マシン・ブレイカー ―Crusaders of Chaos―

秋原かざや

三十八話 襲撃、暗躍、エニグマ



 ディスプレイを眺めながら、黒島は機械の腕をカチカチと鳴らした。
「ほう……これは興味深い。まさか、あの吉岡があの力を得るとは、ね……。だが、吉岡には過ぎたる力だ。赤羽」
 近くに控えていた赤羽を呼ぶ。
「どうかしましたか?」
「こいつを吉岡にプレゼントしてやってくれ。ついでに……本庁にも揺さぶりをかける」
「ですが、まだそれは……」
「未完成だからいいんだよ。結果を見て改良を加える。そうすれば、望み通りのものができるだろう?」
 くつくつと嗤う黒島に、赤羽は思わず眉を顰める。
「確か、君。良いものを持っていたね? 本庁には、それをけしかけるだけでいい」
「……わ、わかりました」
 黒島から受け取ったアンプルと、それを撃ち出す銃を手に、赤羽はその場を後にする。
「楽しくなってきたよ、魔導課の諸君」
 そういって、黒島は口の端を釣り上げるのであった。




「これは……どういうことなんだ?」
 久我原からの通信で、何かが本庁に向かっていると聞き、A-Sはこっそりと病院を抜け出してきたのだが。
「見事に煙が上がってるな」
 ミラーシェードで倍率を上げてみてみるが、流石にここからは遠く現地がどうなっているかわからない。
 それよりも確か、魔導課は、別の作戦で出払っているはず。
「行くしかない、か」
 思わず、A-Sの口元に笑みが零れる。
 まだアギトの力で完治させたが、本調子ではない。
 それが響くかわからないが。
 答えを出す前にA-Sは自分のバイクに跨り、本庁に向けて走らせた。




 煙の先に佇む人影がいる。
 コートのフードを目深に被った人物。
 それが、本庁を襲った者だった。
「貴様、何者だ!!」
 警備の者たちがそのコートの人物を取り囲んだ。向けられる銃口。それに怯むことなく、そのコートの人物は。
『………』
 一瞥し、無言で警備員達に迫ると、素手だけで彼らを無力化してしまった。そう、そこにいた者たち全員、一人残らず伸して、制圧してしまったのだ。
 後に残されたのは、気絶して倒れている警備員たちだけ。
『他愛ない』
 静かにそう告げる声は、どこか男性の声を思わせる。
「そこで何をしている?」
 新たな人物が現れた。そう、到着したA-Sだ。
 剣を1本引き抜き、フードの人物に向けている。
「……片腕がないな」
 ぽつりとA-Sが呟く。
 そして、行きつく答えは。
「どうやら、再戦したいようだな。アンドロイド」
 ゆっくりと彼に近づく。
 そう、目の前にいるのは、先日戦ったあのアンドロイドだ。
 どうやら、腕のガトリングまでは直せなかったようだ。腕のある場所には、それがなく、ひらひらと袖が風に靡いている。
『まだ戦うのか?』
「必要とあらば、な。それにお前のことも知りたい。いや、教えてもらう」
 もう一本の剣を引き抜き、にやりと笑って見せる。
「その体でな」
 二人の影が交錯した。





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