャーはその名の通り、プレイヤーの好きなようにいろんな場所を冒険していただけます。イベントは、ある条件が揃ったときに自動的に発生するもので、このゲームの本筋にあたる物語となります。クエストは、このギルドに集まった、他のプレイヤーまたは、NPCからの依頼を引き受け、クリアしていく冒険となります。一部、有料コンテンツが含まれていますが、概ね、無料で楽しんでいただけます」
 だそうです。
 ちなみにラナ君にいわせれば、今、別行動している皆さんは、フリーアドベンチャーで目的のダンジョンで狩りを行なっているみたい。で、イベントは、この町のお城で受ける本筋の物語。お姫様を助けたりとか、戦争しているところに行って戦ったりするんだって。
 で、これから行うのが、クエスト。
 セレさんの言ってたのが、クエストのことらしい。その中で、おつかいっていう種類があるみたい。
「では、こちらのリストから選んでください」
「じゃあ、これで」
「こちらですね。依頼主には、私から連絡しておきますので、よろしくお願いしますね」
 そういって、依頼内容を書いたプレートを渡してくれた。
 大きさは、クレジットカードくらいの大きさ。でも、無限に入るウエストポーチに入れられるので、ラクチンです。失くさないし。
 というわけで、お使いクエストスタートっ!
「で、どこに行けばいいの?」
 冒険者ギルドから出た私達は、さっそく、目的地に迷っています。
「うん、最初はキララ村に行って、今度はゴンザス塔、次にミラレーク・シティに行って……」
「ま、待って、一体、何箇所いくの、私?」
「ざっと20箇所? 大丈夫、僕、どの場所も行ったことあるから、転移シフト魔法で一瞬でいけるよ」
 ありがとう、転移魔法!! あなたのお陰で、おつかいクエスト、苦労せずにいけそうです。
「……どうでもいいこと聞くけど、転移魔法なかったら、これ、どれくらいかかるの?」
「んーと、そうだね。全部、歩きになるから……大体一週間くらいかな」
 転移魔法のありがたみが、すごく分かった気がします。
 というわけで、さっそく、私達は最初の目的地、キララ村にレッツゴー!!


 あっという間に到着。
 キララ村は、本当に村でした。町よりも小さくて、けれど、なんだか心がほっこりする場所です。
 いいな、こういうのー☆
「あ、サナ、気をつけてね?」
「気をつけるってなに……」
 私がそう言い切る前に。
「あああああ、そこの冒険者の方ぁーーーっ!!」
 どっかーーーんっ!!
 見知らぬおじさんに、突き飛ばされました。
 見事な空中一回転半!!
 べたん。
 落ちました。痛くは無かったけど、なんか、心に疲れるダメージが来たんですけど!!
「あの人、レベル5だから」
「5の差で、こんなに違うわけ?」
「そうだね、受身のスキル持っていないから、こうなったっていうのが正しいかな?」
 受身のスキル持ってたら、こんなに飛ばされないんですか?
 思わず聞いちゃうよ? ねえねえ?
「大丈夫、受身は3レベルで習得できるから」
「そ、それまでは気をつけなきゃいけないってこと、かな?」
「うんそうなるね」
 ちょっと前途多難な気がしてくるのは気のせいでしょうか?
 とにかく、そんなことはさておいて。
「で、私は何をすればいいんでしょうか?」
 何事も無かったかのように、私はそのおじさんに尋ねた。
「はい、あの藁をゴンザス塔にいるゴンスケに渡して欲しいのです」
 ベタなNPC名、いただきました!!
 ゴンザス塔のゴンスケってどうよ!?
「わ、わかりました。引き受けましょう」
 ツッコミ所、満載だけど、これもこれから得られる経験値のため、ぐっと我慢よ、私!!
 おじさんから藁を受け取って、ゴンザス塔、ゴンザス塔に行って、次は………。


 こうして、最後の目的地。
 ファーストレインの町に来ました。って、最初の町に戻ってくるの!?
「うん、そうなってるんだ」
 いつものことのように、ラナ君はそういって、最後の場所に案内してくれる。
「それにしても、この金の便器って何?」
「僕に聞かれても、困るよ。でもそれ、すっごく高価なんだからね?」
 まあ実際は、可愛いポーチの中に入ってるんだけど、その便器が中に入っているってだけで、ちょっと鳥肌立つんですが。とにかく、さっさと終わらせよう。これで最後なんだし。
 たどり着いた場所は、凄いお屋敷でした。
 なんだか、納得。
「ようこそ、冒険者の皆さん。わざわざ持って来てくれたのですね。では、品物を拝見……」
「はいどうぞ、さっさと終わらせてね」
 といったのに、5分くらい見てました。そんなに時間かけてみるシロモノなの?
「こ、これは……」
「も、もしかして、間違えました?」
 どきっとしてしまう。転移魔法でさくっと来たから、壊してないと思うんだけど……。
「こんなにも素晴らしい匠のお便器を運んでくださったのですね。本当にありがとうございます、冒険者様!!」
 私の手を掴んで、ぶんぶんぶんぶん、これでもかってくらい、握手してくれた。
「お疲れ様でした。これが今回の報酬です。受け取ってください」


 ぴんぴろりーーーん!!
『サナは、100万バルを手に入れた!』
 おお、なかなか凄いお金を手に入れた気がする! あのお便器、そんなに凄かったのかな?
 ちなみにバルっていうのは、この世界のお金の単位。1円=1バルなんだって。
 これまた分かりやすくて、いいです。
 で、経験値は?


 …………。


 ねえ?


 ……………。


 あ、あれ!?


「あ、ごめん。このクエスト、お金だけだったみたい」
「ええええっ!!?」


 仕方ないので、今日はこれまでにして。
 一度、パーティメンバーと合流して、夕食を食べようって話になりました。
「災難だったねーサナちゃん」
 はい、あれだけがんばったのに、お金だけでした。
「で、サナ。いくら貰ったの?」
 ミスティさんが尋ねます。
「えっと、100万バル?」


「「100万バル!?」」


 あ、あれ? そんなに高額なんですか、これ?
「貴婦人のエタニティドレスが3着も買えるじゃないっ!!」
「それ、防御力低いから駄目」
 とうさんが、突っ込んでくれました。格好いい名前だから、強い防具だと思ったんだけど、そうじゃないみたい。
「どうやら、レート変わったみたいだよ」
 ラナ君が教えてくれました。
「あーあ、俺もサナと一緒にやりたかったっ!!」
「じゃあ、またクエストやればいいんじゃないですか?」
 私の言葉にアルフさんは、首を横に振る。
「一度、成功させたクエストは、二度と引き受けられないんだ」
「妙なところにこだわりあるみたい」
 ラナ君は、ちょっと遠い目をしてる。
「まあ、とにかく、これで装備買い替えできますね♪」
 わくわくしながら、お店に行こうとしたら。
「レベル1じゃあ、大したもの買えないよ。レベルが上がってからの方がいい」
 ラナ君によると、レベルに応じて、買える装備も決まっているそうで。
 お買い物は、レベルがあがるまで、お預けのようです、しょぼーん。


 こうして、私の1日目のプレイが終わったのでした。
 この次こそ、しっかりレベルを上げなくてはっ!!

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