秋原版【第二回・文章×絵企画】短編集

秋原かざや

彼女との出会い



 しんしんと降りつもっていく雪。
 それはさほど冷たくなくて。
 けれども、辺りを白くすには十分すぎる量だった。
 その中を、ざく、ざくっと一歩一歩、歩んでいく。
 何故、私はこの先へと行くのだろう?
 このまま行けば、遭難してしまうんじゃないだろうか?
 そう思っているのにも関わらず、その自分の足は進むことを止めない。
 そこに何かがあるのだろうか?
 それとも……。


 更に更に道なき道を歩んでいく。
 幸いにも私には暖かいヤッケを着ているようだ。
 また、暖かいボアの入った長靴も履いている。
 これならば、少しは大丈夫だろう。
 けれど、どうして?
 どうして、私はこの先へと歩いていくのだろうか?


 と、そのときだった。


<a href="//9610.mitemin.net/i161235/" target="_blank"><img src="//9610.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i161235/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>


 何とも薄着の女性がそこに立っていた。
 その姿が、なんと美しいことか。
 そして、ドレスの裏側から見える、あの銀河は何を意味するのだろうか。
 ふと、女性は私の姿を見て、にこっと微笑んだ。
 私も微笑み、手を伸ばす。
 後もう少し、後もう少しで、彼女の頬に……。




「……嘘ばっかり」
 暖かい喫茶店で、彼女はくすりと笑った。
「本当だって、あのとき、君が私の夢に出てきたんだ。後もう少しで君の頬に手を伸ばせたというのに」
「だから、それは嘘」
 彼女は飲んでいた紅茶を、ことんとテーブルの上に戻した。
「だって、私もその夢見たもの」
「え?」
「そのとき、あなたはちゃんと私を抱きしめて、こう言ってくれたのよ」
 恥ずかしそうに私の耳元で彼女は囁く。
「一目惚れしました。私と結婚してくださいって」
 私と彼女の薬指には、銀色の指輪が輝いていた。



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