マシン・ブレイカー ―Crusaders of Chaos―
四十七話 気になるアイツと友情のアイダ
警視庁、魔導課の一室。
A-Sことアスナは苛立っていた。
何度、電話をかけても、アイツは出ない。
メールを送っても返答しない。
いや、元々マメな方ではなかったが、それでも何かしらの返答は……くれた、はず。
今も何度目かの電話をかけていた。
「またか……だが」
今日のアスナはいつもとは違う。
何故なら。
ウエストポーチから取り出したのは、小型のタブレットPC。
タブレットを起動させ、立体ウィンドウを宙に表示させる。
「こうやって、こう」
何かをアプリを起動させてから、アスナは再度、電話をかけた。
電話の画面には国崎亮平という名が表示される。
と同時にタブレットの画面の地図に赤い印が点滅し始めた。
「よし、捉えた! これでアイツの所に行って」
にっと笑みを浮かべて、タブレットをポーチに仕舞う。
「一発殴ってやる」
バイクに跨ると、すぐさまタブレットが指し示した場所へと向かった。
その様子を見ていた者がいるとは知らずに。
……何でこんなにも苛立つのだろうか。
バイクを飛ばしながら、アスナは考える。
――よかった、君が無事で。
何故か、助けてくれた時の記憶が甦る。
「ばっ……な、何を考えてるんだ、僕はっ」
首を横に振りながらも、アスナはそのまま、目的地へと突き進んでいく。
明かりを通さぬ暗い部屋。
そこのベッドに横たわりながら、何も見えない天井を見上げていた。
――俺は何をしているんだ……。
国崎はため息交じりに心の中で呟いた。
早苗と親友と、皆の仇を取るために戦っていた。
しかし……その早苗が生きていた。
それだけではない。
彼女が後を引き継ぐから、戦わなくても良いとさえ、言われてしまった。
戦う、意味が無くなったのだ。
と、その時だった。
ばたんと、彼のいる部屋の扉が乱暴に開いた。
「ふう、やっと開いた」
「やっと開いた……じゃないだろ!?」
思わず国崎はツッコミを入れる。
ドアを開いて入って来たのは、アスナだ。
「このドア、壊れていたぞ。なかなか開かないんだからな」
「壊れてるんじゃなくて、カギをかけていたんだ……全く、何をしてくれたんだよ……」
と、国崎は嫌な考えに至る。
「まさか、ここに来るまでの全ての部屋の扉を……壊したんじゃないだろうな?」
「開かないドアだけだ」
「……2枚か」
玄関の扉と、この部屋の扉の2枚が天に召されたのを理解した。
「蝶番と鍵が壊れただけだろ? これくらいなら、すぐに直せる。確か近くにショッピングモールがあったはずだ。そこに行けば、蝶番と鍵の一つや2つ、残ってるだろ?」
「そういう問題じゃ……うわっ!」
アスナは国崎の腕を掴むと、そのまま、部屋の外に連れ出していく。
「それに、こんな辛気臭い場所にいたら、腐っちまうぞ」
そういって、アスナはサイドカーに国崎を乗せると、すぐさまバイクを走らせたのだった。
たどり着いたのは、廃墟となったショッピングモールだ。
「国崎、ここにマシンはいるか?」
「前にフィグネリアと一緒に一掃している。恐らくいないと思うが……」
バイクから降りて、二人は警戒しながら、中へと入っていく。
「確かこのあたりにスイッチが……よし」
国崎が見つけたスイッチで、ショッピングモールは再び光を取り戻した。
とはいっても、中は誰もいなく、所々、暴走したマシンによって、破壊された部分が見える。
「店の品物は大方、大丈夫そうだな」
「食べ物はよく見ないと腐ってるものがあるから、注意しろよ」
アスナはまだ動いている自動販売機を見つけて。
がこっ!
蹴りつけた。
「おいおい」
「ほら、お前も飲むだろ? いい感じに冷えてる」
アスナが国崎に放り出したのは、よく冷えたコーラだった。アスナが手にしているのは、アップルジュース。
ぱきっという小気味いい音と共に、缶の封が切られる。
「ん、美味い」
国崎の缶からはしゅわっと弾ける炭酸の音が聞こえた。
「こっちもまあまあだな」
二人は顔を見合わせ、にっと笑みを浮かべる。
「さてっと、休憩もできたし、蝶番と鍵を手にいれるか」
缶を投げ捨ててアスナが歩き出す。
「それなら、あっちにホームセンターがあったはずだ」
国崎もコンという音を響かせながら、ゴミ箱に缶を投げ捨てる。
「じゃあ、まずはそこからだ!」
数時間後、目的のものを見つけ出したアスナと国崎は。
「なあ、あれは何だ?」
アスナが何かを見つけた。
「ボーリング場……みたいだな」
「まだ動くのか?」
思わず二人はそこへ向かう。
「いや、流石に動かないだろ? ほら、電気はついてるけど、機械は動いていない」
「けど、数回くらいならできる。手で直せば、何回もだ。スコアは手で書かないとダメだけどな」
楽しげにアスナは倒れているピンを綺麗に直して。
「ほら、やってみせてくれよ。ストライク出来るんだろ?」
「仕方ないな、見せてやるか」
近くにあったボールを手に取り、国崎は慣れた手つきと見事なフォームでボールを投げる。
が、しかし。
「惜しい、あと5本」
「くっ……」
実は国崎、ボーリングは数回しかやったことがない。今回だって、ピンが倒れたのは奇跡に近い。
「じゃあ、次は僕だな」
近くにあったボール置き場から、軽めのボールを選び、隣のレーンで。
「よっと」
国崎と同じように綺麗なフォームで投げていく。
「えっ」
「うーん、右に寄っちゃうのか」
それでも国崎よりも1本多く倒れたようだ。
「次こそは全部倒して見せるっ」
残る5本のピンを倒そうとボールを投げるも、前回と同じ場所にボールが転がってしまったために1本も倒せずに終わってしまった。
「じゃあ、次は僕だな。……えいっ」
やや左側に寄ってから、ぽいっと投げる。ごろごろと転がり……ピンにジャストミート!
「やりぃ! スペアだ!」
「何だよ、それ!」
喜ぶアスナに突っ込む国崎。
「ほら、国崎もこっち側に立って、投げてみろよ」
アスナが見かねたのか、国崎をレーンの左側に寄らせて、それから投げさせる。
「絶対無理だって……うお?」
国崎の投げたボールは斜めに転がり、吸い込まれるかのようにピンの方へと向かって行った。
かーんという小気味いい音ともにピンが倒れていく。
「ほら、国崎もスペアだろ?」
「お、おうっ」
思わず笑みを浮かべる国崎に、アスナも笑い出す。
「よし、今度はストライクだ!」
アスナが意気込む横で国崎は、ふと、ボール置き場にあったボールを見つめた。
つつーと何もない場所で、少し動き出す。
そう、国崎は少し自分の力でボールが働くのを確認したのだ。
「国崎、たまには体を動かすのもいいだろ? 考え込むのは良い時もあるが、悪い時もある。そんなときはこうして、体を動かしてやると、いいものが浮かびやすくなるんだ」
「ああ、そうだな。A-Sの言う通り……かもな」
その様子ににっと笑みを浮かべて、もう一度、ボールを転がしていく。
が、僅かに狙いがずれてしまったようだ。
「これはダメか」
ため息交じりに呟くアスナに国崎は。
こっそり自身の力を解放して、僅かにボールの軌道を修正した。
かこーんというピンが倒れる良い音が、レーンに響き渡る。
「や、やった! ほら、見てたか?」
「ああ、見てたさ。何事も信じれば良いことは起きるんだな」
その国崎の言葉にアスナはそうだと言わんばかりに、国崎の胸元を軽く叩いた。
そういえばと思う。
アスナがフィジカルブーストを使えば、もっと上手くできるのではないかと。
国崎は首を振り、その考えを空へ飛ばした。
――今は、この時間を思いっきり楽しもう。
何より、一緒にこうしてボーリングするのが楽しいのだ。
国崎はそれが一番だと思い、ピンを直しに行くアスナの手伝いに向かったのだった。
その後、何度も、ボーリングを楽しんだ。
倒した後、わざわざ手でピンを直さなくてはならず、ボールも自分で持ってこなくてはいけない。
だが、それが楽しかった。
ピンもよく倒れたのが良かったのかもしれない。
中にはちょっとだけ、ズルをしたこともあったが。
「A-S、お前、ボーリングやってたのか?」
思わず国崎が尋ねる。その手にはあの自動販売機で手にいれた2本目のコーラが握られていた。
「小さい頃に少しな。両親とやったときにエルアトスに教えてもらった」
「エルアトス? 弟か?」
くすっと笑ってアスナは言う。
「お前のフィグネリアと同じだよ」
「え?」
「ついでにいうと、僕が戦うのは仇を取るだけじゃない」
ごくりと、2本目のジュースを飲んで、アスナは続ける。
「僕と同じように、マシンからの攻撃で家族を失うようなことはさせたくないんだ。あんな想いをするのは、僕だけで充分だ。そうだろ?」
「A-S……」
そう呟く国崎の唇に、アスナの白い指が添えられる。
「アスナだ。今日からアスナと呼んでくれ」
「アスナって……え? もしかして、えっ!?」
「ほら、帰るぞ。歩いて帰りたくないだろ?」
飲み干した缶をゴミ箱に放り投げて、アスナは歩き出す。
「ちょ、ちょっと待てよ、おい。俺のことも亮平でいいからな!」
振り返り、アスナは微笑んだ。
「ああ、分かったよ。亮平」
と、その時だった。
外に出た二人の目に飛び込んできたのは、遠くに浮かび上がる黒い煙。
「おい、亮平。あっちの方角は……」
「ああ、警視庁の方だ」
二人は頷き合うと、バイクに乗り込み、警視庁の方へと向かって行ったのだった。
A-Sことアスナは苛立っていた。
何度、電話をかけても、アイツは出ない。
メールを送っても返答しない。
いや、元々マメな方ではなかったが、それでも何かしらの返答は……くれた、はず。
今も何度目かの電話をかけていた。
「またか……だが」
今日のアスナはいつもとは違う。
何故なら。
ウエストポーチから取り出したのは、小型のタブレットPC。
タブレットを起動させ、立体ウィンドウを宙に表示させる。
「こうやって、こう」
何かをアプリを起動させてから、アスナは再度、電話をかけた。
電話の画面には国崎亮平という名が表示される。
と同時にタブレットの画面の地図に赤い印が点滅し始めた。
「よし、捉えた! これでアイツの所に行って」
にっと笑みを浮かべて、タブレットをポーチに仕舞う。
「一発殴ってやる」
バイクに跨ると、すぐさまタブレットが指し示した場所へと向かった。
その様子を見ていた者がいるとは知らずに。
……何でこんなにも苛立つのだろうか。
バイクを飛ばしながら、アスナは考える。
――よかった、君が無事で。
何故か、助けてくれた時の記憶が甦る。
「ばっ……な、何を考えてるんだ、僕はっ」
首を横に振りながらも、アスナはそのまま、目的地へと突き進んでいく。
明かりを通さぬ暗い部屋。
そこのベッドに横たわりながら、何も見えない天井を見上げていた。
――俺は何をしているんだ……。
国崎はため息交じりに心の中で呟いた。
早苗と親友と、皆の仇を取るために戦っていた。
しかし……その早苗が生きていた。
それだけではない。
彼女が後を引き継ぐから、戦わなくても良いとさえ、言われてしまった。
戦う、意味が無くなったのだ。
と、その時だった。
ばたんと、彼のいる部屋の扉が乱暴に開いた。
「ふう、やっと開いた」
「やっと開いた……じゃないだろ!?」
思わず国崎はツッコミを入れる。
ドアを開いて入って来たのは、アスナだ。
「このドア、壊れていたぞ。なかなか開かないんだからな」
「壊れてるんじゃなくて、カギをかけていたんだ……全く、何をしてくれたんだよ……」
と、国崎は嫌な考えに至る。
「まさか、ここに来るまでの全ての部屋の扉を……壊したんじゃないだろうな?」
「開かないドアだけだ」
「……2枚か」
玄関の扉と、この部屋の扉の2枚が天に召されたのを理解した。
「蝶番と鍵が壊れただけだろ? これくらいなら、すぐに直せる。確か近くにショッピングモールがあったはずだ。そこに行けば、蝶番と鍵の一つや2つ、残ってるだろ?」
「そういう問題じゃ……うわっ!」
アスナは国崎の腕を掴むと、そのまま、部屋の外に連れ出していく。
「それに、こんな辛気臭い場所にいたら、腐っちまうぞ」
そういって、アスナはサイドカーに国崎を乗せると、すぐさまバイクを走らせたのだった。
たどり着いたのは、廃墟となったショッピングモールだ。
「国崎、ここにマシンはいるか?」
「前にフィグネリアと一緒に一掃している。恐らくいないと思うが……」
バイクから降りて、二人は警戒しながら、中へと入っていく。
「確かこのあたりにスイッチが……よし」
国崎が見つけたスイッチで、ショッピングモールは再び光を取り戻した。
とはいっても、中は誰もいなく、所々、暴走したマシンによって、破壊された部分が見える。
「店の品物は大方、大丈夫そうだな」
「食べ物はよく見ないと腐ってるものがあるから、注意しろよ」
アスナはまだ動いている自動販売機を見つけて。
がこっ!
蹴りつけた。
「おいおい」
「ほら、お前も飲むだろ? いい感じに冷えてる」
アスナが国崎に放り出したのは、よく冷えたコーラだった。アスナが手にしているのは、アップルジュース。
ぱきっという小気味いい音と共に、缶の封が切られる。
「ん、美味い」
国崎の缶からはしゅわっと弾ける炭酸の音が聞こえた。
「こっちもまあまあだな」
二人は顔を見合わせ、にっと笑みを浮かべる。
「さてっと、休憩もできたし、蝶番と鍵を手にいれるか」
缶を投げ捨ててアスナが歩き出す。
「それなら、あっちにホームセンターがあったはずだ」
国崎もコンという音を響かせながら、ゴミ箱に缶を投げ捨てる。
「じゃあ、まずはそこからだ!」
数時間後、目的のものを見つけ出したアスナと国崎は。
「なあ、あれは何だ?」
アスナが何かを見つけた。
「ボーリング場……みたいだな」
「まだ動くのか?」
思わず二人はそこへ向かう。
「いや、流石に動かないだろ? ほら、電気はついてるけど、機械は動いていない」
「けど、数回くらいならできる。手で直せば、何回もだ。スコアは手で書かないとダメだけどな」
楽しげにアスナは倒れているピンを綺麗に直して。
「ほら、やってみせてくれよ。ストライク出来るんだろ?」
「仕方ないな、見せてやるか」
近くにあったボールを手に取り、国崎は慣れた手つきと見事なフォームでボールを投げる。
が、しかし。
「惜しい、あと5本」
「くっ……」
実は国崎、ボーリングは数回しかやったことがない。今回だって、ピンが倒れたのは奇跡に近い。
「じゃあ、次は僕だな」
近くにあったボール置き場から、軽めのボールを選び、隣のレーンで。
「よっと」
国崎と同じように綺麗なフォームで投げていく。
「えっ」
「うーん、右に寄っちゃうのか」
それでも国崎よりも1本多く倒れたようだ。
「次こそは全部倒して見せるっ」
残る5本のピンを倒そうとボールを投げるも、前回と同じ場所にボールが転がってしまったために1本も倒せずに終わってしまった。
「じゃあ、次は僕だな。……えいっ」
やや左側に寄ってから、ぽいっと投げる。ごろごろと転がり……ピンにジャストミート!
「やりぃ! スペアだ!」
「何だよ、それ!」
喜ぶアスナに突っ込む国崎。
「ほら、国崎もこっち側に立って、投げてみろよ」
アスナが見かねたのか、国崎をレーンの左側に寄らせて、それから投げさせる。
「絶対無理だって……うお?」
国崎の投げたボールは斜めに転がり、吸い込まれるかのようにピンの方へと向かって行った。
かーんという小気味いい音ともにピンが倒れていく。
「ほら、国崎もスペアだろ?」
「お、おうっ」
思わず笑みを浮かべる国崎に、アスナも笑い出す。
「よし、今度はストライクだ!」
アスナが意気込む横で国崎は、ふと、ボール置き場にあったボールを見つめた。
つつーと何もない場所で、少し動き出す。
そう、国崎は少し自分の力でボールが働くのを確認したのだ。
「国崎、たまには体を動かすのもいいだろ? 考え込むのは良い時もあるが、悪い時もある。そんなときはこうして、体を動かしてやると、いいものが浮かびやすくなるんだ」
「ああ、そうだな。A-Sの言う通り……かもな」
その様子ににっと笑みを浮かべて、もう一度、ボールを転がしていく。
が、僅かに狙いがずれてしまったようだ。
「これはダメか」
ため息交じりに呟くアスナに国崎は。
こっそり自身の力を解放して、僅かにボールの軌道を修正した。
かこーんというピンが倒れる良い音が、レーンに響き渡る。
「や、やった! ほら、見てたか?」
「ああ、見てたさ。何事も信じれば良いことは起きるんだな」
その国崎の言葉にアスナはそうだと言わんばかりに、国崎の胸元を軽く叩いた。
そういえばと思う。
アスナがフィジカルブーストを使えば、もっと上手くできるのではないかと。
国崎は首を振り、その考えを空へ飛ばした。
――今は、この時間を思いっきり楽しもう。
何より、一緒にこうしてボーリングするのが楽しいのだ。
国崎はそれが一番だと思い、ピンを直しに行くアスナの手伝いに向かったのだった。
その後、何度も、ボーリングを楽しんだ。
倒した後、わざわざ手でピンを直さなくてはならず、ボールも自分で持ってこなくてはいけない。
だが、それが楽しかった。
ピンもよく倒れたのが良かったのかもしれない。
中にはちょっとだけ、ズルをしたこともあったが。
「A-S、お前、ボーリングやってたのか?」
思わず国崎が尋ねる。その手にはあの自動販売機で手にいれた2本目のコーラが握られていた。
「小さい頃に少しな。両親とやったときにエルアトスに教えてもらった」
「エルアトス? 弟か?」
くすっと笑ってアスナは言う。
「お前のフィグネリアと同じだよ」
「え?」
「ついでにいうと、僕が戦うのは仇を取るだけじゃない」
ごくりと、2本目のジュースを飲んで、アスナは続ける。
「僕と同じように、マシンからの攻撃で家族を失うようなことはさせたくないんだ。あんな想いをするのは、僕だけで充分だ。そうだろ?」
「A-S……」
そう呟く国崎の唇に、アスナの白い指が添えられる。
「アスナだ。今日からアスナと呼んでくれ」
「アスナって……え? もしかして、えっ!?」
「ほら、帰るぞ。歩いて帰りたくないだろ?」
飲み干した缶をゴミ箱に放り投げて、アスナは歩き出す。
「ちょ、ちょっと待てよ、おい。俺のことも亮平でいいからな!」
振り返り、アスナは微笑んだ。
「ああ、分かったよ。亮平」
と、その時だった。
外に出た二人の目に飛び込んできたのは、遠くに浮かび上がる黒い煙。
「おい、亮平。あっちの方角は……」
「ああ、警視庁の方だ」
二人は頷き合うと、バイクに乗り込み、警視庁の方へと向かって行ったのだった。
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