私、これでも副会長なんだけど!?

秋原かざや

初めて好きになっちゃった……かも?

 最初の犠牲者は、一番そんなのに縁遠そうな夕霧さんだった。
 翌日、夕霧さんは妙にそわそわしていて、ミーティング中も、私が注意するくらい上の空だった。
 いつの間にか、立場が逆転していますよ、夕霧さん!!
 だから、二人っきりになった生徒会室で、彼女を呼び止めたのだ。
「夕霧さん、どうかしたの?」
 思わず聞いちゃうってもんです。
「……あの、ですね」
 ん? なになに?
「女の子でも、女の子を好きになっちゃって、いいんでしょうか?」


 ………はい?


「だから、そのっ! 女の子が女の子を好きになっていいのか、という大事な話です!」
 うん、そうだね。そうだったね。
 すごい剣幕で叫ぶかのように話す夕霧さんに、私は圧倒されてます。
 えっと、これでも(以下略)。
 いやはや、黄昏時のムードバッチリなところで、話し合う話じゃないよね。これ。
 いやそれよりも、どうして、そんな話になるのか、超! 気になるんだけどっ!!
「いいんじゃないかな?」
「え?」
 彼女の、ううん、夕霧さんはそんな言葉を欲しているわけじゃない。
 とっても気になるけど、今は私の疑問をぶつけるときじゃない。
 その真剣な眼差しを見れば、わかるもの。
 だから、私はいいんじゃないかと思ったの。
「異性だからって、同性だからって関係ないと思う」
 私は続ける。
 さっさとそんな悩みを解決して、いつものあのクールビューティな夕霧さんに戻って欲しい。
 そう願いながら、思う。
 きっと、真面目な夕霧さんが、真面目すぎるゆえに、ガンガン悩んじゃって、今のぽえぽえ夕霧さんが出来ちゃったと思うんだ。
 だから、こう言った。
「自分が好きだとわかったのなら、仲良くなっちゃえばいいんじゃないかな? だって、彼女も夕霧さんのこと、好きなんでしょ? 好きだから友達になろうとか、そんな話になってるんでしょ? なら、答えは簡単じゃん!」
 にこっと笑って、背中を押すのも、私の役目だと思う。
「ほらほら、行きなよ。今も待ってくれてるんでしょ?」
「……柊、先輩……」
 あ、は、初めて先輩って呼んでくれた!
 うわあ、すごい、きゅんって来た!
 どきどきしてきちゃうよ。いやいや、私も夕霧さんを好きになったら三角関係になっちゃう。それはきっと不味い。
「答えが決まったのなら、さあ行っておいで!」
「はいっ!!」
 私は彼女の背を押して、ほわんと暖かい胸いっぱいの気持ちで見送ったのです。


 それが、彼女の彼女らしい一面を見た、最後でした。


 ………あれ?
 あれれれれ??

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