アール・ブレイド ~ソルビアンカの秘宝~
プロローグ 始まりは荷物から
パチパチと、木が爆ぜる音が聞こえる。
暖かい暖炉の傍で、二人は身を寄せ合いながら、夜を過ごしていた。
「ねえ、ばばさま。どうしてわたしには、ととさまとかかさまがいないの?」
幼い赤茶の女の子が、見上げるかのように、フードを被った老婆に尋ねた。
老婆は刺繍をしていた手を休めて、優しく答える。
「お前のととさまとかかさまは、遠い場所にいるんだよ。いつかきっと、会えるさ」
「そこには、わたしはいけないの?」
「ああ、お前はここで、しばらくお留守番さ。けれどね」
老婆は優しく女の子の頭を撫でてやると。
「いつも元気に笑顔でいれば、きっと良いことがおきるよ」
「うん、わかった!」
女の子はとびきりの笑顔で、元気よく頷いた。
時は遥か未来。
限界を迎えた惑星から、いつしか人々は、宇宙に飛び出していった。
しかし、宇宙ほど無限に広がる場所は無い。少し間違えば遭難してしまうほど、宇宙と言う場所は広くて恐ろしい場所なのだ。
そこで、星の位置を基準としたワープ技術が開発された。
星と星を繋ぐ『プラネットゲート』。
この方法でなら迷うことなく一気に、より安全に長距離を跳躍することができる。また、ゲート間ならば、どんな距離があっても数日で行き来できる。
星と星が繋がる。未開発の星が、人々の手によって新たな町や都市へと発展していく。
発達するのは、星の開拓だけではない。
ワープ技術を生み出した、科学は新たなものを更に人々にもたらしていった。
星と星を行き来する宇宙船もその一つ。
宇宙を見上げれば、駆け巡る宇宙船。
その船は、様々な荷物と共に、人々の想いも運んでゆく……。
曲がりくねった道が続く。
遺跡のようにも思えるその都市は、さながら迷宮……いや、城塞と言った方が良いのだろうか?
丘の上にあるその都市は、砂の中にあっても、活気は損なわれることはなく。
数多くのエアカーが行き交い、近代化された部屋の内部は、最新鋭のセキュリティが施されている。
と、その路地から、ぽんと飛び出す元気な少女がいた。
「おはよう、シンプソンさんっ!! 荷物ですよ!!」
じゃーっと、車輪が勢いよく回る音が、路地に響く。
「今日も精が出るね、アリサ」
「だって、好きな仕事ですもん」
にっと笑みを浮かべるのは、赤茶の髪をショートボブにした快活な少女。
歳は16といったところか。
動きやすいジャケットに短パン、足はローラーブレード。腰には小道具を入れたウエストポーチ、肩には荷物の入ったリュックを背負っている。
「ローランド運送をどうぞ、ご贔屓にー」
シンプソン夫人から、サインを受け取り、アリサは、人懐っこい笑みを浮かべた。
「いってらっしゃい、気を付けてね」
赤茶の髪の少女、いやアリサ・ロレットは、ローランド運送になくてはならない社員の一人。
この迷宮にも似た都市、ラビリスドーナの抜け道をいくつも知っている。
数多くの観光客が迷うことで有名な、その都市を、抜け道を通って、得意のローラーブレードで一気に駆け巡る。それが、アリサだった。
「よし、これでリュックの中の荷物配達、終了!」
うーんと伸びをして、そのまま運送屋へと戻っていく。
「親方、ただいまー! うちの分、終わったよー!」
じゃーっといつものように、勢いよく入っていくアリサ。
「お疲れさん。けど、また仕事だ。これでラストだから、もう一つだけ、頼めるか?」
髭の濃いメガネのお兄さん……というよりは、若干歳がいっているように見えるが、それでもまだ、実は20代後半だったりする。
彼からぽんと手渡されたのは、A5用紙ぐらいの小さな箱の荷物。
「ちょっと遠いですけど、これくらいなら平気だよ、親方。じゃあ、さっそく行ってくるよ!!」
彼女はまだ知らない。
その荷物が、彼女の運命を変えるものだとは。
そして、新たな冒険の幕開けになるとは、このとき、彼女は思ってもみなかったのであった。
暖かい暖炉の傍で、二人は身を寄せ合いながら、夜を過ごしていた。
「ねえ、ばばさま。どうしてわたしには、ととさまとかかさまがいないの?」
幼い赤茶の女の子が、見上げるかのように、フードを被った老婆に尋ねた。
老婆は刺繍をしていた手を休めて、優しく答える。
「お前のととさまとかかさまは、遠い場所にいるんだよ。いつかきっと、会えるさ」
「そこには、わたしはいけないの?」
「ああ、お前はここで、しばらくお留守番さ。けれどね」
老婆は優しく女の子の頭を撫でてやると。
「いつも元気に笑顔でいれば、きっと良いことがおきるよ」
「うん、わかった!」
女の子はとびきりの笑顔で、元気よく頷いた。
時は遥か未来。
限界を迎えた惑星から、いつしか人々は、宇宙に飛び出していった。
しかし、宇宙ほど無限に広がる場所は無い。少し間違えば遭難してしまうほど、宇宙と言う場所は広くて恐ろしい場所なのだ。
そこで、星の位置を基準としたワープ技術が開発された。
星と星を繋ぐ『プラネットゲート』。
この方法でなら迷うことなく一気に、より安全に長距離を跳躍することができる。また、ゲート間ならば、どんな距離があっても数日で行き来できる。
星と星が繋がる。未開発の星が、人々の手によって新たな町や都市へと発展していく。
発達するのは、星の開拓だけではない。
ワープ技術を生み出した、科学は新たなものを更に人々にもたらしていった。
星と星を行き来する宇宙船もその一つ。
宇宙を見上げれば、駆け巡る宇宙船。
その船は、様々な荷物と共に、人々の想いも運んでゆく……。
曲がりくねった道が続く。
遺跡のようにも思えるその都市は、さながら迷宮……いや、城塞と言った方が良いのだろうか?
丘の上にあるその都市は、砂の中にあっても、活気は損なわれることはなく。
数多くのエアカーが行き交い、近代化された部屋の内部は、最新鋭のセキュリティが施されている。
と、その路地から、ぽんと飛び出す元気な少女がいた。
「おはよう、シンプソンさんっ!! 荷物ですよ!!」
じゃーっと、車輪が勢いよく回る音が、路地に響く。
「今日も精が出るね、アリサ」
「だって、好きな仕事ですもん」
にっと笑みを浮かべるのは、赤茶の髪をショートボブにした快活な少女。
歳は16といったところか。
動きやすいジャケットに短パン、足はローラーブレード。腰には小道具を入れたウエストポーチ、肩には荷物の入ったリュックを背負っている。
「ローランド運送をどうぞ、ご贔屓にー」
シンプソン夫人から、サインを受け取り、アリサは、人懐っこい笑みを浮かべた。
「いってらっしゃい、気を付けてね」
赤茶の髪の少女、いやアリサ・ロレットは、ローランド運送になくてはならない社員の一人。
この迷宮にも似た都市、ラビリスドーナの抜け道をいくつも知っている。
数多くの観光客が迷うことで有名な、その都市を、抜け道を通って、得意のローラーブレードで一気に駆け巡る。それが、アリサだった。
「よし、これでリュックの中の荷物配達、終了!」
うーんと伸びをして、そのまま運送屋へと戻っていく。
「親方、ただいまー! うちの分、終わったよー!」
じゃーっといつものように、勢いよく入っていくアリサ。
「お疲れさん。けど、また仕事だ。これでラストだから、もう一つだけ、頼めるか?」
髭の濃いメガネのお兄さん……というよりは、若干歳がいっているように見えるが、それでもまだ、実は20代後半だったりする。
彼からぽんと手渡されたのは、A5用紙ぐらいの小さな箱の荷物。
「ちょっと遠いですけど、これくらいなら平気だよ、親方。じゃあ、さっそく行ってくるよ!!」
彼女はまだ知らない。
その荷物が、彼女の運命を変えるものだとは。
そして、新たな冒険の幕開けになるとは、このとき、彼女は思ってもみなかったのであった。
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